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『道浦TIME』

新・ことば事情

6080「一生、上がらない」

保険のコマーシャルでよく、

「保険料が 一生、上がらない」

というコメントがあります。

これって「安心」な感じがしますね。普通に考えると、

「年齢と共に死ぬ確率が高まる」

訳ですから、「生命保険」の場合、保険会社としては、

「年齢が上がるにつれて保険料を高くしないと、モトが取れない」

と思いますね。それなのに「一生 保険料が上がらない」と聞くと、

「とても、お得な感じ」

がします。しかしよく考えると、この言葉のウラには"もう一つの意味"があります。それは、

「死ぬまで、保険料は下がらない」

ということです。または、

「死ぬまで、保険料を払い続けなければならない」

ということです。もちろん、コマーシャルですから、「死ぬまで」なんて、ちょっと縁起の悪い言葉は使いません。

「死ぬまで」→「一生」

と言い換えられています。イメージとしては、

「ずっと」

になります。そう考えると、

「果たして、死ぬまでずっと払い続けられるだろうか」

「死ぬまでずっと払い込まなくても、保障だけが死ぬまでずっと続く保険は、ないものか?」

などと、都合のよい考えが、頭をもたげてきたりもします。

(2016、6、28)

2016年6月30日 19:48 | コメント (0)

新・ことば事情

6079「ハンセン帽」

2016年3月2日に日テレ『ヒルナンデス!』を見ていたら、

「今、ハンセン帽が流行ってるかも」

という言葉を耳にしました。この、

「ハンセン帽」

というのは、

「反戦帽」

ではありません。プロレスラーの、

「『スタン・ハンセン』がかぶっていたような帽子」

のことだそうです。

グーグル検索では(6月28日)

「ハンセン帽」  =26件

「スタンハンセン帽」=4件

なんだ、全然使われてない言葉じゃないか!それどころか、「スタン・ハンセン」じゃない人の「ハンセン帽」も出て来ました。

「ヘリーハンセン」

という人(?ブランド?)の「トレッカーハット」「キャップ帽子」が出て来たのです。

いろんな帽子があるんですねえ。「HH」のデザインは、見たことがあるな。

ところで、ハンセンがかぶっていた帽子って、いわゆる

「テンガロンハット」

なのでは?ところで、「テンガロンハット」は、なぜ「テンガロン」と言うのか?それは辞書(広辞苑)に載っています。

*「テンガロンハット」=「(水が10ガロン入るという誇張から)カウボーイなどがかぶる、山が高く鍔(つば)の広い帽子。カウボーイハットの一種」

でも「ガロン」という単位が分かりませんので、これも調べます。

*「ガロン」=「ヤード・ポンド方の退席の単位。1ガロンはイギリスでは約4,546リットル、アメリカでは約3,785リットル。日本では後者を用いる。記号gal

アメリカとイギリスで量が違うというのは、ややこしいですが、まあおおよそ、

「1ガロン=4リットル」

と考えると「10ガロン」は「40リットル」。2ℓのペットボトル20本分か。そんなに入るかい!!

ま、大げさにね、言っているのですね。大きいことは、いいことだ。

(2016、6、28)

2016年6月30日 16:46 | コメント (0)

新・ことば事情

6078「12L」

2016年2月26日放送の日テレ『スッキリ!!』で放送された、3歳児をウサギ用の「檻(おり)」に閉じ込めて死亡させたとされる両親の裁判のニュースでで、

「水12Lが入ったペットボトル」

という表記の「リットル」が、

「大文字・ブロック体のL

でした。実は昔は、

「小文字・筆記体のℓ」

が多かったのですが、最近はこの、

「大文字・ブロック体のL

が増えて来ているようなのです。これについては、既に4年前、2012年6月の新聞用語懇談会放送分科会で、質問しています。その際の各社の回答は、以下のようなものでした。

『容積の単位の「リットル」「ミリリットル」などを記号で書く場合、「筆記体」でしょうか?「ブロック体」でしょうか?また「大文字」でしょうか?「小文字」でしょうか?』(読売テレビ・道浦委員)

(NHK)カタカナ表記が原則。記号で書くなら筆記体の「」と、ブロック体小文字と筆記体小文字の組み合わせで「mℓ」。

(日本テレビ)NHKと同じ。小文字ブロック体の「l」を使うことも。

TBS)カタカナが原則だが、大文字のブロック体「L」もあるかも。

(フジテレビ)リットルは筆記体の「」。ミリリットルは「m」。

(テレビ朝日)ニュースは基本「m」。リットルだけは、ブロック体大文字の「L」。

(テレビ東京)カタカナが基本。リットルは数字などと混同しないために、大文字ブロック体の「L」。ミリリットルは小文字ブロック体の「ml」。

(共同通信)カタカナが基本。小文字のブロック体。リットルも「l」と小文字。

WOWOW)カタカナが基本。記号は色々と交じっている。

MBS)基本的に使うのは「cc」。1リットルも「1000cc」。リットルなどは基本カタカナ。ただ、小学生の息子の教科書を見ると、ブロック体の大文字で「L」と書かれていた。最近、中学校では、アルファベットの筆記体を教えていない。

※cc=cubic centimeterの略(=立方センチメートル)

ABC)テレビ朝日と同じく「」「m」。

KTV)リットルは筆記体の「」。ミリリットルは「m」も「ml」もOK.

(テレビ大阪)カタカナが基本。小文字の筆記体「」を使うと、報道の4人のデスクの意見が一致した。

ということでしたが、あれから4年が経って、だいぶ「大文字・ブロック体のL」が増えて来ているのではないでしょうか?

それとは関係ないんですが、この番組に出ていた武井壮さん、「事故」と「事件」の区別が付いていませんでした。基本は勉強してくださいね。

(2016、6、27)

2016年6月27日 18:27 | コメント (0)

新・ことば事情

6077「中学3年か?中学3年生か?」

(2015年8月27日に書きかけました)

「ミヤネ屋」のスタッフから質問を受けました。

「『中学3年』でしょうか?それとも『中学3年生』と『生』を付けたほうがいいのでしょうか?」

どちらでも「間違いとは言えない」と思いますが、この時の例で見てみると、

「名詞」で「体言止め」にする場合、つまり、

「保護されたのは、大阪市内に住む中学3年生。」

のような場合は、

「中学3年生」

と「生」を付けたほうが落ち着く気がします。

一方、その後に「運動会」などが付いて、

「中学3年時の運動会」

のような場合、つまり「形容詞句」として使われる場合は、短くして、

「中学3年」

のほうが落ち着くかなあと感じました。

(2016、6、27)

2016年6月27日 18:10 | コメント (0)

新・ことば事情

6076「軽自動車か?軽四自動車か?」

(去年=2015年8月27日に書きかけました。)

大阪・寝屋川の中1男女の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された山田浩二容疑者が乗っていたシルバーの軽自動車。この「軽自動車」の表現が、各社バラバラです。

「軽自動車」は排気量が小さいために税金面でも優遇されていたりして、「普通自動車」と区別されていますが、

「軽四(自動車)」「軽自動車」「軽ワゴン()

などの表現があるようです。その区別はどのように付けているのでしょうか?

そもそも「軽自動車」で分かるのに「軽四」「四」を付けるのは、その昔、

「軽三」

があったからではないかと思うので。ほら、「三丁目の夕日」にも出て来た、

「オート三輪」

あのトラックって「軽」ですよね。「軽トラック」。つまり「軽」の「三輪」。それと区別する言葉として「軽四」があったのではないか?

「軽四トラック」「軽四貨物」

という言葉もありますよね。

「ミヤネ屋」では、

「軽自動車」

で放送しましたが、各社見ていたら8月27日の朝の番組では、

(フジテレビ)軽ワゴン車

(テレビ朝日)軽自動車

でした。

2015年9月の新聞用語懇談会放送分科会で、「軽自動車・軽四(自動車)・軽ワゴン(車)の区別は?」と議題に挙げて見たところ、以下のような各社の意見が出ました。

(日本テレビ)特に社内で議論はない。今回の事件では、ytvからの出稿をそのまま使っている。

(MBS/TBS)今回は「軽ワゴン車」で。最初の「防犯カメラの映像だけ」の時点では、「車」「シルバーの車」で、山田容疑者が逮捕されて、車が「EKワゴン」と特定された時点で「軽ワゴン車」になった。「軽四」は使わない。「軽乗用車」も使わない。必ずしも「軽ワゴン車」や「軽自動車」「軽のワンボックスカー」などを区別して使っているわけではない。ちなみに「普通乗用車」も使わない。

(KTV/フジテレビ)防犯カメラの映像の時点では「車」。逮捕後は「軽自動車」。「EKワゴン」と分かってからも「軽自動車」。警察発表をそのままの場合もあるが、できるだけかみ砕いて、車種を言うようにはしている(「軽ワゴン車」「軽バン」「軽トラック」「4WD」など)。

(ABC)最初「軽自動車」で出て、その後「軽ワゴン車」に。「軽四」は使わない。よりわかりやすく、詳しい車種を言うようにしている。

(テレビ朝日)明確な車種の区別はしていない。警察発表に従っている。

(テレビ大阪)明確な区別はなし。「軽ワゴン」という車種よりも、「シルバーの車」という「色」に重点を置いて来た。

(テレビ東京)「車」。車種は、映像を見ればわかると言うことで。警察発表には左右されない。

(NHK)今回は「軽ワゴン車」。特に決まりはない。細かく書いたほうが分かりやすい。「軽トラック」か「軽自動車」かは、区別する。情報が少ない場合は全てを含む形の「軽自動車」とすることも。

(共同通信)今回は「軽ワゴン車」にした。「ワゴン車」にも「ワンボックス」「ミニバン」があるが。

ということでした。

(2016、6、27)

2016年6月27日 12:03 | コメント (0)

新・ことば事情

6075「雨の降り方による表現」

4月に大地震があった熊本を始め、九州各地で豪雨が降っています。それを報道する際の「雨の降り方による表現」

ですが、実は気象庁によって「雨の量による表現」というのが決まっているのです。

気象庁「雨の強さと降り方」では、

「1時間雨量」によって、以下のように区分となっています。

10ミリ以上~20ミリ未満=「やや強い雨」

20ミリ以上~30ミリ未満=「強い雨」

30ミリ以上~50ミリ未満=「激しい雨」

50ミリ以上~80ミリ未満=「非常に激しい雨」

80ミリ以上~     =「猛烈な雨」

【参考サイト】

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html

今回、熊本では、

1時間に150ミリ」

という、

「一番激しい表現(80ミリ以上)のさらに倍」

に近い「もんのすごい量・とんでもない量の雨が降った」ということですね・・・。

今回は、6人の方が亡くなっています。お悔やみ申し上げると共に、引き続き警戒をしてください。

(2016、6、22)

2016年6月23日 12:19 | コメント (0)

