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『道浦TIME』

新・読書日記 2013_137

『こんなに変わった歴史教科書』(山本博文ほか、新潮文庫:2011、10、1初版・2013、4、20第6刷)

 

2008年12月に東京書籍から刊行されたもの。文庫化されてからも売れているようだ。この本を読むきっかけは、ニコニコ動画で月に1回放送している「ことばのことばかり」の中で、相棒の山本アナウンサー(入社6年目)に「『ロゼッタストーン』って知ってる?」と聞いたら、全く知らなかったこと。これは山本アナウンサーが「ものを知らない」という事ではなくて、「学校教育の中で教わっていないのではないか?」「教育制度に問題があるのではないか?」という疑問が出発点。「ロゼッタストーン」に関しては、この本には載っていなかったが、我々が学生だった「昭和の時代の教科書」と「平成の教科書」は、かなり変わってきているということは、よくわかった。時代とともに「事実(史実)」が「新しい発見」によって塗り替えられていくこともあるのだなと。「歴史は塗り替えられる」と。いい意味で。


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(2013、8、14読了)

2013年8月31日 19:43 | コメント (0)

新・読書日記 2013_136

『数ことば連想読本~語彙表現のたのしみ』(槇皓志、現代教養文庫:2000、12、30)

文庫本だが300ページを超える。「1」から順に数字にまつわる話がぎっしりと満載!(重複?)勉強になった。「三千世界」の「三千」が、実は「1000が3つ」ではなく「1000の3乗」だというのは気付かなかった、という話は「平成ことば事情」に書きましたね。では、「『四苦八苦』というのは具体的には?」

と聞かれて答えられますか?これは我々が遭遇する苦しみのことで、「生・老・病・死」の4つ(四苦)に、「愛別離苦」「怨憎会苦」「求不増苦」「五陰盛苦」の4つを合わせて「八苦」というのだそうです。こういった数々の「数ことば」に関するお話が載っている本です。


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(2012、8、3読了)

2013年8月31日 10:37 | コメント (0)

新・読書日記 2013_135

『C層の研究』(適菜収、講談社:2013、7、4)

この著者による「B層の研究」という本が先に出ていて、それを読んだ。「B層」「C層」は著者による命名かと思ったら違って、広告業界で使われている言葉だそうだ。前著で著者は「B層が日本を悪くした」と主張。逆にこれからの世の中を立て直すのは「C層」だと。ただ、この本も、言葉遣いが悪い。スッキリと読める部分もあるが、何か舌の上にザラザラが残るような気持ちが悪い部分も、多々ある。


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(2013、8、16読了)

2013年8月30日 23:35 | コメント (0)

新・読書日記 2013_134

「蔵書の苦しみ」(岡崎武志、光文社新書:2013、7、20第1刷・2013、8、10第2刷)

 

この手の内容の本は時々あるが、ついつい買って読んでしまう。「そうそう、そうなんだよ」と共感。時々、「あなたは月に何冊、本を読みますか?」というようなアンケートが雑誌などに載っていて、ほとんどの場合、半数の人は「ゼロ」と答えている。「月10冊以上読む人」は1割もいないという全体像が明らかになると、明らかに私はその1割の「ちょっと変わった人」(?)になってしまう。でも、この本の著者は、その「ちょっと変わった人」だから、仲間だ。

私は月に20冊読むが、その2倍は購入している。年間240冊読むと、増える本は年間500冊以上だ、増え続ける本を、どうやってコントロールするのか?結局は処分するしかないのだが、どういう気持ちで処分すればいいかというようなことが、実体験に基づいて書かれている。「なるほど、そうすればいいのか」とは思うが、なかなかその通りには出来ないのがまた、現実なわけで・・・だから「苦しみ」であり、「人の苦しみ」は「おかしみ」に通じるのだ。


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(2013、8、12読了)

2013年8月30日 21:30 | コメント (0)

新・ことば事情

5224「カルチャー」

 

culture(カルチャー)」

という言葉は、日本語では、

「文化」

と訳されますが、よくよく見ると「原語」として、

「耕された(cult)もの(ure)→精神の耕作」

とあります。

「精神の耕作」とは、どこを耕すのか?もちろん具体的には、

「脳みそ」

という「畑」ですね。耕さない畑は、「耕作放棄地」。その荒れ果てた「畑」に、時がたってから作物を植えるのには、相当の苦労を要します。脳みそもまた同じですよね!

『開高健名言事典 漂えど沈まず~巨匠が愛した名句・警句・冗句200選』(滝田誠一郎、小学館)という本を読んでいたら、こんな言葉が出て来ました。

「人の一生の本質は 二十五歳までの経験と思考が決定する」(「最後の晩餐」光文社文庫)

やはり、

「鉄は熱いうちに打て」

という言葉もありますしね。基本姿勢は若いうちに・・・ということですね。え?もう手遅れ?・・・

(2013、8、29)

2013年8月30日 15:01 | コメント (0)

新・ことば事情

5223「北海道県警」

 

最近相次いでいる、アルバイト先などの冷蔵庫や流しに入ったりする悪ふざけの様子を撮影した写真をネットに載せる"事件"でついに逮捕者が出ました。こういった行為のせいいで店が営業できなくなったりしていて、これはもう「悪ふざけ」では済まず、「犯罪」です。

そのニュースを伝える中で、北海道で、パトカーの屋根に乗った映像を載せた19歳の少年2人が逮捕されたと伝えました。その際、逮捕したのは、

「北海道県警」

とスーパーが出されていました。チェックの段階で私は見逃してしまったのですが、もう一人のチェック係の読売新聞校閲OBのFさんが、

「これ、『北海道警』ですよね」

と指摘してくれて、

「あ!」

と気付きました。危なかった!「北海道」に「県警」はありません!「道警」です。

「もしや」と思って、ナレーション原稿を見てみると、そちらにもしっかりと、

「北海道県警」

と・・・これも飛んで行って直しました。放送に出なくてよかった。あと北海道で、本州の我々が耳慣れない物には、

「道道」

がありますね。北海道には「県道」もありません。

(2013、8、28)

2013年8月29日 17:35 | コメント (0)

新・ことば事情

5222「ばっかじゃなかろうか」

 

8月28日放送の「笑ってコラえて」の3時間生放送スペシャルで、南米で有名な日本人として紹介されていた、アルゼンチン在住の高木一臣さん(88歳)は、1925年三重県尾鷲市生まれ。「ラプラタ報知」という新聞の新聞記者を務めて40年以上で、88歳の現在も現役で「社説」を書いているそうです。その中で紹介された社説のタイトルが、選挙後の大統領の態度に対して述べたもので、

