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『道浦TIME』

新・ことば事情

6956「老舗メーカー」

9月28日の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」で、

「最強の魔法瓶が宇宙へ」

という特集をしていました。その中で取り上げた会社は、大阪・門真市に本社がある

「タイガー魔法瓶」

でした。その紹介のコメントが、

「1923年創業の老舗メーカー」

だったのですが、

「1923年創業」

ということは、

「創業95年」

ですね。これを「魔法瓶メーカー」としては、

「老舗」

と呼んでいいのかどうか、気になりました。

この「老舗は何年?」問題については過去に、

「平成ことば事情3921 何年経ったら老舗?」

「平成ことば事情3998 何年経ったら老舗?2」

「平成ことば事情4661 老舗のIT企業」

でも書いていますが、それによると、

(1)「三代」は続いている

(2)創業から50~100年以上

(3)ケータイショップやハンバーガーショップなど新しい業種は「老舗」とは呼ばない

ということでしたが、

「魔法瓶業界」「95年」

は、「老舗」と呼んで良いんでしょうね。

(2018、9、28)

2018年9月28日 17:38 | コメント (0)

新・ことば事情

6955「JAXAのJAの字」

9月28日の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」で、

「最強の魔法瓶が宇宙へ」

という特集をしていました。その中で、タイガー魔法瓶の担当者が、インタビューで、

「宇宙へ魔法瓶が送られるというのを考えていたか?」

という質問に答えて言った言葉が、

「JAXAのJAの字も、思ってなかった」

と話していて、こんなフォロースーパーが出ていましたが、ちょっと違和感が。これが、

「蛇(じゃ)の目の蛇(じゃ)の字も」

なら、それほど違和感がありませんが、やはり、

「アルファベット2文字」

を指して、

「JAの字」

というのは、違和感ありますよね。同じことを話されていても、カタカナ表記で、

「ジャクサのジャの字」

なら、まだ違和感が少ないかな。

そんな気がしました。

(2018、9、28)

2018年9月28日 17:36 | コメント (0)

新・ことば事情

6954「押印と捺印」

貴乃花親方の引退・退職問題を巡って、「所属変更届」に、弟子を引き渡す千賀ノ浦親方の署名・捺印(なついん)がないことが問題になっています。

「署名」=サイン

「捺印」=はんこ

ですね。この「捺印」ですが、

「押印」

と書いているメディアもあります。どう違うのでしょうか?

『広辞苑』を引いてみても、ほぼ同じ意味合いしか載っておらず、「捺印」「押印」どちらを引いても、言い換えでお互いが出てくるので、堂々巡りです。そこで、意味の違いについて考えてみました。結論から言うと、

「『押印』の方が、範囲が広い」

ということですね。たとえば、

「切手のスタンプ・消印」

「押印」であって、「捺印」ではありません。

「捺印」は、個人や団体が、その文書をきっちりと読んで理解した上で押す印鑑、という感じがします。

一方の「押印」は、ただスタンプやハンコなどを「押す」という感じ。機械的に数多くの紙などに押す場合は、「捺印」ではなく「押印」がふさわしい気がします。

しかし、どちらを使うかは、「捺」が「表外字」なので、使おうとすると、

「捺印(なついん)」

「ルビを振らなくてはならない」ことから、ルビが不要の「常用漢字」である「押」を使うことが多いのではないでしょうか。

(2018、9、28)

2018年9月28日 17:07 | コメント (0)

新・ことば事情

6953「せざるをえない」

9月25日、午後5時からの貴乃花親方の電撃「引退」会見で、貴乃花親方は

「引退せざる・を・えない」

と区切りながら、「せざるを・えない」と正しく話していましたが、午後8時半からの日本相撲協会・芝田山広報部長(元横綱大乃国・愛称は「スイーツ親方」)は、

「引退せざる・おえない」

と、間違った切り方をしていました。

相撲協会と貴乃花親方で、言い分が食い違っていますが、

「言葉の使い方」

では、貴乃花親方のほうに軍配が上がりますね。

(2018、9、26)

2018年9月28日 12:21 | コメント (0)

新・ことば事情

6952「大坂選手のアクセント」

全米オープンテニス女子で、

「大坂なおみ選手」

が、なんと日本人初の優勝を成し遂げてしまいました!(もちろん、国枝慎吾選手は「車いす部門」で何度もグランドスラムを達成しています!)

この「大坂選手」の名字のアクセントですが、

(1)オ\ーサカ(頭高アクセント)

(2)オ/ーサカ(平板アクセント)=地名の「大阪」と同じ

の2つのアクセントを耳にします。

9月7日の私の「テレビウオッチング」では、

(1)オ\ーサカ(頭高アクセント)=日本テレビ

(2)オ/ーサカ(平板アクセント)=テレビ朝日・フジテレビ

でした。(NHK、TBS、TXは確認できず。)

その後は、

・9月10日(月)

(テレビ朝日)

「報道ステーション」富川アナウンサー・松岡修造=「(2)平板アクセント」

(日本テレビ)

「ニュースゼロ」男性ナレーター=「(2)平板アクセント」。村尾キャスター=「(1)頭高アクセント」

・9月13日(木)

(日本テレビ)「スッキリ」男性ナレーター=「(1)頭高アクセント」。阿部リポーター=「(2)平板アクセント」がメーンで、時々「(1)頭高アクセント」も交ざる。

といったところでした。

去年、1971年に起きた「渋谷事件」の殺人容疑で再逮捕された

「大坂政明容疑者」

の名字のアクセントについて各社に伺った時には、

「(2)オ/ーサカ(平板アクセント)」

が多かったのですが。(「平成ことば事情6352『大坂』のアクセント」もお読みください。)

先日の体操の「宮川選手」といい、名前のアクセントは難しいですねえ・・・。

ということで、また各社のアナウンサー&アナウンサー経験者の方にご意見を伺ってみました。<順不同>

(1)オ\ーサカ(頭高アクセント)=11人

(読売テレビ)6人 (福井放送)1人 (フリー)1人 (日本テレビ)1人

(テレビ大阪)1人 (関西テレビ)1人

<意見>

・読売テレビ・A氏

聞き慣れている地名の「大阪」とはっきり区別したいという意図が働きます。それから、外国人による「大坂なおみ選手」の呼び方も「(1)頭高アクセント」が多いような気がして、本人の国際性豊かなイメージも相俟って「(1)頭高アクセント」を採っています。いや、「外国による・・・」以降の部分は違うかな?海外でありがちなアクセントは「オゥサ\カ」と、「中高アクセント」が多そうですね。でも今のところ、私の読みは「(1)頭高アクセント」です。

・福井放送・B氏

大坂選手のアクセントについて、数名の後輩にも聞いてみましたが、意見が分かれました。私は「(1)頭高アクセント」で言うと思います。「大坂」という名字に「関西のイメージ」があるから「(1)頭高アクセント」なんでしょうか。本当に名前は難しいですね。同じような例で京都市バスのアクセントにもちょっと違和感を覚えたことがあります。「烏丸松原」を車内アナウンスでは、

「か/らすま・ま\つばら」

で読んでいました。私は、

「か/らすま・ま/つ\ばら」

だと思っていたので印象に残っています。地元のアクセントなんですかね。「くまモン」と同じですね。名前、地名は本当に難しいです。

・フリー・C氏

「大坂選手」の名字のアクセントですが、「(1)オ\ーサカ(頭高アクセント)」と読んでいます。なぜか(地名の)「大阪」と区別したいんでしょうね。

・読売テレビ・D氏

「(1)頭高アクセント」で読んでます。まさに「大阪(地名)」との区別するため「(1)頭高アクセント」で読んでいました。が、最近は「(2)平板アクセント」でも違和感はなくなりました。

・テレビ大阪・E氏

ネットスポーツニュースで流れてくるのは、ほとんど「(2)平板アクセント」ですね。私見ですが、名字の時は「(1)頭高アクセント」です。「大坂志郎さん」(故人)は「(1)頭高アクセント」で発音していた記憶があります。

「大坂さんが逢坂の関を超えて大阪(大坂)に向かった」

という文であれば、個人的には名字の「大坂」は「(1)頭高アクセント」にして伝えます。

・読売テレビ・F氏

「(1)頭高アクセント」で読みたいです、個人的には。ただ、無難なのは「(2)平板アクセント」かなとも思います。どっちつかずで、すみません。

(続報)きょう10日(月)の昼ニュースで大坂選手のニュースを読みました。

直前まで無難そうな「(2)平板アクセント」で行こうと思っていましたが、報道Aデスク周辺では、圧倒的に「(2)頭高アクセント派」が多かったので、「(2)頭高アクセント」で読みました。後輩アナによると日本テレビ「スッキリ」ではアナウンサー・ナレーターとも「(2)頭高アクセント」で読んでいたそうです。固有名詞なので、正解はご本人に聞かないとわかりませんが・・・。情報共有のためメールしました。

