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『道浦TIME』

新・読書日記 2012_226

『死の淵を見た男~吉田昌郎と福島第一原発の五00日』(門田隆将、PHP:2012、12、4)

2011年3月11日、東北地方を襲った巨大地震で福島第一原発がメルトダウンを起こすにいたった時に、東京電力福島第一原発の所長だった吉田昌郎が、日本の危機・人類の危機から人々を救うために闘った500日間の記録・ドキュメント。著者はたしか、山口光市の母子殺人事件の被害者遺族・本村洋さんについてのドキュメントも書いていた人だと思って、本書を購入した。

表紙を開くと、大津波に襲われる福島浜通りの写真、福島第一原発爆発の瞬間の福島中央テレビのカメラの映像、そして、2012716日、著者のインタビューに応じた、がんと闘病中の吉田昌郎・前所長の写真。吉田前所長はインタビューの10日後に脳内出血で倒れた・・・。

闘いの日々の記録を読むと、やはり首相官邸が、いかに機能を停止していたのか、菅総理の横暴ぶり、東京の東電本社と現場との距離感、必死で闘った東電や消防、自衛隊の現場の人たちの姿が伝わってくる。そして、ひとたびこのような事故が起こった場合に、最後は「人」がその現場の「核心」に行って、文字通り「命がけで」(死を覚悟して)対応しなくてはならないということが、よくよくわかった。そしてその状況は、今もまだ終わってはいないのである。

この感想を読んだ人、「全員が」読むべき本だと思う。


star5

(2012、12、9読了)

2012年12月30日 17:46 | コメント (0)

新・ことば事情

4924「丈」

 

12月27日、今月初めに57歳の若さで亡くなった、歌舞伎俳優の中村勘三郎さんの本葬が行われ、その様子を「ミヤネ屋」でもお伝えしました。

そのスーパーをチェックしていたら、テロップのオペレーターの男性から、

「道浦さん、すみません、これは『大葬儀』でいいんでしょうか?それとも『本葬儀』?」と聞かれたので、発注用紙に手書きで書かれた文字を見ると、

 

「中村勘三郎丈葬儀告別式」

 

と書かれていました。「大」でも「本」でもなく、

「丈」

これは「じょう」と読みます。『広辞苑』を引くと、

 

「歌舞伎俳優の芸名の下に添える敬称」

 

とありました。もともとは「尉」「丞」等の字が起源で、江戸中期(明和・安永年間)ごろから「丈」の字をあてるようになったそうで、

「市川團十郎丈」

のように使うとのこと。

そういえば、なんとなく見たことはあったけど、「歌舞伎俳優の敬称」でしたか。

それにしても手書きだと「大」と「丈」は区別がつきにくいから要注意ですね。

(2012、12、27)

2012年12月28日 10:11 | コメント (0)

新・ことば事情

4923「初の黒人大統領」

20092月の新聞用語懇談会・放送分科会で、毎日放送の委員から、

『先般の「オバマ大統領就任」に際し、「黒人初」という表現について、社内で何か議論はあったのか?

という質問が出ました。2009121日の新聞・放送各系列の表記を見てみたら、

(朝日新聞)『オバマ米大統領就任 黒人初(見出し)』『初のアフリカ系(黒人)の第44代大統領(本文)』

(読売新聞)『初の黒人(見出し)』『黒人の大統領誕生は、奴隷制など人種差別の過去を持つ米国史上初めて(本文)』

(毎日新聞)『初の黒人(見出し)』『黒人大統領は米国史上初めて(本文)』

(日本経済新聞)『初の黒人、47歳(見出し)』

(産経新聞)「黒人」の見出しは、なし。『黒人大統領の誕生は、米国独立以来これが始めて(本文)』

<放送・HPのテキストから>

(NHK)

『~バラク・オバマ氏が就任し、アメリカ史上初めての黒人の大統領が誕生しました。』

(TBS=JNN) 

『アメリカの建国史上、初めての黒人大統領の誕生です。』

(テレビ朝日=ANN) 

『黒人初の大統領誕生の瞬間を見届けようと』

(フジテレビ=FNN) 

『アメリカのオバマ新大統領の就任式が21日未明に行われ、⇒「黒人初」特に見当たらず・・。

(日本テレビ=NNN) 

『アメリカ初の黒人大統領となるバラク・オバマ新大統領が20日、就任演説を~』

(テレビ東京=TX) テキスト なし

かつて、パウエル国防長官就任時は「カリブ系アメリカ人」との表現も。

というとなっていたそうです。

これについての各社の説明は、

NHK)「黒人」に差別性はない(使ってもよい)。「黒人初」はOK。「初の黒人大統領」の方が×」

TBS)「黒人」はOK。「アフリカ系」について協議したが、そちらの方が却って目立ってしまう。たえだ、スーパーで「黒人」とは出たが、コメントでは言わなかった。

NTV)その後、内容的には「アフリカ系アメリカ人」を中心に使った。(フジテレビ)特に議論はなかった。普通に「黒人の~」と言っている。

(テレビ朝日)他局と同じ。本記は「アフリカ系」。「黒人」を使っていけないことはない。必要があれば使う。オバマ大統領の発言で「ボクは"雑種"だから」と言ったのをそのまま「雑種」とスーパーした。

(テレビ東京)「アフリカ系」は使っていない。「黒人」を使っている。

WOWOW)元NHKの手嶋龍一さんが「アメリカの黒人のルーツはアフリカ系(アフリカン・アメリカン)の奴隷。オバマは移民。『アフリカン・アメリカン』であって『黒人』ではない。『ハーフ』であって『黒人』ではない。オバマは後天的にブラック(黒人)を求めてきた。」と言っていたのに納得した。(その説明に私=道浦は納得できなかったのですが・・・)スポーツ中継では「黒人」は使わずに、これまで「アフリカン・アメリカン」を使ってきた。