「ばつかじゃなかろうか」

というもの。この言葉、うちの母(1935年生まれ=78歳)が、昔、よく口にしていたのを思い出しました。実は流行語だったんですよね。

『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(米川明彦編著、三省堂)によると、この「ばっかじゃかなろうか」は、

「1953年(昭和28年)の流行語」

で、「トニー谷」が使った流行語の一つ。トニー谷はほかにも、

「・・・ざあんす」「ざんしょ」「胸が、ドキリンコ」「うれしくって、ホンワカホンワカ」「おこんばんは」「ネチョリンコン」「さいざんす」「家庭の事情」

といった言葉を流行らせたのだそうです。

これらの言葉は明らかに、その後の赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」に出て来た、

「『イヤミ』のモデルが『トニー谷』である」

ことを示していますね。

それと、トニー谷がこういった流行語を連発した1953年(昭和28年)というのは、今からちょうど60年前、そしてその年は、

「テレビ放送が始まった年」

でもあるんですね。そう考えると感慨深いものが・・・。さらにその言葉が、地球の(日本の)裏側のアルゼンチンでまだ生きていたんだなあ・・・と思うと、これも感慨深いザンス。

(2013、8、29)

2013年8月29日 12:34 | コメント (0)

新・ことば事情

5220「藤さんのアクセント」

 

8月22日に亡くなった歌手の

「藤圭子さん」

のニュースをお伝えする際に、フルネームではなく、苗字に「さん」を付けて読むときアクセントが「2つ」あります。

「頭高アクセント」の、

「フ\ジサン」

と、「平板アクセント」の、

「フ/ジサン」

です。これは、フルネームを読む時のアクセントの違いが反映されるような気がします。つまり、

「フ\ジ・ケ\イコ」(2語意識)→「フ\ジサン」

「フ/ジケ\イコ」(コンパウンド・中高アクセント)→「フ/ジサン」

となるのではないでしょうか。どちらも「あり」だとは思うのですが、問題は「頭高アクセント」の、

「フ\ジサン」

の場合、何度も聞いていると、だんだんと、

「富士山(フ\ジサン)」

に聞こえてくるのです、世界文化遺産の。

間違いを防ぐためには、「平板アクセント」の、

「フ/ジサン」

と読んだ方がいいのですかねえ?悩みます。

(2013、8、28)

2013年8月28日 18:08 | コメント (0)

新・ことば事情

5219「香りだかいコーヒー」

 

新幹線に乗っていたらワゴンサービスの案内の放送が流れました。その中のコーヒーのPRで、「香り高いコーヒー」というのを、

「香りだかい」

と濁っていました!これはやはり、

「香りたかいコーヒー」

「たかい」は濁らないで読んでほしい。濁って「だかい」と言うと、

「香り高くない感じ」

になってしまう気がするのは、私だけではないのではないでしょうか?

どっちかというと、

「計算だかい」

感じまでしましたが・・・。

2013年8月28日 11:01 | コメント (0)

新・ことば事情

5218「特別警報」

 

7月27日からの山口・島根両県を襲った記録的な豪雨。島根・津和野町は、1日で381ミリも雨が降りました。ふだんの年の7月の「2か月分」にあたる雨です。

これに関して気象庁は7月29日、

「経験ない大雨」

と表現しましたが、これは気象庁が今年の8月30日から運用を始める予定の、

「特別警報」

にあたるものでした。「特別警報」とは、

「数十年に一度の気象現象」

にあたるケースだそうで、現在の「大雨警報」を上回る、注意を要する状態なんだそうです。ただ、今回(7月の大雨)に関して「特別警報」自体が、前倒しで発表されたわけではないそうです。

気象庁は、

「命を守る報道を!」

と呼びかけています。また、報道各社はこの大雨を、

「経験したことのない大雨」

とも表現していました。この表現は去年の9月から導入されて、今回で3回目。

「1時間に130ミリ以上という雨」

の場合に、

「これまでに経験のないような大雨」

と呼ぶのだそうです。

「特別警報」が始まる前に、この夏は7月と8月にはそれに相当するようなものすごい雨の被害を受けてしまいましたが・・・。

(2013、8、25)

2013年8月27日 18:14 | コメント (0)

新・読書日記 2013_133

『増補版 誤植読本』(高橋輝次、ちくま文庫:2013、6、13)

 

アンソロジー。東京書籍から2000年7月に刊行されたものは、買って読んだが、今回は文庫化にあたって林真理子、坪田稔典、佐多稲子、多田道太郎、小宮豊隆、十川信介のエッセイを追加した53篇。読みごたえはある、昔から誤植には悩まされていたんだなあと言う、誤植の歴史も読み取れるが、それにしても事情はあんまり変わっていないんだなあと。そして、ワープロ・パソコンのDTPになってからは「同音異義語の変換ミス」の誤植が多くなっている様子も、はっきりと見て取れた。

 


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(2013、8、13読了)

2013年8月27日 11:30 | コメント (0)

新・読書日記 2013_132

『怒らないクスリ~専門医が語る心が楽になる処方せん』(熊井三治、小学館101新書:2013、8、5)

 

著者は心療内科医で精神科医。

帯には「怒る前に読む!」と書かれてあったが、なんだか胃薬の「飲む前にのむ!」みたい。ずっと怒りを我慢したら良くないし、小出しにしないと。怒ると健康に悪いと言うが、怒りを我慢しても体に悪いでしょ。結局、じゃあどうするのよ。この手の本で、「そうか、なるほど!」と、全面的に納得させてくれる本には、いまだに出会わない。


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(2013、8、12読了)

2013年8月26日 21:29 | コメント (0)

新・読書日記 2013_131

『ぢぢ放談~激闘篇』(永六輔+矢崎泰久、創出版:2013、5、2)

 

対談集。二人とも80歳、ことし傘寿のおぢいさん。で、「ぢぢ放談」。ちょっと「じじ(時事)放談」でもある。この二人の対談集はこれまでにもたくさん出ているそうだ。

永さんがパーキンソン病になって、お年のせいもあって、家の中で転んだり、ポストに手紙を入れに行ってこけたり(転んだり)して、こける(転ぶ)と骨折、入院という事を繰り返していると。1年ほど前、NHKの番組で現在の永さんの様子を見て、「そうだったのか・・・」と。寄る年波を感じたが。若い頃からこんなに我儘で激しい人だったとは、よく知らなかった。少し口うるさくておもしろい"男のおばちゃん"、という印象。パーキンソン病の治療では、女性ホルモンを使うので、女性っぽくなるんだとか。