・日本テレビ・G氏

今朝の「スッキリ」に、大坂選手の祖父・大坂鉄夫さんが、出演されていました。OA後に、現地の「スッキリ」のスタッフにお願いして、おじいさん本人に「大坂家の名字のアクセント」を聞きました。おじいさん的には、「お\おさか」という、「(1)頭高アクセント」だそうです。お母さん、そして本人はどうかは、まだ不明ですが・・・。

・読売テレビ・H氏

先週金曜の「ten.」では、日本テレビの昼のニュースが「(1)頭高アクセント」だったこともあり、「(1)頭高アクセント」で読みました。今日(10日)の「ten.」では「(1)頭高アクセント」で「統一」という話になりました。

・読売テレビ・I氏

僕は、しょっちゅう(「大坂」を)「大迫」と言い間違えるので、今は、まずそこを言い間違えないようにするので必死です。。。(笑)言い間違えていないときは、大体、「(1)頭高アクセント」で読んでいるような気がします。「本人に聞く」という意見が散見されましたが、本人NY育ちなので、間違いなく「(1)頭高アクセント」でしょうね...(笑)

「WOWOWでは『(2)平板アクセント』」という話も散見されましたが、それでいきますと、WOWOWでは「セレナ・ウィリアムズ」とずっと言ってました。現地読みすれば、「セリーナ」の方が近いと思います。その反面、「日産・セレナ」と同じつづりかと思います。

というわけで「大坂」も「セリーナ」も、どっちでもOKだろうと、個人的には思っています。(笑)

・関西テレビ・J氏

さて「大阪なおみ」選手のアクセントですが、関テレでは「(1)オ\ーサカ(頭高アクセント)」が優勢でした。なお弊社は「人名アクセント」の規定は特に設けず、読み手の判断に任せています。本人が名乗ってくれている音声があれば、それを参考にはします。

(2)オ/ーサカ(平板アクセント)=16人

(読売テレビ)8人 (テレビ大分)1人 (テレビ金沢)1人 (WOWOW)1人

(朝日放送)1人 (毎日放送)2人 (中京テレビ)1人 (テレビ東京)1人

<意見>

・テレビ金沢・K氏

これもご本人に確認するのが良いと思います。他に何も材料が無ければ、(2)「オ/オサカ」と「平板アクセント」で読みます。一般的な地名の「大阪」「(旧)大坂」のアクセントにそろえます。ただし、「東」さんなど、方角の場合の読みと名字の場合の読みが違うこともありますので、やはり固有名詞のアクセントと捉え、ご本人に聞くのが良いと思います。

・WOWOW・L氏

弊社では、「(2)平板アクセント」で統一しています。地名の「大阪」と一緒です。テニス界では「平板」のようですよ。その後チェックしたところ、弊社以外でもNHKやガオラ、テニス中継の多い局では「(2)平板アクセント」です。ですから、「(1)頭高アクセント」で発音されると「テニス見てないな」という印象になります(笑)。個人的感想ですが。

・朝日放送・M氏

大坂選手は「(2)平板アクセント」で読んでいます。今、NHKの「ニュースウォッチ9」でも「(2)平板アクセント」で読んでいます。

・毎日放送・N氏

「大坂」のアクセントは「(2)平板アクセント」だと思います。私も数日前から気になって各局のアクセントを見ておりました。NHKもTBSもフジもテレ朝も「(2)平板アクセント」でした。さらにニュースのインタビュー、日本テニス協会のコーチも「(2)平板アクセント」で呼んでいました。これらから当初、「(1)頭高アクセント」か?と迷っていた私も、「(2)平板アクセント」でラジオニュースを読みました。

・読売テレビ・O氏

私個人としては「(2)平板アクセント」で読むのが自然かと思っています。ただ、読売テレビの中でも「(1)頭高アクセント」で読む方もいますので、私も迷っています。本人に直接、読み方を聞けたらいいのですが。

(追記)WOWWOWでキャスターをやっている知り合いに大坂選手のアクセントについて聞きました。特に理由はなく、しっくりくるということで、社内統一で「(2)平板アクセント」で読むようにしているそうです。今までクレームも来ていないし、これまでは何の疑問もなくやっていたそうです。地上波が「(1)頭高アクセント」になっているので、最近は気にはなっていたそうです。他の案件ですが、車いすテニスで関西出身の「上地結衣選手」を「平板(カ/ミジ)」で読んでいたら、本人から、「私は『頭高(カ\ミジ)』です。」との指摘があったので、そこから「頭高」で読むようになったそうです。

・読売テレビ・P氏

個人的には、「(1)頭高アクセント」で読みたいところです。が、全米女子OPを中継しているWOWOWは、番宣の段階から「(2)平板(地名の「大阪」と同じ)」で伝えています。となると、テニスファンの多くの認識は「(2)平板アクセント」となります。私の中では正解は出せませんが、「(2)平板アクセント」が適切のような気がします。

・読売テレビ・Q氏

私は「(2)オ/ーサカ(平板アクセント)」、地名の「大阪」と同じで読んでおります。

・毎日放送・R氏

私は(2)「平板アクセント」で読んでいます。地名の「大阪」と同じです。

・読売テレビ・S氏

「(2)平板アクセント(オ/ーサカ)」です。お願い致します。

・読売テレビ・T氏

「大坂選手」のアクセントは、テレビ東京もテレビ朝日も、そしてフジテレビの『ミスターサンデー』も全て「(2)平板アクセント」でした。確かに人の名前のアクセントは難しいですね。

・読売テレビ・U氏

自分が読むまでは、「(1)頭高アクセント」の方がしっくりくるなあと思っていたのですが、いざ読み始めると、「(2)平板アクセント」で読むほうが、しっくりくる自分がいました・・・。なので、「(2)平板アクセント」でお願いします。

・読売テレビ・V氏

私は地名の「大阪」と同じ「(2)平板アクセント(オ/オサカ)」が自然かと...。

「逢坂(逢阪)」は「(1)頭高アクセント(オ\オサカ)」のような気がしますが、【逢】ではなく【大】なので、地名の「大阪」と同じがいいかと。ただ、こういった件は、「本人次第」の面が多々あるかと思います。阪神の「北條選手」は、当時、場内アナウンスが「ホ/ウジョウ(平板アクセント)」と言っていましたが、本人が「ホ\ウジョウ(頭高アクセント)です」と言ってくれたので、変わりました。(途中、何度も同じことを聞かれた北條選手自身が「もう、どっちでもいいです。」と嫌気が差した時期もありましたが、最終的には統一されました。)現地取材している誰かが、聞いてくれたらいいですね。3歳からアメリカ育ちの彼女より、「母・環さん」に聞くのがベストかと。あるいは、北海道根室市にいる「祖父」に・・・。(笑)

・テレビ東京・W氏

私の耳の届く範囲では、テレビ東京は「(2)平板アクセント」の、普通の地名の「大阪」と同じほうです。

・中京テレビ・X氏

今(10日)やっている昼のローカルでさっそく全米オープンの話題に触れましたが、私も同僚のアナも「(2)平板アクセント」でした。昔の役者「大坂志郎さん」も「(2)平板アクセント」以外は、聞いたことないですね。

・読売テレビ・Y氏

9月11日(火)の日テレの番組「おは4」では「大坂」を「(2)平板アクセント」で読んでいるのを見ました。それにならって、その後の「す・またん」での原稿では、周りのスタッフ総意のもと「(2)平板アクセント」で読みました。ただ、個人の感覚としては、私は関西出身なので、地名の「大阪」と同じアクセントである「(2)平板アクセント」を使うのは、少し違和感があります。

ということで、日本テレビのアナウンサーが、中継に出て下さった、

「大坂なおみ選手の祖父・大坂鉄夫さん」

ご本人に、現地の「スッキリ」のスタッフを通じて「大坂家の名字のアクセント」を聞いてくれたのは大きいですね。おじいさん(鉄夫さん)としては、

「オ\―サカ」という、

「(1)頭高アクセント」

だというのは、重みがあります。でも、お母さんや本人には聞けてないし、趨勢は、

「(2)オ/ーサカ」(平板アクセント)

ですねえ。日本テレビもアナウンス部としては、

「どちらかに統一はしていない」

そうですしね。

(2018、9、25)

2018年9月28日 12:20 | コメント (0)

新・ことば事情

6951「バーベル」

重量挙げ、日本ウエイトリフティング協会の三宅義行会長のパワハラ疑惑問題。

ふと、こう思いました。

「平成ことば事情1990鉄亜鈴」で書いたように、

「ダンベル」=「ダム」+「ベル」

から考えると、

「バーベル」=「バー」+「ベル」

ではないか?