新・ことば事情

6074「ゾウの花子天国へ」

5月26日、東京・井の頭自然文化園で飼われていたメスのアジアゾウ、

「はな子」

が死にました。それを報じた翌5月27日の新聞各紙の見出しと本文は、

(見出し)      (本文)

(読売)「はな子」天国へ:死んだ/ 死んだことが確認された

(朝日)「はな子」大往生:死んだと発表した/ 死んだこを確認した

(毎日)はな子天国へ : 死んだと発表した/ 死んだことが確認された/ 息を引き取った

(産経)ゾウの「はな子」天国へ:死んだ/ 「穏やかに逝った」

(日経)最高齢ゾウはな子死ぬ: 死んだ/ 死亡が確認された

というように、見出しで「死ぬ」としたのは「日経」のみ。一番多い表現は、

「天国へ」で、読売・毎日・産経が使っています。朝日は「大往生」。「はな子」は、国内最高齢の69歳でしたが、ゾウの平均寿命は「60歳」だそうですから、長生きでした。その意味では「大往生」は使えるでしょう。

本文では「死んだ」というシンプルなものが多いですが、園長の発言の引用で、

「穏やかに逝った」

という表現や、

「息を引き取った」

というものもありました。あ、実は「亡くなる」「死亡」というように「亡」の字は、

「人間にしか使えない」

ということがあって、「動物が死んだときに、どう表現するのか?」という問題なのです。

これは、読売新聞校閲部OBNさんに聞いたのですが、新聞社が「死ぬ」を避ける要因の一つとして、以前間違って、

「死ね」

と出してしまったことがあるからだ、ということも伺いました。ほんまかいな。

そしてこの日、「ミヤネ屋」の中の「ニュース250」で、日本テレビが出したスーパーは、

「69歳で逝く」

で、ナレーションは、

「息を引き取りました」

でした。

(2016、6、16)

2016年6月22日 12:11 | コメント (0)

新・ことば事情

6073「連綿と恋々」

舛添・東京都知事の辞職関連のニュース一色の今週でしたが、火曜日(6月14日)のスーパーチェックで、

「(都知事という地位に)連綿としがみつく気はない」

というのがあり、「おや?」と思いました。この、

「連綿」

は、『広辞苑』には、

「長く続いて絶えないさま」

と載っていて、用例は、

「恨み言を連綿と訴える」

です。「延々と」に近い感じです。しかし「地位にしがみつく」というときによく使うのは、

恋々(れんれん)

です。発音を聞くと(アルファベットで書きて見ると)、

*「連綿」=れんめん=renmen

*「恋々」=れんれん=renren

というように、違いは「め(me)」か「れ(re)」かですから、滑舌が悪い人が言うと、同じように聞こえますし、言葉の使い方を間違えてしゃべっているケースもあります。意味上からはここは、

(都知事という地位に」恋々としがみつく気はない」

にしないといけないだろうと変えました。

あとで、舛添都知事の発言部分を聞くと、私の耳にはちゃんと、

恋々と」

と聞こえました。また、NHKのニュースサイトも連綿と」となっていましたが、あれは「間違い」ですね、きっと。

(2016、6、16)

2016年6月21日 18:10 | コメント (0)

新・読書日記 2016_097

『崩れゆく世界 生き延びる智恵~国家と権力のウソに騙されない21世紀の読み解き方』(副島隆彦×佐藤優、日本文芸社:2015、6、10第1刷・2015、7、1第4刷)

ちょうど1年前に出て、すぐ購入したまま「積ん読」になっていたもの。

佐藤優さんの本は、割とよく読んでいるが、副島隆彦さんのものは読んだことが無かった。この二人の対談はレベルの高いものであったが、ちょっと副島さんのほうは、その口調・論調に「陰謀論」的な"あおり"が感じられた。

周期的にアメリカの「ネオナチ」系の連中が出て来ては世界を牛耳ろうとしている、と。ここで話の中に出て来る人名の中には、こちらが不勉強で、全然、知らない人も多かった。たとえば、「ヴィクトリア・ヌーランド」という女性の国務次官補。日本のそのカウンターパートは、稲田朋美・自民党政調会長だという。そしてこの「国務次官補」という役職は、アメリカが世界中を分割して統治するときの司令官であると。ウクライナ問題も、実はアメリカが動かしたというのです。うーん、そうかもしれないけど。

勉強にはなりましたが、全面的に信じていいのかどうかは、ちょっとなあ・・・という感じでした。


star4

(2016、6、8読了)

2016年6月21日 12:41 | コメント (0)

新・読書日記 2016_096

『新版トットチャンネル』(黒柳徹子、新潮文庫:2016、3、1第1刷・2016、4、20第2刷)

その昔、『窓際のトットちゃん』を読んだので、その後この『トットチャンネル』が出ていても特に興味を持っていなかったが、NHKがこの春、これを原作にしたドラマ『トットテレビ』を放送し始め、チラッと見たら、満島ひかりが演じる黒柳徹子がキュートでなんか雰囲気もよく似ていて、それ以外の登場人物も「かなり似ている」ので驚いた。また制作統括の「加賀田透」君が、大学のゼミの同期であることなどから(エンディング・ロールを見て気付いた)「原作を読んでみよう!」と思い立ち、読んだ。その後ドラマは、土曜日の夜に気が付くと放送が終わっていて、なかなか見られなかったのだが。

気付いたこと。黒柳さんは「スムーズ」を「スムース」と濁らずに発音し、書くのだなと。

このところ、「徹子の部屋」などで拝見すると、そのしゃべり等の「衰え」を痛切に感じて痛々しい感じがする黒柳さんだが、「若者だった時代」の貴重な思い出の数々、青春のメモリーの数々は、「日本テレビ史」の貴重な証言でもある。この本が書かれた(連載された)のも、もう30年以上前なのだけれども。ちょうど、私がテレビ局に入った頃。当時すでに黒柳さんは今の私ぐらいの年だったわけで、私の「親の世代」に当たる。「テレビの古き良き時代」を感じることができた。


star4

(2016、6、15読了)

2016年6月20日 18:36 | コメント (0)

新・読書日記 2016_095

『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著&イラストレーション・前田まゆみ訳、創元社:2016、4、20第1刷・2016、5、10第2刷)

絵本です。こういうのも「あり」だなあ。新聞のコラム欄で紹介していたので、取り寄せて読んでみた。

著者は20代の女性でいろいろな国に住んだことがあるそうだ。また「翻訳できない」の意味は、「apple=りんご」のように、「1つの単語を1つの単語に置き換えること」ができない、という意味だそうです。なるほど。本当に「翻訳できない」んだったら、こんな本も出せないものなあ。

「翻訳できないことば」を具体的にいくつか紹介すると、

*ノルウェー語「PALEGG」(「A」の上に○)=パンにのせて食べる物、何でも全部

*マレー語「PISAN  ZAPRA」=バナナを食べるときの所要時間

*インドネシア語「JAYUS」=逆に笑うしかないくらい じつは笑えないひどいジョーク

*カリブ・スペイン語「COTISUELTO」=シャツの裾を絶対ズボンの中に入れようとしない男の人。

うーん、確かに一つの単語で表現できない、日本語では表現しないものばかりだなあ。この「差異」が「個性」であり「文化」というものですよね。


star4

(2016、6、11読了)

2016年6月19日 12:16 | コメント (0)

新・読書日記 2016_094

『1989年のテレビっ子』(戸部田誠、双葉社:2016、2、21第1刷・2016、3、25第3刷)

まさに私なども同時代のテレビの話なので、興味を持って読んだ。400ページ近い分厚い本で、データ本としても役に立つ。たけし、さんま、タモリ、加トケン、紳助、とんねるず、ウンナン、ダウンタウン。東京と大阪、両方の人気者が。

お笑い界の「ビッグスリー」というと、ここ何十年も「たけし・タモリ・さんま」と言われるが、実は「さんま」が入る前は「たけし・タモリ・欽ちゃん」だったと。あ・・・たしかに。忘れていた。

うーん、やはり時代は動いてはいるのだな。やはり主にフジテレビを巡る番組の話が多いが、日本テレビもそれに対抗して出て来る。「そうだったのか!」という話も多い。

やはりその「お笑いの世界」の大きな柱として「フジテレビ」があり、「笑っていいとも!」が、ある時代の最後に象徴的番組であったのが、おととし(2014年)終わってしまった。そういった「時代の変化」「過ぎ去った青春」を懐かしむ一冊だと思う。

ただ惜しむらくは、章ごとの「注*」の「アステリスク」と、「引用文献※」の「米マーク」が似ていてもわかにくいのと、章ごとの「注*」を章末にまとめるのではなく、そのページの欄外などに載せるようにしてほしかった。また「引用文献」に、いちいち記を付けなくても結構。読むときに集中できない。

それと、かなりこの本売れていて、もう「3刷」なのに、誤字・誤植・脱字が多い。一体、校閲はしているのだろうか?これだけ誤字などが多いと、折角の貴重なデータの信頼性も揺らぐと思う。

具体的には、いきなり「まえがき」の2ページ目【(6ページ)16行目】、

×「一同に会していた」→○「一堂に会していた」

【58ページ16行目】

×「出演者たちの目に色が変わった」→○「出演者たちの目の色が変わった」

【64ぺージ3行目】

×「多目に見てくれた」→○「大目にみてくれた」

【82ページ13行目】

×「それどこか」→○「それどころか」

【189ページ4行目】

×「身近かな感じの人」→○「身近な感じの人」

【282ページ18行目】

×「番組の会議を見学するもの勉強になるから」→○「番組の会議を見学するのも勉強になるから」

【356ページ7行目】

×「声だけが消されるという奇妙な改編が行われた」→○「声だけが消されるという奇妙な改変が行われた」

・・・・・ちょっと、多すぎます。


star4

(2016、6、7読了)

2016年6月18日 12:14 | コメント (0)

新・読書日記 2016_093

『2016高校サッカー年鑑』(公財・全国高等学校体育連盟サッカー専門部、講談社:2016、2、10)

1985年から毎年購入しているので、もう30年以上になる。当時は「高校生サッカー選手の兄貴分」のつもりだったが、今や「監督さんも年下」になってきてしまいました。毎年、母校の戦績を見ては、ため息をつく、と。データブックであり、「青春のきらめき」の数字と写真が閉じ込められた一冊

今年「おお!」と驚いたのは、「女子サッカー」の興隆ぶりだ。かなり詳しいデータが、平成24年、つまり4年前から載っているようだ。

それにしても、こんな立派な年鑑、誰が買うのかな?(私は買っていますが)まあ、「全国高等学校体育連盟サッカー専門部」に所属しているチームは、1冊ずつは買うだろうから、それで「数千部」はいくのかな?調べて見ると、男子が3903校、女子が448校所属しているから、4500冊は売れると。2冊ずつノルマにすれば、約1万冊か。それなら何とか、採算は取れるのかな。ヘンな所に気を回してしまいましたが、できるだけ刊行を続けてほしいです。


star4

(2016、6、8読了)