「3・11」以降は逆に元気になっているという永さんだが・・・。

病と闘いながら・・・というのは大変であるなと感じた。

 

 


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(2013、8、21読了)

2013年8月26日 17:25 | コメント (0)

新・読書日記 2013_130

『日本人はこれから何を買うのか?「超おひとりさま社会」の消費と行動』(三浦展、光文社新書:2013、4、20)

 

これまでの本だったら、サブタイトルとタイトルが逆だった。つまり、

『超おひとりさま社会の消費と行動~日本人はこれから何を買うのか?』

となっていたと思うが、それだと学術書っぽいので、さかさまにすると、すごく説明的なタイトルになった、という感じ。最近の傾向かな。

こういったデータから社会の動きを読み解く第一人者の三浦さん。最初の方はデータばかりであまり面白くなかったが、要は、これまで女性の老後を指して「おひとり様」と呼ばれてきたのが、今後は男女を問わずみんな「おひとり様」になると。その消費状況に対応していくことが必要で、そこで必要とされるのは「ケアサービス」。それは「コミュニティー」を作っていくことにも通じる。つまり「コミュニティーコンビニ」という形態が、今後必要とされるという主張である。詳しくは本書を読んでください。


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(2013、8、20読了)

2013年8月26日 12:21 | コメント (0)

新・読書日記 2013_129

『デフレの正体~経済は「人口の波」で動く』(藻谷浩介、角川Oneテーマ21:2010、6、10初版・2010、12、30・13版)

 

帯に「20万部、13刷突破!」と目立つ字で書かれています。

もう3年以上前に買って読みかけたままほったらかしにしておいた本。

著者が、わたしの大学のゼミの同期と同じ銀行で、そこでの後輩であるということを、その同期生に聞いたことがあります。アベノミクス効果で(?)デフレが終焉を迎えるのか?はたしてデフレの正体とは?ということに興味を持って読みました。

でも皆さん、答えはサブタイトルに書いてあったんです。

「経済は『人口の波』で動く」

『人口論』ってマルサスでしたっけ?なんだか何十年も前の大学の講義を思い出すような・・・。

人口が減るとデフレになるんだったら、デフレ対策は「少子化防止」しかないの?

詳しい方策は本書を読んでくださいな。


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(2013、7、17読了)

2013年8月25日 22:23 | コメント (0)

新・読書日記 2013_128

『オレたち花のバブル組』(池井戸潤、文春文庫:2010、12、10第1刷・2011、9、25第6刷)

 

話題のドラマ(他局)の原作。ドラマはまだ一回も観たことがないのだが、原作本は家に買ってあったので、読んでみる気になった。まず、『オレたちバブル入行組』を読んで、続編の本作に。もちろん、一作目の方がインパクトはあったが、続編ならではの"主人公たちへ思い入れ"もできたので、面白く読めました。


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(2013、8、10読了)

2013年8月25日 18:29 | コメント (0)

新・ことば事情

5217「ムルシか?モルシか?」

 

エジプトの前の大統領の名前の表記にバラつきがあることに、最近、後輩のYアナウンサーに指摘されて気づきました。

「ムルシ」「モルシ」

の2種類があるというのです。さらには語尾を伸ばす形もあるとか。

そこで、グーグル検索してみると(8月22日)、

「ムルシ」= 16万7600件

「モルシ」=146万0000件

「ムルシー」= 1万8800件

「モルシー」= 5万5700件

でした。圧倒的に「モルシ」が多いですが、その10分の1ぐらいの割合で「ムルシ」も使われています。語尾を伸ばす形は使用例が少ないようです。

各メディアがどう表記しているか、これもインターネット上で調べると、

「ムルシ」=朝日新聞

「モルシ」=読売新聞、毎日新聞、日経新聞、東京新聞、時事通信、共同通信

「モルシー」=産経新聞

でした。

日本テレビは「モルシ」でした。

「ムルシー」というのは、知り合いの郵便学者内藤陽介さんが使っていました。

ちなみに、表記の違いに気付いた後輩のY君は「朝日新聞」を取っているということです。複数の新聞を取るか、定期的に取る新聞を変えるなど、複数の視点を持つことも大事だよとアドバイスしておきました。

(2013、8、23)

2013年8月25日 12:10 | コメント (0)

新・ことば事情

5216「派手と艶」

<2007年9月3日に書きかけました。その時は「平成ことば事情3052」>

 

2007年9月2日の日経新聞「私の履歴書」文楽人形遣いの吉田蓑助さんです。その文中に、文楽の題の一つ、

「艶姿女舞衣」

というのが出てきました。漢字ばかりのこのタイトルには、ルビが振ってあって、それには、

ですがた おんなまいぎぬ」

とあったのです。私はてっきり「艶姿」は、

ですがた」

だと思っていたのですが、ルビは、

ですがた」

でした。それを見て「あ、もしや?」と思ったのは、

「『あで』と『はで』は同じ語源か、何らかの関連があるのではないか?」

ということです。「あで」は、「はで」の頭の「H」の子音が取れただけですからね。

 

(ということでほったらかしになったままで、6年後の2013年8月23日に続きを書いています。)

 

特に新たな発見はありませんでした・・・というか、ほったらかしでしたから。

『精選版日本国語大辞典』「はで」を引くと、

「派手・破手・端手」=(三味線の弾き方の「はで(破手)」から転じた語とも、また、「映(は)え手」の変化した語とも言う)姿、かたち、つくり、色あい、図柄などが、見た目にきわめて華美に映ること。目立って、はなやかであること。また、そのさま。」

とありました。

一方「あで」は、「艶(あで)やか」で引くと、

「あでやか」=(「あてやか(貴――)」の変化した語)女性の用紙、態度が、上品で美しい様。また、はなやかでなまめかしいさま」

とありました。直接のつながりは、語源としてはなさそうですが、意味に共通点があることから「当て字」として使われることが、歌舞伎や文楽などの世界ではある、ということようですね。

(2013、8、23)

2013年8月24日 12:08 | コメント (0)

新・ことば事情

5215「遺体が入った棺」

 