(共同通信)「初めての黒人大統領」と使った。「黒人」はOK。ただ、特に強調する場合以外には、「黒人」も「アフリカ系アメリカ人」も使わない。

というような意見が。そして資料として、20091月26日の朝日新聞のコラム、

「アフリカ系の表記」

が配られました。いま、手元にないんですけどね。

 

こんなことが、オバマ大統領の最初の当選(4年前だな)にあったことを記録しておきます。

(2012、12、27)

2012年12月27日 18:09 | コメント (0)

新・ことば事情

4922「女性大統領」

 

1219日、韓国の次期大統領に、朴正煕元大統領の娘の、

「朴槿恵」

さんが決まりました。女性では初の韓国大統領です。それをさして、

「韓国初の女性大統領」

という表記が「ミヤネ屋」のスーパーチェックで出てきましたが、これを、

「韓国 女性初の大統領」

に直しました。アメリカの大統領にオバマさんが初めて当選した時に、

「初の黒人大統領」

となっていたものを、

「黒人初の大統領」

に直しましたが、それと同じ理由です。(これについては書いたと思っていたのですが、書いていなかったようなので、この後に「平成ことば事情4923」で書きます)

つまり、

「女性大統領」

という「役職(ポスト)」があるのではなく、"女性で初めて"「大統領」というポストに就く、ということをしっかりと表す表現として、細かいですが使い分けをしたということです。

(2012、12、26)

2012年12月27日 13:39 | コメント (0)

新・ことば事情

4921「朴槿恵の読み方」

 

韓国で、女性初の大統領に決まった、

「朴槿恵」

次期大統領の名前の読み方ですが、NNN(日本テレビ系列)では、

「パク・クネ」

と言っていますし、字幕もそう振り仮名がついています。テレビ局は、おそらくみんな

「パク・クネ」と言っていると思います(確認はしていない)が、新聞はどうも様子が違うようなのです。大統領選の結果を伝えた日の新聞のルビは、

「朝日・毎日・産経」=「パク・クネ」

とNNNと同じなのですが、

「読売・日経」=「パク・クンヘ」

と、微妙に違うのです。

似た名前で思い出すのは、大韓航空機爆破事件金賢姫・元死刑囚の日本語教師で、拉致された田口八重子さんだと言われる、

「李恩恵」

です。この読み方は、

「リ・ウネ」

漢字も似ているし、発音も近いのではないかと思います。そして、それを「音」で言う(アルファベットで書いてみる)と、

「クンヘ」=KUN

「クネ」 =KUNE

で、違いは「H」が入るかどうか。それを発音するかしないかで、変わってきているのではないかと考えました。

つまり「ライン・アップ」を「ラインナップ」と読むような、ある種の「リエゾン」的な要素の「ある・なし」が、カタカナ表記の違いに現れているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

韓国語にも詳しいNHK放送文化研究所の塩田雄大さんに聞いてみたところ、

『韓国語では、〔n〕のあとの〔h〕は、よほど意識した場合でない限り、響きません。

「よほど意識した場合」というのは、たとえばシュプレヒコールのように「パク、クン、ヘ!」のように言う場合です。軍隊での受け答えなどでも、このようになされるようです。

ふつうの発音では、「パク クネ」です。

一方、〔ng〕のあとの〔h〕は、上記よりは若干〔h〕が響きます。それでも実際に日本人が聞くと、ほとんど〔h〕は聞こえませんが。たとえば、「パク・チョンヒ」などは、多くの日本人には「パク・チョンイ」のように聞こえるはずですが、マスコミでは「パク・チョンヒ」と書く習慣が確立しています。

そもそも韓国語の〔h〕は、語頭では喉頭の摩擦が強くてかなり響く音なのですが、語中にくると相当弱化します。特に〔n〕のあとでは、ほとんど響かなくなるのです。

ただし、発音上弱化するとはいってもハングルでは「h」の表記は保ち続けています。

まとめると、「パク・クネ」は発音重視の表記、「パク・クンヘ」はハングル表記に対応させた綴り字表記、という位置づけになるかと思います。』

 

さっそく、詳しい解説をいただき、ありがとうございます。

つまり、「放送局と朝日・毎日・産経」は「耳から入った音を重視」で、「読売・日経」は「目から入った文字を重視」という立場の違いということですかね。

「Hepburn」同じ苗字なのに、「ローマ字」を確立させた博士は「ヘボン」(耳から入った音を重視)さんで、「ローマの休日」で有名な女優は「ヘップバーン」(目から入った文字を重視)というのに似ていますね。あ、どちらも「ローマ」が共通点でもあるな、今、気が付いた。

それにしても「外国語の音」を「日本語のカタカナ」にうつすこと=外来語の表記というのは、面倒ですねえ・・・。

と、ここまで書いて、12月26日の「読売新聞」朝刊を見たら、なんと、

「パク・クネ」

に変わっているではありませんか!よく読んでみると、朴槿恵次期大統領の大きな写真の下に「おことわり」が出ていました。

「韓国の朴槿恵次期大統領の名前の読み仮名については、これまで、韓国語の1語ごとの発音をあてた『パク・クンヘ』と表記してきましたが、韓国語では、前後の語がつながって縮まる形で発音されることがあり、今後は、現地音により近い『パク・クネ』とします。」

ということで、大体、想像したとおりの経緯でした。

なお、1226日の日経の朝刊は「リ・クンヘ」のままでした。

(2012、12、27)

2012年12月27日 13:12 | コメント (0)

新・ことば事情

4920「綺羅星のごとく現れた」

12月25日の「スッキリ!!」で、今晩放送の「ものまね」特番のPRを放送していました。これまでの番組の歩みや歴代チャンピオンの紹介など、つい見いってしまい、

「今晩、見ようかな」

という気が起きるものでした。(それにしても、PR事態がすでに番組になっているような力の入れようでした)

その中で、過去に初めての出場で決勝まで勝ち上がった女性タレント「福田綾乃」さんという人のことを、

「綺羅 星のごとく現れた」

と表現していました。この言葉を使うときは、よく、

「キラボシのごとく」

と、「綺羅星」という「星」があるかのように、濁って発音してしまう間違いが多いですが、今回の「スッキリ!!」のナレーターさんは、ちゃんと濁らずに、

「キラ、ホシのごとく」

と読んでいました。でも、なんかちょっとおかしい・・・あ、そうか、こういった場合は、

「彗星(すいせい)のごとく現れた」

だ!うーん、大元が間違っていたか。言葉、成句って、難しいですねえ。似てると間違っちゃうのかなあ。

本編(番組)は間違っていないか、きょう夜6:30から放送の、

 

「ものまねグランプリ」

 

を見ることにいたしましょう!(番宣かよ!)