と思い付きました。

ウィキペディアを検索してみたら、

「『バー』と『ダンベル』からの造語である。バー(bar)は読んで字のごとく『棒』であり、ダンベルのベル(bell)は『鐘』を意味し、中世に舌がなく音の鳴らない鐘を持ち上げてトレーニングをしていたことに由来する。バーベルはダンベルよりも新しい語で、長い横棒を用いたことから名づけられた。」

とありました。

ビンゴ!

でも「ダンベル」の方が古い言葉だったのですね!

(2018、9、13)

2018年9月28日 12:18 | コメント (0)

新・読書日記 2018_126

『天災と国防』(寺田寅彦、講談社学術文庫:2011、6、9)

名著。たしか「岩波文庫」の『寺田寅彦随筆集・第5巻』に入っていたが、講談社学術文庫で復刊。そのタイミングは「2011年6月9日」。そう、その3か月前の「2011年3月11日」の「東日本大震災」を受けての刊行であろう。あの、

「天災は 忘れたころに やって来る」

という言葉は寺田の言葉だと言われるが、実はそのままの言葉は出て来ない。寺田が講演などでも繰り返しそういった内容を話していたものを、弟子の中谷宇吉郎が書いたとも言われている。元となった言葉は、標題の「天災と国防」に出て来る、

「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防御策を講じなければならないはずであるのに、それがいっこうにできていないのはどういうわけであるか。そのおもな原因は、畢竟(ひっきょう)そういう天災がまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の顛覆(てんぷく)を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう。」(15~16ページ)

という一文だと言われている。

「天災と国防」が書かれたのは、「函館の大火」があり、「室戸台風」が近畿を襲った「昭和9年(1934年)」。今から80年以上前だが、その筆致・内容は、全く古びていない。

ことし(2018年)、「台風21号」の暴風台風は、まさにその「室戸台風」と同じコースを通った。気象予報士の蓬莱大介さんによると、今回の「台風21号」は「第3室戸台風」とでも呼ぶべきものだとのことだった。

「備えあれば憂いなし」

それは心構えの話でもあるよなあ。

と、言っていると、この週末には「台風24号」が近付いてくる。

自然の力は、ものすごい。備えよ!


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(2018、8、28読了)

2018年9月28日 12:10 | コメント (0)

新・読書日記 2018_125

『うつ病九段~プロ棋士が将棋を失くした一年間』(先崎学、文藝春秋:2018、7、15)

私は「うつ病」にはならない、だろうと思う。

が、誰にでもかかる可能性はあるし、その意味では、

「うつ病は"心の風邪"のようなもの」

とよく言われるが、この本を読むと実は「心の病気」ではなく「脳の病気」だとよくわかる。

去年から今年かけて藤井聡太四段五段六段七段が破竹の勢いで、つられて加藤一二三九段も「ひふみんブーム」で人気者になって、空前の将棋フィーバー。

その陰で・・・「センちゃん」と呼ばれて人気者で多彩な才能を披露していた先崎(せんざき)学九段が「うつ」に悩んでいたとは・・・。

「九段」だけに「件(くだん)の如し」。

「兄(※精神科医)のことばを借りるまでもなく、差別的な偏見はなくならない。ただし、まるごと空洞化することはできると思う。それには、皆が堂々と生きることである。まともに生きればよい。まともに生きている人間を馬鹿にする奴はまともではない。馬鹿である。」(184ページ。)

そういう馬鹿が、永田町には400人ぐらいいるんです・・・・

先崎さん、本当、治って良かったですね!

半年間の闘病記は大変な様子が窺い知れて、勉強になりました。


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(2018、9、23読了)

2018年9月26日 15:46 | コメント (0)

新・読書日記 2018_124

『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり~<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(ラリー遠田、イーストプレス:2018、8、15)

テレビ関係の本で、この業界の時代の移り変わりを知るために買ったのだが、困ったことに、ここに出て来る「お笑い番組」というか「バラエティー番組」というか、これらの番組を私はほとんど・・・いや、全く見たことがないのである。関心がないというか、たぶん見ても笑えない。笑いの質が違うというか、積極的に見ようと思わない番組たちなのだ。いや、そんな中でマツコ・デラックスの番組だけは、いくつか見ている。あれは面白いが、マツコの出ている全ての番組が、私にとっておもしろいわけでもない。

ということで、あまり私には役に立たない本...と言っては失礼なのだが、自分で選んで買っておいて。

唯一「おっ!」と思ったのは、有吉が「毒舌のあだ名を付ける芸」で復活した話。

「あだ名」という言葉が「ミヤネ屋」のスーパーなどの発注で出て来ると、

「差別的なニュアンスがあるから、『ニックネーム』『通称』『呼び名』に換えて」

とディレクターに言うのだが、バラエティー色の強いディレクターほど「ニックネーム」を嫌い「あだ名」で通したい!と強く主張するのだ。

「なんで、それほどこだわるのだろう?」

と思っていたのだが、「これだったのか!」と納得。有吉のせいか。

「あだ名」というものが、そもそも「毒」を含んだネーミングだからこそ面白いということを、改めてわからせてくれたのと、「ニックネーム」ではなく「あだ名」という言葉の存在をテレビで「普通」にしたのは有吉だったのか!という認識を新たにすることができたのでした。ありがとう!


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(2018、9、19読了)

2018年9月26日 15:44 | コメント (0)

新・読書日記 2018_123

『永遠のファシズム』(ウンベルト・エーコ著、和田忠彦訳、岩波現代文庫:2018、8、17)

「平成ことば事情6940ファシズムの14徴候」で書いた「14徴候」が載っていた本。

読みたかったのだが「絶版」で結構高価だったので、なかなか手に入れにくかったのが、文庫で復刊というのを日経新聞の読書欄で知り、即購入!

あとは「平成ことば事情」をそのまま転載します。

*****************************

『薔薇の名前』で知られるイタリアの代表的知識人であるウンベルト・エーコの著書に、

『永遠のファシズム』

という本があります。「永遠のファシズム」というのは、

「原ファシズム」

の別名だとエーコは言います。つまり、

「ファシズムの原点」

のようなもののことですね。その本の中に、

「ファシズムの14徴候」

が載っているそうです。それを書き出してみると、

(1) 伝統崇拝

(2) 非合理主義

(3) 反知性主義

(4) 批判の拒絶

(5) よそ者排除

(6) 欲求不満層の懐柔

(7) ナショナリズム

(8) 敵の力の判断力欠如

(9) 反平和主義

(10)弱者蔑視

(11)死の崇拝

(12)武器への愛着

(13)ポピュリズム

(14)貧弱な語彙

おお、ほとんど全て、現在の安倍政権とそれを支持する人たちにあてはまるではないですか!最後の、

(13)ポピュリズム

(14)貧弱な語彙

は、「小泉純一郎内閣」に特徴的でしたね。安倍政権も、それを引き継いでいる部分があるでしょう。

この「14徴候」は、たまたまインターネットの記事で知ったのですが、「ぜひ、その本を読んでみたい!」と思って、なじみの本屋さんに注文したら、

「1998年に出て、今は絶版です」

と言われ、古本で見ると「4000円ぐらいする」ので、「図書館で借りるかあ・・・」と思っていたら、なんと、

「8月17日に『岩波現代文庫』から、文庫版で復刊」

しました!しかも940円(税別)というお手頃価格。それを『日経新聞』の読書欄で知って、すぐに本屋さんに走って購入、読みました!ウンベルト・エーコの「講演録」なんですね。読みやすいです。

20年前というのは、「昔」ではなく「現代」です。ある意味これは、

「民主主義の行き着く先について書かれた『予言の書』」

なのかもしれません。

*****************************

これに付け加えることと言えば・・・「原ファシズム」というのは「永遠のファシズム」と同義だそうです。「14徴候」の内で言うと、

(7)「ナショナリズム」で「いかなる社会的アイデンティーをもたない人びとに対して(中略)、全員にとって最大の共通項、つまりわれわれが同じ国に生まれたという事実だ、と語りかけます。これがナショナリズムの起源です。」(52ページ)

また、(12)「武器への愛着」では「永久戦争にせよ、英雄主義にせよ、それは現実には困難な遊戯ですから、原ファシズムは、その潜在的意志を性の問題にすりかえるわけです。これが<マチズモ><女性蔑視や、純潔から同性愛にいたる非画一的な性習慣に対する偏狭な断罪>の起源となります。(中略)現ファシズムの英雄は、男根の<代償>として、「武器」と戯れるようになるわけです。戦争ごっこは永久の<男根願望>に起因するものなのです。」(56ページ)