2016年6月16日 20:12 | コメント (0)

新・ことば事情

6072「アボー」

(去年=2015年の春に書きかけて、そのままでした)

(2015年)3月の13日から20日まで、永年勤続休暇(勤続30年)を使って、スペインに行ってきました。19年ぶりのスペイン一人旅。スペインに行くのは4度目です。

今回の目的は「バスク地方へ行くこと」。去年(2014年)、バスク語の曲を歌ったこともあったし、前々から、まだ行ったことのないバスクを訪れてみたいと思っていたのです。

マドリードから、特急でなんと7時間40分!昼の12時20分に出て、「サンセバスチャン」に着いたら、夜の8時でした。それから『地球の歩き方』に載っていたホテル(1泊1万3000円ぐらい、一応「4つ星」)に予約なしで行って荷物を置いてから、旧市街へ。200m四方ほどの旧市街には、バルやレストランがひしめいていて、そこのカウンターバーに並んだ、まるで「京都のおばんざい」のような、

「ピンチョス」

と呼ばれる、「カナッペ」のように、スライスされたフランスパンの上にいろんな具材を載せた料理を味わうことができるのです。どれも1つ1ユーロ~1、5ユーロぐらい(130円~200円)。それにセルベッサ(ビール)が1、5ユーロ(約200円)なので、ピンチョスを3つとビールで6ユーロ(約800円)とお手頃。いくつかのバルを「はしご」するのも楽しい。3軒も行けば、お腹も一杯、酔いも回って、それで2000円ぐらいですから、これはもう、うれしいことこの上ないですね。

「サンセバスチャン」の次に訪ねたのは、サンセバスチャンから高速バスで45分のところにある「ビルバオ」。ここでもまたバル巡り。大阪の行きつけのスペインバルで借りた本に載っていた「ピンチョスの有名なバル」を訪ねました。

そこのカウンターでセルベッサを飲んでいたら、隣にいたおじさん(同じ年回りか)が、なんと日本語で話しかけて来たのです。聞けば、今、日本語の勉強をしているそうで、これまで4回、日本にも行ったことがあるとか。偶然!私もスペインは4回目!ということで、片言の日本語と片言のスペイン語で、話が弾みました。

しかしそのおじさん、妹さんから電話がかかって来て、

「ちょっと、行かなくちゃならない。もう少し、ゆっくりしたかったんだけど・・・」

と、名残り惜しそうに、30分程で帰って行きました。なんとその時、私が飲んでいたセルベッサとピンチョスを、おごってくれました!見ず知らずの私のために!

その彼が帰るときに、それまでサンセバスチャン、ビルバオで、客が店を出る時に交わしていた挨拶の言葉を、投げかけました、

「アボー」

標準スペイン語(カスティーリャ語)では、

「アディオス」

ですが、バスク地方の人たちは皆、「アボー」と言っていたのをマネしたのです。フランス語の「アデユー」みたいな感じかな。すると、そのおじさんの瞳・表情が輝いて、

「アボー!」

と手を振って去って行きました。通じたようです。外国の人が日本・大阪に来て、

「オオキニ!」

などと言ってくれると、こっちも「ごっつ、うれしい」ような感じですかね。

実はあれから1年、ことし(2016年)の3月に、そのおじさん=ホアンさんが日本にやって来て、大阪にも寄ってくれて、1年ぶりの再会を果たすことができたのです。これは、うれしかったですね。あの時のお返しに、今度は私がおごりました!何が食べたいかを聞くと、

「タコヤキ・オコノミヤキ」

だと言うので、お好み焼きを食べたのでした。

「言葉」はまさに「コミュニケ―ションの手段」なんだなあと感じました。

(2016、6、15)

2016年6月17日 12:11 | コメント (0)

新・ことば事情

6071「『ひっつく』と『くっつく』」

(2015年3月12日に書きかけました)

「ミヤネ屋」の本番前に、名物コーナー「愛のスパルタ料理塾」の原稿を、AD(アシスタント・ディレクター)が持って来て、質問しました。

「この『お鍋にひっつく』を『くっつく』に変えてもいいか?とナレーターさんに聞かれたんですけど・・・」

なるほど。どうだろ?そもそも「ひっつく」と「くっつく」の違いは何でしょうか?どちらも「つく」という動詞が共通で、その前に「接頭辞」として「ひっ」「くっ」が付いていると。「ひっ」の促音は、元は、

「引き」

ですよね。つまり、

「引きつく」

が、促音便で、

「ひっつく」

になったのでしょう。つまり、

「引き寄せたようにピッタリと付く」

のが「ひっつく」なのではないでしょうか。

一方の「くっつく」「くっ」という促音の「前の形」は何なのか?うーん、思いつかない。これはもしかしたら、「くっ」ではなくて「く」なのではないか?それを強調した形で「促音便」になったのではないか?そうすると元の形は、

「くつく」

かな?えーい、辞書を引こう。『精選版日本国語大辞典』(電子辞書)で「くつく」を引いてみましたが・・・・載っていませんでした。ええい、じゃあそのまま「くっつく」を引いてみよう!・・・いきなり載っていました。

*「くっつく」=(「くっ」は「くい(食い)」が変化して接頭語化したものか)

これこれ!「~ものか」とは書いてあるけど、これでしょう、

「食いつく」

が促音便化して、「くっつく」

なるほど、そうすると「ひっつく」と「くっつく」のイメージが、少し分化できました。

「ひっつく」のほうが、「引きつく」ということで、「付かれる側」が「引っ張った」感じ、それに対して「くっつく」は、「付かれる側」ではなく「付く側」が主体で「食い付く」んですね。どちらが主体かで変わって来るということか。いや、勉強になりました。

(2016、6、13)

2016年6月16日 16:07 | コメント (0)

新・ことば事情

6070「おぼんだま」

去年(2015年)8月12日の日本テレビ『スッキリ!!』で紹介していた

「おぼんだま」

というもの、初めて聞きました。

「しゃぼんだま」

かと思ったら、全然、違いました。

「お年玉」

のように、もらう「お小遣い」のことで、それをもらう時期が、

「お盆」

なので「おぼんだま」なんだそうです。知らなかったなあ、そんな言葉。もらったことも、あげたこともないや。

と去年の8月に書いたのですが、約1年経った先日(2016年6月)、郵便局に行ったら、

「夏のお年玉・おぼんだま」

という文字が!何かと思ったら、

「おぼんだま袋」

という、「おぼんだまを入れるポチ袋」を、なぜか郵便局で売っていたのです。

「おぼんだま」って広がるのかなあ?

グーグル検索(6月13日)では、

「おぼんだま」=1万5500件

「お盆玉」  =5万8200件

「おぼん玉」 =5万8200件(※「お盆玉」で検索されました)

でした。まだ、件数は少ないですね。

ネット検索では「2014年7月」の記述に、こんなのがありました。

「発祥は江戸時代。山形県などで行われていた。お年玉袋を販売してきた日本郵便は、2014年7月にお盆玉を入れるためのポチ袋6種を販売開始。このほか祝儀袋などを販売するメーカーから、お盆玉用のポチ袋が発売されている。」

ということで、どうやら「おぼんだま」を盛り上げようとしているのは、

「日本郵便」

のようですね。

(2016、6、13)

2016年6月16日 12:06 | コメント (0)

新・ことば事情

6069「『逃走』か?『逃亡』か?2」

「逃走」と「逃亡」はどう違うのかが、気になりました。

以前、書いた覚えがあったのですが、その内容は忘れていて、ふと思いついた答えは、

「逃げて姿を消すのが『逃亡』、追いかけられて逃げるのが『逃走』」

というものです。以前書いたのを読んでみよう。「平成ことば事情4752『逃走』か?『逃亡』か?」ですね。

フムフム、大体、同じことだな。詳しく書いているけど、「一言」で言い表すと、今回思いついたことかなという感じですね。

詳しくは「平成ことば事情4752『逃走』か?『逃亡』か?」を読んでみて下さい。

(2016、6、13)

2016年6月15日 19:02 | コメント (0)

新・ことば事情

6068「『施策』の読み方」

ことし3月24日のテレビ朝日「報道ステーション」で、昭和21年(1946年)の金森徳治郎・憲法担当大臣の映像なども出て来た中で、VTR出演していた蝋山政道・お茶の水女子大教授が、こう話していました。

「明治政府の施策(せさく)が間違っていた」

この「施策」という言葉を、

「せさく」

と言っていたのです。放送ではこれは、

「しさく」

と読むことになっていますが、政界界隈ではよく、

「せさく」

と言われます。たぶん「しさく」と言うと、

「試策」

のように思われるからではないでしょうか。

「施策の読み方」

でネット検索をしてみたら、トップに出て来たのは、

『施策の読み方、「しさく」と「せさく」?』

というもの。それによると、

「正しい読み方は『しさく』で、『せさく』は慣用読み。」

『行政用語で「施策」を『せさく』と読むことが多いからかもしれない。『しさく』の同音類義語には『試作』『思索』もある。そのため行政では、それらの意味取り違えのないように『せさく』と読む場合があるようだ。』

「文化庁による平成15年度『国語に関する世論調査』によると『しさく』と『せさく』、ふだん、どちらで読むことが多いかという調査では、『しさく』が67,6%、『せさく』が26,1%という結果だった」

ということでした。

やはり、業界の読み方が広がることで、正しい読み方がだんだん隅に追いやられることもあるのだなという気がしました。

(2016、6、13)

2016年6月15日 15:01 | コメント (0)

新・ことば事情

6067「不動産店と不動産屋」

(2016年3月25日に書きかけました。)

CMを見ていたら、ナレーションと文字(スーパー・テロップ)で、「不動産屋」ではなく、

「不動産店」

と出ていました。やはり「屋」という呼び名はテレビなど公の場では避けられていて、それが「不動産屋」にも及んでいるのかと思いました。「不動産店」なんですね。ま、「不動産」を売っているのだから、「店」でいいと思いますが。

一方、その3か月後の6月11日、NHKのお昼のニュースでは、

「熊本のパン屋が営業再開」

と、スーパー(テロップ)も、ナレーション読みも、

「パン屋」

でした。「さん」も付いていませんでした。今「屋」と「店」、せめぎ合いを見せているようです。

グーグル検索では(6月13日)

「不動産店」  =  65万9000件

「不動産屋」  =  64万9000件

「不動産屋さん」=  37万1000件

お!「不動産店」と「不動産屋」は、ほぼ同数なんですね!これは意外。一般的な会話で出て来る「不動産屋」や「不動産屋さん」のほうが多いのかと思っていましたが、「不動産」は毎日、買いに行ったりはしないので、そういう意味では、少なくとも「パン屋」「パン店」に比べると、なじみが薄いのかもしれません。その「パン店」「パン屋」ですが、

