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『道浦TIME』

新・ことば事情

6723「なぜ『将棋は指す』で『囲碁は打つ』なのか?」

エウレカ!わかった!

「なぜ『将棋は指す』で『囲碁は打つ』なのか?」

という問題。

「将棋」は、「最初から盤の上に置いてある駒」を「水平方向に」動かします。相手の方に動かすとすると、これが、

「さす」(刺す・挿す・指す)

という言葉で象徴されるのではないでしょうか?

それに対して、「囲碁」の「石」は、最初から盤上にある訳ではありません。

「碁笥(ごけ)」

と呼ばれる丸い木箱の中にある石を取り出して、新たに碁盤の上に置いていく。碁盤から見ると、これは「上から下へ垂直方向に」置かれるわけですから、この動作を、

「打つ」

と呼ぶのではないでしょうか?「打ち下ろす」のですね。

しかし「指す」と呼ぶ「将棋」においても、相手から取った駒を盤上で使う時には、

「打つ」

と言います。ここから考えると、「囲碁」に限らず「将棋」でも、

「盤外から、石や駒を盤上に置く行為」

を指して(!)、

「打つ」

と呼ぶのではないでしょうか?

ちなみに「マージャン」で「牌」を場に捨てる時も、

「打ち込む」

と言いませんでしたっけ?あれも盤外からの、

「上から下への動作」

ですよね。

「博打」も「打つ」とは言っても「指す」とは言いません。そこから考えると、

「『打つ』には、『指す』にはない動作・行動まで含まれる」

気がします。

この「将棋」と「囲碁」の動作の違い、「打つ」「指す」に関しては、実は、

『微妙におかしな日本語』(神永暁、草思社

という本の「132~134ページ」を読んでいて閃いたと言うか、ほぼそこに書かれていたので、詳しくはこの本を読んでくださいね、出たばかりだから。私も今、読んでいる途中です。

また、「平成ことば事情6371囲碁は打つ、将棋は指す」もお読みくださいね。

(2018、2、27)

2018年2月28日 23:51

新・ことば事情

6722「羽生さん」

2月27日、日本選手団帰国報告会の生中継。熱い司会は、ご存じ元プロテニスプレーヤーの松岡修造さん(50)でした。

時々、熱さが空回りする部分もご愛嬌、「スポーツ愛」あふれる司会でした。

その中で、「これはスゴイな」と思ったのは、

「羽生さん」

というように、27歳も年下の羽生弦選手(23)に対して、

「さん付け」

で呼んでいたこと。当たり前と言えば当たり前のことですが、羽生選手は、松岡さんから見れば「息子」の年齢に当たる人。そういった人に対しては、往々にして、

「羽生くん」

と、「くん付け」で呼んでしまいがちです。その方が、

「66年ぶりの五輪2連覇を果たした世界チャンピオン・偉人」

であっても、です。もちろん「くん付け」のほうが、

「親しみを感じている雰囲気が出る」

ので、一概にダメだとは言えないのですが、「日本選手団帰国報告会」という公の場での司会は、いわば、

「国民の代表として、メダリストたちに質問をする立場」

なので、そこは、

「『親しさ』よりも『リスペクト』と『客観性』」

を担保すべきだと、私は思います。なかなか、これができない人が多いと思うのですが、松岡さん、さすがです。

根本には、同じ「"世界"を知っている一流のスポーツマン」としての、

「リスペクトする気持ち」

があるのだと思いました。そして普段から「さん付け」で呼んでいるから、無理して「さん」を付けている感じがなく、自然に醸し出される選手への敬意が感じられ、その中に、

「親しみの表現」

も、バランスよく盛り込んでいるように感じました。

(2018、2、27)

2018年2月28日 23:10

新・ことば事情

6721「眼鏡の縁と太さ」

先日ツイッターで、法政大学の尾谷昌則先生が、

「『眼鏡の太い縁』の『太い』と『縁』を、先日アナウンサーが『有声音』で発音していた。最近は『語頭の母音の無声化』をしない傾向にあるのだろうか?」

という疑問を呈していました。

ためしに、うち(読売テレビ)の若いアナウンサーに読ませてみると、はたして、

「母音が無声化しない『有声音』」

で、発音していました。

やはり「母音が無声化した音」は(「無声化」しているのですから)、

「聞こえにくい」

ということもあり、特に「語頭」が「無声音」だと、

「音が出ていないことを不安に感じる」

のではないでしょうかね?

全国的にこういう傾向なのかどうか、また調べてみたいと思います。

(2018、2、26)

2018年2月28日 22:49

新・ことば事情

6720「ヒジャーブ、ヒマール、ニカブ」

イスラム教の女性=「ムスリマ」(ムスリムの女性形)の、髪を覆うファッションの名前ですが、忘れないように書いておきましょう。

「ヒジャーブ」=髪を覆う

「ヒマール」=頭から胸まで覆う

「ニカブ」=目だけ出す

「ヒジャーブ」は、「ヒジャブ」「ヘジャブ」とも書きますね。

グーグル検索では(2月23日)

「ヒジャーブ」= 42万8000件

「ヒマール」 =146万0000件

「ニカブ」  =  5万2300件

「ヒジャブ」 = 49万0000件

「ヘジャブ」 =  1万2800件

でした。

(2018、2、23)

2018年2月28日 20:48

新・ことば事情

6719「キタノミズウミ」

「ミヤネ屋」の、入ったばかりの若い(20歳そこそこ)女性ADが、

「道浦さん、吹き替えをお願いします」

と原稿を持って来ました。

「何の吹き替え?」

と聞くと、

「『キタノミズウミ』の吹き替えなんですが」

と言います。

「『キタノミズウミ』?・・・・あ、それはね、『キタノウミ』って読むんだよ。確かに『北の湖』って書いてあるけどさ。有名だから覚えておこうね」

「そうなんですか。わかりましたー」

という答え。

えーっと、皆さんには、特に説明は不要ですよね。

もちろん、元・横綱で元・日本相撲協会理事長を2度務めて若くして亡くなった「北の湖」さんのことです。

こんなメンバーで、やってまんねん・・・。

(2018、2、26)

2018年2月28日 18:47

新・ことば事情

6718「客びき」

大阪の京橋駅のJRと京阪電車の間のスペースで、スピーカーから大阪府警・都島警察署からの注意喚起アナウンスが、女性の声で流れていました。それを聞いていて「おや?」っと思ったのは、

「違法な客引きなど」

という文章の、

「客引き」

という言葉の「引き」が、

「きゃくびき」

と濁っていたのです!これは常識的に考えたら、

「きゃくひき」

と濁りませんよね。「びき」と濁るのは、

「3割引き」「割り引き」

のような場合でしょう。

今回の大阪・京橋のスピーカーの声のようだと、

「違法な客びき」

には引っかからなくても(そんな言葉のものはないので)、

「違法な客ひき」

には、つい引っかかってしまうのではないか?と不安になりました。

(2018、2、26)

2018年2月26日 17:51

新・読書日記 2018_024

『広辞苑・第7版』(新村出、岩波書店:2018、1、12)

10年ぶりに改定された「広辞苑」の第「7版」。なんだか最近、「10年」経つのが早い・・・。

早速、発売日(金曜日)に購入し、その晩は明け方の4時まで いろいろと言葉を引きました。もちろん「第6版」を横に置いて「引き比べ」です。どれが「新しく採用された言葉」か、逆に「消えた言葉」は何か。そのあたりのことは、平成ことば事情6657「『広辞苑・第7版』で気付いたこと」に書いたので、読んでみてください。8500円分、元を取らないとね。


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(2018、1、12に購入、読みました)

2018年2月25日 21:26

新・ことば事情

6717「絶対王者」

羽生結弦選手、復活の平昌五輪、連覇・金メダル!

凄い!の一言です。まさに、

「絶対王者」

の名にふさわしい!

この間読んだ『羽生結弦は助走しない』(高山真、集英社新書)の帯にも、

「絶対王者は もっと強くなる」

とありました。

ところでこの「絶対王者」の「絶対」という言葉は、ちょっと、普段使う「絶対」とは、ニュアンスが違うように感じます。どういう意味か、考えてみました。

他の言葉に置き換えると、

「押しも押されもせぬ」「究極の」「アルティメット」

という感じがします。

『三省堂国語辞典』を引いてみたら、

*「絶対」=(1)ほかに比較するものがないこと。(例)絶対性、絶対王政

ありゃ。これだわ。

「絶対王政」は明らかに「絶対王者」に影響を与えていますよね。

「絶対君主」

なども、「絶対王者」に影響を与えているのではないでしょうか?

ちょっと、納得してしまいました。

その後、2月23日の日本テレビ「every.」では、フィギュア女子の競技の模様を放送していました。

優勝したザギトワ選手。とても15歳には見えません。準優勝のメドベージェワ選手も、18歳には見えない。宮原知子(さとこ)選手が19歳、さすが「ミス・パーフェクト」。そして坂本花織選手が17歳。坂本選手は幼く見えましたが、2人とも素晴らしい演技を見せてくれました!

every.」では、メドベージェワ選手のことを、

「世界選手権を2連覇した『絶対女王』」

と言っていました。男性は「絶対王者」で、女性は「絶対女王」なのでしょうかね。

(2018、2、23)

2018年2月24日 12:04

新・ことば事情

6716「勝利しました」

2月17日の日本テレビ『Go ing』を見ていたら、

「藤井五段が羽生竜王に勝利しました」

「藤井五段が勝利し」

という原稿・ナレーションが出て来ました。それを聞いて違和感がありました。これは、

「勝利しました」

ではなく

「勝ちました」

でいいのではないか?と。

ナレーションで出て来た3回とも「勝利しました」でした。

「漢語+する」

の形ですよね。でも恐らく、反対に「負けた場合」には、

「敗北しました」

とは言わずに、

「敗れました」

と言うのではないでしょうか?その辺のバランスがなあ・・・。「勝つ」ほうだけ、基本が「勝利する」になっているようで。

「漢語を使う」という意味では、「平成ことば事情6669遺体を『遺棄した』か?『捨てた』か?」と「平成ことば事情6706「遺体を『遺棄した』か?『捨てた』か?2」で書いた、

「(遺体を)遺棄しました」

を使う"違和感"に通じるような感じがします。

(2018、2、23)

2018年2月23日 21:03

新・ことば事情

6715「3点しんにゅう」

先日の新聞用語懇談会の放送分科会で、

「1点しんにゅう」か?「2点しんにゅう」か?

について各社の話を伺ったという話を、元とNHKの先輩に話したところ、

「お茶の『「辻利」の『辻』は『3点しんにゅう』だよ」

と教えてもらいました。

え?「3点しんにゅう」なんてあるの?

「今度コンビニで、ペットボトルのお茶を買って確認します!」

と言ってから、コンビニで「辻利のお茶」を捜したのですが、なかなか見当たりません。

そんなことを考えて歩いていたら、今週の火曜日(20日)、大阪の梅田で見つけました!コンビニのお茶ではなく「宇治茶バウムクーヘン」のお店です。

下が写真!