昨日(8月22日)、一週間前の8月15日に起きた京都・福知山市の花火大会爆発事故で亡くなった小学生・山名空君の葬儀のニュースを放送していました。

その原稿の中に、

「遺体が入った棺」

という表現がありました。それを聞いた後輩のOさんが、

「遺体が"入った"棺?」

と疑問を呈しました。というのは、客観的には間違った表現ではありませんが、

「痛ましい事故で若い命を失ったお子さんの遺体」

ですから、単純に、

「入った」

と表現するのは、少し心配りが足りないなということです。たしかに、

「遺体が"納められた"棺」

と言った方が「納棺」という言葉にも近づきますし、より敬意を払った表現になるのではないかなと思いました。ご冥福をお祈り申し上げます。

(2013、8、23)

2013年8月23日 21:58 | コメント (0)

新・ことば事情

5214「4000本安打か?4000安打か?」

 

「平成ことば事情5102」で「2000本安打か?2000安打か?」というのを書きましたが。8月22日、今度はヤンキースのイチロー選手が日米通算4000本目のヒットを放ちました。それを伝えた放送各社は、私がウォッチした範囲で言うと、

(日本テレビ)「4000安打」(リポーターは「4000本達成です!」と)

(NHK)タイトルスーパーと、その瞬間の映像のスーパー「4000本安打」

左上のサイドスーパー「4000安打」(試合のBSの中継も)

(TBS)タイトルスーパー「4000安打」

それ以外は「4000本安打」「3000本安打」と「本」あり。

(フジテレビ)すべて「4000本安打」

(テレビ朝日)*********(見逃してしまいました)*****

 

で、すべて「『本』を付けた」のは「フジテレビ」、すべて「『本』を付けなかった」のは、日本テレビ、「『本』のある・なし混在」だったのが「TBS」「NHK」でした。

新聞各社はこの日の夕刊で報じましたが、全国紙5紙(読売・朝日・毎日・産経・日経)の見出しは、全て「本」が付かない、

「4000安打」

でした。ただ、本文を見てみると、漢字の「千」を使った、

「4千安打」

としている社もありました(=朝日新聞と産経新聞)

また、各社「号外」を出している様子をそれぞれ系列のテレビ局(日本テレビ=読売新聞、TBS=毎日新聞という具合)が映していました(お昼のニュースで)が、なぜか「フジテレビ」だけは、「産経新聞」ではなく「読売新聞」の号外を映していました。

(2013、8、22)

2013年8月23日 18:05 | コメント (0)

新・ことば事情

5213「ウェイボー(微博)」

(2011年7月に書きかけました。当時の番号は「平成ことば事情4440」)

 

2011年7月26日のNHK夜9時のニュースを見ていたら、中国高速鉄道事故に関連して、東京福祉大学の遠藤誉特任教授の話の中で、

「微博(ウェ\イボー)」

という言葉が出て来ました。これは、

「中国版ツィッター」

と説明していました。遠藤特任教授は、

「ウェ/イボー」

「平板アクセント」で話していました。「暴れん坊」「食いしん坊」みたいです。

その後、この「ウェイボー」は、よく目に、耳にするようになりましたが、アクセントはたいてい、

「ウ/エ\イボー」

という「中高アクセント」です。

2013年8月22日、薄煕来被告の裁判が始まったニュースでは、

「裁判所の簡易投稿サイト『ウェイボー』」

で中継されたと、日本テレビの「ストレイトニュース」で伝えていました。

同じ日のテレビ朝日のお昼のニュースで、現地の特派員の男性は、

「裁判所の公式ミニブログ」

という表現で、「ウェイボー」という名前は出しませんでした。

中国事情と中国語に詳しい後輩のOさんに聞いてみたところ、

「『ブログ』のことを中国では『博客』と書いて『ポークー』と発音します。ですから、文字数が少ないことを示す『微』と、ブログの『博』を使って『微博』なんですね。でも、台湾ではブログのことは、『部落』と書いて『ポールー』と言いますね」

とのことでした。

(2013、8、22)

2013年8月23日 12:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5212「ロゼッタストーン」

 

先月(7月)に、ニコニコ動画で生放送した「道浦俊彦ことばのことばかり」。相棒の山ちゃんこと山本隆弥アナウンサーが、4回目にして本領を発揮して来ました。

話の流れで、

「ロゼッタストーン」

の話が出たのですが、それを聞いた山本アナウンサ-、

「ロゼッタ・・・・ストーン?」

と、どうやら「ロゼッタストーン」を知らない様子なのです。

念のために「ロゼッタストーン」の説明を辞書(「精選版日本国語大辞典」)から引いておくと、

「(英 Rosetta stone)エジプトのナイル川河口の都市ロゼッタ(ラシード)で発見された石碑。一部欠けている。黒色玄武岩で高さ1,2メートル、幅75センチメートル。紀元前196年建立のプトレマイオス5世の頌徳碑で、聖刻文字(ヒエログリフ)・民衆文字(デモクラティック)・ギリシア文字が三段に刻まれている。シャンポリオンによって解読され、以後のエジプト表象文字解読の手掛かりとなった。1799年ナポレオンの遠征軍が発見。大英博物館所蔵。」

とあります。私もロンドンの大英博物館で実物を見たときに、

「意外と小さいんだな」

と思ったことを覚えています。もう21年前ですが。

「ことばのことばかり」の現場にいたスタッフは、皆40代以上で、全員「ロゼッタストーン」を知っていたので、ずっこけて、

「そんなことも知らんのかあ!」

と山本アナに突っ込んでしまいました。ここで、意地悪心がもたげて来て、

「じゃあ、君が想像する『ロゼッタストーン』の絵を描いてみて」

と山本アナに言うと、「えええ・・・」と言いながら描きました・・・それは・・・なんと、高さ7~8メートル、幅3メートルはありそうな、

「慰霊碑のような巨大な墓石」

の絵でした。みんな、ドカーンと受けた受けた!

それ以来、彼のニックネームは、

「ロゼッタストーン」

になりました。

翌日・・・山本アナウンサーが近付いてきて、

「きのう、家に帰ってから、家に電話して母に聞いてみたけど『知らない』って言うんです。あと、大学の時の友達3人にも聞いてみたんですけど、誰も『ロゼッタストーン』を知らなかったんです。」

さらに、その後、番組で出会ったお笑い芸人さんにも何人か聞いてみたそうですが、誰も「ロゼッタスットーン」を知らなかったそうです。

わたしも、読売テレビのアナウンス部で聞いてみたところ、

「35歳以上の人は知っていたが、それより若い人は知らない」

という結果が出ました。中には若い女性アナウンサーが、

「『ロゼッタストーン』って、聞いたことはありますが・・・英語の教材か何かですよね?」

と言うではありませんか!