「パン店」   =  39万1000件

「パン屋」   =2710万0000件

「パン屋さん」 = 818万0000件

これは圧倒的に「パン屋」「パン屋さん」が多いですね。一般に話し言葉で使われるのは、やはりそうなのです。かしこまった言い方の「パン店」は、普通はまず出て来ない。それこそ「ニュース」ぐらいなんですよね、きっと。

そして、「不動産店さん」「パン店さん」とは言いませんね。一応、検索。

「不動産店さん」=  1160件

「パン店さん」 =1万0200件

でした。硬い表現の「店」と「さん」を合わせるケースは、やはり少ないようです。

同じようなケースでは、2016年2月16日の関西ローカルで、阪神百貨店で開かれていたの「質流れ品大バザール」のニュースを放送していました。その中では、

「質屋」

という言葉が使われていました。「質屋さん」のように「さん」が付いているのではなく。「質屋」と「質店」の区別はどうなんでしょうか?「話し言葉」か、「堅い(硬い)言葉」なのか?状況によるんでしょうね。そのあたりは「平成ことば事情1601質屋か質店か」に書きましたので、そちらもお読みください。

また、「○○屋」が「蔑称」であるかどうか?については、「話し手の意識」、つまり「文脈」によるんでしょうね。その判断は難しいですね。

(2016、6、13)

2016年6月15日 12:00 | コメント (0)

新・ことば事情

6066「不適切」

舛添東京都知事。豪華すぎる海外出張に始まって、公用車の私的利用と思われる湯河原通い、お正月の家族旅行が政治的な打ち合わせなどなど、出るわ出るわ、

「1か月ぐらい風呂に入らなかった人の垢」

のように出て来ます。

「第三者」の元検事の弁護士による調査では、

「違法ではないが不適切」

「不適切だが違法ではない」

というものが、たーくさん出て来ました。

これって、順番を逆にしただけだけど、ちょっとニュアンスが違いますね。

ところで、

「不適切」

というと思いだされるのは、やはり、元アメリカ大統領の、

「ビル・クリントン氏」

ですね。そう、あの研修生のルインスキー嬢と、

「不適切な関係」

を結んでいたという大統領です。その奥さんが今、

「女性としては初の大統領候補」

になっているのはご存じのとおり。月日が経つのは早いものです・・・・。

ちょっとその「不適切な関係」を、以前書いたもので振り返って見ましょう。

********************************

「不適切な関係」は、いわゆる、

「オフィスでの不倫関係」

を指して使われることがある。一番有名な、そしておそらく「オフィスでの不倫」を意味する言葉として最初に使われた「不適切な関係」は、1998年、元ホワイトハウス実習生のモニカ・ルウィンスキーさんとの不倫疑惑での、ビル・クリントン米大統領(当時)の言葉である。英語では「Relationship that was not appropriate」という。この"事件"をめぐっての報道では、かなりきわどい言葉が、真面目な一般新聞紙上をにぎわした。

当時の一般紙を紐解いてみると、

「二十四日付のロサンゼルス・タイムズ紙は、消息筋から得た情報として、ルウィンスキさんは別の告白テープの中で、大統領との性的関係については、口を使う『オーラルセックス』や電話で性的な話をする『テレホンセックス』しか行っていなかったと話している、と報じた。さらにルウィンスキさんはテープの中で、大統領からこれらの行為は『性行為』ではないと言われた、とも語っているという。」(1998=平成10126日読売新聞朝刊:ワシントン発・大塚隆一記者)

とかなりあからさまに、もっと言えば"露骨"に、家庭に配達される一般紙にはふだんは決して載らないような内容まで書かれていたのを強烈に覚えている。この記事のスクラップの上に私は、

「大スポ(=大阪スポーツ。東京だと「東スポ」)ではありません!」

と書き加えているぐらいだ。

クリントン大統領も、ここまで直接的な言葉で話すことがためらわれたので「不適切な関係」というボカシ表現を使ったのではあるまいか。

この「不適切」とよく似た使われ方をする言葉には「不具合」がある。メーカー側など責任がある側は、

「当社の○○という商品に『不具合』が生じ・・・」

のように「不具合」と呼んで釈明・お詫び会見をする。特に2000年は、企業の製品に「不具合」がよく出た年だった。

しかしこの「不具合」という言葉は、妥当な表現ではない。一切の虚飾を取り去って言うと、これは「欠陥」「故障」「設計ミス」である。欠陥を認めたくないというメーカー側の気持ちが、このような言葉となって表れたのだろう。『広辞苑』には、

「不具合」=(製品などの)具合がよくないこと。また、その個所。多く、製造者側から「欠陥」の語を避けていう。

と、まさに「ズバリ」のことが記されている。「責任者側の、責任回避のための婉曲表現」である。「欠陥」と言うより「不具合」と言った方が、「もともとこちらの責任ではないのですが、なにか調子が悪くてうまくいかないんですよねー」というような、ぼんやりとした、責任の所在の分からなさを感じる。

一方、「欠陥」と言うと「その責任はどこにあるんだあ!」と「最後まで追及するぞ!!」という気持ちが、ふつふつと湧きあがって来そうである。

2001年1月19日付の産経新聞・夕刊には、

「トンネルの不具合 監視員置き徐行」

という見出しのベタ記事が載っていた。いくらなんでも"トンネル"に"不具合"という言葉を使うのは、具合が悪い。「欠陥」は「欠陥」と言うべきである。「不具合」が使える商品は、せいぜい「自動車」の大きさまで、という気がする。

また、事故などによって列車が線路を通れない状態なのに、

「運転を見合わせています」

というのも、よく考えるとおかしい。「運転を見合わせる」のは、「行こうと思えば行けないことはないが、念のため安全を期して、運転をしない状態」であって、「どんなに努力をしても、行くことは不可能」な場合に使うのは誤用である。これは「不適切な表現」だ。

余談であるが、クリントン政権で副大統領を務めたアル・ゴア氏が、地球環境を考える『AN

INCONVENIENT TRUTH(不都合な真実)』という著書を出版、映画化もされて話題を呼んだが、「不適切な関係」を結んだ大統領の、副大統領が出版した本の邦訳タイトルが「不都合な真実」というのは、訳者も役者だなあと思った。

********************************

これ、10年程ほどに書いたものです。

久々に「不適切」を連発して聞いたので、ついつい、こんなものを引っ張り出して来てしまいました。

(2016、6、8)

2016年6月13日 22:57 | コメント (0)

新・ことば事情

6065「初の女性大統領候補」

アメリカ大統領選挙で、ヒラリー・クリントン氏が6月7日、民主党の大統領候補者指名を確実にしました。「女性」が「大統領候補」になるのは史上初めてです。

このニュースを報じた6月8日の新聞各紙夕刊の紙面から、

「女性として初めての大統領候補」

ということに関する表現を拾ってみると、

    (見出し)           (本文)

(読売)米大統領選「初の女性候補に」 初の女性大統領を目指し

(朝日)2大政党初の女性候補     2大政党で初めて女性の指名候補となり

(毎日)********       女性が初めて主要政党で指名候補になりました

(産経)「初の女性大統領に」     初の女性大統領を目指す決意

(日経)「史上初の女性候補」     女性として初めて大統領候補となる

というものでした。

私が着目したのは、

「初の女性大統領候補」

なのか、それとも、

「女性初の大統領候補」

なのか、ということです。

さっき、日本テレビの6月8日「every.」では、

「初の女性大統領」

と女性アナウンサーが原稿を読んでいました。また「ミヤネ屋」の「ニュース250」のコーナーのテロップも、日本テレビは、

「初の女性大統領候補」

と出てましたが、読売テレビから出すテロップなどは、

「女性初の大統領候補」

にしました。これはちょうど8年前、オバマ大統領が大統領選挙を戦っていた時に、

「『初の黒人大統領』か「黒人初の大統領」か」

という表現の違いが問題になったことがありましたが、おんなじ問題ですよね。・・それについては「平成ことば事情4923 初の黒人大統領」に書いてあります。

グーグル検索では(6月8日)

「初の女性大統領」=5万6400件

「女性初の大統領」=1万1400件

で、「初の女性大統領」のほうが5倍ほど多いんですね。よく考えると、

「初の女性大統領」

も、

「初の女性の大統領」

の、

「後ろの『の』」を省略した形」

と考えれば、全然間違いではないんですけどね。

(2016、6、8)

2016年6月13日 19:56 | コメント (0)

新・ことば事情

6064「三と四」

世の中には、

「三大祭」「三大名園」「三大名所」

のように、

「三大○○」

と呼ばれるものがたくさんあります。その一方で、

「四天王」「四神」

のように、

「四○○」

というものもあります。「三」にせよ、「四」にせよ、収まりが良い数字なんですね。これに関して、ふと思いつきました。

「三」=東日本に多い?=キリスト教由来?

「四」=西日本に多い?=仏教由来?

ではないかと。特に根拠はありませんが、キリスト教で「三」と言うと、

「三位一体」

を思い浮かべます。「四」の「四神(しじん)」というのは、

「玄武・白虎・朱雀・青竜」

で、「色=方角=季節」をも表しますね。中国由来。

そして、キリスト教=西洋=「三」というと、「ワルツ」、そしてこの「三拍子のリズム」は、

「騎馬民族(?)由来」

ともよく言われます。それに対して、「四拍子」は、

「農耕民族由来」

というのも聞いたことがあります。本当かどうかはわかりませんが。以前「日本の唱歌」を調べたことがあって、その際に、

「三拍子の曲が少ない」

というのが分かったことがありました。(「平成ことば事情179ニジューニーテン・ゴーゴー」参照。2000年10月に書いています。)

それによると、『日本語研究所』(城生佰太郎=じょうお はくたろう、日本実業出版社刊)という本の中で城生先生は、

「日本語のリズムは基本的に四拍子からなっています」

と書いていて、私はそれを裏付けるべく、家の本棚にあった「日本の唱歌(上)明治篇・金田一春彦・安西愛子編(講談社文庫)」に載っていた163曲について調べてみたのです。

そうすると、163曲中、ほとんどは「4分の4拍子」か「8分の4拍子」、あるいは「4分の2拍子」で、それ以外の「4分の3拍子」か「8分の6拍子」という"3拍子系"のものは、わずかに20曲しかありませんでした。また、そのうち外国の曲(民謡や外国人が作曲したもの)が12曲。作曲者未詳のものが2曲で、日本人が作曲したものはたったの6曲だけだったのです。(その6曲の曲名は「港」(吉田信太作曲)、「美しき天然」(田中穂積)、「妙義山」(田村虎蔵)、「二宮尊徳」(田村虎蔵)、「敦盛と忠度」(田村虎蔵)、「昼」(弘田竜太郎)です。)