・・・これはフロイト的ですね・・・。でも安倍さん、トランプさん、わかる気はしますね。

そして(13)「ポピュリズム」では、「原ファシズムは『質的ポピュリズム』に根差したものです(中略)市民全体としては(多数意見に従うという)量的観点からのみ政治的決着能力をもっています。原ファシズムにとって、個人は個人として権利をもちません。量として認識される『民衆』こそが、結束した集合体として『共通の意志』をあらわすのです。人間存在をどのように量としてとらえたところで、それが共通意志をもつことなどありえませんから、指導者はかれらの通訳をよそおうだけです。(中略)今では質的ポピュリズムの格好の例をヴェネツィア広場やニュルンベルク競技場にもとめる必要はありません。わたしたちの未来には、<テレビやインターネットによる質的ポピュリズム>への道が開けているのですから。選ばれた市民集団の感情的反応が『民衆の声』として表明され受け入れられるという事態が起こりうるのです。質的ポピュリズムを理由に、原ファシズムは<「腐りきった」議会政治に反旗をひるがえすにちがいありません。>(56~57ページ)

いかん、全部引き写しそうだ。・・・。

そうそう、訳者の和田さんの「あとがき」には、なんと永井愛さん原作の演劇で松尾貴史さんが出演してらっしゃる「ザ・空気」についても書かれていたことを最後に書き添えておきます。


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(2018、8、30読了)

2018年9月26日 15:42 | コメント (0)

新・読書日記 2018_122

『映画を撮りながら考えたこと』(是枝裕和、ミシマ社:2016、6、1)

ことしの「カンヌ映画祭」で見事「パルムドール」(最高賞=英語だと「ゴールドパーム賞」でしょうか?「金のヤシ賞」)を受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』。もちろん、すぐに見ました。是枝作品は、結構見ています。1962年生まれの是枝監督はほぼ同世代だし、テレビ制作会社(テレビマンユニオン)に入ってから映画の世界に移ったという意味では同じテレビマン出身なので、興味もあります。

この本も出てすぐに買ったのですが、何せ分厚い、414ページもありますので、ちょっと読みさしになっていましたが、「読むのは、パルムドールを取った今しかない!」と思ってようやく、この夏休みに読みました。それでも結構、時間がかかった。

「あとがきのようなまえがき」と「あとがき」を含めると12章あります。最初からは読まずに「あとがきのようなまえがき」を読んでから、「第9章 料理人として2011-2016」

を読みました。この本が出た段階で一番新しい監督作品の映画「奇跡」(2011)、「そして父になる」(2013)、「海街diary」(2015)、「海よりもまだ深く」(2016)について書いていました。このうち「そして父になる」と「海街diary」は見たな。

結局、是枝監督は「家族」という「絆」についてを、一つのテーマとして追い続けている感じがします。「誰も知らない」と「そして父になる」と「万引き家族」では、間違いなく「家族とは何か」を描いていると思います。監督自身は、

「僕の映画は『喪失を描いている』と言われますが、僕自身は『遺(のこ)された人』を描いているのだと思っています」(207ページ)

と書いています。その他、

「『インターネットを漂っている人がなぜ右翼というかナショナリストになるのか?』。この問いを考えていくと、人とつながっている実感がない人がネットへこぼれ落ちたときに、彼らを回収するいちばんわかりやすい唯一の価値観が『国家』というものでしかなかったのだということに、気づかされるのです。(中略)共同体や家族に代わる魅力的なもの・場所・価値観(それを「ホーム」と言ってもいいかもしれませんが)を提示できないかぎり、彼らは国家という幻想に次々と回収されていくでしょう。」(328~329ページ)

また、「そして父になる」でスペインのサンセバスティアン国際映画祭に行った際に、記者に「小津安二郎の作品に似ている」と言われたそうです。欧州ではよく言われるようですが理由を問うと、

「あなたの映画はこの映画にかぎらず、時間が回っている。直線的ではなく、一周回ってちょっと違うところに着地している。それが小津の映画に似ている」

というのです。

「確かに僕は映画の時間をそのように捉えているし、最初とは違うところに着地したいと思っています。その理由は、春夏秋冬という四季があって、時間は巡っていくものだという感覚が日本人にあるからなのかなと思い、『こっちの人には時間が巡るという感覚はないのでしょうか?』と尋ねたら、『ない。時間は直線的に流れていくものだ』と返されました。だから、僕の作品が小津の作品に似ているとしたら、方法論やテーマではなく時間感覚なのではないかと。日本人のなかにある円を描く時間感覚、人生も含めて『巡る』という感覚で時間を捉えていくことに、西欧の人は共通点を見出すのではないかと思うのです。」(369~370ページ)

これって、中島みゆきの「時代」ですよね、まさに「まわる、まわるよ、時代はまわる」です!

と、本を読んでから感想を書くまでの間の9月15日、なんと樹木希林さんが亡くなりました。75歳。「全身がん」とは聞いていたけれども、こんなに急に亡くなるとは思わなかった。是枝作品にはなくてはならない俳優・女優さんでした。追悼の意味も込めて、樹木希林さんについて是枝監督が書いている部分を抜粋します。ちょっと長いけど。樹木希林さんが「歩いても歩いても」という映画に出た際の話。この映画のタイトルは、いしだあゆみさんが歌った「ブルーライト・ヨコハマ」のサビの部分なのだそうです。そうだったのか!あの曲は、小学校1年か2年生の時に流行ってて、よく口ずさんだなあ。知らなかった。見てみたいな。

「母親役は、脚本執筆段階から樹木希林さんに頼もうと考えていたので、第一稿からアテ書きしています。希林さんはこの母親役を本当に深く理解してくれて、いろいろなアイデアを出してくれました。たとえば、入れ歯をお風呂場で外すシーン。『私、部分入れ歯なんだけど、歯の心配をするシーンが昼間にあるから、私が入れ歯だと息子の歯の心配をすることに説得力が出るでしょ。だから外そうと思うんだけど』と希林さんから提案していただいて実現したシーンです。長男のお墓参りに出かける前に薄く口紅を塗るのも希林さんのアイデアです。世間ではアドリブが多い方のように思われるかもしれませんが、芝居については非常に緻密に計算をされて現場に臨まれる方で、撮影初日に『台詞は一字一句変えずにやります、余計なことはいたしません』と言ってくださり、アイデアがあるときには必ず『こうしてみたいんだけど』と僕のところに来て『いらなかったらカットしていいからね』と言ってくれました。」(195~196ページ)

合掌。。。

とここまで書いたら、9月23日(現地時間。日本時間の24日)、是枝監督がスペインの「第66回サンセバスチャン映画祭」で「生涯功労賞」に当たる「ドノスティア賞」(「ドノスティア」はバスク語で「サンセバスチャン」の意味)を、アジア人で初めて受賞したというニュースが入って来ました!これまでこの映画祭で「観客賞」を2度受賞するなどの功績が評価されたそうです。おめでとうございます!!希林さんも喜んでいるよ、きっと!

壇上では過去の作品の映像と共に、樹木希林さんの姿も映し出され、是枝監督は「10年間、パートナーとして映画を作ってきたことが蘇ります」と涙ぐむ場面もあったそうです。(「サンスポ・ドットコム」による)

サンセバスチャンは、私も3年前に1度だけ行ったけど、その日は雨でした。結構、雨が多い所らしいけど、きのうは雨だったのかな?それは記事には書かれていなかった。

改めて、合掌。。。。。。


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(2018、9、3読了)

2018年9月25日 17:33 | コメント (0)

新・読書日記 2018_121

『三好達治随筆集』(三好達治、中野孝次編、岩波文庫:1990、1、16第1刷・2012、11、16第6刷)

同志社グリークラブOBシンガーズの第4回演奏会が9月16日にザ・シンフォニーホールであった。私は早稲田大学グリークラブのOBなのだが、同期の友人が同志社グリーにいる関係などから、この演奏会にもオンステさせてもらった。5月ぐらいからこの4か月は、かなり力を入れて毎週、この1か月は週に2回、それぞれ4時間から4時間半の練習に出て、4ステージ全てにオンステすることできた。

その中で演奏した曲の一つに、三好達治の詩に多田武彦が作曲した『わがふるき日の歌』があったので、三好達治に興味を持ち、その背景を知ろうと、三好達治の「詩集」を捜したのだが、なかなかこれが見つからない。そんな中で、大阪・天満橋の本屋で見つけたのが、三好達治のこの「随筆集」。すぐに買い求めて読んだのである。

三好達治が大阪出身であることを知り、パラパラめくっていると「豊中時代など」とあったので、まずそこを読んでみた。書き出しは、こうだ。

「全国中等学校野球大会は今年から全国高等学校野球大会と名称が改まることになった。この大会の歴史はもう三十年を越(ママ)えることであろう。その第一回は阪急沿線の豊中グランドで行われた。(中略)第一回大会には何度か歩をはこんだが、記憶はもうおぼろげになってしまった。早稲田実業、神戸二中、和歌山中学、長野師範、秋田中学、京都二中などという出場校の名前だけがわずかに記憶にのこっている。優勝戦は秋田中学と京都二中であった。二中には藤田、国枝などといううまい選手がいた。優勝戦はけっこうな接戦で十二回戦ぐらいの延長戦になったのではなかったかしら、つい先ごろまでは記憶にあったのだが、ただ今ではもうそんなことまですぐには思い起こしかねる始末だ。勝負はたしか二対一かで京都二中の方が勝った。この時は三塁に近いスタンドの人ごみにまぎれて、途中でちょっとにわか雨があり、タイムになったのではなかったかしら、そんな記憶もあるが、私は終始熱心に試合を見物したのをおぼえている。」

おお、これは!