たしかにインターネットで「ロゼッタストーン」を引くと、そういう名前の

「英語教材」

が出て来ます。でも、それは本物の「ロゼッタストーン」がヒエログリフ解読に役立ったという事実に基づいて名付けたんでしょうけど・・・

「この花(バラ)の香り、石鹸の匂いと似ている!」

と言った子供がいましたが、それは本来、

「花(バラ)の香りを付けた石鹸の匂い」

なのですよね。それと同じで、まさに、

「本末転倒」

と言うべき事象でしょう。

しかし、こうなってくると、もうこれは山本アナウンサー個人の責任ではなくて、

「教育システムに問題があるのではないか?つまり、社会科で『ロゼッターストーン』を教えていないのではないか?」

あるいは、

「高校の世界史でのみ教えていて、それを選択しなかった人は、知らないまま卒業しているのではないか?」

といった疑問が出て来ました。

家に帰って、高校1年の息子に、

「『ロゼッタストーン』って知ってるか?」

と聞くと、

「知ってるよ。石が円のように並んでるヤツやろ」

と言うではありませんか・・・・って、

「それは、『ストーンヘンジ』(環状列石)やろが!」

「あ、違った、あのナポレオンが遠征でエジプトで見つけた石碑で、3種類の言葉が書かれていて、古い文字の解読に役に立った奴やろ」

「お、正解!今、それはどこにある?」

「大英博物館」

「正解!それって教科書に載ってるの?」

「載ってないよ」

「じゃあ、なんで知ってるの?」

「副読本に、たしか載ってたと思う。」

ということでした。

年齢だけの問題ではないが、やはり教育の様子が変わって来ているのではないかなと感じました。そんな折、『こんなに変わった歴史教科書』(山本博文ほか、新潮文庫)という本を読みました。「ロゼッタストーン」については記されていませんでしたが、我々の頃(昭和の時代)の教科書と、平成の教科書では、かなり様相が違っているのは確かのようです。

(2013、8、21)

2013年8月22日 21:36 | コメント (0)

新・ことば事情

5211「組員と団員」

 

「ミヤネ屋」の原稿に、

「暴力団員」と「暴力団組員」

が出て来たので、おやっ?と思いました。この2つの言葉の違いは何なんでしょうか?

広い意味ではどちらも、

「暴力団員」

ですよね。

暴力団には「○○組」と「○○会」がありますが、「○○組」は「組員」と言えますが、「○○会」は「会員」とは言えないですね。そういったケースは、

「暴力団(団)員」

になるのではないでしょうか?でも「団員」とは言わないな。「団員」というと、

「サーカス団」「スポーツ少年団」

といったあたりがイメージされます、わたしには。

「○○組」は何も暴力団に限ったものではありませんが、余りにも、

「組員」=「暴力団組員(暴力団員)

というイメージが付いたためでしょうか、暴力団ではない"一般の「○○組」"の人を「組員」とは言わないですね。

「○○小学校1年2組の組員」

とは言いませんね。

などと思っていたら、どうも読売テレビの報道では、

「『暴力団組員』という表現は使うが『暴力団員』という表現は使わない」

ことになっているようです。また、

「『暴力団関係者』という表現は使う」

ということのようです。私もはっきりとは知りませんでした。(雑誌の報道表現は「暴力団員」だったそうですが)

(2013、8、8)

2013年8月22日 12:33 | コメント (0)

新・ことば事情

5210「注意」

 

夏休みで、ベトナムに行って来ました。初めて訪れた国です。南部のホーチミン市です。

旧大統領官邸を見学していたら、地下にある作戦本部の壁に、

CHUI

というベトナムの文字が。それを見てはっとしました。案内のベトナム人のガイドさんに、

「これは、何と読むのですか?」

と聞くと、

「キュウ・イー」

と言うではありませんか。意味を聞くと、

「気を付けて」

だそうです。やっぱり!これは、絶対、

「注意」

ですよね。

「チュウイ」

ベトナム訛りで「キュウイー」。

ベトナムは元々漢字文化圏の国。ですから中国語と言うか、漢字で書かれたであろう言葉が、漢字は使われなくても残っているのではないか?と思っていたのですが、これは絶対にその名残りですよね。もっと探せばあるのかもしれませんね。

(2013、8、20)

2013年8月21日 18:34 | コメント (0)

新・ことば事情

5209「シベリア」

 

宮崎駿最新作『風立ちぬ』を見ました。

内容は・・・話すと「ネタばらし」になるのでやめますが、良かったです。大人向けの映画でした。その中に出て来た(って、少しネタばらしになってしまいますが、と言いながら、既に「平成ことば事情5205ひもじい」でも、ちょっと書きましたが)、その時代の食べ物で、

「シベリア」

というのがありました。が、私には全くなじみのない食べ物でした。

ネット検索してみると「ウィキペディア」に載っていました。

「カステラのような生地で、餡子をはさんだお菓子」

でした。知らないなあ。食べたことないと思います。『風立ちぬ』では、お菓子の形は「三角形」でしたが、「ウィキペディア」に載っていたのは「四角形」でした。

昭和初期頃から人気だったお菓子のようですが。どこで売っているのかな?ぜひ一度、食してみたいものです。映画館で、上映に際して売ってくれないかな。

きのう(8月20日)のニコニコ動画「道浦俊彦のことばのことばかり(第5回)」の生放送でも、この「シベリア」の話をしましたが、視聴者の方から、「シベリア」に引っ掛けたダジャレで、

「シベリア・クリステル」

という声が画面に流れたら、相方の山ちゃんこと山本アナウンサーが、いきなり声を上げて笑いました。てっきり、「シルビア・クリステル」さんが演じた「エマニエル夫人」のことを連想して笑ったのかなと思ったら、山ちゃんは「シルビア・クリステル」は知らなくて、

「滝川クリステルに名前が似てるなあ」

と思って笑ったとか・・・どうも笑いのツボが違う。

シルビア・クリステルさんは、去年かな、まだそれほどのお年ではないのに、お亡くなりになりましたね・・・山ちゃんが知らなくてもしょうがないか。

昼休みに、読売新聞OBでテロップのチェックをしてくれているOさん(昭和23年生まれ)に聞いてみたところ、

「ああ、シベリア!3~4年前に東京の下町で食べましたよ。おいしかった!」

と言っていました。あるんだなあ!