そして、私はこう締めくくっています。

「よく、欧米は3拍子=ワルツができるのは狩猟民族で馬に乗っていたから(パカパッ、パカパッ)、日本人は農耕民族で畑を耕す動きは「ヨイショ、ヨイショ。」と2拍子なので、頭の拍が強い2拍子が得意。ヤーレン、ソーランソーラン、ソーラン、ハイ、ハイ!となるのだ・・・などといわれますが、確かにそうなのかもしれません」

やっぱり「四拍子」なんですよね。そしてそれは、農業の作業のリズム・鍬で畑を耕すリズムではないかと。

明治維新前までは「四(拍子)」で、明治維新以降、欧米の文化が入って来て「三(拍子)」が増えたのではないか?と思うのです

そういう目で見ると、なんか、「三」と「四」に関しても傾向があるのかもしれません。ちょっと今後、気にして、見てみることにします。

(2016、6、13)

2016年6月13日 15:55 | コメント (0)

新・ことば事情

6063「尖閣諸島の島の読み方」

2012年7月9日に書きかけて、そのままになっていました。

きょう(2016年6月9日)中国海軍の艦船が尖閣諸島の久場島の接続水域に入ったというニュースで、日本テレビ『スッキリ!!』のニュースでは、

「久馬島」

を、

「クバジマ」

「島」を「ジマ」と濁って読んでいたので、どっちだったかなあと確認するために過去に書いたものを検索したところ、これが出て来たのです。しかし、まだネットにアップしていないことに気付いたので、急いで書き足しています。

実は「尖閣諸島の島の名前」については「2012年2月&4月&9月」に、新聞用語懇談会放送分科会で討議されていますので、その時の様子をここに載せます。

*【2012年2月】

(毎日放送)

尖閣諸島の「魚釣島」の「島」の読み方だが、調べたところ、

×「ジマ」→○「シマ」

であった。国連に登録されていた。国土地理院も「シマ」。「北小島」「南小島」「ジマ」と濁る。「大正島」「トー」。それぞれ違うのでご注意ください。

*【2012年4月】

読売テレビからの質問。「尖閣諸島」の5つの島、「魚釣島」「北小島」「南小島」「大正島」「久場島」 の「島」は「シマ」か?「ジマ」か?「トウ」か?

これについては、今年(2012年)初め、毎日放送の委員から以下のようなメールをもらっていた。

『「魚釣島」の読みなのですが、「うおつりじま」かと思っていたところ、共同通信の原稿が「うおつりしま」となっており、問い合わせたところ、「国土地理院」が「清音」で表記しているためだと判明した。当社アナウンサー室でも調べたところ「市販の地図帳」には「濁音表記」もありますが、国土地理院ほか公の表記は「清音」である事が判明した。YTVさんではどのようにお考えでしょうか?』

さらに、その後もTBSさんと一緒に調べられて、

『国連に登録されている読みが「しま」でしたので、JNNはこれに従うことにいたしました。魚釣島(うおつりしま)、久場島(くばしま)、大正島(たいしょうとう)、北小島(きたこじま)、南小島(みなみこじま)で登録されているそうです。』

読売テレビでは、「準拠」させてもらったが、今朝(20日)の日本テレビ「スッキリ!!」では「魚釣島」を「ジマ」と濁って読んでいた。NHKも全部『ジマ』と濁って読んでいたとのこと。また朝刊各紙は、ルビは振っていない社が多いすが、「朝日新聞」の2面解説面だけは、5つの島すべてに「じま」というルビが振ってあった。各社さんは「島」の読みはどうされているでしょか?

→(NHK)「ジマ」。沖縄放送局の読み方にあわせている。

(日本テレビ)決まっていないと思うが、「ジマ」かな?

(TBS・毎日放送)「シマ」

(フジテレビ)夕方のニュースのキャスターに聞いたら「決まっていない」とのことだったが、実は「ジマ」。沖縄・石垣島の人たちの呼び方にあわせているとのこと。

(テレビ朝日)決めてはいないが「ジマ」。

(テレビ東京)「シマ」。国土地理院に従った。

(朝日放送)「ジマ」。ただし「久場島」だけは「シマ」と濁らない。三省堂の地名辞典に従っている。

(共同通信)「シマ」。国土地理院に従っている。

【2012年9月】

尖閣諸島の島の名前【読売テレビ・道浦委員】

 以前(今年4月)放送分科会で出た「尖閣諸島」の島の名前の読み方(シマか?ジマか?

トウか?)ですが、その後、変更があったとか「決まってなかったのが、決まった」という社はありますか?現状は?4月の時点では「魚釣島」「北小島」「南小島」「大正島」「久場島」を、

(NHK)「ジマ」。沖縄放送局の読み方にあわせている。

(日本テレビ)決まっていないと思うが、「ジマ」かな?

(TBS・毎日放送)「シマ」

(フジテレビ)夕方のニュースのキャスターに聞いたら「決まっていない」とのことだったが、実は「ジマ」。沖縄・石垣島の人たちの呼び方にあわせているとのこと。

(テレビ朝日)決めてはいないが「ジマ」。

(テレビ東京)「シマ」。国土地理院に従った。

(朝日放送)「ジマ」。ただし「久場島」だけは「シマ」と濁らない。三省堂の地名辞典に従っている。

(共同通信)「シマ」。国土地理院に従っている。

ということでしたが・・・。

→【テレビ朝日】4月の時点では「決めてはいないが『ジマ』」だったが、8月16日に「魚釣島」「北小島」「南小島」「久場島」すべて「ジマ」、「大正島」だけ「トー」とした。根拠は「石垣市役所」に問い合わせて、それに従った。ちなみに「魚釣島」「久場島」を「シマ」と決めている「国土地理院」も「石垣市役所」に聞いて決めたとのことだが、そのことを国土地理院に聞いてみたら「地元自治体の担当者によって、呼び方が違うことがある」とのことだった・・・。

【朝日放送】テレビ朝日と同じANN系列だが、「大正島」だけは、テレビ朝日の「トー」と違って「ジマ」と読む。これは「朝日新聞」の読みに倣った。

【日本テレビ】9月6日に、テレビ朝日と同じように「大正島(トー)」を除く4つの島は「ジマ」と呼ぶことになった。これは「石垣市役所企画政策課」の見解に基づく。文献などはない。

ということで、日本テレビでは「久場島」は、

「クバジマ」

と濁って読むということですね。

(2016、6、12)

2016年6月13日 11:20 | コメント (0)

新・ことば事情

6062「どはやい」

平成ことば事情6053「どびつこう」出も書きましたが、何にでも「ど」は付くという話。「スマホ」のコマーシャルを見ていたら

「スマホ どはやい」

というのがありました。2014年3月のことです。もう2年以上前。単に「はやい」

のではなく「ど」が付いて、「どはやい」ですか。どどどどどど。

グーグル検索(2016年6月17日)では、

「ど速い」=2860件

「ど早い」=2900件

でした。「どはやい」は、検索すると「どうはやい」になってしまうので検索できませんでした。その後、あまり定着していない感じですね。

(2016、6、7)

2016年6月12日 21:18 | コメント (0)

新・ことば事情

6061「模擬店か?屋台か?」

4月6日の「ミヤネ屋」のパネルのチェックの段階で、結婚披露宴やパーティーの際、ホテルの会場で「おそば」や「おでん」その他の料理を料理人がその場で出してくれる「お店」を、

「模擬店」

と表現していました。それを見た林マオ・アナウンサーが、

「これでいいのでしょうか?」

と聞いて来ました。たしかに「学園祭」などとは違い、

「素人ではなく、プロが料理を出してくれる」

のですから、

「"模擬"店」

はマズいだろうと、

「屋台」

に変更しました。

でも、あとで考えると、「屋台」しっかりとした「店(店舗)」を「模した」ものであるのならば、

「模擬店」

と呼ばれても間違いではないのかな?という気もしないではなかったのですが。

(2016、5、3)

2016年6月10日 10:02 | コメント (0)

新・ことば事情

6060「『先月』のアクセント」

きょう(4月18日)のお昼のニュースで、朝日放送の女性アナウンサーと、NHKの男性アナウンサーが、

「先月」

という言葉を、「平板アクセント」で、

「セ/ンゲツ」

と言っているのを耳にして、違和感を覚えました。

私の持っていう『NHK日本語発音アクセント辞典』では「頭高アクセント」の、

「セ\ンゲツ」

しか載っていません。5月に18年ぶりに出るというNHKの新しいアクセント辞典は「平板アクセント」を認めているのでしょうか???

もしかしたら若い人たちの間では、

「平板アクセントの『先月(セ/ンゲツ)』が広がっているのではないか?」

と思いました。

読売テレビのアナウンサーに、

「『先月行われた』というような文脈での『先月』を、どのようなアクセントで読みますか?

(1)セ\ンゲツ(頭高アクセント)

(2)セ/ンゲツ(平板アクセント

(3)その他

でしょうか?」

とメールで尋ねたところ、回答を寄せた「11人全員」が、

(1)セ\ンゲツ(頭高アクセント)

でした。また、

「なぜ、『平板アクセント』の『セ/ンゲツ』が聞かれるようになってきたのか?」

という理由については、

「『平板アクセント』の『先日(セ/ンジツ)』と混同しているのではないか?」

という意見も出ました。

さらに、4月22日に行われた「用語懇談会放送分科会」で、NHKの委員の方に、

「新しく出るNHKアクセント辞典で『先月』のアクセントはどうなっているか?」

と伺ったところ、確認してくれて、

「『頭高アクセント』の『セ\ンゲツ』のみです」

との答えでした。

(2016、5、2)

2016年6月 9日 23:00 | コメント (0)

新・ことば事情

6059「熊本地震での同音異義語」

4月14日夜の熊本地震の発生から2週間が過ぎました。4月28日正午現在、亡くなった方49人、行方不明1人、震災関連死された方も16人。いまだに約3万6000人が避難生活を過ごしていらっしゃいます。謹んで哀悼の意を表します。

さて、その熊本地震のニュースをお伝えする中で気になった「同音異義語」について書きます。

*「収束」か?「終息」か?

「事態が収まる・落ち着く」意味では「収束」を使います。こちらのほうが、出現回数は多いでしょう。今回は、「地震のシュウソク」ということだったので、「終わる」意味の「終息」を使いました。しかし、地震に伴う避難生活や生活の安定(休みだった学校が始まるとか)など、一連の「震災」について述べるのであれば「収束」のほうがふさわしいと思いますので、文脈によって使い分けます。

*「体制」か?「態勢」か?