記憶に新しい今年の夏の甲子園、第100回大会決勝は、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じたが、話題となった準優勝の「秋田代表・金足農業高校」は、

「秋田県勢としては103年ぶりの決勝進出」

ということだったが、その、

「『103年前の決勝戦』を、三好達治は生で観戦していたのだ!」

これは、何かの巡り合わせだなあと感じたのでした。

まさに「セレンディピティー」ですよねえ!


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(2018、9、15読了)

2018年9月25日 17:31 | コメント (0)

新・ことば事情

6950「姉弟・きょうだい」

9月22日放送の日本テレビ「世界一受けたい授業」で、「ムーミン」の作者、

「故・トーべ・ヤンソン」の姪御さんが出ていました。その中で姪御さんが、

「あまり知られていませんが、スナフキンとリトル・ミーは『姉弟』」

ということを話していました。(吹き替えで)

字幕は、

「姉弟」

と出ていたのですが、普通は、

「スナフキンの方が年上」

に見えますよね。だから「あまり知られていないが」なのかな?

そして、吹き替えのナレーションは、

「きょうだい」

でした。ルビは振ってありませんでした。

こういう伝え方もあるのだなと、勉強になりました。

実は、

「『きょうだい』が『男ばかりではない場合』の表記」

に関しては、3年前(2015年2月)に新聞用語懇談会の放送分科会に、私が議題として出したことがあります。その内容を、ここに載せますね。

『「ナッツリターン事件」の大韓航空の前副社長は「長女」で、「弟」と「妹」がいますが、こういったケースで「3人きょうだい」を指す漢字表記は、「3(人)兄弟」としますでしょうか?それとも「3(人)姉弟」でしょうか?また、「2人きょうだい」で「兄と妹」「姉と弟」の場合は、「2人兄妹」「2人姉弟」という表記にしますか?それとも「2人兄弟」でしょうか?はたまた「平仮名」で「2人きょうだい」でしょうか?ご教示下さい。』

(NHK)そういうケースは平仮名で「きょうだい」とする。今の大河ドラマは「2人のきょうだいの物語」(吉田松陰と妹)。現場からは「兄妹」と書いて「きょうだい」と読ませたいと言って来たが、却下した。

(日本テレビ)3人以上で男女混合の場合は「兄弟」か「きょうだい」だが、「兄2人と妹」では「兄妹」と書いて「きょうだい」と読ませるケースもある。

(フジテレビ)平仮名で「きょうだい」を勧めるが「兄弟」とすることもある。

(テレビ朝日)悩ましい。ルールはない。「兄妹」とテロップを出して「兄と妹」と読む。「きょうだい」とは読ませない。それを認めると「母子」(あるいは「父子」)と書いて「おやこ」と読ませるのか?という問題も出て来る。

(テレビ東京)ルールはない。「姉弟」なら読みは「してい」ではなく「あねとおとうと」と読ませる。「兄妹」は「きょうだい」と読むこともある。3人以上で男女混合の場合は「兄弟」と書くこともあるが、その場その場で検討している。

(共同通信)平仮名で「きょうだい」と書く。

(ABC)きまりはない。「きょうだい」と平仮名で書こうと申し合わせる程度。芸能コーナーで「きょうだいが欲しい」と言っているのに「姉妹が欲しい」とスーパーしたことがあったが、これは×。

(MBS)「兄妹妹」「兄妹弟」「姉弟弟」「姉妹弟」などの男女混合の3人兄弟は「兄妹」「姉弟」で「きょうだい」と読んでOK。平仮名の「きょうだい」も、もちろんOK。体操の田中理恵元選手は「兄妹弟」の「3人きょうだい」が、これも「兄妹」or「姉弟」と書いて「きょうだい」と読んでよい。

(KTV)平仮名の「きょうだい」で統一。

(TVO)ルールはないが、平仮名で「きょうだい」にしている。

(読売新聞)平仮名で「きょうだい」。元々、日本語「きょうだい」は、男女の区別はしていない。例えば「イスラム国」に殺された後藤健二さんには、「兄と姉」がいるが、その場合は「3人きょうだい」と書く。

(TBS)ロンドン五輪時の田中理恵選手は「田中3兄弟」とはせずに「田中3きょうだい」とした。「2人兄妹」は「ふたりけいまい」、「2人姉弟」は「ふたりしてい」と読めと言っている。

といったことでした。

「平成ことば事情3267きょうだいの表記」「平成ことば事情5839きょうだい」も、お読みください。

(2018、9、25)

2018年9月25日 17:26 | コメント (0)

新・ことば事情

6949「キャップ」

先日、急にピーン!とひらめきました。

「マヨネーズのキャップと野球帽を英語で言った時のキャップはおんなじだ!」

と。そうですよね。

「キャップ」

というのは、

「被せるもの」

なんだ!マヨネーズの容器の出口に被せたり、人間の頭に被せたり、用途によって定められている名前なんだと、ひらめいたのです!

これって、みんな知ってることなのかな?

それにしても、生まれてから今の今まで半世紀以上、なんで気付かなかったのだろうか!

言葉の分野が違うと、同じ発音でも気付かないものなんですね!

(2018、9、25)

2018年9月25日 17:22 | コメント (0)

新・ことば事情

6948「枕営業」

「ミヤネ屋」のテロップなどのチェックをしていて出てくる言葉の一つに、

「枕営業」

があります。別に「寝具屋さん(布団屋さん)」が、

「枕の販売」

をするわけでは、もちろんありません。

主に女性芸能人などが、仕事と引き換えに有力者と、

「枕を共にする」

ことです。実際にあるのかどうかは別にして、そういったウワサが流れるというのはありますね。火のない所に煙は立たないのか?

この項目は、「2015年6月4日」に書きかけました。

その前の「2012年1月11日」には、こんなメモを残しています。

「『枕営業』は『売春』とどう違うのか?『枕を共にする』『枕を重ねる』など、『枕』は『同衾(どうきん)する』『ベッドを共にする』、つまり『性交渉を持つ』という意味だが、これに『営業』が付くと、それを売り物にする・職業にするということ。」

そして、また出て来たのです、「枕営業」が。

「2018年9月25日」放送予定の、中国出身のハリウッド女優で現在失踪している、

「范冰冰(ファンビンビン)」

に関する「黒いウワサ」の一つとして、

「スポンサーとの枕営業疑惑」

というのが出て来ました。これは「俗語」で、良い言葉ではないのですが、なかなか言い換えが難しいです。そこで、" "を付け「いわゆる」のニュアンスを出して、

「"枕営業"疑惑」

としました。

グーグル検索(9月25日)では、

「枕営業」=36万3000件

出て来ました。

(結局、「貴乃花親方引退」のニュースなどが入ったこともあって、「范冰冰(ファンビンビン)」の話題は、この日は放送されませんでした。)

(2018、9、25)

2018年9月25日 17:21 | コメント (0)

新・ことば事情

6947「アグネス・チャンの漢字表記」

作曲家の故・平尾昌晃さんの遺産を巡る騒動について、9月24日の「ミヤネ屋」で取り上げました。その際に平尾さんが作曲した曲の一つとして、

「アグネス・チャン」

が歌った、

「草原の輝き」

が出て来ました。

「1972年の曲かあ、懐かしいなあ、まだ歌えるなあ、覚えてるなあ」

と思って、一応、曲名などをチェックした際に、「アグネス・チャン」の「漢字表記」が、

「陳美齢」

であることに気付きました。あれ?「美齢」というと評論家の女性でいたな。あの人は、

「金美麗」

さんでしたね。そうすると「金美齢」さんは、現地読み(英語読み?)では、

「アグネス・キム」

だったのか?金さんは「台湾」で、アグネス・チャンは「香港」だから、それは違うのか?でも、漢字は同じなんだね。

「陳」=「チャン」と言えば、昔、プロゴルファーで、

「陳志明」

という選手がいましたね。そのまま、

「ちんしめい」

と読んでいましたが、実はこの「志明」という名前は、ベトナムの英雄「ホーおじさん」こと、

「ホー・チミン」

の「チミン」と同じなんですね。「ホー・チミン」を漢字で書くと、

「胡志明」

です。「ホー・チミン」は「旧・サイゴン」。「ホー・チミン」はもう「地名」になっちゃってますが、ベトナムもかつては、

「漢字文化圏」

だったわけです。こう考えると「東アジア」と「漢字」のつながりは深いですね。

(2018、9、24)