20180223.jpg

たしかに「3点しんにゅう」ですねえ。

でもこれは「デザイン」だからなあ。まあ例外的だと言えましょう。

(2018、2、22)

2018年2月23日 16:12

新・読書日記 2018_023

『隠蔽捜査7 棲月(せいげつ)』(今野敏、新潮社:2018、1、20第1刷・2018、1、30第2刷)

主人公の竜崎は、警察庁のキャリアでありながら「大森警察署長」に「左遷」させられた。普通は50歳ぐらいのキャリアで「警察署長」に左遷されるのは「嫌がらせ・いじめ」のようなもので、その時点で警察を辞めるのだそうだ。しかし、「公務員は国民のために働くものだ。上司の気持ちを忖度して生きるべきではない」という信念を基に働く竜崎には、左遷など関係ない。与えられた場所で、精いっぱい仕事に邁進するだけだ。これが「胸がすく」のですよね。会社(警察)の中での出世を気にしてコソコソ動く大多数の管理職、地位を自分の価値だと思い込んで偉そうに振る舞うエライさんを、問答無用でブッタ斬っていくところが爽快です。「忖度」する様子は、現在の政界を彷彿させますね。こういう警察官が、本当にいればいいのになあ。いるのかなあ?周りは、ちょっと迷惑かもしれませんが。

その"情け無用"で仕事をする竜崎に異動のウワサが!意外なことに「移動したくない、大森署で働き続けたい」という自らの気持ちに驚く竜崎。「人間・竜崎」の一面も見られる一冊です。

ところどころ、著者・今野敏の思いが出てきます。たとえば、

「日本のマスメディアはスキャンダルにばかり躍起になっていて、ジャーナリスティックな話題はあまり取り上げないような気がする」

結構、テレビを見てるんだな、と思いました。


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(2018、2、9読了)

2018年2月25日 17:28

新・読書日記 2018_022

『異名・ニックネーム辞典』(杉村喜光編著、三省堂:2017、5、25)

ツイッターで、この著者の方の存在と、本書の存在を知り、興味を持って購入。

たしかに「こういう視点」からの辞典というのは、なかったのではないか。

「視点を絞る」ことで、いろんな辞書が成立するのだなと感心しました。

参考にさせていただきます!


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(2018、2、6購入、読み始め)

2018年2月25日 12:27

新・読書日記 2018_021

『お話はよく伺っております』(能町みね子、文春文庫:2017、11、10)

「2018読書日記007」で書いた、酒井順子さんの『男尊女子』と比べると同じような何気ないエッセイでありながら、文体に書き手の「ジェンダー」を感じさせる。

酒井さんは「女」でありながら、その「女」の社会的立ち位置に疑問を持ち続けている視点。一方の能町さんは「体が男、心が女」で「女」になった方。でも文体・目線は「男」が残っているように感じる。「女」の社会的立ち位置に疑問を持っているようには、文体からは感じられなかった。

その能町さん、「週刊文春」で連載を持っていたのだが、ちょうどこの本を読んでいる最中に、「文春」の取材姿勢、つまり編集長の編集方針に疑問を覚えて、連載を「休載」してしまった。

これに対して「『男』だな!」と言うと、また話がややこしいのだが、

「女のように潔くスッパリと」(「休載」だから、本当はスッパリではないが)

連載を辞めてしまったので、驚いた。

この本で書かれた「街中の観察エッセイ」は、実は、私も「ことば」に関していつもやっていることなので、共感を覚えた。あのユーミンも、昔は若者の会話や風俗を、喫茶店で聞き耳を立てて取材していたと言うしね。「時代の空気」を取材することは、大事だと思いましたね。

本書のタイトルは、別に「名刺交換の際の言葉」ではなく、ふだん勝手に聞き耳を立てて、勝手に取材させて頂いている「取材対象者」への「おことわり」のフレーズということで、ちょっと、しゃれています。


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(2018、2、2読了)

2018年2月24日 17:25

新・読書日記 2018_020

『羽生結弦は助走をしない~誰も書かなかったフィギュアの世界』(高山真、集英社新書:2018、1、22)

<ネタバレあり>

1980年頃から40年近くにわたってフィギュアスケート見続けている著者は、エッセイスト。元・雑誌編集者。

最初にフィギュアスケートの基礎について詳しくわかりやすく書いてあります。その後、羽生結弦選手のどこが、どうすごいのか、2010年から2017年までのどの大会でのどの演技がどうなのか、書かれています。正直、とってもマニアックだと思います。普通なら、私は手に取らない本です。でもオリンピックやってるし、報道する立場として勉強しとかなきゃという感じで読み出しました。その「勉強」にちょうど良い、「平昌五輪」でのシングルスケーターのここがすごいと、後半では具体的に紹介してくれています。でも女子日本代表になった坂本花織選手は、想定外だったのでしょうか、紹介されていませんでした。そういうこともあるのでしょう。また「五輪では金メダルを取れなかったが、スゴイ選手」も紹介されています。「五輪での金メダルが全てではない」というのは「真のフィギュアスケートファン」なのでしょう。

途中で、なぜか「マツコデラックスと友人」という話が出て来て「へえー、そうなんだ」と思ったのですが、ところどころ、語尾が「女性的」になります。「フィギュア」にはまる人は女性的なのかも。大体ファンも、女性が多いですからね。著者の過去の著書を見てみると、『愛は毒か 毒が愛か』と哲学的なものや、

『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』

など、と記されています。え?

「教えちゃうわ」?

...女性?さらに、以前、テレビ東京が全仏オープンの中継をやっていたときのエンディングテーマに、「ABBA」(!)の『The Winner Takes It All』という曲を使っていたことがあったそうなのですが、それを知った著者は、

「うまい選曲だわ」

と感心した記憶があるそうです・・・、

「だわ」?

うーん、「心は女性」のようですね。

さらに読み進むと、何と衝撃の一文が。

「個人的な話ですが、私は現在、肝臓がんの治療中です。それが理由ともなっているのでしょうが、私がもっとも強く願っているのは(中略)単純に、選手の健康だけです」

え・・・残りあと10ページというところで、意外な展開に・・・。

高山さんは、この平昌五輪、羽生選手のあの「金」の演技をご覧になったでしょうか?女子の2人の、そのほかの国の出場選手の奮闘も、ちゃんと見届けてほしいです!


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(2018、2、17読了)

2018年2月24日 10:08

新・読書日記

『 世界を動かした偽書(フェイク)の歴史』(中川右介、KKベストセラーッズ:2018、1、25)

著者の中川さんから贈呈していただきました。ありがとうございます。

読んでいる途中で、なぜ中川さんがこの本を今、出したのか?に思いをはせた。

たぶん・・・今の日本が...世界が「フェイク」に満ちているからではないか。本物が世界を動かすのではなく、「偽物・フェイク」が世界を動かす。過去にもそういったことがあった。「今の世の中、おかしい!」と思っている人たちに、

「確かにおかしいが、おかしいことが起きるのが『リアルな世の中』なのだ」

と、現状を客観的に評価して、肯定するわけではないが、

「あるものは、ある」

という姿勢を示しているのではないかな?と思った。

「あとがきにかえて」を読むと、2011年に「24」の「偽書」を紹介する本を出したことがあり、それに「5編」追加して「29編」にして出したのが本書だと。やはり、

「フェイクに満ち満ちた今の世の中は、おかしい」

という思いが動機のようだ。そしてその「あとがきにかえて」は、

「三十番目のフェイク」

というタイトルが付いている。著者曰く、

「昭和三十年代生まれは、偽書に育てられた世代なのだ。その世代が、こんにちのフェイク社会のベースを作ったという見方もできる。かつてUFO同乗記に夢中になった中学生のひとりとして、偽書が信用されてしまうメカニズムについて、少しでも多くの方に知っていただきたいと、あらためて思う。」

私は子どもの頃、あまりUFOとかにはハマらなかったんですが、世の中には人のいい、すぐに信用してしまう人が、たくさんいるんだなあと、改めて思いました。


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(2018、2、13読了)

2018年2月22日 23:59

新・読書日記 2018_018

『ユニクロ潜入一年』(横田増生、文藝春秋:2017、10、25)

体験型ルポルタージュの労作。「週刊文春」で連載された者をまとめた本。

基本、良い人だなと思う。

「ユニクロ」がブラック企業なのか?これを読んだだけでは、何とも言えない。

読んで、感じられた、分かったことは、ユニクロにおける創業者・柳井さんの力が絶大であり、柳井さんがワンマン経営者であるということ。でもそれが、即ブラック企業になるかというのは、疑問である。

しかし、ユニクロでの働き方、また働いている人たちの事情はよく分かったので、そういう意味で貴重な一冊だと思う。


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(2018、1、30読了)

2018年2月23日 08:56

新・ことば事情

6714「吃驚」

2月21日、俳優の大杉漣さん(66)が急死されました。驚きました・・・。

その翌日22日の「ミヤネ屋」の放送で、タレントの東国原英夫さんが出したツイッターのコメントの「吹き替え」をしてくれと、Sディレクターに頼まれました。そこには、こう書かれていました。

「吃驚(きっきょう)」

きっきょう?

たしかに「音読み」したら、そう読めなくはないけど、言わないでしょ、そんな発音の言葉。これどう考えても、

「びっくり」

と読むに違いないですから、そう指摘したのですが、

「でも・・・」

とネットを検索して、

「吃驚(きっきょう)」

という表記を見せて来ます。

「じゃあ『びっくり』で変換してみろよ、出るから」

とやらせてみると、果たして、

「吃驚」

が出て来ました。Sディレクターは「吃驚」していましたが。

これを「きっきょう」と読んでいたら、私が恥を書くところでした。

追記)

川崎市の西尾さんからメールを頂きました。

『こんにちは。川崎の西尾です。

「吃驚」を「びっくり」と読むことは知っていましたが(たぶん夏目漱石あたりを読んで)、

「きっきょう」が本来の読みだと思っていました。漢語か和製語かは知りませんけど。

手もとの国語辞典には、一部を除いて「きっきょう」と「びっくり」の両方が載っています。「きっきょう」の用字は「喫驚・吃驚」の順で、「びっくり」はなぜか「吃驚・喫驚」の順です。「喫」は「吃」の代用字ですね。吃水→喫水など。

いずれにしても、「きっきょう」は書き言葉専用で、口語では使わないことばかと思います。

以下、見出し語のみ抜粋です。(表外字・表外読みの記号は省略)

・『広辞苑』(第七版)

 きっ-きょう【喫驚・吃驚】<略>

 びっくり ①(当て字で「吃驚」「喫驚」と書く)<略>

・『新明解国語辞典』(第七版)

 きっきょう【喫驚・吃驚】<略>

 びっくり【吃驚・喫驚】<略> [表記]「吃驚・喫驚」は、近代文学からの用字。

・『明鏡国語辞典』(第二版)

 きっ-きょう【喫驚・吃驚】

 びっくり <略> [表記]「吃驚」「喫驚」とも当てる。

・『小学館現代国語例解辞典』(第五版)

きっ-きょう 喫驚(吃驚)

びっくり(吃驚・喫驚)

・『三省堂現代新国語辞典』(第五版)

 きっきょう【吃驚】《喫驚》<略> [文章語]

 びっくり <漢字表記なし>

・『三省堂国語辞典』(第七版)

 きっきょう <見出し語なし>

 びっくり[吃驚・喫驚]<略> 

・『岩波国語辞典』(第七版)

 きっきょう【喫驚】<略> 

 びっくり <略> ▽「喫驚」「吃驚」とも書いた。

西尾さん、詳しく調べてくださって、ありがとうございます!