 

(2013、8、21)

2013年8月21日 18:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5208「手足口病のアクセント」

 

最近流行している「手足口病」のアクセントに関して、NHKの原田邦博さんからメールを頂きました。それによると、「手足口病」は長い言葉なので、人によってアクセントがバラバラ。「○○病」という言葉は「平板アクセント」が多いので、

(1)「テ/アシクチビョー」(平板)

とする人や、「手足」を重視するためか、

(2)「テ\アシクチビョー」(「頭高」)

で読むアナウンサーもいるし、また(2)の変形か、「2語」に分けて、

(3)「テ\アシ・ク/チビョー」(2語意識)

というのも聞いたと。「正解」は不明だが・・・という内容でした。

そこで読売テレビアナウンス部でも「どう読むか?」を聞いてみました。

それによると、

【1】=4人

(50代男)(1)で読みます。昔から、そういう病名として。 

(30代男)(1)で伝えてしまいます。

(30代男)手・足・口が同列なので(1)かと思います!

(50代男)15年以上20年前?前に、初めて聞いた時は、(1)の「平板」で言っていました。日常会話の域を出ませんでしたが...。"安易に平板化"傾向の最中だったかもしれません。「手・足・口」という部位はすべてバラバラだから、考えてみれば、(3)かもしれませんね。理屈で改めて納得してしまうアクセントかもしれません。

 

【2】=2人

(20代女)私もどう読むべきか教えていただきたかったです。私としては(2)がしっくりきます。

(40代女)(2)です。

 

【3】=9人

(20代男)私は、(3)「テ\アシ・ク/チビョー」(2語意識)だと思っています。

(30代女)(3)です!病院の先生や保育園の先生も(3)で言っている人が多いように思います。

(40代女)全然、意識していませんでした。。。普通に。。。(3)で読んでいます!

(40代男)(3)です。

(30代男)まだ放送で実際に使ったことはありませんが、(3)で読むと思います。

(20代女) 私も、(3)です!

(20代男) 立田は、(3)で読んでいます。

(30代男)(3)だと思っておりました。

(40代男)(3)です。

ということで、読売テレビアナウンス部では、(3)の、

「テ\アシ・ク/チビョー」(2語意識)

が「15人中9人」と、過半数を占めました。

また、8月6日のテレビ朝日のお昼のニュースを聞いていたら、女性のアナウンサーが、

(3)「テ\アシ・ク/チビョー」

で読んでいました。

また8月9日の夕方の日本テレビ『ニュースevery.』では、インタビューを受けた関西訛りのお母さんが、

(1)「テ/アシクチビョー」(平板アクセント)

で話していましたが、ナレーターの男性は、

(3)「テ\アシ・ク/チビョー」(2語意識)

で原稿を読んでいました。

 

 

 

(追記)

あれから2年、また「手足口病」が流行っているようです。2015年7月14日の午後7時のNHKのニュースでやっていました。それを伝えた女性ナアウンサーは、

「テ\アシ・ク/チビョー」

と読んでいました。

(2015、7、14)

 

 

(2013、8、20)

2013年8月20日 11:46 | コメント (0)

新・ことば事情

5207「京」

 

「ミヤネ屋」の若いディレクターから質問を受けました。

「『億』の上の単位『京』は、どう読むんでしょうか?」

え?知らんの、それは、

「ケイ」

に決まってるやん。神戸にある「世界一のコンピューター(だったもの)」の名前も

「京(けい)

でしょ。知らないかなあ。

ちなみに数の単位は小さいほうから、

「 一 ·十 ·百 ·千 ·万 ·億 ·兆 ·京 ·垓 ·

(2013、8、9)

2013年8月19日 18:38 | コメント (0)

新・読書日記 2013_127

『オレたちバブル入行組』(池井戸潤、文春文庫:2007、12、10第1刷・2008、3、15第3刷)

単行本は2004年12月に出ています。池井戸潤は、「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」にはまって、一連の小説を購入したものの、これはタイトルが軽いのでちょっと読む気にならずに本棚に眠っていたもの。しかし他局の大ヒットドラマの原作と知り、読んでみる気に。読んだら・・・ハマってしまいました。夜中3時まで一気読み!おもしろいがな。痛快!企業小説。悪者といい者がはっきりしているが、「正義は勝つ」的で、悪を屈服させるやり方が極端で痛快。

ただ、最初のバブル時の「入社試験」(銀行だから「入行試験」か)の時に主人公と一緒になった学生が、同じ「慶應」出身で(著者も慶應出身で銀行出身)、「グリークラブ」に所属していると名乗るシーンがあり、主人公(おそらく、心情的には著者の化身)が、

「お澄まし顔で歌なんぞ歌うグリークラブはそもそも気に食わないが」

と心情を吐露する場面があり、グリークラブ出身の私は、

「お、ケンカ売っているのか!?」

と思うと同時に、

「世の中の人は、そんな風に『グリークラブ』のことを思っているのか・・・?」

と思った。それと、慶應は「グリークラブ」とは言わない。

「ワグネルソサエティ男声合唱団」

だ。「慶應」は実名でも、そこは「仮名」にしたのか?なぜ?「ワグネル」ではわかりにくいから?まあ、その部分を除いては痛快でした。主人公の名前は、「半沢直樹」です。

 


star4_half

(2013、8、7読了)

2013年8月11日 12:21 | コメント (0)

新・ことば事情

5206「射程距離」

 

「ミヤネ屋」のスーパーをチェックしていたら、

 

「射程距離」

 

という文字が出て来ました。いったん通り過ぎてから、やっぱり戻って、

「ちょっと待った!」

と修正しました。

そもそも「射程」というのは、

 

「発射した弾丸の銃口から到達点までの水平距離」

 

のことなので、「射程距離」というと「重複表現」になります。

でも、よく「射程距離」って言っちゃいますけどね。本当は誤りです。注意、注意!

(2013、8、9)

2013年8月10日 12:10 | コメント (0)

新・ことば事情

5205「ひもじい」

 

神戸の女子大で教えている人から頂いたメールに、こんなことが書かれていました。

「最近の若者は『ひもじい』の意味を『空腹』ととらえているのは少数派らしいというのはご存知でしょうか。授業で、3年連続で合計200人を超す学生に聞いた結果ですので

多分、傾向としては間違いないと思います。多いのは『貧しくて食べ物がない』『貧しい』という解釈で、『ひもじい』という語を知らないという学生も一定程度います。つまりは、『ひもじい』という状態に縁がないということなのだと思います。学生の思う使い方の例として『戦争中はひもじい生活をしていた』と書いてあると、意味の理解に齟齬があることに気づかないのですが、『給料前なので今日のおかずはひもじい』あたりになると『??』です。」

とのことなんです。そうかあ、ある意味では、いいことですよね。だって「ひもじい」に縁のない生活ができているわけだから。

でも、経験していないから知らないということでは、あまりにも即物的ですし、想像力がない、ということでもあります。でも「貧乏」にまでイメージを膨らませるということは、逆に想像力が豊かということかも?