(2012、12、25)

2012年12月25日 14:12 | コメント (0)

新・ことば事情

4919「でんぐり返りか?でんぐり返しか?」

 

先日亡くなった森光子さん(92)と言えば、舞台「放浪記」での、

「前回り(前転)」

が呼び物の一つでしたが、お年になられてからは、それを封印されました。

さて、この「前転」を、俗語で何と呼ぶか?つまり、

「でんぐり返り」か?「でんぐり返し」か?

という疑問が出ました。「り」か?「し」か?という問題ですね。

私が普段使っているボキャブラリーでは、

「でんぐり返り」

なのですが、新聞や週刊誌報道では、

「でんぐり返し」

が多いようなのです。1121日に読んだ、その時点での最新の『週刊文春』では、

「でんぐり返し」

でした。グーグル検索(12月19日)では、

「でんぐり返り」    = 92400

「でんぐり返し」    =1610000

「でんぐり返り、森光子」=   6510

「でんぐり返し、森光子」= 38300

で、圧倒的に「でんぐり返し」でした。こんなに差があるとは・・・地域差があるのでしょうか?

辞書では、『広辞苑』「でんぐり返り」は「空見出し」「本見出し」は「でんぐり返し」。『明鏡国語辞典』「でんぐり返し」しか見出しがなく、その意味の説明の中に「でんぐり返り」も載っていました。『三省堂国語辞典』も同じ。『新明解国語辞典』も見出し「でんぐり返し」のみ。意味の中に、

「『でんぐり』は、転倒の意の動詞『でんぐる』の連用形」

とあり、また、動詞の、

「でんぐり返る」

見出しとしてあって、その中に「名詞形」として、

「でんぐり返り」

がありました。ふーむ、その辺りがポイントかな?

『精選版日本国語大辞典』は、「でんぐり返り」がちゃんと載っていました。用例『西洋道中膝栗毛』(187076)<仮名垣魯文>からで、

「目のくり玉が驚いて七転八倒(デングリカヘリ)をしたと思ひなせへ」

「七転八倒」の「ルビ」として使われていました。一方の「でんぐり返し」も載っていましたが、用例は、『俚言集覧(増補)』(1899と、『西洋道中膝栗毛』よりも少し新しい。さらにもう一つの意味の「逆転すること」の用例『或る女』(1919)<有島武郎>と、さらに新しくなっていました。

でもそんなに時代に開きがあるわけではないので、どっちが先かというのはわからないですねえ。

(2012、12、19)

2012年12月22日 12:11 | コメント (0)

新・ことば事情

4918「(笑)小考」

 

ある対談集を読んでいて、ふと、思いつきました。

 

「対談や鼎談などで出て来る(笑)は、 その場で実際に起きたことの描写だが、ネットやメールの(笑)は、自らの期待を表明した甘えに過ぎない(笑)」

 

いかがでしょうか?(笑)

 

あ、(笑)に初めて「引っかかって」ムカッと来たのは、『平成ことば事情841「単純ミスです(笑)」』で書きましたが、なんとこれを書いたのはもう10年前!もう、そんなに経つのかあ・・・。

(2012、12、19(笑))

2012年12月21日 11:20 | コメント (0)

新・ことば事情

4917「巻き回し」

 

いつも新しい言葉の情報をくれるMアナウンサーが、また新情報をくれました。その言葉とは、

「巻き回し」

です。これは、数少ない服をコーディネート(組み合わせ)によって違う雰囲気のファッションに使い回すことを、

「着回し」

と言うことの応用で、「ストール」や「マフラー」の様に「巻く」「まとう」ものを、組合せ(コーディネート)で違う雰囲気にして装うことを言うのだそうです。

たしかに、ストールやマフラーは「着る」とは言いにくいですよね。そこで、「巻く」を用いて「巻き回し」なのだそうです。女性雑誌などでは、よく見かける表現なのだそうです。

グーグル検索だと(1218日)

「巻き回し」       = 1万8100

「巻き回しファッション」 =     0件

「巻き回し・ファッション」=    169

 

「着回し」        =3040000

「着回しファッション」  =  22900

「着回し・ファッション」 = 2140000

ということで、まだまだ「巻き回し」は「定着した言葉ではない」と言えそうですね、現段階では。

(2012、12、18)

2012年12月20日 12:16 | コメント (0)

新・ことば事情

4916「独りよがり」

 

衆院選挙が終わって、落選した民主党の田中真紀子文部科学大臣が、野田総理の解散の時期に関してコメントを求められて、

「独りよがり」

と言っていました。

それを聞いて、「あっ!」と思いました。「独りよがり」の「よがり」とは、漢字で書くと、

「善がり」

であり、動詞では「善がる」ではないのか?つまり

「自分だけ善いと感じること」

が、すなわち「よがる」「よがり」なのではないか?と気付いたのです。

そう思うと、ちょっとこの言葉を真昼間に使うのが恥ずかしいような気がしてきたのは、何故なんでしょうね・・・。

あーーハズカシイ・・・。

(2012、12、18)

2012年12月20日 11:12 | コメント (0)

新・ことば事情

4915「自民党、自民党!」

11月下旬、会社近くの大阪・京橋駅前を歩いていたら、こんなことを拡声器でしゃべっている人がいました。

 

「来るべき総選挙では、どうか、自民党、自民党!自民党・・・・・」

 

最初、聞き始めた時には、

「自民党の支援をしている人だ」

と思ったのですが、最後まで聞くと、

 

「・・・だけには投票しないでください」

 

と言うではありませんか!これって、訴え方がおかしいと思います。これでは、最後までちゃんと聞かない人は、自民党に投票してしまいます!訴えている人の意図と違うことになってしまう!