「24時間タイセイで捜索しています」という場合の「タイセイ」は、「体制」か?「態勢」か?「体制」は「システム・組織」のことを指すので、来るかもしれない地震に備えて「体制を整えています」という場合は「体制」です。その「体制」が、たとえば「3交替で24時間」にわたるものであれば「24時間体制」でしょう。しかし今回は、既に人員を投入して「捜索を行っている」ので、こういった場合は「24時間態勢で捜索している」と「態勢」を使います。

24時間態勢で対応に当たっていらっしゃる皆様に敬意を表し、一日も早い地震の終息と事態の収束を願います。

(2016、4、28)

2016年6月 9日 20:58 | コメント (0)

新・ことば事情

6058「タケノコ採りか?タケノコ掘りか?」

5月21日、NHK夜6時のニュースで、秋田県鹿角市でクマに襲われた髙瀬さんという男性(高瀬さんの高が梯子高)が死亡したというニュースを伝えていました。髙瀬さんは、

「タケノコ採り」

に来ていたというのです。

「タケノコ掘り」

ではなくて。毎日新聞も「タケノコ採り」でした。

また、5月末に北海道・七飯町(ななえちょう)で小学2年生の男の子が、父親が「しつけ」の一環として「置き去り」にしたところ行方不明になった事件も、最初、父親は、

「『タケノコ採り』に来ていて、行方が分からなくなった」

と言っていました。

私の感覚だと「タケノコ」は「掘る」物だと思うのですが、最近よく「タケノコ採り」という表現を見かけます。タケノコに関しての表現が変わってきているのでしょうか?

グーグル検索では(6月7日)

「タケノコ採り」=22万4000件

「タケノコ掘り」=36万5000件

で、「掘り」のほうが「1,5倍ぐらい多い」のですが。

と、ここまで書いて、

「以前、書いたような気が・・・」

検索するとやっぱり書いていました。2008年に「平成ことば事情3304タケノコ採りか?タケノコ掘りか?」で。全くおんなじタイトルや!

それによると、

「東北・北海道のタケノコは『ネマガリダケ』というタケノコで、これは『掘る』というよりは『採る』なのだ」ということでした。

たしかに、今回出て来たのは「秋田」と「北海道」。ということは「タケノコ採り」で良いということですね。

いやあ、8年も経つと、すっかり忘れているなあ。

(2016、6、7)

2016年6月 9日 17:55 | コメント (0)

新・ことば事情

6057「デコルテ」

見るとはなしに、テレビの音を消してコマーシャルを見ていたら、女性用のクリームの宣伝を放送していました。クリームを首とその下の部分に塗っている中年女性の映像の横に、こんな字幕が。

「首・デコルテ部分は強調しています」

とかなんとかいうものでしたが、この、

「デコルテ」

の意味が分かりません。(なんとなくは、わかっていますが。)

「ローブ・デコルテ」

は知っていますが、あれは「服」でしょ、皇族とかセレブが、それこそ「アカデミー賞授賞式」などに来ていくような。

隣の席のIさん(20代女性)に、

「デコルテって、どういう意味?」

と聞いたところ、すぐさま、

「首の下の襟ぐりの部分」

を指して、

「この部分です」

と教えてくれました。

「でも、本当は『ローブデコルテ』の略だろうから。『服』のことを指したのが、襟ぐりが大きく開いている服なので、その『開いた部分の肌』を指すように、意味が変わってきているのかもしれないね」

服飾関係に詳しい『三省堂国語辞典』第7版を引いてみると、

*「デコルテ」=(1)(女性の)胸の上部から首にかけての部分。(2)デコルテ(1)を強調した、えりぐりが大きく開いたドレス。ローブ デコルテ。

と、ちゃんと「首の下の襟ぐりの部分」の意味が、一番最初に載っていました!さすが!「ローブデコルテ」は2番目か。『精選版日本国語大辞典』でも「2番目」の「服

の意味しか載っていませんでしたが、もしかしたら、本来的な意味は、

「首の下の襟ぐりの部分」

を指すのかな?

最近見た別のコマーシャルでも、「顔」用の化粧水を「デコルテ部分」にも塗って、

「デコルテも!」

と宣伝しているものもありました。女性はみんな知っているんでしょうけど、男性はちょっと縁遠い言葉が「デコルテ」ですね。「おデコ」は関係ありませんね。

(2016、6、7)

2016年6月 9日 15:05 | コメント (0)

新・ことば事情

6056「ボトムス」

昼ご飯を社員食堂で食べながら見ていた2016年1月19日の日本テレビ「ヒルナンデス」で、

「ボトムス探し」

という文字が画面に出て来ました。この、

「ボトムス」

というのは、

「ズボン・スラックス」

のことですよね?「上着」は、

「トップス」

と言うのかな。言うんだろうな。ファッション関係の言葉もよく拾っている『三省堂国語辞典・第7版』を引いてみると、

*「ボトムス」=下半身につける衣服の総称。ボトム。()スカート・ズボン・レギンス。(↔トップス)

*「トップス」=上半身位切る衣服の総称。()ジャケット・シャツ・ブラウス。(↔ボトムス)

と、両方載っていました。さすが!「ボトムス」は「ズボン」だけでなく「スカート」なども指すのですね。つまり

「男女兼用の表現」

ですね。

グーグル検索では(6月7日)、

「ボトムス」=1750万件

「トップス」=2900万件

と、ものすごい数、出て来ました。

ま、耳にしたことはあっても、自分からは使わない語彙ですね、私にとっては。

(2016、6、7)

2016年6月 9日 10:04 | コメント (0)

新・ことば事情

6055「夜ごはん2」

2001年6月に書いた「平成ことば事情360 夜ごはん」の続編を、14年ぶりに書きます!(2015年5月に、こう書きかけています)

というのも、(2015年)5月7日に行われた「関西地区新聞用語懇談会」で、この「夜ごはん」という言葉が記事や原稿に出て来たら、「夕ごはん」「晩ごはん」に直すかどうか?という各社へのアンケートの結果が発表され、議題に上ったからです。14年の時を経て、「夜ごはん」はどうなったか?

★【夜ごはん】よりもむしろ朝ごはんをしっかり取った方が望ましいという。

      ×直す=14社      ○直さない=6社

<直す>

【読売】×...(直す7、直さない4)

・晩ごはん、朝食・夕食に直す

・俗語臭が強く、そもそも夜食と区別がつかない

  ・日常生活で使っている

【サンスポ】×...晩ごはん 

【スポニチ】×...「夕ごはん」に。紙面で「夜ごはん」というのを見たことはない。ずっと「夕ごはん」

【共同】×...朝-晩(夕)、昼-夜。だから手直し例は「晩ごはん」が自然だろう。全員「直す」だった。夕食、晩ご飯だとそんなに遅くないが、夜食は時間が遅くなる。過去3年の使用例なし。校閲は全員「直す」と(50代)。若い人は「夜ごはん」とか「プチごはん」などと言っているようだが。

【時事】×...晩ごはん

【MBS】×...晩ご飯、夕飯、夕食。OAで「夜ごはん」を使ったところ、視聴者から苦情が来た。通常は「朝ごはん・昼ごはん・晩ごはん」。わが社は「深夜食堂」という番組も作っているが、その場合は「夜食」でいい。

【KTV】「朝ごはん・昼ごはん・晩ごはん」のセット。もし、若いアナウンサーが「夜ごはん」と言ったら、こっぴどく注意する!どちらかと言うと、関西の人は「晩ごはん」を使う傾向があるのでは?

【YTV】×...晩ごはん・夕ごはん(ex)「隣の晩ごはん」「夕ごはん食べた?」などの番組タイトルもあった。私が「夜ごはん」という言葉に初めて気付いたのは14年前(2001年6月)。その時のグーグル検索では、

「晩ごはん」=1万2500件

「夕ごはん」=  4460件

「夜ごはん」=  4410件

だった。国語辞典には「夜ごはん」は載っていなかった。

その後2004年1月に検索したら、

「晩ごはん」=2万3500件

「夕ごはん」=  7700件

「夜ごはん」=1万0100件

と、「夜ごはん」が増えていた。今調べると(2015年5月)、

「晩ごはん」= 88万700件

「夕ごはん」=145万0000件

「夜ごはん」= 52万7000件

で、意外なことに「夕ごはん」がトップになっていた。「三省堂国語辞典・第7版」には、「夜ごはん」=「夕ご飯の新しい言い方」として載っている。

【TVO】×...晩ごはん。食事の時間が遅くなっていることが影響か。

【神戸】×...言葉として原稿や紙面に登場したことがない。「夕食」などに訂正

【山陽】×...晩ごはん

【中国】×...基本的に、記者が書く文章では「晩ごはん」。例外的に、若い人からの寄稿で「夜ごはん」を使うこともありますが、「夜ごはん」は、幼稚な感じがする。

【徳島】×...晩ごはん

【高知】×...晩ごはん

<直さない>

【日経】○...「晩ご飯」「夕ご飯」という意見もあろうが、生活スタイルの変化による新語として認められる。「夜ごはん」は生活スタイルが変わって来て、夕飯の時間が遅くなっているので出て来た言葉だろう。認められるのでは?

【毎日】○...基本的には直さない。だめという材料がないので。新しい言い方、幼い言い方と感じる人がいるのは事実なので、そぐわない文章であれば直すことを提案することがあるかもしれない。「夜ごはん・晩ごはん」「朝ごはん・朝食」は、紙面によって使い分ける。

【産経】○...あくまでも個人的な見解ですが、若干の時間帯のずれなので、口語的ではありますが、よほど文脈にそぐわない限り直さない。「夜ごはん」と言う人が多い。

【日刊スポーツ】○...めったに見ませんが、見たら出稿部に確認するでしょう。「夜ごはん」は見たことがない。ただ発言の「 」(カギカッコ)内ならばそのまま通す。

【愛媛】○...ケースバイケース。記者は「晩ごはん」を使う。しかし、自分でも家庭で子どもと話すときは「夜ごはん」を使っている。若い人は「晩ごはん」は使わない。

【朝日】△...「直す8:直さない9」。(直さない理由)言葉にして言うことが多い/晩ごはんにすべきだという理屈がつけづらい/文脈による/「朝ごはん」自体が口語だと思うので。(直すとすれば)晩ごはん、夕飯、夕食            

【ABC】△

 1・直さない...聞いて違和感がない

2・直す...そう言う商品名などもあるのでしょうか? 一般論として、アナウンサーが使うと「幼く」聞こえてしまう。「夕ごはん」「晩ごはん」などが適当か? ただ『ダイエットの為には"夜ごはんは軽目に"』など"夜の食事"を特に強調する意味で使うケースもあるようです

違和感はないという人と「夜ごはん」は幼く聞こえてしまうという声も。ダイエットで「夜9時以降に食べるご飯は体に良くない」という場合に、そのごはんを食べる時間帯を強調して「夜ごはん」と言うことはある。NHKアナウンス室のHPでは「『夕ごはん・晩ごはん』は家族みんながそろって食べるごはん」で、「夜ごはん」は「個食」というような感覚があると書かれていた。

『三省堂国語辞典』は「第6版」(2008年)から見出しに入っていました。2001年の「第5版」には載っていませんでした。ちなみに「真逆」も、「第6版」からで「第5版」にはありません。「T字路」は「第5版」で、すでに入っていました。