2018年9月24日 18:35 | コメント (0)

新・ことば事情

6946「秋田に凱旋2」

「平成ことば事情6918秋田に凱旋」の続きです。

9月14日に名古屋で行われた新聞用語懇談会放送分科会で、「準優勝に『凱旋』を使っていいかどうか」各社の対応を聞いてみました。

『夏の高校野球で準優勝した秋田県の金足農業高校のナインが地元・秋田に戻った際に「凱旋(がいせん)」という言葉を使いました。「勝って帰るのが『凱旋』の本来の意味」で、金足農業は「準優勝」=「決勝戦で敗退」ですから、厳密には「凱旋」ではないかもしれません。しかし甲子園で「5勝」を挙げ、秋田県勢として「103年ぶりの決勝進出」ということを考え「OK」を出しました。各社はどうされましたか?ちなみに、きのう(今月13日)全米OPテニス優勝の「大坂なおみ選手」の帰国に関しては「凱旋(がいせん)帰国」という表現を使いました。「重複表現」とも思えますが、四文字で収まりがいいことと、「凱旋」は「勝って帰ること」ですが「国に帰る」とまでの意味はないのではないか?と解釈しました。』

これに対する各社の回答は、以下の通りでした。

(NHK)2013年夏、仙台で行われた用語委員会で、高校野球で「日大山形が山形県勢初のベスト4」となって山形に帰って来た際に「凱旋」が使われたことについて議論された。一部の辞書(『大辞林』)には「凱旋」は「成功を収めて帰ること」とあるので、「優勝」でなくても使えるのではないかと思えるが、「ベスト4」ではちょっと使えないのではないか?ということだった。今回の「準優勝」の「金足農業」に関しては、秋田局では「秋田に凱旋した金足農業」と出た。クレームはなかった。今回、秋田県の盛り上がりはものすごく、「特番」が作られたりもして「何をやってもOKの"お祭りムード"だった」とのこと。一方で、もし「優勝が当然」と期待されている実力校の「大阪桐蔭」が「準優勝」で帰っても「凱旋」は使えなかっただろう。

(日本テレビ)報道原稿で「凱旋」を使っていたが、クレームはない。

(TBS)「金足農業」に関しては「"凱旋"を使っていいの?」という意見はあったが、賛否は分かれ、結局「凱旋」を使った。ちなみに、JNN系列は、秋田県にネット局はない。もし「大阪桐蔭」だったら「凱旋」とは言わないが、文脈によって分かれるというのは、おかしいのではないか。

(フジテレビ)「金足農業」に「凱旋」は使っていない。「準優勝」に「凱旋」を使うのは、本来の意味ではない。しかし、サッカーワールドカップ(ベスト16)の日本代表選手が故郷に帰った際には「凱旋」と使ってしまった・・・。

(フジテレビ)オリンピックで「『金メダル以外』のメダリストに『凱旋』と使うのはダメ」だ。今回の「金足農業」は「103年ぶりの決勝進出」という出来事を踏まえれば「凱旋」を使ってもOKでは?「大阪桐蔭」が「準優勝」では「凱旋」は使えないだろう。

(テレビ朝日)「凱旋」を使った。サッカーのワールドカップ「西野JAPAN」の帰国時も、サイドスーパーで「凱旋」と使ってしまったが、「どうなんだろうか?」と思った。

(テレビ東京)ストレートニュースでは使っていない。スポーツニュースは不明。個人的には「凱旋」を「準優勝」に使うのは「なし」と思っている。

(毎日放送)去年のセンバツで、高知の「中村高校」が「20世紀枠」で出場し、初戦で惜敗して故郷に帰る際に「故郷へ凱旋」というのが出てきたが、「せめて1勝はしないとダメ!」と却下した。しかし、文脈によって事情は変って来る。「金足農業」の場合はOK。去年のセンバツで、早稲田実業の清宮選手が久々に甲子園に出場した際に、「清宮、凱旋」と表現したのは、明らかにおかしかった。

(朝日放送)「金足農業」に関しては、大会後に出稿はなかった。

(関西テレビ)「金足農業」に「凱旋」は使っていない。「凱旋帰国」も使わずに「故郷に凱旋」とする。

(テレビ大阪)去年の「世界陸上」で、400mリレーの日本男子が「銅メダル」を取って帰国した際、テレビ東京の原稿が「銅メダル 凱旋帰国」だった。日本陸上男子では「初のメダル」だったので、これは「銅メダル」だけれど「OK」だという判断。しかし「凱旋帰国」は「重複」なのでダメ。きのう(9月13日)の中日・松坂投手が阪神戦の甲子園球場で投げて6勝目を挙げたという、けさ(14日)のスポーツ紙の見出しで「聖地凱旋」「甲子園に凱旋」などがあった。テレビの「スポーツニュース」は「スポーツ紙」と性格的に似ているので、この辺りは「許容」かもしれない。

(共同通信)「準優勝の金足農業に関して『凱旋』を使うのは、ダメだよ」と会議で言ったが、秋田から来た原稿の見出しには「秋田に凱旋」と書かれていた。本文では「秋田に到着」だったが。金足農業の場合は、" "を付けて「"凱旋"」なら、まあOKかな、と。

(読売新聞)読売新聞は紙面には「凱旋」はなかった。「金足農業」には基本的に使っていない。地域版では、1件出て来た。

(新聞協会専門委員)「凱旋」を使えるかどうかは、「お出迎えの人数」によるのではないか?ソチ五輪の際のフィギュアスケート女子・浅田真央選手は、ショートの「16位」からフリーで「6位」に順位を上げたが、その帰国にテレビは「凱旋」を使っていたように思う。新聞は絶対に使わないが・・・。

とのことでした。各社、今回の、

「金足農業に関しては『凱旋』を許容」

している感じですが、それ以外にも現場は「凱旋」を無制限に使いたがる傾向があるので、どこまでそれを許すか、という話ですね。毎日放送さんの話に出た、

「1回も勝ってないのに、甲子園に出ただけ(しかも「21世紀枠」という特別枠で)なのに『凱旋』を使いたがる現場」

というのが、やっかいです。「男子20歳の異称」である、

「弱冠」

を、何にでも使いたがるのと、ちょっと似ている気がしました。

(2018、9、24)

2018年9月24日 18:34 | コメント (0)

新・ことば事情

6945「解けると溶ける」

9月11日の「ミヤネ屋」で、北海道胆振東部地震の停電の影響を、「シシャモ」で有名な北海道は「むかわ町」から中継でお伝えしました。その中で、

「冷凍シシャモが解け」

とスーパーを出したのですが、ディレクターから

「『溶け』ではないのか?」

「『解ける』『溶ける』の使い分けは?」

と質問を受けました。そこでこう答えました。

『「冷凍」したものを「解凍」されるので、この場合は「解ける」です。「水」が凍ったものが「0℃以上でとける」のは「解ける」。「鉄」などの「金属」が「とける(溶解する)」のは「溶ける」。つまり「融点」が、

*「0℃」(「水・氷・雪」など)=「解ける」

*「(大体は)0℃よりずっと高い(それぞれの素材の融点)」=「溶ける」(その「素材自体」が)

なのではないでしょうか?』

と。いかがでしょうか?

(2018、9、11)

2018年9月24日 18:30 | コメント (0)

新・ことば事情

6944「安平町、厚真町」

9月6日午前3時8分、北海道の胆振(いぶり)地方を震源(震源の深さ37km)とする過去最大の、

「マグニチュード6、7」「震度6強」

(午後3時半の気象庁の会見で、厚真(あつま)町は「震度7」であったと発表)

の強い地震が起こり、6日午後3時半現在で4人が死亡、北海道全域295万戸が停電に陥っています。この、

「胆振(いぶり)地方」

については「平成ことば事情6011胆振支庁」で書きました。

その「追記」を読むと、実は、

「2016年6月16日」

「胆振地方」の内浦湾で「震度6弱」(マグニチュード5、3)の地震が起きています。そのときの震源の深さは「11km」と浅いものでした。また、揺れの範囲もかなり限定的でした。そんな地震あったっけ?...思った瞬間に思い出しました、あったあった、北海道新幹線の終点の所あたりで、あまり人も住んでいない所だったような気がします。

今回は、同じ「胆振地方」が震源でも、揺れの範囲は「北海道全域」と広かったです。

亡くなった方に哀悼の意を捧げるとともに、安否不明の方の無事と、一日も早い復旧を願います。

ところで、震源地の「町の名前」ですが、

「安平(あびら)町」と「厚真(あつま)町」

北海道の地名ですから、おそらくもともとは、

「アイヌ語」

だろうと思います。そこで、「アイヌ語ではどういう意味なのか」を調べてみました。(「ウィキペディア」で検索しただけですが)それによると、

*「安平(あびら)」=アイヌ語であるが諸説あり、「アラピラペッ」(一面・崖の・川)、「アラピラ」(片側・崖)、あるいは「アビラ」(光る崖)などがある。

*「厚真(あつま)」=アイヌ語の「アットマム」(向こうの・湿地帯)に由来するとする説と、「アトマプ」(オヒョウニレ・ある・もの・場所)とする説などがあるが、古い地名であり、特定は困難な状況である。