そういえば、先輩のMアナウンサーがよく、

 

「私は大学をトップの成績で卒業・・・・・した人と一緒に卒業しました」

 

というようなギャグを言いますが、それと同じだよなあ。

日本語って最後までいかないと意味が解らないんですよね。それをわかった上でやっているなら、なかなかのものだけど、そうじゃないんだろうなあ。

(選挙が終わったので、ようやくUPできます)

(2012、12、3)

2012年12月19日 10:43 | コメント (0)

新・ことば事情

4914「吉田松陰の辞世の句と安倍総裁」

 

10月25日、石原東京都知事の辞任表明会見がありました。(もう、ずいぶん昔の話だなあ・・・まだ2か月も経ってないけど)

その際に感想を聞かれた自民党の安倍総裁が、自身の選挙区である山口県(=長州)出身の「吉田松陰の辞世の句」を引いて、

 

「"留め置かまじ 大和魂"ですね」

 

と言いました。それを聞いて「なんかちょっとヘンだなあ」と思って調べてみると、吉田松陰の辞世の句

 

「身はたとひ  武蔵の野辺に朽ちぬとも  (とど)め置かまし 大和魂

 

でした。

え?どこが違うかって?正しい方は、

「留め置かまし」

で、安倍総裁の発言は、

「留め置かまじ」

つまり、「まし」か「まじ」かということですが、世の中は、澄むと濁るで大違い!

「まし」は「留め置こう」の意味の「留め置かん」の意志の助動詞「む(ん)」に、強めの「し」がついて「まし」となっているのですが、濁って「まじ」になってしまうと、

「留め置かない」「留め置くことなど許されない」

と、まったく逆の意味になっているではありませんか!マジかよ!なんで誰も突っ込まなかったんだろうか!?

松陰は、家族宛てには『永訣書』というものを残しており、こちらに記された辞世の句は、

 

「親思う 心にまさる親心 けふのおとずれ 何ときくらん」

 

という、これも大変有名な句ですよね。故・安倍晋太郎さんは、どんなお気持ちでしょうか?(選挙が終わったのでようやく書けました。)

(2012、12、17)

2012年12月18日 21:38 | コメント (0)

新・読書日記 2012_225

『神の雫35』(作・亜樹直、画・オキモトシュウ、講談社:2012、11、22)

知らない間に(あっという間に)2か月が経って、『神の雫』の第35巻が出ていました。期末試験が終わった息子が買ってきて「570円!」と本代をきっちり請求されました。ご存じ、ワインの漫画。今回もまだ「十二使徒」の闘いには入らず、主人公の知り合いの小さな良心的なレストランが、近所にできた傲慢な高級レストランに「料理の鉄人」ばりの「対決」を強いられるの巻。その傲慢なレストランが、良心的なレストランを貶めるために使った手段が、「ステマ」=「ステルス・マーケティング」。つまり消費者に広告と気づかれないよう、客観的な記事を装って宣伝行為をすること。具体的には「グルメサイトの掲示板」に、あることないこと書いて相手の評判を落とし、逆に自分のところについては掲示板に高評価の書き込みをする(させる)という手段。

「汚ねえ手を使いやがって!」

ということですが、これを読み終わってすぐに出て来たのが、例のオークションサイトに、芸能人が買ってもいないのに「安くセリ落とせたよ!」と書いて報酬をもらっていたという事件。うーん、もうマンガの世界と現実の世界に、境界線はないのだなあと、改めて勉強になった次第です・・・。


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(2012、12、13読了)

2012年12月17日 12:48 | コメント (0)

新・ことば事情

4913「伸ばすか?伸ばさないか?それが問題だ」

 

先日の新聞用語懇談会放送分科会で、毎日放送のK委員からこんな質問が出ました。

 

「12.5」を「ジュウニテンゴ」、「5.3」を「ゴテンサン」と「短く」アナウンスしている社はありますか?

 

これに関してほとんどの社は、

「伸ばして『ジューニーテンゴ』『ゴーテンゴ』と発音する」

とのことでした。しかし、一部ベテランの、それもスポーツのアナウンサーは、

「伸ばさない、と教わった」

と答えました。

実は私も、20数年前に入社した時の研修で先輩から「伸ばさない」と教わり、

「そうか、プロのアナウンサーは伸ばさないんだ!」

と新鮮に感じた覚えが、いまだにあります。それ以来、放送では伸ばさない読み方をしてきました。

読売テレビのアナウンサーにこの質問をしたところ、「12.5」に関しては、

「伸ばさない」=3人

「伸ばす」=12人

そして、「5.3」に関しては、

「伸ばさない」=2人

「伸ばす」=13人

という結果でした。「12,5」と「5,3」で人数が違うのはこの二つに関して「読み方を変えている」という、とっても微妙な人が1人いたからです。

もしかしたら、「伸ばすことで間延びする」のを嫌ったスポーツアナウンサーが、テンポよく読むために「短く言う」ようになり、それが「ニュース」にも入って、昔のアナウンサー訓練で使われたのではないか?という「推測」をしました。

ytvアナウンス部で「伸ばさない」で読むのは、今では私と、1年後輩のアナウンサーの2人だけになってしまいましたが。

(2012、12、14)

2012年12月16日 23:29 | コメント (0)

新・ことば事情

4912「早戻し・早送り」

 