(2016、6、7)

2016年6月 8日 22:00 | コメント (0)

新・ことば事情

6054「ジョニデとイエモン」

同じ日に目にした2つの「カタカナの略称」に関してです。

「ジョニデ」

と、もう一つは、

「イエモン」

です。ご存じだと思いますが、

「ジョニデ」←「ジョニー・デップ」

「イエモン」←「イエロー・モンキー」

のそれぞれ略称・通称ですが、略し方が違いますね。

「ジョニデ」は「ジョニー・デップ」という「前半・後半」のうち、

「前半2文字+後半の頭1文字」

でできています。一方の「イエモン」は、「イエロー・モンキー」という「前半・後半」のうち、

「前半2文字+後半2文字」

という構成です。どちらも省略の仕方もありますね。たとえば、

「ドリカム」←「ドリームズ・カムトゥルー」

の場合は「イエモン」と同じ。

「コスパ」←「コスト・パフォーマンス」

の場合は「前半2文字+後半1文字」で、「ジョニデ」と同じ形。

「リスケ」←「リ・スケジュール」

の場合は「前半+後半2文字」ですが、これもどちらかというと「ジョニデ」に似ている気がします。

「ひらパー」←「ひらかたパーク」

の場合は「前半2文字+後半1文字」で、これも「ジョニデ」型でしょう。

「2+2」の「イエモン」型よりも、非対称の「ジョニデ」型の方が、よりインパクトが強く、知っている人の間では結束力が強くなるような気がしました。

これとは別に、「レオナルド・ディカプリオ」は、

「レオ様」

で、また違う略し方。「ペ・ヨンジュン」を、

「ヨン様」

と呼ぶのとちょっと似ています。いろいろあるんですね、略し方。

(2016、6、7)

2016年6月 8日 19:46 | コメント (0)

新・ことば事情

6053「どびつこう」

4月24日、NHKの朝ドラ「あさが来た」のスピンオフ番組をやっていました。その中で「がんすけ」さんが、こんな大阪弁を使っていました。

「どびつこう」

初めて耳にしましたが、「ひつこい」の頭に「ど」が付いて、「ひつこい」の「ひ」が濁って、さらに語尾が「ウ音便」になっているんですね。あ、「ひつこい」は、標準語・共通語では、

「しつこい」

ですね。

グーグル検索では(6月7日)

「どびつこい」=539件

「どびつこう」= 19件

件数自体は少ないのですが、なんと「どびつこい」は『大辞林』に載っていました!

*「ど びつこ・い( )〔「ど」は接頭語。「ひつこい」は「しつこい」の転。近世上方語〕「しつこい」ことを強めていう語。 「雑魚鰯(ざこいわし)を値切るやうに何のかのと-・い/浄瑠璃・廿四孝」

歴史のある言葉だったのですねえ。牧村史陽の『大阪ことば辞典』にも載っていました!

*「どびつこい」=しつこいをさらに強めていう語。

それにしても、いろんな言葉に「ど」は付くのですねえ。驚きました。

(2016、6、7)

2016年6月 8日 15:44 | コメント (0)

新・ことば事情

6052「クチンスキか?クチンスキーか?」

ペルーの大統領選挙は、フジモリ大統領の娘、ケイコ・フジモリ氏と、元首相のクチンスキ氏の一騎打ち。一夜が明けて開票率が92%になっても、両者の差が1%以内という大接戦です。このケイコ氏の相手の、

「クチンスキ氏」

の表記ですが、「語尾を伸ばすかどうか」で2つに分かれています。

*「クチンスキ」=日本テレビ・産経新聞・毎日新聞・時事通信・ロイター通信

・共同通信

*「クチンスキー」=読売新聞・朝日新聞

どっちなのかなあ?

グーグル検索では(6月7日)

「クチンスキ」 =2万5000件

「クチンスキー」=3万0700件

こちらも大接戦でした。

ちなみにクチンスキ氏は77歳!ケイコ氏のお父さんのフジモリ元大統領と同い年です。

(2016、6、7)

2016年6月 8日 10:43 | コメント (0)

新・ことば事情

6051「1本1本」

田植えの季節です。

ニュースでも季節の話題で、子どもたちが田植え体験をしたといったものを放送しています。そのニュースを放送したところ、視聴者の方からお叱りのご意見が届きました。

「今、アナナウンサーが、『子供たちは11本、丁寧に苗を植えていました』と言っていたぞ!イネを『11本』植えるわけ、ないだろ!」

あ、たしかに。「1本1本」は植えないですね、イネは。

本当に視聴者の方は細かいところまで丁寧に見て(聞いて)いるんだなと感心しました。

それから数日。きょう(6月7日)のお昼のニュースでも「子どもたちの田植え」のニュースが項目に入っていました。(「梅田スカイビル」での田植え)

「まさか、また『1本1本』になってないだろうな?」

と心配になって原稿を見に行くと、きょうはしっかり、

「1株ずつ」

となっていたので、安心しました。こういった小さなところから、きっちりと対応していきたいです。ちなみに、朝日放送のお昼のニュースでも、同じ「子どもたちの田植え」のネタが入っていて、原稿は、「1株ずつ」と読んでいました。

(2016、6、7)

2016年6月 8日 00:42 | コメント (0)

新・ことば事情

6050「森と林」

ふと、疑問に思いました。

「なぜ『林業』と言うのか?」

「森業」でも「木業」でもないのか?

ふーむ。

自分で思いつきながら、確かに不思議。でもそれは「林」と「森」と「木」の違いに着目すれば良い。全然関係ないけど、わが読売テレビ・アナウンス部には、「森」もいるし「林」もいます。

まず「木」ですが、これを扱う仕事の名前としては、

「製材業」

があり「材木」を扱っていますね。「木」単体では「業」と名乗るには物足りない。

そうだ、「林業」は、

「木を植える仕事」

だ!つまり

「植林」

をすると。「植林」てのも、よく考えたらちょっとおかしい。植えるのは、

「木の苗」

であって「林」を植えるのではない。でもそれは、

「お湯を沸かす」

みたいな話で(「水」を沸かすので「お湯」を沸かすのではない!と言う人がいるんです)、「結果として林をとなる木を植える」ということなのだろうな。そうすると、見えて来ましたよ。「林」は、人間がコントロールして活用するために木を植えて、それをコントロールする、つまり、

「木の田んぼ」

みたいなものなのですね。それに対して、「森」は、原則的には、

「自然のまま、木が生えた山」

という感じですかね。「雑木林」なんてのは、「コントロールされていない」ですけど。

文豪「森鴎外」の本名の、

「森 林太郎」

なんてのも、自然の「森」(名字)を、「林」にコントロールするような意味があったのかな?そういえば昔「ミヤネ屋」のスタッフで、一見「大林(おおばやし)」に見える、

「木林(きばやし)」

という名字の人がいたけど、「森」じゃないのね、「木林」は。

(2016、6、6)

2016年6月 7日 22:23 | コメント (0)

新・ことば事情

6049「焼死体」

5月19日、岩手・盛岡市の火災で2人の遺体が見つかった事件で、当初「ミヤネ屋」の原稿などに、

「焼死体」

という言葉が出て来ましたが、

「遺体」

に直しました。理由は、

(1)「焼死体」「溺死体」等の言葉でイメージされる状態が悲惨なので。(『放送で気になる言葉2011』40ページで、「焼け死ぬ」「溺れ死ぬ」という言葉に関しては「苦しむ様子を生々しく連想させるほか、冷酷な表現と受け取られる恐れもある」として「注意して使いたい言葉」になっていますが、それに準じる。)

(2)「焼死体」という言葉からは「死因」が「焼け死んだ」ように思えるが、「別の原因で死んだ後に焼かれた」のかもしれないので、「焼死体」とひとくくりにすることに疑問。

といったことです。

なお、この日のお昼のニュースでは、「日テレ」(本記部分は現地・テレビ岩手の原稿・ナレーション読み)と「フジテレビ」は、

「焼死体」

を使っていましたが、「TBS」は使っていませんでした。

夜、日本テレビの「every.」や、NHKの夜「7時のニュース」でも、

「焼死体」

という表現は使っていませんでした。

5月19日の夕刊各紙は、

【見出し】             【本文】

(読売)住宅全焼 庭に他殺体     1階からは全身が焼けた性別不明の遺体  殺人・放火か 屋内にも遺体   

(朝日)住宅全焼 2遺体        1階の焼け跡からは性別不明のもう1人の遺体

(毎日)放火殺人の疑い 盛岡で2人死亡 焼け跡から別の1人の遺体

(産経)火災の住宅2人死亡       1階の焼け跡から男性とみられる別の遺体

(日経)殺人・放火か 2人死亡     1階の焼け跡からも男性とみられる別の遺体

ということで、新聞はどこも「焼死体」は使っていませんでした。

(2016、5、19)

2016年6月 7日 18:19 | コメント (0)

新・ことば事情

6048「アルファ碁」

<2016年3月16日に書きかけました>

コンピューターの囲碁のプログラムと、韓国のプロ囲碁の名人が対戦した5番勝負は、コンピューターの「4勝1敗」に終わりました。その囲碁のプログラムの名前は、

「アルファ碁」

ですが、その読み方について、

「ア/ルファ\ーゴ」

と読売新聞からの速報(読売テレビの報道フロアに流れるんです)の声で読んでいました。まるで、高級車の名まえの用です。(それは「ア/ルファ\ード」!)

「アルファ」は普通は伸ばさずに書くので読むとしたら、

「ア/ルファゴ」(平板アクセント)

になるのではないでしょうか?でも、これって、言いにくいんですよね。

「α波」

の場合も、本来なら、

「ア/ルファ\ハ」

と読むんですが、どうしても「ファ」が伸びて、

「ア/ルファ\ーハ」

になることが多いですよね。これに関しては、ちょっと古いですが、2001年12月の新聞用語懇談会放送分科会で、話し合われたことがあります。それによると、

*α波=「α波」は、「アルファは」なのに、誰もそのとおりには言わずに「アルファーは」と「ファ」を伸ばして発音する。表記と発音の不一致ではないか?

☆「二二六事件」も「ニニロク」とは誰も言わない。普通は「ニーニーロク」と引っ張っていう。日本語のリズムに合わして、表記には無くても伸ばすことはある。

☆「インターチェンジ」も、ついこの間まで表記は「インタチェンジ」でやっていた。(共同通信)

☆外国語を外来語として取り込むときには、できるだけ原音に近くというのが原則だが、長音の場合は、日本語のリズムというのが重要視される傾向にある。

というような意見が出ました。

なお、「平成ことば事情6047アルファ米か?アルファ化米か?」もお読みください。

(2016、6、6)

2016年6月 7日 13:18 | コメント (0)

新・ことば事情

6047「アルファ米か?アルファ化米か?」

「ミヤネ屋」のテロップに、

「アルファ化米」

というのが出て来ました。前日も出て来たのですが、その時は、

「アルファ米」

だったので、どちらが正しいのだろうか?とグーグル検索(2016年4月20日)してみたら、両方出て来ました。しかし件数は、

「アルファ米」 =40万5000件

「アルファ化米」=23万2000件

ということで「5:3」で「アルファ米」のほうが多かったので、

「アルファ米」

にしました。しかし、いずれにせよ、

「アルファ化したお米」

という意味では、間違いではないのですね。しかし、そもそも

「アルファ(化)米」

というのは、どういうお米なのか?