だそうです。「あびら」は「崖」なんですね。

そして、停電の原因となったのは、

「苫東厚真(とまとう・あつま)火力発電所」

が送電できなくなったこと。この発電所だけで、全道の半分の電力を送電しているのだそうです。「苫東」の「苫」は、

「苫小牧(とまこまい)」

ですよね。この語源も調べてみました。

*「苫小牧(とまこまい)」=かつて苫小牧川が流れる一帯を「マコマイ」(アイヌ語で「山奥に入っていく川」)と呼んでいた。さらに、沼のあった旧・樽前山神社付近をアイヌ語で「沼」の意味がある「ト」の字をつけて「ト・マコマイ」と呼んでおり、これが「苫小牧」の語源になったという説や、「マコマイ」川の旧河道・河口を指す「トゥマコマイ」を語源とする説もある。文献上の初出は、松浦武四郎の「初航蝦夷日記」中に出てくる「トフマコマフ」とする地名。その後、1869年(明治2年)に勇払郡を統治した高知藩がカタカナで「トマコマイ」と表記し、さまざまな漢字か当てられたが、1873年(明治6年)2月に「苫細」と漢字表記される。1874年(明治7年)8月20日に字名を「苫細」から「苫小牧」に改めたという。一般的に「牧」は「まい」とは読まないので「苫小枚」とすべきところだが、開拓使東京出張所庶務課の「小牧昌業」が「細」を「小枚」と修正する際に誤って、書き慣れている自分の名字の「小牧」を記入してしまったという説がある。

おもしろい!勘違いから生まれた可能性があるのか!

「牧」と書いてなんで「マイ」と読むのかな?と、昔から疑問に思っていましたが、

「小牧さん」

が原因かもしれないのかあ・・・。「アイヌ語の漢字の当て字」は、難しいですね。

(2018、9、6)

2018年9月24日 18:29 | コメント (0)

新・ことば事情

6943「停電は戸か?軒か?」

9月4日、関西を襲った「台風21号」は、短い時間に大変な暴風で、関空連絡橋にタンカーを激突させるなど、大きな被害を残しました。

また、西日本各地で「停電」が引き起こされ、台風から2週間以上経っても完全復旧には至っていなかったのですが、今(9月21日正午)関西電力のホームページを見てみると、

「台風21号による停電につきましては、9月20日(木)17時51分に復旧いたしました。長期間にわたりご不便とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」

と載っていました。停電発生から16日、ようやくきのう(20日)の午後6時前に復旧したのですね。

さて、その「停電被害の件数を表す助数詞」として従来、放送では「世帯数」を表す、

「戸」

を使っていたのですが、今回のニュースを見ていると、

「軒」

も散見されました。そこで、9月5日に、各電力会社から送られてきたFAXを見てみたところ、

「関西電力」=軒

「中部電力」=戸

「四国電力」=戸

でした。テレビのニュースでも、停電で「軒」を、今回よく目にした原因は、

「関西電力の広報が『軒』を使っていたから」

のようです。

また関連で、9月6日午前3時8分に発生した「北海道胆振(いぶり)東部地震」かんれんのニュースを伝えたNHKのニュースでは、

「295万戸で停電が続いています」

というように、従来通り、

「戸」

を使っていました。

ちなみに、その「時刻」を表す表現が、

「関西電力」=午後9時現在

「中部電力」=午後9時時点

「四国電力」=****(更新日時5日12時50分)

というものでした。従来は、

「〇〇時現在」

だったのが、最近は、

「〇〇時時点」

という表記が増えていることは、以前「平成ことば事情5398『現在』か?『時点』か?」と「平成ことば事情5439『現在』か?『時点』か?2」でも書きましたので、あわせてお読みください。。

(2018、9、21)

2018年9月24日 18:26 | コメント (0)

新・ことば事情

6942「ZOZOTOWNか?ゾゾタウンか?」

9月18日、ファッションサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)の運営会社「スタート・トゥディ」の前澤友作社長が、5年後に「月旅行」に行くという計画を発表して、日本中の度肝を抜きました。

それを報じた各紙夕刊(9月18日)の「ZOZOTOWN」の表記に違いがありました。

(見出し)     (本文)

(読売)ZOZO前沢社長  ZOZOTOWN

(朝日)ゾゾ前沢社長    ZOZOTOWN

(毎日)前沢氏       ZOZOTOWN

(産経)前沢氏       ゾゾタウン

(日経)ゾゾ前沢氏     ゾゾタウン

なんか「カタカナ」で「ゾゾ」とか「ゾゾタウン」と書くと、「ZOZOTOWM」とは別物のような感じに見えてしまいますねえ・・・。

(2018、9、21)

2018年9月24日 18:24 | コメント (0)

新・読書日記 2018_120

『ババアはつらいよ~アラカン・サバイバルBOOK』(槇村さとる/地曳いく子、集英社:2018、8、29)

新聞広告を見て本屋さんに注文してしまったけど、手元に届いたら「あ、間違った!」と思いました。女性向けの本だったのね。「槇村さとる」さんって、女の人だったんだ。てっきり男かと。お二人とも漫画家さんだったのですね。しらずに買った。「55歳、最大の危機がやって来た!」というのは、なかなか惹き付けるものがあるキャッチフレーズでした。漫画のイラスト入りでおいもしろい内容ですが、主にやはりターゲットは女性ですねえ。


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(2018、9、3読了)

2018年9月20日 18:49 | コメント (0)

新・読書日記 2018_119

『春は曙光、夏は短夜~季節のうつろう言葉たち』(岩佐義樹、ワニブックス:2018、6、3)

新聞用語懇談会でご一緒している毎日新聞校閲部部長の岩佐さんの本。というか、毎日新聞の校閲部がツイッターで毎日出している、クイズというかコラムというか、そんな「言葉」についてのあれこれを、読みやすいように見開き2ページで1つの言葉について書いてまとめたもの。それも俳句や短歌に使えるような「季節を表すことば」が中心で、「1月」から「12月」まで月ごとにまとめてあり、章末には「横書き」でのコラムも。(本文は「縦書き」。)飽きさせないように、工夫が凝らされています。読者としては、俳句や短歌をたしなみ人たちも対象なのではないかなと。

その言葉の語源や、その漢字を読めるかどうかツイッターでアンケートを取った結果なども載っていて、ギューーっとコンパクトにまとまった本だと思います。

ちなみに74ページに載っている「総花的」。

「そうばなてき」と読むのですが、本文に、

「あるアナウンサーは、『総花的(そうばなてき)』の読みを『そうかてき』と思っていたそうです」

と書いてありました。これこれ、岩佐さん、それ、私のことですよね。ちゃんと書くなら書くと言ってください、名前隠しても、バレてますよ。

ということで、親しみやすい一冊です。


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(2018、9、18読了)

2018年9月20日 18:47 | コメント (0)

新・読書日記 2018_118

『日本現代文學全集77 金子光春・西脇順三郎・三好達治・草野心平・中原中也』(編集・伊藤整、亀井勝一郎、中村光男、平野謙、山本健吉・講談社:1967、4、19)

多田武彦の合唱曲で三好達治の詞による「わがふるき日の歌」を歌うために、その元となった詩を読もうと、三好達治の詩集を本屋で捜したが、なかなか見つからない。そこで会社の図書室に行ったら「文学全集」の中にありました。歌に採られた詩の前後や、流れとともに、三好達治の年譜も載っていたので、その人生を俯瞰することもできて、歌を歌うに当たって、すごく勉強になりました。

三好達治って、小さいときは大阪の靭公園の近くに住んでいたと。

おお、テニスの全米女王・大坂なおみ選手と同じじゃないか!勉強になりますね!