入社2年目のNアナウンサーに、

「『ひもじい』の意味を知ってる?」

と聞くと、即座に、

「空腹で死にそうなくらい」

と答えた後に、続けて、

「貧乏、貧しい」

と付け加えました!やっぱり!正解を言うと、

「そうなんですか!?」

と言っていました。ついでに、

「『ひもじい』というのは元々女房詞。もともと『ひだるし』と言ったのを、その頭文字の『ひ』を取って『ひ文字』と言った。それが形容詞化したものが『ひもじい』。『杓子』を『しゃ文字』、『髪・鬘(かつら)』を『か文字』、『寿司』を『す文字』、『櫛』を『く文字』というのと同じ構造だよ。」

と言いましたが、伝わったかどうかは定かではありません。まず「女房詞」(御所言葉)の説明からしなくてはなりませんね。

本当の意味での「ひもじい」という言葉を、意外な所で聞くことができました。宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』を見ていたら、夜遅く仕事帰りの主人公の堀越二郎が、お菓子(?)の「シベリア」を買った際に見かけた幼い兄弟に向かって、こう言うのです。

「君たち、ひもじくない?これを食べなさい」

でも、知らないおじさんに声を掛けられた子どもたち(特にお姉ちゃんのほう)は、結局「シベリア」を食べずに、逃げるように走って行ってしまうのですが。

時代は昭和の初め。「ひもじい」という言葉が、実態を伴って普遍的にあった頃でした。

(2013、8、7)

2013年8月 9日 12:40 | コメント (0)

新・ことば事情

5204「米側」

 

8月5日の沖縄の米軍基地・キャンプハンセンでのヘリコプターHH60の墜落事故に関して、小野寺防衛大臣と安倍総理がコメントを出しました。その中で、二人とも、

「米側」

という言葉を、

「ベイガワ」

と発音していたのが気になりました。普通は、

「アメリカ側」

というのではないでしょうか?

「米軍基地」

などの場合は、かならずしも「アメリカ軍基地」とは言わずに、

「ベイグンキチ」

と言うかもしれませんが、「米側」は、たとえそう書かれていても普通は、

「アメリカガワ」

と言うのではないでしょうか?

「ワニ革のバッグ、買っちゃった!」

みたいに、「ベイガワ」は、「ベイ」というものの「革」にように聞えました。

(2013、8、6)

2013年8月 8日 16:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5203「流れた」

 

放送予定の番組や企画が、放送予定日に放送されなかったことを、

「流れた」

と言います。これに対して、予定通りに放送された場合も、

「流れた」

と言います。前者は、

「予定が流れた」「予定されたその時間に放送されなかった」

という意味であり、後者は、

「放送が予定通り、電波で流れた」

という意味であります。ちょっとこれは、ややこしい。

「あの企画、どうだった?」

「流れた」

では、放送されたのか、されなかったのかが、つまり流れたのか、流れなかったのかがよく分からないという事態になります。普通は、「放送された場合」には、

OA(オンエアー)した」

と言いますね。それで混乱は回避されます。

同じ言葉が逆の意味を持つというケースはややこしいですね。

これと同じようなことは、

「飛んだ」

にも起きます。「平成ことば事情5158 飛んだと落ちた」もご覧ください。

(2013、8、7)

2013年8月 8日 12:24 | コメント (0)

新・ことば事情

5202「『ヘリ』か?『ヘリコ』か?」

2013年8月5日に沖縄・宜野座村のキャンプハンセンでヘリコプターHH60が墜落した事故がありました。そのニュースを伝えるスーパーの中に、

「墜落したヘリコを目撃した住民は」

というものがあり、

「『ヘリコ』は業界用語だろう!ふつう『ヘリコプター』の略称は『ヘリ』だろ!」

ということで修正をしましたが、それを受けて、また「ヘリ」と言うか「ヘリコ」と言うかという議論が起きました。

「『ヘリコ』は関西弁でしょう!東京の人は『ヘリ』としか言わない」

「いや、放送業界では東京でも『ヘリコ』と言うのではないか?」

「『ヘリコ』と『ヘリ』の違いは、『マクド』と『マック』の違いのようなものではないか?」

などなど、議論百出!そこで改めて、調べてみることに。

ネット検索をしてみたら、「知泉wiki」というサイトで2009416に、こんなことが書かれていました。

『ヘリコプターのことを普通一般的に「ヘリ」と略しニュースなどでも使うが、NHKでは何故か「ヘリコ」と略す。実は「ヘリコプター」という名前はギリシャ語で「螺旋」を意味する「ヘリコ:helico」と「翼」を意味する「プテロン:pteron」を合成した名前なので、ヘリコと区切るのが語源的には正しいのです。』

へーへーへーへーへー。(懐かしい「トリビアの泉」ふうに)

そうだったのか!

「平成ことば事情1927 ヘリコ」もお読みください。

(2013、8、7)

2013年8月 7日 21:23 | コメント (0)

新・ことば事情

5201「地滑りか?土砂崩れか?がけ崩れか?」

<2005年8月に書き始め、2006年6月17日に書き足したまま、ほうってありました。当時の番号は「平成ことば事情2112」。本来こちらのほうが、2013年7月22日に書かれた「平成ことば事情5189」よりも先に書かれていたものでした。>

2005年810日、奈良県で大変大規模な「土砂崩れ」があり、その一部始終を、監視カメラが捕らえていました。山が動いてくるような崩れ方は、まさに「衝撃映像」。電柱がのみ込まれていく様子は、ゴジラが出てくる怪獣映画を見ているようで、自然の脅威をまざまざと見せつけてくれます・・・。

さて、これを今「土砂崩れ」と言いましたが、他局(ABC)では夕方のニュースでは、

「地滑り」

と表現していました。果たして「土砂崩れ」と「地滑り」、そして「がけ崩れ」はどう違うのでしょうか?