「アルファー食品」という会社のホームページによると(この会社の名前は「アルファー」と語尾が「-」で伸びるんですね)、

「炊いたり蒸したりしたお米を、熱風で急速に乾燥させておいしさを閉じ込めたお米」

のことだそうです。そして、

「なぜ『アルファ化』と言うのか?」

というと、お米に含まれているデンプンには、

*「生のコメ」=「β(ベータ)デンプン」=腐りにくいけれど食べても消化されにくい

*「炊飯したコメ(ご飯)」=「α(アルファ)デンプン」=体内で消化されエネルギーになるが腐りやすい状態にある。

の2種類があるのだそうで、「アルファ化米」は、

「一度、炊いたり蒸したりした」

ので、デンプンが、

「アルファー・デンプン」

になっている。だから、

「アルファ(化)米」

と言うそうです!

(2016、4、21)

2016年6月 7日 08:17 | コメント (0)

新・読書日記 2016_092

『中傷と陰謀~アメリカ大統領選狂騒曲』(有馬哲夫、新潮新書:2004、10、20)

ちょっと古い本なんですが・・・"積ん読"になっていてようやく読めました。良かった。歴史を学びながら、記憶を思い起こすような、そんな読書になりました。12年前の本だけど、本質的には大統領選挙の内容は変わってないんだろうなと思った。

今年は4年に1度の大統領選挙の年。トランプ対ヒラリー、なんだかあまり前向きになれそうもない対決になってしまったけど、泣いても笑っても11月には新しい大統領が決まってしまいます。

この本では主に「大統領選挙を左右した宣伝作戦」を記しています。知っているものもありましたが、改めて読むと勉強になりました。


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(2016、6、2読了)

2016年6月 7日 19:57 | コメント (0)

新・読書日記 2016_091

『「子育て」という政治~少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(猪熊弘子、角川SSC新書:2014、7、25)

2年前に出たこの本。改めて読んでみると、なんと消費税率は2015年10月に10%に引き上げられて、そこから「7000億円」が子育てのために保育所建設や保育士の費用に充てられることになっていた・・・。上がってませんね、消費税率。それどころか、2年半先送りです。「リーマン・ショック並み」の景気の落ち込みは無いにもかかわらず。

決して景気がいいわけではない。数字は良いかもしれませんが、バーチャルな好景気です。実感を伴わない好景気。でも「リーマン・ショック並み」でないことは、みんなが知ってる。実際は「やや不景気」です。

先日、東京・杉並区が「公園に保育所を作ろう」という計画を打ち出したところ、近所の住民から反対を受けているというニュースをやっていましたが、本書のサブタイトルにあるように「少子化なのに、なぜ待機児童が生まれるのか?」という問題は、一向に解決されていません。保育所をかなり作ったのに、待機児童は逆に増える。なぜ?保育所に入れるかも・・・ということで働きに出たいお母さんが増えるから。「1億総活躍社会」とかで、みんな外に働きに出させられているから?結局「働きたいお母さんがたくさんいる場所」には「保育所」が足りず、そうでない所では、保育所は余っている。「場所とニーズの不一致」です。一極集中がこの事態を生み出しているのですね。また、「待機児童ゼロ」を誇っていた自治体も、実は数字の上で操作して、「隠れ待機児童」がどんどん増えているだけという事態があることも明らかに。問題の根本的な解決策は、どこに????


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(2016、5、31読了)

2016年6月 7日 10:56 | コメント (0)

新・読書日記 2016_090

『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社新書:2016、5、1)

いま、ベストセラーです。いっとき、本屋さんの店頭から消えたというウワサも。たしかにあまり見かけなかった時期もありましたが、今はもうバンバン出ています。

安倍政権がいろいろな問題を抱え、「アベノミクス」が、誰がどう見たって失敗しているにもかかわらず「成功した」と強弁し、いろんな失言などもありながら、なぜ支持率も下がらずに延命しているのか?また、安倍首相が突っ走る日本の「右傾化」的傾向を、思想的に支えている「陰の存在」は何なのか?それを探って行った時に「日本会議」という存在が浮かび上がってきたのだ。民間の保守団体であり、草の根ネットワークで広がった組織「日本会議」。その歴史と現在への影響に至るまでを調査し調べた一冊。そもそもは「生長の家」から始まったが、「生長の家」が政治活動をやめたときに分派していった人たちが、今の「日本会議」を作り上げたという。ちょっと「陰謀論」的なにおいもするのだが、知らなかった裏の世界を覗き見ることができた。


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(2016、5、20読了)

2016年6月 6日 19:55 | コメント (0)

新・ことば事情

6046「舛添のブラ」

会社の自分の席で仕事をしていると、スタッフのこんな声が聞こえて来ました。

「ここは舛添のブラと、各会派のブラでいこう!」

一瞬、引っかかってしまいました。いや、違います、ヘンな想像は、やめてください!

たしかに一般的に「ブラ」と言えば、

「ブラジャーの略」

ですが、この場合の「ブラ」は、平仮名で書いた「ぶら」。何かと言うと、

「ぶら下がり取材の略」

なんですね。「頭高アクセント」で、

「ブ\ラ」

です。グーグル検索では、

「ぶら ぶら下がり取材」=   642件

「ぶら下がり取材」   =3万9300件

です。「平成ことば事情3482 ぶら下がり取材と囲み取材」もお読みください。

(2016、6、1)

2016年6月 6日 22:25 | コメント (0)

新・ことば事情

6045「観客は総立ちです!」

旧聞に属しますが、元NHKアナウンサーの西田善夫さんが2月27日に亡くなりました。80歳でした。1936年の2月生まれ、うちの父と同学年(1935年の学年)です。ということは、長嶋茂雄監督(1936年2月生まれ)と同い年ですね。

僕たちがアナウンサーになった頃の、NHKのスポーツアナウンサーの代表格のお一人でした。特にオリンピックでの実況経験は、当時は民放のアナウンサーには許されていなかった(と思う)ので、NHKの独壇場でした。(日本が不参加・出なかった1980年のモスクワ五輪は、たしかテレビ朝日が放送権を取っていたと思いますが。その後「ジャパンコンソーシアム方式」になり、民放のアナウンサーも実況を担当することができるようになりました。)

一番、私が印象に残っているのは、ちょうど4月から読売テレビへの入社が決まっていた、1984年2月に、当時のユーゴスラビアのサラエボで行われた冬季オリンピックの「開会式」の実況です。西田さんは開会式でこう実況したのです。

「地元・ユーゴスラビアが入場して参りました!観客席は総立ちです!」

しばらくの間があいて、思い出したかのような落ち着いた声で、こう付け加えました。

「もっとも、観客席の半分は、立ち見席です」

結構、これ、受けました。「ギャグ」だとしたら、おもしろいオチですが、まさかオリンピックの開会式で、そんなグギャグは、言わないだろう。だとすると、「総立ち」と言ってしまった後に、

「あ・・・今まで座っていた人が全部立ったなら『総立ち』だけど、観客席の半分は立見席だった!その情報を入れないと『ウソの情報』を伝えたことになる!」

と思って、その情報を付け加えて言ったのでしょう。それは「演出上」はマイナスですが、「報道」の立場からは「正しい行い」だと思います。その「正しい行い」が、

「巧まざるユーモア」

となって、「西田さんのお人柄」も表しているのではないかなと感じました。

それとBK(大阪放送局)に勤務されていた頃に、梅田の地下街の宝くじ売り場で私が宝くじを買おうとしていたら、後ろからヌーッと、縁の太いメガネをかけた大男が出て来たことがありました。それが西田アナウンサーでした。

「西田さんも、宝くじ買うんだ!」

と思いました。

直接お話ししたことはありませんでしたが、西田さんというと思い出すのは、この2つの出来事です。随分遅くなってしまいましたが、謹んで哀悼の意を捧げます。

(2016、5、30)

2016年6月 6日 18:23 | コメント (0)

新・読書日記 2016_089

『漢字と日本語』(高島俊男、講談社現代新書:2016、4、20)

昔『週刊文春』で連載していた高島さんだが、たぶん「文春」ともめてたのだろう、連載が打ち切りになったのだが、それまでの連載は「文藝春秋社」から単行本になっていたのに、最後の「単行本」は、なんと「文春」からではなく、聞いたことが無いような出版社から出たのだった。その後は講談社の『本』という、本屋さんでタダでくれる冊子(本当は1冊100円ぐらいの廉価の広告冊子)での連載を読んでいた。それをまとめた物。ということで「講談社」の「現代新書」から出ている。以前にも一冊出ているが、それは「読みさし」になっており、こちらを先に読んだ。というのも、最近『本』が本屋さんにないので、タダでもらえずに連載コラムを読んでいなかったから、こちらの新書の方が「読んだことが無い」者が多かったからだ。以前の「新書」は、ほとんど「読んだことがあるコラム」が多かったのだ。

日本の漢字と中国の漢字の関係の文章が多いが、私が面白かったのは「第5章」の「日本語と国語」。吉田松陰の書簡の近代語など、現代につながる「近代の日本語事情」が記されていた。「明治初めの訳語」も勉強になった。


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(2016、5、22読了)

2016年6月 1日 17:02 | コメント (0)

新・読書日記 2016_088

『ゴーマニズム宣言~民主主義という病い』(小林よしのり、幻冬舎:2016、5、25)

いや、でも、面白かったし勉強になりました。表紙のフランス国旗からのデザイン=トリ・コロールも良いし。これで1500円+税は安いのでは?(今どき新書でも1000円近くするんだし)

「民主主義という病い」。送り仮名の「い」は要らないのでは?

たしかに「民主主義」から「ファシズム」も「独裁」も出て来るのであり、それに気付いたのは、この15年ぐらいだけど、まだ気付いていない人がいるのであれば、この本は啓発の書になる。小林よしのりが言うと、啓発にならないかもしれないところが、痛い。やはり「表現の形」というのは大切。

でも、小林よしのりが、かなり本を読んで勉強しているというのは、よく分かったし。フランス取材旅行中に、旅行の観光情報を混じえながら、そういったウンチク・啓発を説くという構成も悪くないと思った。その結果の結論は微妙に違うのだが。


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(2016、5、30読了)

2016年6月 1日 11:55 | コメント (0)