(2018、3、5)


(2018、2、22)

2018年2月23日 14:16

新・ことば事情

6713「ほけぶ」

2月17日(土)の午後4時前、車の中で「NHKラジオ第一放送」を聞いていたら、大阪放送局の吉田アナウンサーが読んでいたニュースと天気予報が気になりました。

彼の発音は、「近畿北部」の「北部」が、

「ほけぶ」

に聞こえるのです。またその前に出て来た、

「近畿地方」

が、「母音の無声化」もできていませんでした。「母音の無声化ができないこと」も、「ほけぶ」と聞こえる発音に影響しているのかもしれません。後輩で元・読売テレビの清水健・元アナウンサーの発音と似ていました。

また、「8Kテレビ」での五輪観戦というPRのようなニュースで

「大画面テレビの、きめ細やかな画面と」

という原稿を読んでいましたが、これは、「きめ細やか」ではなく、

「きめ細かな画面」

なのではないでしょうか。「きめ」=「肌理」ですが、これは「細かい」ですよね。

「細やか」

は、「気遣い」「気配り」などに使います。つまり、原稿の文章に、

「細やかさ」

が足りないように感じたのでした。

(2018、2、22)

2018年2月23日 10:14

新・ことば事情

6712「映画上映前の気になる言葉」

この1か月、結構、映画にはまっています。1月30日から2月21日までで、映画館で5本見ました。これは私にしては、ハイペースです。見た映画は、

「花筐(はながたみ)」、「スリー・ビルボード」、「ペンタゴン・ペーパーズ」(試写会)、

「デトロイト」、「クレイテスト・ショーマン」

の5本です。

映画館で映画を観る前には予告編や広告や上映中の注意など、映画本編に行くまでに、たくさんの他の映像を見ることになります。その中で「気になる言葉」を見つけてしまいます。きのう見た『グレイテスト・ショーマン』の上映前に気づいた点は、TOHOシネマズの会員勧誘のコメントで、

「たくさんの映画が公開します」

「映画の情報が満載」

が気になりました。これは、

「たくさんの映画を公開します」または「たくさんの映画が公開されます」

「映画の情報を満載」

なのではないでしょうか?(「映画の情報が満載」は「許容」かもしれませんが。)

また予告編では、ソフィア・コッポラ監督の『ビガイルド~欲望の目覚め』の宣伝のナレーションで、

「傷ついた女の園に」

「園」のアクセントが、

「ソ\ノ」

「頭高アクセント」になっていたのが気になりました。

これは「平板アクセント」で、

「ソ/ノ」

ではないでしょうか?

先日も、同じく「TOHOシネマズ」の会員カード勧誘のナレーションと文字で、

「旬な映画」

というのが出て来ました。これも本来は、

「旬の映画」

なのではないのかなあ?気になって本編の映画に集中できない・・・・というほどではありません。

(2018、2、22)

2018年2月22日 23:12

新・ことば事情

6711「半円形のアクセント」

2月21日の日本テレビ「スッキリ」で、森圭介アナウンサーが、平昌五輪のスノーボード・ハーフパイプの会場の説明で

「半円形」

のことを、

「ハ/ン・エ\ンケー」

と発音していたのですが、これは、

「ハ/ンエンケー」

「平板アクセント」が正しいのではないか?と思って『NHK日本語発音アクセント新辞典』を引くと、やはり思った通り「平板アクセント」しか載っていませんでした。

森アナウンサーぐらいの中堅・ベテラン(40歳前後)アナウンサーで「半円形」という言葉になじみがないのかと、驚きました。

最近、言わないのかなあ?「半円形」は。

(2018、2、22)

2018年2月22日 22:10

新・ことば事情

6710「『借りがある』か?『貸しがある』か?」

「ミヤネ屋」のYディレクターが質問して来ました。

「道浦さん、前の試合のリベンジをしたい場合には、『あいつには借りがある』ですか?それとも『あいつには貸しがある』ですか?」

「そりゃあ、『借り』だろう。返さなくちゃならないんでしょ?つまり『お返ししてやる』わけだから『借り』ですよ。『貸し』だったら、『返してもらわなきゃいけない』から、ちょっと『八百長』とかさ、そんな話になっちゃうよ」

ということで、一件落着!

(2018、2、22)

2018年2月22日 20:10

新・ことば事情

6709「了解しました」

「了解しました」

という言葉は「敬意が足りない」ので、

「承知しました」

と言うべきだ、などと、よくビジネスマナー本などに書かれているようです。

「承知しました」は「承(うけたまわ)る」という漢字が入っているので「へりくだっている感じ」が強いのでしょう。それに対して「了解しました」の「了」「解」には「謙譲」のニュアンスが無いということなのでしょうね。

しかし『三省堂国語辞典』編纂者の飯間浩明さんは、

「そんなことはない」

とこれを否定しています。

私も委員として出席している「新聞用語懇談会・放送分科会」では現在、2004年に出された『放送で気になる言葉・敬語編』の改訂作業を行っているのですが、その中でもこの話が出ました。

そんな最中、たまたま読んでいた『隠蔽捜査7 棲月(せいげつ)』(今野敏)という警察物の小説の中に、

「了解しました」「わかりました」

といった返事がたくさん出て来るのに気付き、ピックアップしてみました。

主人公は警察庁のキャリアなのに左遷されて「大森警察署長」を務めているハードボイルドな「竜崎署長」です。ここで取り上げた言葉は全て「竜崎署長」に対するものです。

(ページ)  (言葉)    (話者)      (対面?電話★?)

18  わかりました   貝沼副署長       対面

19  わかりました   笹岡生安課長      対面

39  わかりました   笹岡生安課長      対面

42  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

45  承知しました   斎藤警務課長      対面

45  承知しております 風間サイバー課長   ★電話

61  了解しました   関本刑事課長      対面

67  了解しました   斎藤警務課長     ★電話

69  わかりました   笹岡生安課長     ★電話

84  わかりました   風間サイバー課長   ★電話

89  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

90  わかりましたよ  風間サイバー課長   ★電話

90  わかりました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

91  わかりました   関本刑事課長     ★電話

97  了解しました   関本刑事課長      対面

97  わかりました   貝沼副署長       対面

99  わかりました   岩井管理官       対面

105  了解しました   関本刑事課長     ★電話

106  わかりました   田端捜査一課長     対面

123  了解です     関本刑事課長     ★電話

157  了解しました   根岸少年課係員    ★電話

159  了解しました   根岸少年課係員     対面

159  了解です     岩井管理官       対面

162  了解しました   岩井管理官       対面

206  承知しました   貝沼副署長       対面

214  了解しました   根岸少年課係員     対面

226  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

264  了解しました   戸高強行犯係

&根岸少年課係員    対面

264  了解です     岩井管理官       対面

264  わかりました   根岸少年課係員     対面

292  了解です     田鶴サイバー対策課員 ★電話

303  了解しました   岩井管理官       対面

309  了解しました   伝令に来た捜査官    対面

これを「わかりました」「了解しました」「了解です」「承知しました」で、分けてみます。

*「わかりました」=12回

18  わかりました   貝沼副署長       対面

19  わかりました   笹岡生安課長      対面

39  わかりました   笹岡生安課長      対面

69  わかりました   笹岡生安課長     ★電話

84  わかりました   風間サイバー課長   ★電話

90  わかりましたよ  風間サイバー課長   ★電話

90  わかりました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

91  わかりました   関本刑事課長     ★電話

97  わかりました   貝沼副署長       対面

99  わかりました   岩井管理官       対面

106  わかりました   田端捜査一課長     対面

264  わかりました   根岸少年課係員     対面

*「了解しました」=14回

42  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

61  了解しました   関本刑事課長      対面

67  了解しました   斎藤警務課長     ★電話

89  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

97  了解しました   関本刑事課長      対面

105  了解しました   関本刑事課長     ★電話

157  了解しました   根岸少年課係員    ★電話

159  了解しました   根岸少年課係員     対面

162  了解しました   岩井管理官       対面

214  了解しました   根岸少年課係員     対面

226  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

264  了解しました   戸高強行犯係

&根岸少年課係員    対面

303  了解しました  岩井管理官       対面

309  了解しました   伝令に来た捜査官    対面

*「了解です」=4回

123  了解です     関本刑事課長     ★電話

159  了解です     岩井管理官       対面

264  了解です     岩井管理官       対面

292  了解です     田鶴サイバー対策課員 ★電話

*「承知しました」=2回

45  承知しております 風間サイバー課長   ★電話

206  承知しました   貝沼副署長       対面

これによると、

  1. 了解しました =14回

  2. わかりました =12回

  3. 了解です   = 4回

  4. 承知しました = 2回

という頻度になりました。

次に「対面」か?「電話」か?で分けて見ます。

*対面

18  わかりました   貝沼副署長       対面

19  わかりました   笹岡生安課長      対面

39  わかりました   笹岡生安課長      対面

45  承知しました   斎藤警務課長      対面

61  了解しました   関本刑事課長      対面

97  了解しました   関本刑事課長      対面

97  わかりました   貝沼副署長       対面

99  わかりました   岩井管理官       対面

106  わかりました   田端捜査一課長     対面

159  了解しました   根岸少年課係員     対面

159  了解です     岩井管理官       対面

162  了解しました   岩井管理官       対面

206  承知しました   貝沼副署長       対面

214  了解しました   根岸少年課係員     対面

264  了解しました   戸高強行犯係

&根岸少年課係員    対面

264  了解です     岩井管理官       対面

264  わかりました   根岸少年課係員     対面

303  了解しました   岩井管理官       対面

309  了解しました   伝令に来た捜査官    対面

*電話

42  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

45  承知しております 風間サイバー課長   ★電話

67  了解しました   斎藤警務課長     ★電話

69  わかりました   笹岡生安課長     ★電話

84  わかりました   風間サイバー課長   ★電話

89  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

90  わかりましたよ  風間サイバー課長   ★電話

90  わかりました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

91  わかりました   関本刑事課長     ★電話

105  了解しました   関本刑事課長     ★電話

123  了解です     関本刑事課長     ★電話

157  了解しました   根岸少年課係員    ★電話

226  了解しました   田鶴サイバー対策課員 ★電話

292  了解です     田鶴サイバー対策課員 ★電話

これは、あまり差が出ませんでしたね。

そして、「話者別」に分けてみます。

*貝沼副署長

18  わかりました    対面

97  わかりました    対面

206  承知しました    対面

*笹岡生安課長

19  わかりました    対面

39  わかりました    対面

69  わかりました   ★電話

*田鶴サイバー対策課員

42  了解しました   ★電話

89  了解しました   ★電話

90  わかりました   ★電話

226  了解しました   ★電話

292  了解です     ★電話

*斎藤警務課長

45  承知しました    対面

67  了解しました   ★電話

*風間サイバー課長

45  承知しております ★電話

84  わかりました   ★電話

90  わかりましたよ  ★電話

*関本刑事課長

61  了解しました    対面

91  わかりました   ★電話

97  了解しました    対面

105  了解しました   ★電話

123  了解です     ★電話

*岩井管理官 

99  わかりました    対面

159  了解です      対面

162  了解しました    対面

264  了解です      対面

303  了解しました    対面

*田端捜査一課長 

106  わかりました    対面

*根岸少年課係員

157  了解しました   ★電話

159  了解しました    対面

214  了解しました    対面

264  了解しました    対面

264  わかりました    対面

*戸高強行犯係

264  了解しました    対面

*伝令に来た捜査官

309  了解しました    対面

まあ小説なので、すべてセリフは、著者の今野敏さんが書き分けているのだけれども、その際にキャラクターごとに、使い分けをしていると思うのですね。

「副署長」と「生安(生活安全)課長」は「わかりました」が多く、下っぱの部下のほうが、「了解しました」をよく使っているようです。「岩井管理官」は「了解です」を2回、使っています。

しかし、「了解しました」が、それほど「敬意を欠いた言葉」だとは思えないのですが、いかがでしょうか?