以前、情報を寄せてくれたアラサー・ママ、Mアナウンサーから、また情報が。

「ビデオテープからDVDになって、テープじゃないのに『泣き戻し』という表現はおかしいのではないか?って前に話しましたが、どうも最近のリモコンには『巻き戻し』とは書かれてなくて『早戻し』『早送り』とか書かれているみたいなんです!これって、いつからでしょうね?」

へーそうだったのか。全然、気付かなかった。

家に帰ってテレビなどのリモコンを改めてまじまじと見ました。

すると・・・15年ほど前」に買ったVHSのビデオテープデッキ」(日立製)のリモコンには、横向きの△マークとともに

「巻き戻し」

と書かれているのに対し、「9年ほど前」に買った「ハードディスク内蔵DVDデッキ」(SONY製)のリモコンには、

「横向き△マークだけで、文字が記されていない」

事がわかりました。そして「3年前ほど前」に買った「液晶テレビ・ブルーレイレコーダー内蔵型」(シャープ製)のリモコンには、横向きの△マークとともにはっきりと、

「早戻し」

と書かれているではありませんか!全然、気付かなかった!

ということで、DVDの登場とともに、やはり「テープではない」ということで「巻き戻し」という表現に対する違和感が出て来ていたのではないか?それがブルーレイに移行する中ではっきりと「巻き戻し」から離脱して、「早戻し」という表現を採用したのではないか?と推測できます。

と言っても、我が家にある家電製品を見ただけで、すべてのメーカーの物を検討したわけではないので、もちろん断定などできないのですが。

しかし、これだけは言えます。

「時代の変化とともに"言葉"も知らず知らずのうちに変わっていて、それを我々は自然と受け入れている」

ということなのではあないか、と思うのです。

グーグル検索では(1216日)

「巻き戻し」=240万件

「早戻し」 = 78700

まだ圧倒的に「巻き戻し」が多いけど、これはこれまでの「積み上げ」でしょう。

ネットで見るとい、既に200311月の時点で、

「現在はテープからディスク(あるいはディスク上のデータ)へと移行しつつある時代です。

オーディオはほぼ終了したと言っても過言ではなく,ビジュアルも進行中ですから,「巻き」戻しという表現は適当ではなくなりつつあり,逆に「早送り」は自然に思えるようです。そこで,「巻き戻し」にとってかわる言葉として「早戻し」という言葉を提案します。<実際に「早戻し」と書いてある機器も存在しているようです。(17/Feb/2004)>」

と書いている人がいました。

平成ことば事情4855「巻き戻しは死語?」もお読みください。

(2012、12、14)

2012年12月16日 21:28 | コメント (0)

新・ことば事情

4911「金慶喜か?金敬姫か?」

 

ちょうど1年前(2011年12月)に北朝鮮の金正日総書記が死亡し、その後よく出て来た名前に、金正日総書記の実妹、

「金慶喜(キム・ギョンヒ)

がありました。しかしその名前の「漢字表記」が、新聞や放送でバラバラでした。

新聞は調べてみたら、

*「慶喜」=毎日・日経 

*「敬姫」=読売・朝日・毎日

でした。

放送局はどうか?そこで、今年(2012年)2月の新聞用語懇談会の放送分科会で、各社の状況を聞いてみました。結果は、

*「慶喜」=日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、共同通信、

関西テレビ、テレビ大阪

*「敬姫」=朝日放送(朝日新聞に従っている)

*「ギョンヒ」〔カタカナ〕=NHK

と、放送局は圧倒的に「慶喜」でした。

その中で「日本テレビ」の場合、以前は「ラジオプレス」の報道する文字である、

「敬姫」

を使っていたそうですが、その後「朝鮮通信」の表記である、

「慶喜」

に変えたとのことでした。「フジテレビ」からは、

「北朝鮮の人の名前の漢字表記は、韓国・中国・北朝鮮のどのメディアの表記を採用するかで変わってくる。6か国協議の北朝鮮代表の『キム・ゲガン(ゲグァン)』も『桂冠』『桂官』『桂寛』の3通りある。」

という意見が出されました。

これについては、以前「平成ことば事情1612 金桂寛・桂冠・桂官」で書きました。

(2012、12、13)

2012年12月14日 12:19 | コメント (0)

新・ことば事情

4910「募金を募る」

 

読売テレビの夜のニュースを見ていたら、後輩の男性アナウンサーが、

「募金を募っています」

と原稿を読んでいました。この「募金」を「募る」は重複表現ではないか?と思い、すぐにメールを送ったら、

「すみません、気付きませんでした」

とのこと。漢字で書けば「重複」であることはすぐにわかると思うんだけど。「金」を「募る」のが「募金」ですからね。「募金を募る」だと、

「募った金を募っています」

になって、

「屋上屋を架す」

感じですよね。

ただ、このような動詞の重複は、例えば、

「抗議行動を行う」

の場合、「行動」と「行う」のように、名詞の中に動詞が紛れ込んでいて、動詞単独と意味は同じだけど、その動詞がないと落ち着かない感じになることがあるのもたしか。ですから、文字が重なっているからと言って「重複表現だから絶対にダメ」とまでは言えないケースもあるということですね。だから、難しい。

(2012、12、12)

2012年12月13日 13:21 | コメント (0)

新・ことば事情

4909「文草題」

 

小学生の子どもが通っている塾の壁に、子供たちが「目標」を書いた紙が貼ってあります。この塾は小学生から高校生までが通っているので、幼い字から、そこそこ大人びた字までが混在しています。

その中の、中学生と思われる子供が書いた目標が目に留まりました。

「文草題をできるようになる」

そうか、頑張れよ・・・あれ?「文章題」の「章」の字が、よく見ると、

「草」

になってるぞ!まずそのあたりのアバウトな観察力を鍛えるために、「章」と「草」という漢字を100回ずつ書かなきゃいけないね、文章題に強くなるためには。

そう思ってほかの「目標」に目を移すと、今度は高校生らしき文字。

「予戦ブロック優勝して本戦にいく」

塾での目標のはずが、なぜか部活動(テニスかな)での目標が・・・あ、これもなんだか少しおかしい。

「予選」

と書くべきところが、

「予戦」

になっている!これもやはり注意力が足りないね。「予選」で取りこぼしをしてしまうぞ!いろいろと、頑張らなきゃいけないことが、みんなありそうです。「ゆとり」のせいなのかな?