読売テレビではこの日の夕方の「ニューススクランブル」から、

「地すべり」

にしました。というのも、旧・近畿地方建設局から、

「これは『地すべり』です」

と通知があったからです。ところが2005年8月11日に新聞各紙を見てみると、

(日経)土砂崩れ

(読売)土砂崩れ

(産経)地滑り

となっていて、「土砂崩れ」が2社もあったのです。(朝日と毎日には記事が載っていませんでした。)

その後、2006年2月、フィリピンのレイテ島で大規模な

「地滑り」

がありました。泥が10メートルの深さにもなっているということです。

こういったところから私が考えたのは、

「何も建物が建っていないところで切り立った土地や崖が崩れたら『崖崩れ』」

「建物が建っているところの地面が崩れたら『地滑り』」

という区分。

「平成ことば事情5189」で書いたように、気象予報士の蓬莱さんによると、

「『地滑り』は前兆がある。急に起こるのが『崖崩れ』」

ということです。

で、「土砂崩れ」は?これも辞書を引いてみましょう・・・あれ?『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典』『広辞苑』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『新潮現代国語辞典』『岩波国語辞典』には「土砂崩れ」が見出し語として載っていない!「土砂」の用例として「土砂崩れ」が載っているものもあるが、意味は書いていない!

『新選国語辞典』にようやく載っていました!

「土砂崩れ」=豪雨や地震のために山などの傾斜地で土砂が崩れ落ちること。

ちなみに「崖崩れ」「地滑り」は、

「崖崩れ」・・・あ、見出し語に載っていない。

「地滑り」=傾斜した土地の地面の一部が滑り落ちる現象。

でした。あまり違いは分かりませんでした。そこで、気象予報士の菅さんに聞いてみました。

「『崖崩れ』は、岩がむき出しのような角度が70度~80度の"切通し"のような崖が崩れるものです。それに対して『地滑り』は、角度が30度~40度ぐらいのところで表面の土(表土)が広い範囲にわたって崩れる現象です。『深層崩壊』と呼ばれる現象も『地滑り』の一種で、『雪崩』でいうところの『全層雪崩』のような現象ですね。また『土砂崩れ』は、『地滑り』と同じく角度が30度~40度のところで起きますが、範囲が"一部"である点が『地滑り』とは異なります」

とのことでした。なるほど!よく分かりました。菅さん、ありがとうございました!

(2013、8、7)

2013年8月 7日 16:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5200「くりくり頭」

 

8月5日の各紙夕刊(関西版)に、京都・真宗大谷派の本山・東本願寺で行われた、僧侶になる儀式、

「得度式」

の記事が載っていました。各紙、写真も載せているのですが、この得度式に出席したのは小中学生131人ということで、まあ早い話、多くの、

「マルコメみそのコマーシャルのような」

・・・と言って分からなければ、アニメの、

「一休さん」

みたいなかわいい「小坊主さん」がたくさん誕生したということですね。

その記事の見出しや本文の中に、

「くりくり頭の男児」(産経夕刊)

「くりくり頭になって・・・・僕もお坊さんに」(日経夕刊)

「くりくり頭の子どもたち」(日経夕刊)

「くりくりに頭を丸めた男児」(読売夕刊)

「くりくりピカピカ」(毎日夕刊)

「くりくり頭の子供たち」(毎日夕刊)

というように、

「くりくり頭」

という表現を使っていました。(読売は名詞ではなく「くりくりに」という形容動詞ですが)

この、「くりくり頭」、まあ「坊主頭」とも言いますが、「坊主頭」が大人にも子供にも使えるのに対して、「くりくり頭」が使えるのは、

「男児のみ」

のような感じがします。年齢的には、小学生まで。特に声変わりする前までのような気がしますね。「くりくり」には「かわいらしさ」を表現するニュアンスがあるからでしょうね。女の子にも使えないことはないかな。

なお、朝日新聞は「くりくり」を使わずに、

「夏休み中のこどもたちが髪の毛をそって式に臨んだ」

と表現していました。

「子ども」以外で「くりくり」を使うのは、

「くり(くり)っとした目」

のように「目」ですね。この場合「頭」も「目」も、

「丸い」

という共通点があります。「丸くてかわいらしい」というのが「くりくり」と形容されるものの特徴と言えるのではないでしょうか。

(2013、8、5)

2013年8月 7日 12:17 | コメント (0)

新・ことば事情

5199「三千世界の『三千』」

 

『数ことば連想読本~語彙表現のたのしみ』(槇皓志、現代教養文庫)という本を読んでいたら、

「『三千世界』の『三千』は『3000』ではなく『1000の3乗』、つまり『10億』である」

という記述が出て来ました。へえー!知らなかった!

仏教用語関連でよく目にする「三千」。

「京都大原三千院」とか「白髪三千丈」とか、

「三千世界の鴉(カラス)を殺し ぬしと朝寝がしてみたい」

というのは「都都逸」でしたっけ?(前にこれ、書いたな。平成ことば事情1642「三千世界」。落語「三枚起請」の中で出て来た。高杉晋作が作った都都逸だそうです。)

「三千」=「3000」ではなく、

「数えきれないぐらいたくさん」

という意味であるとは感じていましたが、まさか、「千の三乗」だとは知りませんでした。

「1000」=「10の3乗」

ですから、「1000の3乗」は、「『10の3乗』の3乗」で「10の9乗」=「ゼロが9つ」ですから、

「1000000000」

いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・十億!ですね。

ふーん。

で、その前に書いた平成ことば事情1642「三千世界」を読み返してみたら、『新明解国語辞典』を引いて出ていた「三千大世界」の説明を、

「(仏教で)須弥山(シュミセン)を中心とする世界(=一小世界)を千倍し、また千倍し、さらに千倍したほどの大きな世界。三千世界。(広い世界の意にも用いられる)」

と引用して、

「この場合の『三千』というのは『1000が3回』ではなくて『1000の3乗』、つまり、「1000×1000×1000=10の9乗=1000000000=10億」

ということなのですね。」

と書いてあるではないですか!!2004年3月に書いたのに、もう忘れています!

・・・俺の脳細胞は「三千」はないなあ・・・きっと。

ちなみに、英語で言うと「10億」は、

billion(ビリオン)

これはmillion(ミリオン)」の1000倍ですね。英和辞典を引くと、なんと「アメリカ英語(米語)」では確かにその通りなのですが、「イギリス英語」だと「billion(ビリオン)は、

「1兆」

だと記されているではありませんか!「10億」の1000倍です!

数字の単位でイギリスとアメリカで基準が違うと(同じ言葉の表す数が異なると)、とってもややこしいいですよねえ?

そういえば、昔は「億万長者」を、

「ミリオネア」

と言っていましたが、今や、

「ビリオネア」

ですもんねえ。まあ、どちらも「たくさん」を表しているわけです。

「100万ドルの夜景」が「1000万ドルの夜景」になったような。あれは変動相場制では気が気じゃないでしょうねえ。

(2013、8、2)

2013年8月 2日 19:03 | コメント (0)