(2018、2、20)

2018年2月22日 18:08

新・ことば事情

6708「人造」

最近目に・耳にしなくなった言葉に、

「人造」

があるのではないでしょうか?

「人造ダイヤ」「人造湖」「人造真珠」

そして、なんと言ってもやはり、

「人造人間(キカイダー)」

ではないでしょうか?まあ、40代以下の方には、あまりわからないのかも。たしか石ノ森章太郎さんですよね。

「人造」はたぶん「人工」に置き換えられてしまったのでしょう。

グーグル検索では(2月20日)、

「人造」=4960万件

「人工」=7180万件

でした。

(2018、2、20)

2018年2月22日 15:07

新・ことば事情

2018年2月20日 18:49

新・ことば事情

6707「家具調」

最近耳に、目にしない言葉に

「家具調こたつ」「家具調テレビ」「家具調エアコン」

などの形容で使われた、

「家具調」

があります。「家具調」の電化製品の色は、

「茶色=木の色」

です。今なら、

「アースカラー」「エコカラー」

など「横文字」で呼ばれるところでしょうね。

「ウィキペディア」で「家具調」を検索すると、

『家具調(かぐちょう)とは、デザインの一つの呼称。天然木もしくは化粧合板などによる木目調が用いられるのが特徴。』

とありました。

そういった電化製品が「家具調」だったのは、そういった電化製品を収める家が、

「木造の家だったから(内装も)」

でしょう。つまり、昆虫などの、

「保護色」

のようなものが「家具調」だったのではないでしょうか?

しかし、だんだん団地やアパート・マンションなど「鉄筋コンクリートの家」に住む人が増えて、

「その内装が白くなってきた(壁紙が白)」

ことで、家具の色も「家具調」はそぐわなくなってきた。

壁(紙)と一体化のエアコンは「白く」なり、壁紙と一体化しないテレビなどは、白の反対色(かな?)の「黒く」なってきたのではないでしょうか?

また、一軒家の「木造の家の内装」も、最近は「白く」なってきているのではないでしょうか?

結局、「器」である「家の形態」が、そこに収まる「家具」の「形や色」を規定することになって来るのですね。「国のかたち」も同じかな?

(2018、2、20)

2018年2月20日 18:49

新・ことば事情

6706「遺体を『遺棄した』か?『捨てた』か?2」

「平成ことば事情6669遺体を『遺棄した』か?『捨てた』か?」の続編です。

2月9日の新聞用語懇談会放送分科会で、各社はこの言葉をどう使っているのか、使っていないのかを、お聞きしました。各社の回答は、以下の通りです。

(テレビ朝日)「遺体を捨てる」という表現は「生々しい」ので、「遺棄した」を使うことが多い。「埋めた」「放置した」「捨てた」は、全て「遺棄した」で示せるので便利な表現でもある。

(MBS)2008年~2010年頃に報道局で「遺体を『捨てた』は生々しいので、遺族感情に配慮して、『捨てた』を使わずにあえて『遺棄』を使うように」と、TBSと系列で話し合って統一した。

(TVO)ルールでは決めていないが、2014年以降は「捨てた」が結構多かったが、2016年~2018年は「9件」と少なかった。「捨てた」は「供述内容」のカギカッコ内に多かった。ベテランのデスクは「以前は『イキ』は聞き取りにくいので、『捨てた』を使っていた」と話していた。

(NHK)原稿検索では、現在はほとんどが「遺棄した」だった。「捨てた」は、「死体を入れたバッグを捨てた」という「1件」ぐらいだった。

とのことでした。

たしかに「捨てた」は「生々しい」表現ではありますが、「イキシタ」と、あえて「わかりにくくする」というのは、私個人としては、納得できない感じがしました。

(2018、2、16)

2018年2月19日 20:57

新・読書日記 2018_017

『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅、柏書房:2017、12、10)

いわゆる「伝統」と呼ばれる日本のもの・ことどもは、一体いつから始まったのか?を調べた本。なぜ、そんなことをするのか?と言えば、

「日本の伝統」

と呼ばれるものの歴史が、意外と短いものがある(多い)ということを明らかにするため。つまり、「ニセモノの伝統」の正体を暴)あば)くためだ。「伝統」の名の下に、非合理的なことを押し付けられることが嫌いな人は読むと良い。

でも、3世代=100年続いたら、もう「伝統」と呼んで良いとは、私は思いますけどね。

アメリカなんか、たかだか240年くらいしか、国の歴史がないんだよ。

以前「老舗」は「何年たったら、そう呼ぶか?」について調べたり書いたことがありますが、それに通じますね。

このタイミングでの出版は、「ニセモノ(フェイク)の伝統」が溢れ返って、「ニセモノ」が支配する世の中の空気への反発・抵抗ではないかと感じました。


star4

(2018、2、8読了)

2018年2月17日 15:49

新・読書日記 2018_016

『かけ算には順序があるのか』(高橋誠、岩波科学ライブラリー180:2011、5、26第1刷・2011,11,15第4刷)

問題です。

「6人に4個ずつ、ミカンを配ります。式を書きなさい」

皆さんはどう書きますか?「6×4」?「4×6」?

今、小学校では、

「1つ分の数×いくつ分の数」

という順序で書くことになっているそうです。つまり、

○「4×6」

×「6×4」

なのだそうです。これは、

「4個ずつ6人に配る」

から「4×6」が正解。でも、「4個まとめて配る」のではなく、トランプのカードを配るように、

「6人に1個ずつ、4周(4回)にわたって配る」

と考えると、

「6×4」

ではないのか?つまり、考え方によって「どちらも正解」では?そもそも「答え」は、どちらも「同じ」なんだし。

ところが、小学校の現場では、そういう教え方はしないのだと。おかしいじゃないか!

・・・という疑問に答えるのが本書です。

でも、読み終わっても、なんかしっくり来なかったなあ・・・。


star3

(2018、2、4読了)

2018年2月16日 20:48

新・ことば事情

6705「ゴールマウス」

2月9日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で関西テレビの委員から質問が出ました。

『「ゴールマウス」という言葉について、フジテレビ系列の「用語ハンドブック」では、「ゴールエリアまたはゴール前の守備側にとって危険なエリア。「ゴール」は含まない。『ゴールマウスに吸い込まれる』は誤り」と記されている。しかし「ゴールそのもの」を指すことを認めている系列も少なからずあるようで、完全に「誤用」とは言い切れないのではないか?という意見がアナウンサーの間から出ているが、各社はどのように対応しているか?」

これに対する各社の回答は、以下の通りです。

(NHK)複数のスポーツアナウンサーに聞いてみたところ「この言葉は使わない、使ったことがない」とのこと。「ゴールマウス」は「ゴールの正面・周辺」を指すので、「ゴールそのもの」を指すときは「ゴール」と言えば良い、とのこと。

(日本テレビ)スポーツアナウンサーが実況ではあまり使わない。短いスポーツニュースでは出てくる。「ゴールそのもの」は含まれないの「ゴールマウスに吸い込まれる」は「×」。

(テレビ朝日)定義なし。スポーツアナウンサー2人に聞いたところ「(ゴール周辺の)空間を指す」と。しかし「ゴールマウスに吸い込まれる」は使っている。日本サッカー協会に問い合わせたところ、「ゴールマウス」は基本的に使っていないので、用語ブックには載せていないと。「ゴールマウス」は「ゴールの前の地面」のことだと、元・日本サッカー協会会長の故・岡野俊一郎氏が力説していた。シュートが「ゴールマウスに飛んだ」は「ワクに飛んだ」と言えば良い。

(TBS)用語ハンドブック等には書いていないが、スポーツ担当アナウンサーに聞いたところ「『ゴールそのものを指してゴールマウス』『ゴールマウスに吸い込まれる』という表現は、決してあり得ない!」と強い口調で言われた。日本サッカー協会が、昔そういう趣旨のことを書いた紙を配ったように思う、と。しかし、短いスポーツニュースでは、使っていたのかもしれない。徹底されているかどうかは、わからない。

(テレビ東京)Jリーグができて2~3年後頃に、サッカー用語の勉強会をやった。その際に「センタリング→クロス」「グラウンド→ピッチ」などの用語の説明があった。

(フジテレビ)サッカー実況担当のベテランアナウンサーに聞いたところ、「ゴールマウスは、ゴールそのものではない。しかし範囲は、あいまい。故・岡野元会長も「『ゴールマウス』は『ゴールそのもの』ではないということを強調してほしい」と常々口にしていたと。

(テレビ東京)「ゴールマウス」という表現は、あまり使わない。「ゴールそのもの」だと思っているアナウンナーも混在している。故・岡野元会長は、金子勝彦アナウンサーとの対談でも「ゴールそのものではない」と言っている。

(ABC)「ゴールマウス」=「ゴールのワク」の意味では使わない。

(MBS)若いアナウンサーは「ゴール」=「口」に見えることから「ゴールマウス」=「ゴールそのもの」と思っていた。

(ytv)ベテラン元スポーツアナは「個人的には、『エリア』という認識より、『ゴールの枠を含み得点とされるネットまでを意味している』とばかり思っていました。『ゴールマウス』は『ゴールの枠』が『口腔』をイメージした表現かと。今回の『手前のエリア』というのは『?』です」という意見や、現役のベテランスポーツアナウンサーは、「かつては、ゴールマウス=ゴール枠(ポスト+クロスバー)のイメージで使っていた時代もありました。しかし、最近は用語の整備がJリーグ主導で進んできたことと、日本テレビ・高校サッカー担当アナによる用語整備も進み、『ゴールマウス』という用語自体を使わない方向に進んでいます。『ゴールマウス』が示す意味が曖昧なことが理由です。」

とのことだった。

(TVO)元・NTV系列で高校サッカーの実況もやったが、昔は『ゴールマウス』という言葉自体なかった。若いアナウンサーが「ゴールマウス」を使うのでは?当初は「エリア」を指していたが、最近はGKなど選手自体が「ゴール」の意味で「ゴールマウス」を使うのではないか?