(2012、12、12)

2012年12月12日 23:34 | コメント (0)

新・ことば事情

4908「先見の目」

 

「ミヤネ屋」の原稿とテロップのチェックをしていたら、

「彼は、先見の目があった」

という文章が。おや?なんだかおかしい。これは正しくは、

「先見の明」

ではないのか?辞書を引くと、やはりそうでした。しかし音だけで聞くと、

「先見の明」=「センケンノメイ」

「先見の目」=「センケンノメ」

で、特に「明(メイ)を「メー」と長音で発音していると、「目」と区別がつきにくい。

また、

「先を見る目」

というような意味合いでも、十分に通じる気もするので、こういった間違いをする人もいるのでしょうね。注意、注意!

こうやってミスの防止を呼び掛けるのは「先見の明」?

 

(2012、12、10)

2012年12月12日 22:33 | コメント (0)

新・ことば事情

4907「米軍に夜襲か米軍を夜襲?」

「第九連隊が米軍に夜襲をかけた」

という文章をスーパーで出す際に、「をかけた」を省略して「夜襲」で体言止めにする際は、

「米軍

でしょうか?それとも、

「米軍

でしょうか?と質問を受けました。これは、

「米軍を夜襲」

です。なぜならば、「に」の前の「米軍」は「目的語」ではありますが、その後に「夜襲」で体言止めにすると、「~をかけた」のか「~をかけなかった」のかも、「~をかけてはいけない」なのか「~をかけることはない」なのか「~をかけることはあり得ない」なのかが全然わかりません。

「米軍を」とすると、それ自体が「目的の対象」となり「夜襲」で体言止めにしても、常識的に考えれば、それに続く言葉は、

「する」か「した」

しかありえないからです。

でもこれって、語感が個人によって違うから、必ずしも断定的には言えないような気もするんですが、今のところは、これが「正解」だと信じています。

(2012、12、10)

2012年12月12日 21:38 | コメント (0)

新・読書日記 2012_224

『さいごの色街 飛田』(井上理津子、筑摩書房:2012、10、22)

去年、本が出てしばらくして購入。読みかけたまま止まっていたが、先日「飛田」の話がチラッと出たので、「読んでみようかな」と読み始めた。12年かけて「飛田」の記録を書こうという心意気!でも、随分じっくりと取材されたのだなあと。それでもなかなか本当の姿を見せてくれない「飛田」の奥深さ。

著者とは数年前に一度だけ、お目にかかったことがあるが、こういったものを書かれるとは知らなかった。決して上手な文章だとは思えないが、まじめに真剣に取り組んだのだなあという根気と勇気に脱帽です。女性だから書けた部分もあるのかなと感じた。


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(2012、12、1読了)

2012年12月12日 18:00 | コメント (0)

新・ことば事情

4906「ハシ鉄・鉄下」

 

先日、新大阪駅の売店で面白い物を見かけました!

新幹線のイラストが入った「箸」と「靴下」です。それ自体は特に目新しくはないのですが、ネーミングが面白かった。「箸」は、

「ハシ鉄」

そして「靴下」は、

「鉄下」

という名前だったのです。「鉄道おたく」の皆さんには、たまらないネーミング・グッズではないでしょうか?お子さんにも(特に男の子)には人気かもしれません。

グーグル検索(12月10日)では、

「ハシ鉄」=37000

「鉄下」 =86800

でした。昨年(2011年)2月の「日経トレンディネット」「電車の車輌をくるぶしソックスにプリントした「鉄道靴下」略して「鉄下」が人気」という記事によると、この「鉄下」を企画製作したのは、これまで食料品製造をメインとしてきた「Lcoco」(東京都中央区)という会社で、200910月にN700系をデザインした鉄下を主要駅売店などで発売開始したところ、たちまち鉄道好きの子供たちのハートをわしづかみにしたとのこと。「鉄下」の種類も1年間で24種類に増え、累計15万足以上を販売しているのだそうです。

そして、商品誕生のきっかけは、

『「くるぶしソックスの形が新幹線の形に似ている」という担当者の単純なひらめきから』

だそうです。どこにアイデアが転がっているか、わからないですね!

(2012、12、10)

2012年12月12日 15:37 | コメント (0)

新・読書日記 2012_223

『ランキングの罠』(田村秀、ちくま文庫:2012、11、10)

たしかに「ランキング」ばやりである。日本人は「ランニング」が好きだ。なぜかわからんが、好きだ。そしてそのランキングの根拠については、あまり考えない。結果だけを見る。そういったことの「落とし穴」を示してくれている一冊。うすうす感じていたことをまさにデータをもとに「信じるにたらない」ランキングも示してくれている。国債の格付けってのも、失礼だよな、よく考えたら。最終第6章の「ランキングの罠から逃れるには」は、必読ですね。


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(2012、12、5読了)

2012年12月12日 12:00 | コメント (0)

新・読書日記 2012_222

『津波と原発』(佐野眞一、講談社:2012、6、18)

「週刊朝日」の橋下大阪市長に関するノンフィクションの連載で味噌を付けた佐野眞一だが、だからこそ、読んでおきたいと思った一冊。東日本大震災からわずか3か月後に出ていて、すぐに購入しながらまだ読んでいなかったので、この勢いで読んだ。

病気をしてから、そして東日本大震災が起きてから、それまで以上に使命感に燃えて命がけで取材執筆をしているように感じていた。そのぐらいの勢いがある。その勢いが、筆を誤らせたのか?