(時事通信)使用例はほとんどなかったが、「ゴールマウスに吸い込まれた」という記事はあった。2002年5月15日に配信した記事で「(日本サッカー)協会がガイドライン」という見出しがある。ここでは「ゴールマウス=枠ではなくエリア」とされているが、「強制するものではないが、協力を要請したい」と記されていた。

(共同通信)混乱している。「ゴールマウスに吸い込まれた」「ゴールマウスを破ることはできなかった」という記事も出てくる。英語の辞書の表記も混乱しているようで、「ゴールマウス」は『ジーニアス英和辞典』では「ゴールポスト」、『オックスフォード英英辞典』『コンコルド英英辞典』『リーダース英英辞典』は「エリア」になっていた。運動部は「ゴールマウス=エリア」という立場で、今後は「ゴールマウスに吸い込まれた」は「×」とする。

ということで、各社あまり「ゴールマウス」という言葉は「使わない」という傾向のようです。目にしたり耳にしたりすることはありますけど。「ゴールそのもの」のことではなかったのですね。

(2018、2、16)

2018年2月19日 11:46

新・ことば事情

6704「後遺症が残る2」

「平成ことば事情6655後遺症が残る」の続編です。

「後遺症が残る」という言葉は、

「『遺』と『残る』が『重複』ではないのか?」

という問題です。ついでに、

「クリスマスイブの夜」

についても、「重複かどうか」を、2月9日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で質問しました。各社の回答は、以下の通りです。

(NHK)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」は問題がある。重複表現。

(日本テレビ)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」共に重複表現であると「日テレEYE」に書いてある。「イブ=前夜」「遺=残」だと。しかし、実際には使っているケースがある。「クリスマスイブの夜に残業していいのは、サンタだけ」など。原則、「×」。「後遺症が残る」→○「後遺症がある」に換える。

(テレビ朝日)「後遺症が残る」は重複語ではない。かなり出てくる。「クリスマスイブの夜」は、できれば避ける。

(TBS)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」とも「重複」とハンドブックには明記しているが、特にラジオのCM原稿でスポンサーから言われたら「イブの夜はAKSAKASAKAS(赤坂サカス)にレッツゴー!」などとなっていても、そのまま読む。ディレクターに「これは『重複』だよ」と指摘して、理解してもらったら直す。

(フジテレビ)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」ともハンドブックには載っていない。「後遺症が残る」は原稿検索で出て来なかった。「クリスマスイブの夜」は重複なのでダメだが、「クリスマスイブのきょう」というのは出てくる。これは直しにくい。

(テレビ東京)両方、明確な取り決めはない。原稿検索では「後遺症が残る」は「健康ネタ」を中心にたくさん出て来た。「クリスマスイブの夜」は2件。「イブにテロがあった」というものだった。

(ABC)両方、ルールはない。今後、注意する。「イブ」=「前夜」だが、欧米では、実は「24日の日没から、既にクリスマス」なので、ややこしい。最近若者の間では「イブイブ」という言葉も使われているが・・・。

(ytv)京都の祇園祭にも「宵々山」が、昔からある。

(MBS)「後遺症が残る」は、重複感が薄いので、結構出て来るし、それほど厳しく「ダメ」とは言っていない。「クリスマスイブの夜」は、アナウンサーには厳しく「重複だからダメ」と言うが、タレントさんなどには言わない。

(TVO)「後遺症が残る」は原稿で使っていた。「クリスマスイブの夜」は原稿検索では2件ぐらい。フリートークで「あしたはイブ」などは許容、使うだろう。ドイツ人と結婚した知り合いに聞くと、ドイツでは厳密に「12月24日の日没から25日にかけてイブ」で「イブの日はお休み」などと使っているそうだ。

(KTV)「後遺症が残る」は普通に使っている。原稿検索でも100件あまりあり、重複感がない。「残された遺族」「残された遺書」なども重複感がなく使う。「イブの朝」も「(クリスマス)イブの夜」も言わずもがなで、ダメ。

(時事通信)「後遺症が残る」は使っている。「クリスマスイブの夜」は出て来ないが、出て来たらチェックする。

(共同通信)「後遺症が残る」は「重複」だと、加盟社から指摘を受けたことはある。しかし、「地下鉄サリン事件」や「和歌山毒入りカレー事件」など「薬物事件」関係では、「後遺症が残る」を使わざるを得ないことがある。「遺書を残す」「遺産を残す」は使う。「クリスマスイブの夜」に関しては、「イギリスでは、12月24日そのものを『クリスマスイブ』と言う」と書かれた辞書もある。必ずしも「重複表現」とは考えていないので、「クリスマスイブの夜」も使っている。

つまり、

「後遺症が残る」は「重複」だとして使わないとしている社は、

×「NHK・日本テレビ・TBS」

・「重複ではないので使う」という社は、

○「テレビ朝日・MBS・テレビ大阪・KTV・時事通信・共同通信」

・「特にルールはない」という社は、

△「フジテレビ・テレビ東京・ABC」

一方で、

「クリスマスイブの夜」は「重複」だとして使わないようにしている社は、

○「NHK・日本テレビ・TBS・テレビ朝日・MBS・KTV・時事通信」

・「特にルールはない」という社は、

△「フジテレビ・テレビ東京・ABC・テレビ大阪・共同通信」

ということでした。

(2018、2、16)

2018年2月18日 18:45

新・ことば事情

6703「生き様」

2月9日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会でMBSの委員から質問が出ました。

『「死にざま」の転用で「生き様」という表現が多くみられるが、各社はこの言葉をどのように扱っているのか?』

というのです。というのも、

『最近は主な辞書でも「生き様」は記載されており、これだけ日常で使われると当然のことかとは思う。しかし、

「生き方」「生きよう」

などと言い換えが可能ではないかという意見と、日常用語で違和感がないのであれば放送でも可であろうという意見がある。弊社用語ハンドブック(2009年改訂版)では、

『人の過ごしてきたひどい生き方のこと。他人に使うと失礼になる。』

とあり、『広辞苑』には「ぶざまな生き方」とあり、番組で使われたような褒めことばとしてはそぐわないと考える。現在、ハンドブックの改訂作業中なので、各局の実情を聞いて参考にさせていただきたい」

と言うことだそうです。ちなみに、先日番組で、

「星野仙一の生きざま」

とスーパーしてしまった。』

これに対する各局からの回答は、以下の通りです。

(NHK)特に「使ってはいけない」とはしていない。用語委員会でも専門の先生方から「違和感がある」と言われることがあるので、乱用はしない。しかし、定着しつつある言葉。「生き方」に置き換えられるときは置き換えるが、そのまま「生きざま」としたほうが良い場合もある。

(日本テレビ)原稿検索では、「NN24」の原稿で「己の生きさまを貫いて」「憧れの女性の生きざま」などと出て来た。アナウンス部で聞いたら「若手アナウンサーには『他人に使うのは注意するように』と言っている」とのことだった。

(テレビ朝日)ニュース部門、アナウンサーに聞いたところ、特にルール化はしていない。議論にも上っていないとのこと。

(TBS)「使ってはいけない」言葉の中には入っていない。本人が言うのは良いが、ナレーションなどで他人に使うのは、違和感があるという声が多かった。「人生」「生き方」に置き換えるべきだろう。

(フジテレビ)原稿で出て来るのは、インタビューか「カギカッコ」の中の引用文だった。映画の内容説明の原稿や、スポーツの企画モノにはたくさん出て来た。ダメだとも言い切れないが、「地の文」にはあまり出て来ない。

(テレビ東京)原稿検索では20件出て来た。ほとんどは「引用」で「生きざまを見せていた」というものも。

(ABC)決まりはない。何人かに聞いたところ、日常語としては違和感なし。

(KTV)報道の原稿では、結構出てくる。「死にざま」はほとんど出て来ない。弊社では、「生きざまJAPAN」という番組もあった(もう放送は終わったが。)一応「使ってはいけない」とはしているが、若手が使ったら「本当は、こうだよ」と教える。

(TVO)ニュース原稿ではゼロ。フリートークでは出て来るが「生き方」「人生」に、できるだけ言い換える。自らも「生きざま」は使わない。

(時事通信)規定はない。1年に数件、出てくる。直接引用か、スポーツの軟らかいネタで出て来る。

(共同通信)昔から「使っていいのか?」という質問が来る。2014年の加盟社の校閲部長会議で、「許容している」と答えた。『明鏡国語辞典』でも語釈で採用している。星野仙一さんのように「型破りな人」の場合は「生きざま」が使われる傾向にある。

私も調べたことを発表しました。

(ytv)出て来ても、そのまま放送することが多い。MBSさんは「『広辞苑』には『ぶざまな生き方』とあり」と書かれていますが、調べて見たところ、たしかに『広辞苑』の「第6版」にはそう書かれていたが、最新の「第7版」では、

「ぶざまな」→「独自の」

に代わって「マイナス評価」がなくなっていた。また、『新明解国語辞典』は、編集主幹の山田忠雄さんがご存命の「第4版」(1992年)では、

「『ざま』は『様』の連濁現象によるもので、『ざまを見ろ』の『ざま』とは意味が違い、悪い寓意は全く無い。一部の人が上記の理由でこの話を嫌がるのは、全く謂(いわ)れが無い」

と記しているほか、「第7版」(2012年)でも同様に記述になっている。また「死にざま」も、

「この語自体には善悪の評価は全くない。善悪の観点が分かれるとしたら、その人が往生したか醜い死に方をしたかの相違があるだけである」

と記されている。

という発表でした。「生き様」は、各社「許容」の方向のようですね。

(2018、2、16)

2018年2月18日 12:44

新・ことば事情

6702「伸ばす『-』の表記」

さて問題です。

放送ではどちらの表記を使うでしょうか?

(1)「エレベータ」 (2)「エレベーター」

正解は(2)の「エレベーター」。つまり、語尾を「―」で伸ばして表記します。

「パーティー」「バラエティー」「ファーストレディー」なども語尾を「-」で伸ばします。これが「原則」です。しかし、ふた昔前ぐらいまでは(1)のように伸ばしませんでした。現在でも「JIS規格」では伸ばさないので、「電気製品(工業製品)の説明書」などでは、こういった語尾を伸ばさない、

「プロパティ」「コンピュータ」

といった表記を見ることができるでしょう。

では、第2問。次のアメリカの地名の表記は、放送ではどちらを使いますか?

(1)「ソルトレイクシティ」(2)「ソルトレークシティー」

これも正解は(2)「ソルトレークシティー」です。これはポイントが「2つ」あります。1つ目は、最初に書いたように語尾は「ー」で伸ばすので「シティー」になります。2つ目は、「二重母音」は「-」で表記するので「レイク」ではなく「レーク」になるのです。

「メーク」「メーン」

なども同様です。

では最後に、第3問。平昌(ピョンチャン)五輪の放送で、イナバウアーで有名な、

「荒川静香さんの肩書」

は、どちらを使いますか?

(1)「メインパーソナリティー」(2)「メーンパーソナリティー」

正解は(1)です。

先ほどの「原則」から言うと「メイン」ではなく「メーン」になるんですが、これは、

「日本テレビの五輪番組としての表記」

つまり「固有名詞」と考えて「メイン」とします。

「24時間テレビ」の「メインパーソナリティー」も同様の考え方です。

ちなみに、日本テレビでも、報道のニュースで「メーン」が出て来る場合は「-」で引っ張ります。これは放送局によって違って、たとえばNHKは「メイン」を使っています。

また、二重母音でも「雨」の「レイン」は「イ」を使い、車線の「レーン」は「-」を使うというように使い分けているものもあります。

ああ、ややこしい。少しずつ覚えていくように、スタッフにメールしました。

(2018、2、16)

2018年2月17日 19:35

新・ことば事情

6701「『的を得る』か?『的を射る』か?」

2月9日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、TBSの委員から出た質問です。

『辞書では、「『的を得る』は誤り」「誤って『的を得る』と使われることがある」など、複数で「誤り」としている。一方、「当を得る・要領を得る・時宜を得る」と同様、「得る」は「うまく捉える」の意だとして、認める辞書が複数あり、また、実際に使われてもいることから、「放送で『的を得る』と言ったところで、ただちに誤りとするものではない。」とする動きが出ている。各社はいかがか。同様に『的を得る』を認めている社があれば、放送でアナウンサーはどのように対応しているのか?研修などでどのように教えているのか、お聞かせいただきたい。』

これに対する各局の回答は、以下の通りです。

(NHK)認めていない。ただ、少し古いデータだが、1996年の文研「ことばの揺れ調査」では、「的をエル」=49,4%、「的をイルる」=32,1%と、間違いとされる「エル」と答えた人のほうが多かった。

(日本テレビ)週報のように出している「日テレEYE」で「○=イル、×=エル」としている。

(テレビ朝日)「イル」「イタ」が正しい。「エル」「エタ」は間違い。

(フジテレビ)「×」。時々「エル」で出て、視聴者から「間違いだ」と言われる。

(テレビ東京)ハンドブックで「誤用」と書いてある。

(ABC)「エル」は使用不可。

(KTV)「×」。誤用。次回のハンドブック改訂でも認めない。

(TVO)「×」。

(時事通信)「×」・

(共同通信)誤用。記者端末で「的をエル」と打つと、「誤用」と注意表記が出るようになっている。

ということで、「的を得る」を認めている社は、

「一社もない」

ことが分かりました。

私も、調べたことを発表しました。

(ytv)2012年5月に開かれた「関西地区用語懇談会」でのアンケートでは、「的を得た指摘だと思う」→「的を射た指摘だと思う」に、直すか?直さないか?については、

・「必ず直す」=20社=朝日、毎日、読売、日経、産経、福井、神戸、山陽、中国、徳島、四国、愛媛、高知、日刊スポーツ、報知、共同、MBS、KTV、YTV、TVO

・「直す場合と、直さない場合がある」=4社=スポニチ、時事(多くの人が使っている現実は無視できない)ABC、OBC

・「直さない」=0社

でした。

また、手許にある国語辞典12種類と、用語ハンドブック9種類で「的をエル」を認めているのは『三省堂国語辞典・第7版』だけだった。(以下に一覧を載せます)

「的を得る」辞書の表記

○=載っている、×=載っていない

【国語辞典】

<的を・・・>     「射る」:「得る」:「得る」の語釈

『新潮現代国語辞典』2000  ○   ×

『日本語慣用句辞典』2005  ○   ×              【東京堂出版】

『岩波国語事典』2009     ×   × 「射る」用例「的を射る」。「得る」用例なし

『明鏡国語辞典』2010     ○   × 「当を得る」(=理にかなう)や「要領を得る」)との混同から「的を得る」とするのは誤り

『新選国語辞典』2011  ○   × 【参考】「的を得る」とも言うが、本来は誤用

【小学館】

『新明解国語辞典』2012   ○   ×                【三省堂】

『三省堂国語辞典』2014  ○   ○ 「得る=うまくとらえる」「的を得た表現」

『現代国語例解辞典』2016  ○   × 「的を得る」は誤り      【小学館】

『広辞苑・第7版』2018   ○   ×               【岩波書店】

『精選版日本国語大辞典』  ○   ×

『デジタル大辞泉』     ○   ×

『旺文社標準国語辞典』   ○   ×

【ハンドブック・用語集】

*『NHKことばのハンドブック第2版』(2005) ×  ×

*『2005年版・朝日新聞の用語手引』(521ページ)

「的を得た発言」→的を射た発言

*『改訂新版・毎日新聞用語集(2007)』(397ページ)

「的を得る」→「的を射る」「当を得る」

*『新聞用語集2007年版』(393ページ)「誤りやすい慣用語句」

「的を得た発言」→「的を射た発言」

*『放送で気になる言葉2011』(16ページ)「誤用に気をつけたい言葉」

×「的を得る」 ○「的を射る」

~「要点をつかむ」「急所をつく」の意味で、「的を得た発言」「的を得た批評」などと言う。しかし、慣用句としては「的を射た」が正しい。「的を得た」は「当を得た」との混同が原因かもしれない。誤用として使用しない放送局もあり、『三省堂国語辞典』『現代例解国語辞典』などは《「的を得る」は誤り》と注をつけている。

※『三省堂国語辞典』=第5版(2001)と第6版(2008)。「第7版」では認めている。

×『現代例解国語辞典』→○『現代国語例解辞典』

*『読売テレビ 放送用語ガイドライン第三版』(2013)(142ページ)「間違いやすい言葉」

×「的を得た発言だ」 ○「的を射た発言だ」

~「的を射る」は「物事の肝心な点を確実にとらえる」ことを意味する。「的を得る」は誤用。「当を得る(道理にかなっている)」と混同されたための誤用と思われる。

*『記者ハンドブック第13版・共同通信社(2016)』(448ページ)

「的を得た指摘」→「的を射た指摘、当を得た指摘」

*『読売スタイルブック2017』=「誤りやすい慣用語句、表現」(389ページ)

「的を得た」→「的を射た、当を得た」

*『NHK間違いやすい日本語』(2017・第5)

・(33ページ)「的を得る」→「的を射る」または「当を得る」

・(249ページ)「的を射る」=「的を得る」は間違い。「当を得た」「正鵠を射る」は正解。

ということでした。

TBSでは「的を得る」も認める方向だそうですが、全体的には、

×「的を得る」→○「的を射る」

の流れは変わらないようです。

(2018、2、16)

2018年2月17日 12:32

新・ことば事情

6700「金栗四三の読み方」

先週(2月9日)に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、TBSの委員から出た質問です。

「大河ドラマで描かれることも決まり注目される『金栗四三』氏の読み方は、各百科事典では下記のとおり。

『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』→ 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る

『世界大百科事典 第2版』(平凡社) 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る

『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)→ 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る

しかし、金栗氏の地元・熊本県玉名市のHPは、

「かなくり しそう」

と、名字も名前も「濁っていない」。これは、金栗氏自身が、

「『しそう』と読む」

と答えた新聞記事(1976年)などから、地元自治体が協議し、「今年1月29日」に、

「今後は、『かなくり しそう』で統一する」

となったことからきている。ただし、玉名市は、

「他の読み方を否定するものではなく、慣れた読み方で結構です」

とも話しているそうだ。これを受けて、弊社系列局である「熊本放送」から、

「去年まで『カ/ナ\クリ・シ/ゾー』と読んでいたが、今後は地元に従い『カ/ナ\クリ・シ\ソー』という読み方で統一する」

との連絡が、1月30日にあった。弊社ではその決定に倣っていくと思う。

各社の対応はいかがか?異なった読み方をされている社、各番組の判断に任せている社があったら教えてほしい。

これに対する各局からの回答は、以下の通りです。

(NHK)地元の熊本放送局に聞いたところ「今後は『カ/ナ\クリ・シ/ソー』と、名字も名前を「濁らずに」いくそうだ。民放他局は、名前のアクセントが『カ/ナ\クリ・シ\ソー』と「頭高アクセント」だか、NHKは「平板アクセント」。大河ドラマで取り上げることになったため、担当者が金栗四三の娘さんに聞いたところ、「シ/ソー」ですという答えだったと。

(日本テレビ)原稿データベースでは8件出て来たが、全て「箱根駅伝」。金栗四三氏は、「第1回箱根駅伝」の審判長だったため。これまでは「カナグリ・シゾー」と名字も名前も濁っていたが、「名前も名字も濁らない『カナクリ・シソー』だそうですよ」とスポーツの担当者に伝えたら「今後はそうする」という答えだった。

(テレビ朝日)ニュースでの使用例はなし。スポーツでも出て来ず。統一ルールはない。本人が「シ/ソー」と言っていたのならば、今後は『カ/ナ\クリ・シ/ソー』でルール化する。

(フジテレビ)ニュース原稿では出て来たことがないので分からないが、玉名市は、もともとは「カ/ナ\クリ・シ/ゾー」だったようだが、地元の3つの自治体が「シ/ソー」で統一したり、大河ドラマが「シ/ソー」なら、今後は「シ/ソー」かな。いずれ、たくさん出てくるようになれば、統一されるのではないか。

(テレビ東京)ニュースでは出て来なかったが、クイズ番組で出たことがあり、そこでは「カ/ナ\グリ・シ/ゾー」と名字も名前も濁っていた。今後は「濁らないほう」でいくと思う。

(ABC)これまでに出て来た実例はなし。この会議での結果を反映させる。

(MBS)実例なし。系列の熊本放送に従う。

(KTV)マラソン中継などもやっているが、この名前を使ったことがない。「濁らない」ということにアナウンサーなど局側が従ったとしても、解説者やゲストが「濁って」話した場合には、止められない(訂正できない)と思う。

(TVO)使用例なし。ここでの話し合いを反映させたい。

(時事通信)「金栗賞」というのがある、これは「カナクリ」と濁らず。「名前」の「四三」の読み方は分からない。

(共同通信)去年12月25日には「カナクリ・シゾー」と「名前だけ濁って」配信したが、今年1月29日に玉名市などが「カナクリ・シソー」と濁らないことを発表したことを受けて、1月30日に「シソー」という「濁らない名前」に差し替えた。

私も、調べた分の発表をしました。

(ytv)『広辞苑』は「第6版」までは載っていないが、最新(1月12日発売)の「第7版」では「カナグリ・シソウ」と「名字が濁り、名前は濁らない」で載っているが(名はシゾウとも)と「濁る名前」も載っている。系列の熊本民テレビに問い合わせたところ「忙しいので自分で調べて」と言われたが、「金栗四三の地元は、熊本県和水町(なごみまち)ですので、そちらの社会教育課に聞いてみたら?」とそのURLを教えてくれた。早速、電話して聞いてみたところ、

「町としては、『カ/ナ\クリ・シ/ソー』と名字・名前とも『濁らない』と決定しました」

とのこと。そして、町として金栗四三氏の「パスポート」も調べたところ、「カナクリ・シソー」「カナクリ・シゾー」と2通りのサインがあったとのことで、なかなか、どちらかに決めるのは難しいようだ。

ということです。今後「金栗四三」さんの読み方に注目ですね。

(2018、2、16)