震災後に現地に入り、状況を取材すると同時に、新宿ゴールデン街のおかまバーの名物ママの消息を尋ねたり、地震研究家の共産党の大御所を訪れたりする様子が描かれた第1部、そして原発街道となった福島の歴史、日本の原発の歴史など「そもそも」について書かれた第2部の12、3章。月刊誌や週刊誌に書かれたものを集めた部分もあるが、どれも去年の発災後、早い時期の者であり、「いま」を描いている意味では貴重な一冊であろう。


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(2012、12、3読了)

2012年12月11日 17:59 | コメント (0)

新・読書日記 2012_221

『廃校が図書館になった!~「橋本五郎文庫」奮戦記』(北羽新報社編集局報道部編、藤原書店:2012、11、30)

読売新聞特別編集委員の橋本五郎さんと言えば、テレビでも大活躍のわかりやすい解説者。あの池上彰さんと並ぶわかりやすさではないかと思う。その五郎さんが、去年、故郷の秋田県で、廃校になった母校を図書館にした。「橋本五郎文庫」というのが設立されたのだ。五郎さんの蔵書の内2万冊が寄贈されて、それを「文庫」という図書館で、廃校も活用していくという「ふるさと起こし」の一大イベント。村(まち)の活性化を狙ったこの試みを地元新聞社が取材したドキュメント。運営は地元の人たちがやらなくてはならないのだから、まさに存続はそこにかかっているのだが、何事にもきかっけが必要。そのタネまきを、五郎さんは行ったのだ。一度訪ねてみたいと思わせる文庫である。


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(2012、11、23読了)

2012年12月11日 13:56 | コメント (0)

新・読書日記 2012_220

『北斎~風景・美人・奇想~』

大阪市美術館で開かれていた「北斎展」に行った。その際に買い求めた図録。

「北斎」と言えば「富嶽三十六景」。その実物をたくさん見ることができて感激した!思ったよりは小さかったのにも驚いたが、とにかく作品数がべらぼうである。なんというバイタリティー。そして「北斎漫画」の構図の大胆さにまた驚いた。どう見ても手塚治虫である。現代である。スゴイ!の一言。構図の妙。大胆さと緻密さ。二次元から三次元へ、静から動への表現の工夫と技術が天才!感動の北斎展を手元に残すべく、購入しました。

大阪の展覧会は129日で終わってしまいましたが。

「謎かけ」を絵にしたものもあって、例えば、

「馬鹿とかけて五合徳利ととく。そのこころは?・・・一生、一升足らん」

「婆の繰り言とかけて、9月30日(みそか)ととく。その心は?・・・秋果てる。飽き果てる」

などもおもしろかったです。

 


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(2012、11、22読了)

2012年12月11日 10:54 | コメント (0)

新・読書日記 2012_219

『辛坊訓~日々のニュースは教訓の宝庫』(辛坊治郎、光文社:2012、11、20)

おそらく辛坊さん、10冊目ぐらいの本になるのではないか?週刊誌の連載をまとめた本だが、かなり全体を見直して手を入れたりして、その意味では大変良心的。また「ペーパーバック」のように軽い紙(ちょっと「ざら紙」みたいな紙ですが)を使っていて、持ち運びしやすい。長持ちはしない感じですが。サブタイトルはまさに"そのまま"ですが、"そのまま"を理解した上で活用できている人は少ないのではないか。その意味通りで、いろんなことの見方がわかってくる本。週刊誌で毎週、細切れで読んでいてはわからなかったものが、こうやってまとめて読むと"全体像"が浮かび上がってくることもある。お勧めします。


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(2012、11、23読了)

2012年12月10日 21:50 | コメント (0)

新・ことば事情

4905「【再送】先ほどは」

 

先日届いたスパムメールのタイトルが、

 

 【再送】先程は間違えました

 

でした。うまい!うまいなあ・・・いろいろ考えて来るなあ。

【再送】

という文字表記の使い方が、特にうまい!これは思わずクリックしてしまいますよね?それ以上先へは行きませんが、ちょっとスパムメールを削除する手を止めてしまいました。

こういったスパムメールのタイトル、って本当にイタチごっこですね。敵もさるものひっかくもの、です。ちょっと感心しました。

 

平成ことば事情2520『管理職の方へ<重要>』もお読みください。

(2012、12、9)

2012年12月10日 18:13 | コメント (0)

新・ことば事情

4904「107日間の読み方」

 

「107日間」

の読み方は、

(1)「ヒャクナノカカン」か?(2)「ヒャクナナニチカン」か?はたまた(3)「ヒャクシチニチカン」か?と質問を受けました。

日にちの読み方「○日間」も場合には、「1日間」は、「イチニチカン」はもしかしたら言うかもしれないけど、「ツイタチカン」は絶対言わないです。

「2日間」「3日間」「4日間」「5日間」「6日間」「7日間」「8日間」「9日間「10日間」

に関しては、それぞれ「数字+ニチカン」ではなく、

「フツカかん」「ミッカかん」「ヨッカかん」「イツカかん」「ムイカかん」「ナノカかん」「ヨウカかん」「ココノカかん」「トウカかん」

というように、「暦での数え方」=「和語の日にちの数え方」に「カン」を付けて読みます。さあ、それを踏まえて、「107日間」ですが、どうでしょう?もし、これを、

(1)「100+7日間」

と考えると、「ヒャク・ナノカカン」になります。そう聞いても、それほど違和感はありません。しかし、

(2)「107」+「日間」

と考えると、「ヒャクナナ・ニチカン」となります。これも耳で聞いて違和感がありません。しかし「ヒャクシチニチカン」は「シチ」と「イチ」を聞き間違いそうで、あまり耳にしません。ですから、(3)「ヒャクシチニチカン」は放送では除外してもいいのかなと思います。

ということで「107日間」の読み方は(1)(2)とも「OK」というところではないでしょうか?言葉をどうとらえるかで読み方が変わってくるということですね。

結局「慣れ」の問題が大きいのかなあとも思いました。

 

平成ことば事情728「あと34日」も、お読みください!