2018年2月16日 18:28

新・ことば事情

6699「『NEM』のアクセント」

580億円が"盗まれた"仮想通貨。これまで「仮想通貨」に興味の無かった人たちも、

「そんなことがあるのか!」

と注目しました。その中で出て来た

「コインチェック」の扱っていた仮想通貨の名前、

「NEM(ネム)」

のアクセントが、「頭高アクセント」なのか?「平板アクセント」なのか?で、みんな悩んでいました。両方のアクセントが、放送で聞かれたからです。「す・またん」の辛坊治郎先輩からも「アクセントはどっちなの?」と質問が来ました。私は、問題なく、

「ネ\ム」

と「頭高アクセント」なので、迷いはなかったのですが。

「ミヤネ屋」に出演している林マオアナウンサーを通じて、読売テレビ・アナウンス部での意見を聞いてもらいました。すると、

「やはり、皆さん、仮想通貨のユーザーじゃないから『ネ\ム』と『頭高アクセント』で呼びたくなるけど、使い慣れてる人は『ネ/ム』と『平板アクセント』なのかなぁ・・と。しかし、『平板アクセント』は、やはり『関西人』の場合は、眠たいときの『ネ/ム』に聞こえる・・という話で終わってしまいました・・(笑)難しいですね。でも、もし原稿に出てきたら、『ネ\ム』と1回目は読んで、様子をみると思います・・・と森若さんは仰ってました!以上です。」

というメールをもらいました。そこで、こんなメールを返しました。

「林さん、早速ありがとう!そうですね。『ネム』でアクセント辞典に載っているのは、

『ねむの木』の『合歓(ねむ)』で、これは『頭高アクセント』の

『ネ\ム』

ですね。もしかしたら、それと区別するために、きょうの日本テレビお昼の『ストレイトニュース』の矢島アナウンサーは、

『ネ/ム』

と『平板アクセント』で読んだのかも。しかし『2音節』の単語は『頭高アクセント』でいいんじゃないかな。2音節の単語で『○ム』と言うものをピックアップして、アクセントを書き出してみました。<★は名詞。赤が「平板アクセント」>

「ア\ム(編む)」「★イ\ム(医務)」「★ウ\ム(有無)」「★エ\ム(M)」

「カ\ム(噛む)」「★キ\ム(金)」「ク\ム(組む)」「★ケ\ム(煙・に巻く)」「コ\ム(混む)」

「★サ\ム(外国人名)」「★シム=SIMカード(シ/ム)、染む(シ/ム)、★私務(シ\ム)」「ス\ム(住む、済む、澄む)」

「ツム=積む・摘む(ツ/ム)、詰む(ツ\ム)」「★ト\ム(外国人名)」

「★ナ\ム(南無)」「★ネ\ム(合歓)」「ノ\ム(飲む)」

「★ハ\ム(食物)」「フ/ム(踏む)」

「モ/ム(揉む)」

「ヤ/ム(止む)」「ヨ\ム(読む)」

「★ラ\ム(酒)」「★リ\ム(自転車)」「レ\ム(REM睡眠)」「★ロ\ム・ロ/ム(ROM=読み出し専用メモリー)」

「★ワ\ム(音楽グループ名)」

といった感じですね」

その後、各局のアナウンサーや元アナウンサーの皆さんに、個人的なご意見と現状について伺ってみました。

****************************************

『問題の「コインチェック」の扱っていた仮想通貨「NEM(ネム)」のアクセントですが、

(1)「ネ\ム」(頭高アクセント)

(2)「ネ/ム」(平板アクセント)

(3)その他

の、どれで読んでらっしゃいますか?

ちなみに、おととい(1月31日)の昼ニュースなどを見ていたら、

*NHK・TBS・テレビ朝日・フジテレビ=(1)頭高「ネ\ム」

*日テレ=(2)平板「ネ/ム」

でした。

また、この日の日テレ「スッキリ」での女性アナウンサーは(1)頭高「ネ\ム」でした。

で、ツイッターのフォロワーからの情報によると、MBS『ちちんぷいぷい』でこの話題を、メインのフリーアナウンサーに対して、MBSの女性アナウンサーが、

「NHKだけ(2)平板『ネ/ム』だった」

という話をしていたということなのですが、どうなんでしょうか?

もちろん局によって決めているというより、各アナウンサーによって、アクセントは違うのだと思いますが。

皆さまのご意見を、お待ちしています!よろしくお願いします。』

****************************************

その結果、以下のようなお返事が届きました。

【在京】

(日本テレビ)当初、経済部とも話し合い「NEM」利用者が(2)平板「ネ/ム」を使っているので、(2)平板にしたが、浸透せず、結局(1)頭高「ネ\ム」の報道が多いので(1)頭高に変更・統一した。

(TBS)弊社では「アクセントの統一」はしていないが、(1)頭高「ネ\ム」で読んでいる。(2)平板「ネ/ム」で読んでいる人を聞いたことがない。特に「こうだから(1)頭高」という根拠があったわけではないが、全員が(1)「ネ\ム」で読んでいた。

(フジテレビ)このニュースを読んでいないが、読むとしたら(1)頭高「ネ\ム」

(NHK)(1)頭高「ネ\ム」。通貨の「2拍語」は「頭高」が多いので。

【在阪】

(MBS)(1)頭高「ネ\ム」で放送している。

(ABC)(1)頭高「ネ\ム」で放送している。「頭高アクセントで読め!」と指示が出たわけではないが、自然にこのアクセントで落ち着いた。(2)平板「ネ/ム」は、関西弁の「眠たい」の意味の「ネ/ム」と混同するからかもしれない・・・。

(関西テレビ)統一していないが、みんな(2)平板「ネ/ム」で読んでいる。

(ytv)決めていない。(1)頭高「ネ\ム」5人、(2)平板「ネ/ム」1人。

(1)「頭高」の人の意見

・「ネ\ム」の頭高が自然かと思う。最近は、こういう新しく出てきた言葉を何でもかんでも平板で読む傾向が強い気がして抵抗を感じる。

・「ネム財団」となると、コンパウンドすると思うが、単体は「頭高」で読む。

・平板化となるほどまでは、まだ浸透していない気がする。ツイッター・ラインなどが、浸透してから平板化したような気がする。

(2)「平板」の人の理由は次の3点。

①まだ一般には認知されていない新出の用語、アクセント未確定で耳馴れない今の時期は、短い音節で、かつ、あまりに不自然でなければ、敢えてアクセントを付けないで表現している。ITやネット用語(たとえば「ウェブ」など)と似た扱い。「仮想通貨」という、実体のなさも、平板アクセントに似つかわしい気がする。

②静岡県出身者として「ねむ」といえば、すなわち宮城まり子さんの「ねむの木学園」が強くイメージされる言葉。「ねむ」のアクセントは頭高なので、それとの区別を付けたい気持ちで平板を選択する。ほかにも全国で「合歓(ねむ)の郷」とか「ねむの丘」が多く、区別したい人は存外多いのでは?

③「ネム」を、自然な日本語感覚で読むと「頭高アクセント」になると思うが、今回のことばは本来的に「NEM」と表記される     もので特殊。日本語の原則に囚われない言葉として、敢えて平板アクセントを選択したくなる。 

~とはいうものの、③で言ったように、自然な日本語感覚で言えば(1)「頭高」なので、この仮想通貨がかなり主流になり、日常頻出する言葉になれば、(1)「頭高」で表現することになるかもしれない。いずれにしても、私の中では、今のところ日常の生活実感からは距離のある特殊なことばとして、この「NEM」を扱っている、ということです

【地方局】

(テレビ金沢)原稿ではまだ出て来ていないが(2)平板「ネ/ム」のほうが根拠がありそう。

 ①平板にする根拠

 ・「合歓」という同音異義語があるので、これと区別する。

 ・ネット関連の短い業界語は平板の傾向がある。「ネム」も平板にしておくとよい。

   (例「ネット」「ブログ」「チャット」「ライン」「メール」)

 ②頭高にする根拠

 ・平板にすると、動詞のように聞こえてしまう。

 ・平板にすると「眠(ねむ)い」の意味を連想してしまう

 ・文脈上「合歓」と混同する場面が無い。

(中京テレビ)

ローカルでは「仮想通貨」の話題を読むことはなさそう。私は(1)「ネ\ム」でいく。これを「現地読み」と言うのかどうかわからないが、多分、外国の方は(1)「頭高」ではないかと思う。

というような状況でした。

(2018、2、12)

2018年2月15日 17:42

新・ことば事情

6698「利子か?利息か?」

2017年12月11日の「ミヤネ屋」で、

「神社が受け取る利子が免税」

という場合は「利子」でいいのか?それとも「利息」か?

という疑問が出ました。放送では、

「利子」

で出しました。辞書を引くと、

「『利子』と『利息』は『同じ意味』」

ですが、一般的には、

「借りた場合に支払うものを『利子』、貸した場合に受け取るものを『利息』と使い分ける」

ことがあります。

「住宅ローン」(借りているお金に付くもの)の金利分=「利子」

「銀行や郵便局に預けているお金」に付く=「利息」

という具合。

しかし、ベテランのUディレクターが調べてくれましたが「国税庁」のHPには、課税対象として、

「利子所得」

というのがあります。私たちが銀行・郵便局に預けて得られる、

「利息」(利子)

や、公社債投資信託の「分配金」などを指すそうです。「確定申告」しなければならないぐらいの額になると、

「利子」

と言ったほうがよさそうです。

(2018、2、1)

2018年2月15日 15:22

新・ことば事情

6697「和食か?日本食か?」

2月6日の「ミヤネ屋」の「250」ニュースで、

「日本選手団に和食提供の施設 公開」

というタイトルテロップ。この、

「和食」

にひっかかりました。これは、

「日本食」

ではないのか?と。たとえば「オムライス」「ハンバーグ」は「和食」でしょうか?普通は「洋食」ですよね。でも「洋食」も「日本食」でしょ?また「ビーフカレー」は「何食」でしょうか?少なくとも、インドに「ビーフカレー」はありません。「神聖な動物・牛」(ビーフ)は食べないのです。「ポークカレー」もあまりないでしょう。あるのは「野菜カレー」か「魚カレー」か「チキンカレー」です。

つまり「日本のカレー」は「インド料理」ではなく「日本(の)料理」なのです。

五輪会場での「和食」は「純和風の和食」なのかどうかは分かりませんが(「まぜごはん」とか「豚汁」のようなものが映像には出ていましたが)、「日本食」のカテゴリーの中には「和食」「洋食」「外国(風)料理」が含まれるので、「和食」よりも「日本食」と表現したほうが良いのではないのかな?と思った次第です。

(2018、2、8)

2018年2月15日 10:21

新・ことば事情

6696「トーループか?トゥループか?2」

ちょうど2年前に書いた「平成ことば事情5991トーループかトゥループか?」の続編です。

平昌(ピョンチャン)オリンピックが盛り上がっていますが、"大会の花"と言えば、やはり「ジャンプ」と「フィギュアスケート」ですね(?)。もちろん、スピードスケートやノルディック、スノボなども気を引かれますが、中でも2連覇がかかる、

「羽生結弦選手」

の動向が気になります。

そのフィギュアスケートの「技の名前」で、

「トーループ」か?「トゥループ」か?はたまた「トウループ」か?