(2012、12、9)

2012年12月10日 12:11 | コメント (0)

新・読書日記 2012_218

『若者を殺すのは誰か?』(城繁幸、扶桑社新書:2012、11、10)

著者は1973年生まれ。"若者のお兄さん格"と言ったところか。少なくとも本人は、(ギリギリ)「中高年」には入っていないという認識だと思う。かなり攻撃的な内容。表紙の、赤いコートを着て雑踏に立つ女の子の写真も、とても印象的だ。これが「殺される若者」を象徴しているのか?「○○を殺すのは誰か?」というタイトルで思い出すのは、佐野眞一の「本を殺すのは誰か?」だが、それまでにもきっと同じようなタイトルはあったのだろう。本多勝一の「殺す側の論理」「殺される側の論理」にも「殺す」が入っていたが。

第4章の「若者にツケを押し付ける政治」までは、なんとも過激な表現に眉をしかめ「この城さんって人は、こんな物言いをする人だったっけ?」と思わざるを得ず、途中から「読まなくてもいいかな」と思ったぐらいだったが、第5章「社会に存在する虚構と"空気"」以降は「うん、確かにそうだ」と、ちょっと理性が戻ってきたような文章になっている。

6章「若者自身の責任」のところに書かれた「民主主義の誤解と真実」の中に、

×「民主主義は公平なシステムだ」

○「民主主義は平等な権利が与えられるシステムだ」

 

×「民主主義は正義を実現する」

○「民主主義は多数派にとっての正義を実現する」

あたりは「その通り!」と、うなずいてしまった

トータルでいうと、読む価値のある本だったのと思う。


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(2012、11、20読了)

2012年12月10日 11:45 | コメント (0)

新・ことば事情

4903「ロンドンっ娘」

 

1129日の「ZIP!」を見ていたら、イギリスはロンドンの女の子たちにインタビューしていました。その彼女らを指して、字幕では、

「ロンドンっ娘(こ)」

と出ていたのですが、アナウンサーは、

「ロンドンコ」

と、小っちゃい「っ」は、読んで(発音して)いませんでした。

実際、小さい「っ」を入れて言ってみると、とても言いにくいですからね。

「江戸っ子」「浪速っ子」「パリっ子」

のように、小っちゃい「っ」の前が「ど」「わ」「リ」などであれば、小っちゃい「っ」を入れてから「子」と繋げても言いにくくありませんが、「ロンドン」に「子」を付けた場合に小っちゃい「っ」を付けると、その前は「ン」になってしまいます。「ン」のあとに小っちゃい「っ」を付ける、つまり、

「撥音の後に促音で発音する」

のはとても難しい。発音しても、「ん」で母音が付いていない上に促音で詰まるのですから、実際の音として出て来ないということがあるのではないでしょうか?

その辺りを、字面で「パリっ子」「江戸っ子」と同じように書こうとした結果、発音のことまで考えていなかったのが「ロンドンっ娘(こ)」なのではないか?

まあ、言えなくはないですが、とっても言いにくいというのは確かですね。小っちゃい「っ」がない方が、絶対言いやすいです。

(2012、12、9)

2012年12月10日 00:49 | コメント (0)

新・ことば事情

4902「連獅子」

 

12月5日、歌舞伎役者の十八代目・中村勘三郎さんが亡くなりました。57歳の若さでした。残念です・・・。

 

さて、その勘三郎と、勘九郎・七之助の親子三人で「連獅子」を舞う様子が画面に流れていました。それを見ていて、

「そうか、連獅子の『子獅子』という文字は、『子』という文字で『獅』をサンドイッチにしてるんだなあ」

と思った時に思い出したのが、たしか小学校の時に両親から教わった言葉のクイズです。それは、

 

「子子子子子子 子子子子子子」

 

という「子」という漢字が12子・・・いや12個並んだ文字列の読み方、でした。当然わからなかったのですが、答えは、

 

「ねこのこ こねこ ししのこ こじし」(猫の子、子猫、獅子の子、子獅子)

 

というもの。「子」は「こ」とも読むけど「ね」とも読み「し」とも読む。それを組み合わせて読むと上記のようになるというクイズでした。もしかしたら、多湖輝さんの『頭の体操』に載っていたのかもしれませんが。きっと江戸時代から・・・もっと古くからある「なぞなぞ」なんでしょうね。

(2012、12、6)

2012年12月 7日 12:18 | コメント (0)

新・ことば事情

4901「 洋数字と漢数字」

 

数字に「1、2、3」という「洋数字」を使うか、「一、二、三」という「漢数字」を使うかは、ケースバイケースで、結構、難しいです。

原則で言うと、

「入れ替え可能な数の場合は『洋数字』」

を使います。たとえば、「参加者の人数」を数える場合は、

「2人」

と「洋数字」で書き、「二人」にはしません。3人、4人、5人・・・10人、15人・・・150人と数が増えても「洋数字」なら、問題なく対応できます。

これに対して、「夫婦」や「付き合っている」、あるいは「離婚調停」「マインドコントロールされている」等の、

「関係性がある特定の『ふたり』の場合は『漢数字』」

を用いて、

「二人」

と「ミヤネ屋」ではしています。「三人以上」に関しては、出てくる例が少ないのですが、ケース・バイ・ケースです。

先日、タレントの多岐川華子さんと仁科克基さんの離婚のニュースを伝えましたが、その際は、双方の母親がともに女優で、それを指して、

「2人の母親」

という表記がありました。確かに「母親の人数」は「2人」ですが、この場合は、

「華子と克基という特定の『二人』の、それぞれの『母親』」

というですから、先ほどの表記の基準から言うと、

「二人の2人の母親」「二人の母親2人」

であり、もっとわかりやすく表現すると、

「二人の母親(たち)」

となります。「2人の母親」では「母親の人数」を伝えていることになってしまいます。

この違いが分かるようになれば、しめたものです。

(2012、12、6)

2012年12月 6日 11:25 | コメント (0)