「サルコー」か?「サルコウ」か?

という問題があります。「カタカナ表記」の問題です。

「ミヤネ屋」では、先週の放送では、

「トゥーループ」「サルコー」

と出しましたが、きょう(2月14日)は「ちょっと待てよ」と。

日本テレビの表記を調べて見たら(原稿)

○「トーループ」 ○「サルコー

だったので、それにに従いました。また、各紙朝刊(2月14日)の表記を調べて見ると、

(読売)  トウループ  サルコー

(朝日)  トーループ  サルコー

(毎日)  トーループ  サルコウ

(産経)  トーループ  サルコー

(日経)  トーループ  サルコー

(報知)  トウループ  サルコー

(日刊)  トーループ  サルコー

(スポニチ)トーループ  サルコー

(サンスポ)トーループ  サルコー

(デイリー)トーループ  サルコー

でした。

「読売新聞」と「スポーツ報知」だけが「トウループ」(大きい「ウ」)で、あとは「トーループ」。また「毎日新聞」だけが「サルコウ」で、あとは全て「サルコー」でした。

おととし(2016年)2月の用語懇談会での各社の回答は、以下の通りでした。

(共同通信)「トーループ」「サルコー」

(テレビ東京)「トゥループ」「サルコウ」と書く。発音は「サルコー」と音引き。

(テレビ朝日)ことし(今シーズン)から、表記も読みも「トーループ」になった。それまでは、表記は「トゥループ」で、読みは「トー(ループ)」だった。また「サルコウ」と書いて「サルコー」と読む。フィギュアスケート解説者の佐野稔さんや織田信成さんは、「サ\ルコ」と、語尾を伸ばさないで止めて言う傾向がある。

(フジテレビ)原稿には、両方出ているが「トーループ」が多い。「サルコウ」「サルコー」は、同じぐらい出て来る。原則は「共同通信記者ハンドブック」に準拠。

(TBS)2013年度に日本スケート連盟が「トウループ」(=「ウ」は大きい)「サルコウ」と表記を決めた際に、それに従った。読みは「トーループ」「サルコー」と、共に音引き。

(追記)

2月16日の「TBS」の男子ショートプログラムの放送(中継)では、

「トウループ」「サルコウ」

でした。

(2018、2、16)


(2018、2、14)

2018年2月14日 23:19

新・読書日記 2018_015

『雲を愛する技術』(荒木健太郎、光文社新書:2017、12、20)

新書なのに、ふんだんに・・・全編にカラー写真が載っていて、もうキレイな雲の写真を見るためだけに買ったと言っても過言ではない。実際、文章は専門的で難しかったので、「読んだ」というよりも「眺め」ました。「雲」、好きなんですよね。

ちょうど今年は30数年ぶりの「雪の被害」が日本海側で続いていますが、その「豪雪」を降らせる「雪雲」についても「豪雪のメカニズム」としてカラーで図解が。(268-269ページ)日本海側と太平洋側では、豪雪を降らせる雲が全く違うのだそうです。そして、積雪深1センチあたり、3ミリ程度の降水量に相当する重さになり、積雪深3メートルの雪が6メートル四方の家屋の屋根に積もると考えると、1平方メートルあたり、小ぶりな力士(100キログラム)が9人(0,9トン)、屋根全体では総勢「324人」の小ぶりな力士がいることになる!として、イラストが!それは重いわ、小ぶりでも!

で、これを書くのに読んでいて、誤植を発見!269ページですが、

×「1m四方」→○「1㎡四方」

「メートル」ではなく「平方メートル」ですね。「四方」ですし、「面積」は。

【訂正】

川崎市の西尾さんからご指摘を頂きました。

「これは『1m四方』でよいのではないでしょうか。

『㎡』は面積なので、それに『四方』を付けるのも変な気がします。」

あ!仰る通り。

著者の荒木健太郎さん、失礼いたしました!私の早とちりでした。

ごめんなさい、取り消させて頂きます。申し訳ありません。

そして西尾さん、ありがとうございました!

(2018、2、16)



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(2018、2、8読了)

2018年2月14日 21:50

新・読書日記

『オンエアできない!~女ADまふねこ(23)テレビ番組つくってます』(真船佳奈、朝日新聞出版:2017、10、30第1刷・2017、11、10第2刷)

漫画です。描いたのは、テレビ東京の社員AD(現在はディレクター)の女性。

スゴイですよね、漫画家としての才能があるなんて!

趣味で書いていたものをネットに載せて、ツイッターで口コミで広がって、出版になったと。面白いんですよ、確かに。われわれ、業界の中にいる者から言うと「あるある」で、

「お仕事紹介漫画」

ですね。つまり「三浦しおん」さんが「小説」でやっていることを(この業界に限ってですが)「漫画」で描いたと。漫画家が書くのではなく、中にいる業界人が描くというところが目新しかったです。

(2018、1、29読了)

(☆4つ)


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2018年2月14日 19:46

新・読書日記 2018_013

『パレスチナ現代史~岩のドームの郵便学』(内藤陽介、えにし書房:2017、9、30)

昨年秋に、著者の内藤さんから贈っていただきました。いつもありがとうございます!

しかし、内容が難しいのでなかなか手が付けられなくて読み進めなかったのだけど、「早く読まなきゃ」と思っていたら、アメリカのトランプ大統領が、イスラエル大使館をエルサレムに移すと12月に発表して、またパレスチナにスポットが当たったので、

「よし!読むなら今だ!!」

と読み出したのですが、・・・やはり、なかなか難しい。名前がね。難しいんです。年末年始の休みで読むつもりも、それも無理で、結局今頃なんとか読み終えました。1990年代以降は、何となくわかったのですが。

サブタイトルにあるように「岩のドーム」というのが、正に「パレスチナのシンボル」で、いろんな切手にも取り上げらえているというのは、よーく分かりました。

この土地の難しさは、本当に「島国日本」では想像もつかないということだけは、よく分かりました


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(2018、2、7読了)

2018年2月14日 17:45

新・ことば事情

6695「前夜」

2月1日の「ミヤネ屋」放送前にWディレクターから質問が。

「あした相撲協会の理事選があるんですが、きょうは『理事選前夜』と表現してもいいでしょうか?」

「うん?きょうの夜は『前夜』でいいんじゃないの?」

「いえ、『きょうの夜』はそうなんですが、『革命前夜』のように『きょうの朝』とか『昼間』も含めて、『理事選前夜』と表現しても良いのかと・・・」

「うーん、それはどうかな。『革命前夜』の場合は、確かに"物理的な夜だけ"を指しているわけでなく"革命が成立する前の日々"を指すことがあるけど、それは歴史の流れが確定した"未来"から"過去"を見つめて評価するもので、しかもその革命が明らかに、

"次の時代の夜明け"

を告げるものであると認識されたら、そのの革命より前は、

"前夜""暗黒の時代"

と言えるだろうけれど、まだその"革命"や"理事選"が行われていない段階で"前夜"と表現するのは、客観性に欠けるのではないかな。」

と説明して、『きょうの朝や昼』の段階(つまり「ミヤネ屋」放送時間=午後1:55~3:50の前での状態)で、

「理事選前夜」

と使うのは、やめてもらいました。

(2018、2、1)

2018年2月 2日 12:12

新・ことば事情

6694「『お別れ会』は『行われる』か?『営まれる』か?」

1月25日の「ミヤネ屋」で、サッチーこと野村沙知代さん(85)の「お別れ会」の模様を放送しました。その中で担当ディレクターから、

「サッチーの『お別れ会』は『行われる』でしょうか?それとも『営まれる』でしょうか?」

という質問を受けました。

「告別式」=行われる

「通夜」 =営まれる

が良いと思うのですが、「お別れ会」はどうでしょうか?

私の答えは、

「どちらでも良い」

になりましたが、今回は、

「行われました」「行われます」

で放送しました。

(追記)

うわあー!ほんの6日前に、おんなじタイトルで、ほぼおんなじことを書いていたあ!

「平成ことば事情6683「『お別れ会』は『行われる』か?『営まれる』か?」

を見てみてください。

しかも、1か月以上、気付かなかった・・・。

ボケて来たかな・・・・?

(2018、3、8)


(2018、2、1)

2018年2月 1日 22:10

新・ことば事情

6693「-15℃の寒気」

1月24日の「ミヤネ屋」の天気のニュースで、

「-15℃の寒気」

という表現が出て来ました。「気温」なら、もちろんメチャクチャ寒い・低いですが、

「上空の寒気」

としては、そんなに低くないのではないか?と思いました。

普通は「上空の猛烈な寒気」というと、

「-30℃以下」

ではないか?と思いました。おじさんの感覚では、そうなのです。

そこで、お天気(気象予報士)の蓬莱さんに聞いてみたところ、

「昔は『上空5000m』の気温で『―36℃』を下回ると『大雪になる目安』とされていましたが、実はその高さまでは雪雲は達しません。今は計測機器やコンピューターの発達で、雪雲の上限の『上空3000m』の気温を計れるようになり、その気温が『-15℃』を下回るというのが『大雪の目安』となっているんです。今回はその『上空3000m』の気温が『―24℃』と10℃も下回っているので、かなりの大雪となる予想なのです。」

という話でした。

「大雪の基準」も、時代と共に変わるんですね!

(2018、2、1)

2018年2月 1日 20:09

新・ことば事情

6692「下道」

1月23日の「ミヤネ屋」で、

「『高速道路』ではなく『下道』で」

という表現が出て来ました。

「下道」

という言葉。

「したみち」

と読みますね。「げどう」じゃないですよ。これに「の」が入って、

「下の道」

ならば、

「普通の国道や県道など」

と分かりますが、「下道」は「俗語」なのでは?と思って辞書を引いてみたところ、やはりその意味での「下道」は載っておらず、「下道」の意味は、

「山かげ・木かげ・花かげなど物陰にある道」(『広辞苑』)

という意味しか載っていませんでした。(『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』にも載っていない)

しかし、新しい言葉をいち早く取り入れることで知られる『三省堂国語辞典』には、

「高速道路ではない、ふつうの道」

という意味が載っていて(逆に、その意味しか載っていない)、用例はまさに、

「高速がこんでいたので、下道を走った」

とあったので、安心して、そのまま「下道」という言葉を使いました。

(2018、2、1)

2018年2月 1日 18:08

新・ことば事情

6691「署名か?サインか?」

2017年12月21日の「ミヤネ屋」で、貴乃花親方が日本相撲協会に提出した「報告書」の最後に書かれた「手書きの記名」に関して、

「自筆サイン」

という表現が出て来ました。これを見て何だか、

「色紙に、手形の横に書くサイン」

のようなイメージがありました。ここは、

「署名」

のほうが良いのでは?と思ったのです。しかし、「署名」というと、

「署名運動」

のような感じでもあり、結局、前日の日本テレビ「ニュースZERO」の原稿が、

「自筆サイン」

とあったので、それに倣(なら)って放送しました。

(2018、2、1)

2018年2月 1日 18:07