お陰で、コンサートは大成功でした。


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(2018、8、10読了)

2018年9月20日 18:46 | コメント (0)

新・読書日記 2018_117

『日本語学 2018年9月号~平成時代のことばと文字』(境田稔信・井上史雄・米川明彦・道浦俊彦・岩佐義樹、明治書院:2018、9、10)

日本語の専門誌『日本語学』(月刊)が、「平成」が来年4月30日で終わることを受けて、「平成時代のことばと文字」の特集です。

ことし2月ごろに「平成のマスメディアの言葉」に関しての執筆依頼を受けました。約4年前の「2014年12月号」で「昭和時代の言葉」の特集の時も「昭和のマスメディアの言葉」について書いたので「また、お願いします」といった感じでした。

他の項目は、

境田稔信「平成の国語辞書」

井上史雄「平成の方言」

米川明彦「平成の若者ことば」

岩佐義樹「平成の新聞と略語」

というメニュー。なんとこの4人には、皆、お会いしたことがあります。

境田さんは、校正者で辞書収集・分析の第一人者、一度お会いして一緒に飲みました。

井上先生は、元・東京外大教授で、その時代にインタビューをしに行きました。もう20年近く前だけど。この『日本語学』でも、ずっとユーモラスな言葉のコラムを連載していて、私は愛読者です。

米川先生は、大阪の梅花女子大学教授で若者言葉・集団語(業界語)の第一人者。米川先生にも昔よく取材でお世話になったり、「若者ことばの会」を聞きに行ったり、講演をさせてもらったりというお付き合い。

岩佐さんは、毎日新聞の校閲担当部長で、新聞用語懇談会の総会でここ10年ほどは、年に2回の総会で顔を合わせています。

というようなメンツで「平成のことばと文字」について総括したものなので、大変読み応えがあると思います。ぜひ、お読みください!


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(2018、9、3読了)

2018年9月 6日 11:03 | コメント (0)

新・ことば事情

6941「グアム島とガム島」

読売テレビは「8月28日」に、

「開局60周年」

を迎えました。そこで「60年を振り返るシリーズ」を夕方の「かんさい情報ネットten.」で先週は放送していました。その中で、8月30日は「60年前の台風情報」についても放送していました。それを見ると、

「1962年9月6日」

に放送された「TV大学講座・室戸台風」という番組で台風の調査で米軍は飛行機に乗って台風の雲の中に突っ込んで、気圧などを測定していたという様子と、それを基にアナウンサーが「台風情報」を伝えている様子が流されました。その、アナウンサーは原稿を、

「台風5号は、ガム島の西〇〇kmにあり・・・」

と読んでいました。

「ガム島」!

そうです、これはもちろん、

「グアム島」

のことなんですが、昔は「ガム」って言ってる人、結構いましたよね。最近聞かないな。

外国の国名では、この他に、

「ガテマラ」

というのもよく耳にしました。これは、

「グアテマラ」

のことですね。

この間、夏休みで行ったカンボジアのアンコールワット遺跡がある町は、

「シエムレアプ」

というんですが、これもよく、

「シェムレアップ」

と「シエ」と「大きいエ」ではなく、拗音で「シェ」と発音されますね。

でもこれは、現地の日本語ガイドのカンボジア人の青年も、

「シェムレアプ」

と「拗音」で発音していた気がするんだけどなあ。どうなんでしょうか?

あ、「読売新聞社」のスタイルブックだと

「シエムリアプ」

か。日本テレビは、

「シエムレアプ」

ですね。「平成ことば事情5815シエムレアプ」もお読みください。

(2018、9、5)

2018年9月 5日 16:53 | コメント (0)

新・ことば事情

6940「ファシズムの14徴候」

『薔薇の名前』で知られるイタリアの代表的知識人であるウンベルト・エーコの著書に、

『永遠のファシズム』

という本があります。「永遠のファシズム」というのは、

「原ファシズム」

の別名だとエーコは言います。つまり、

「ファシズムの原点」

のようなもののことですね。その本の中に、

「ファシズムの14徴候」

が載っているそうです。それを書き出してみると、

  1. 伝統崇拝

  2. 非合理主義

  3. 反知性主義

  4. 批判の拒絶

  5. よそ者排除

  6. 欲求不満層の懐柔

  7. ナショナリズム

  8. 敵の力の判断力欠如

  9. 反平和主義

(10)弱者蔑視

(11)死の崇拝

(12)武器への愛着

(13)ポピュリズム

(14)貧弱な語彙

おお、ほとんど全て、現在の安倍政権とそれを支持する人たちにあてはまるではないですか!最後の、

(13)ポピュリズム

(14)貧弱な語彙

は、「小泉純一郎内閣」に特徴的でしたね。安倍政権も、それを引き継いでいる部分があるでしょう。

この「14徴候」は、たまたまインターネットの記事で知ったのですが、「ぜひ、その本を読んでみたい!」と思って、なじみの本屋さんに注文したら、

「1998年に出て、今は絶版です」

と言われ、古本で見ると「4000円ぐらいする」ので、「図書館で借りるかあ・・・」と思っていたら、なんと、

「8月17日に『岩波現代文庫』から、文庫版で復刊」

しました!しかも940円(税別)というお手頃価格。それを『日経新聞』の読書欄で知って、すぐに本屋さんに走って購入、読みました!ウンベルト・エーコの「講演録」なんですね。読みやすいです。

20年前というのは、「昔」ではなく「現代」です。ある意味これは、

「民主主義の行き着く先について書かれた『予言の書』」

なのかもしれません。

(2018、9、5)

2018年9月 5日 16:51 | コメント (0)

新・ことば事情

6939「3枚 2」

「平成ことば事情877 三枚におろす」や「平成ことば事情983 3枚」の15年ぶりの続編です。

全国高校サッカーの準々決勝「国見高校対帝京高校」の試合で、実況のアナウンサーが、

「フォワードは3枚、登録があります。」

「帝京高校(のディフェンス)、中には3枚」

というような、

「選手の人数を『枚』で数えている」

に関する違和感を書きました。フリーキックの際に、ボールを蹴る人とゴールの間に立つ選手、通常「カベ」と呼ばれる時の選手の人数については、

「カベは3枚です」

というふうに「枚」を使うが、「フォワードが3枚」というふうに攻撃側に「枚」を使うことも可能なのかどうか?という疑問でした。

これに対して、誰かがどこかで(メモしとけよな!と自分に突っ込み)、

「サッカーで選手を『枚』で数えるのは間違い。あれは、バレーボールの松平 康隆監督(1930122日~20111231日)が言い始めたもので、『ブロック』する選手の人数を『枚』で表現したもの」

と話しているか書いているのを、先日聞いた(読んだ)のです。

そう言われると、何だか納得。

「セッターが真ん中でブロックに跳ぶという戦法」(つまり「ブロック3枚」)

は、松平監督が考え出したもののようですし。「バレーボール経由」で「サッカー」に入って来たのかもしれませんね。

最初は「バレーボールのブロックする選手の人数」と同じく「守備」に関しての、

「フリーキックに対する壁の選手人数」

に使われていたものが、次第に「守備」に限定せずに、

「(単に)選手の人数」

に使われるようになっていったのかもしれませんね。

今度、サッカー担当のスポーツアナウンサーに聞いてみます。

(2018、9、5)

2018年9月 5日 15:20 | コメント (0)

新・ことば事情

6938「滑走路『が』浸水か?滑走路『に』浸水か?」

今回の「台風21号」の被害、特に「暴風」と「高潮」の被害が想像を絶するものでした・・・。自然の脅威をまざまざと感じました・・・。

お亡くなりになった方に哀悼の意を捧げると共に、被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

さて、一夜明けたきょう(9月5日)の「ミヤネ屋」のテロップチェックをしていたら、ディレクターから、「助詞」について質問されました。

『「滑走路『が』浸水」なのか?「滑走路『に』浸水」か?』

うーん、たしかにどちらも成り立ちそうです。

まず「浸水」の意味を『広辞苑』で引きました。

*【しんすい(浸水)】水が入り込むこと。水にひたること。また、その水。

ということで、考えました。

「水」が主語であれば、

「(水が)滑走路『に』浸水」

と、「浸水」は「浸水する」という動詞で「滑走路」は「目的語」になりますが、今回の主体は「滑走路」であり「その状態」を知りたいのだから、この場合の「浸水」は、

「水にひたること(状態)」

の意味で「形容詞的」に使い、

「滑走路が『浸水した状態』である」

という意味で、

「滑走路『が』浸水」

としたほうが良い、という結論に達しました。

(2018、9、5)

2018年9月 5日 15:19 | コメント (0)

新・ことば事情

6937「宮川選手のアクセント2」

「平成ことば事情6928宮川選手のアクセント」の続きです。

体操女子のリオ五輪代表だった「宮川(みやかわ)紗江選手(18)」が、8月29日午後4時から会見を行い、今回の騒動について「告発」を行いました。

未成年・18歳でこういう会見を開くというのは、大変勇気のあることだと思います。

さてそれで、ますます、

「ミヤカワのアクセント」

が気になります。テレビを見ていたところ(「平成ことば事情6928宮川選手のアクセント」に書いた分を含めます)、

【8月29日】

*日本テレビ「スッキリ」

水卜アナウンサーは「平板アクセント」で「ミ/ヤカワ」

女性ナレーターは「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」

*日本テレビ「news every.」

「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」

*日本テレビ「NewsZero」

・男性ナレーターは「平板アクセント」で「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

・女性ナレーターは「中高アクセント」の「ミ/ヤ\カワセンシュ」

・日本体操協会の午後7時からの会見に出ていた岩寺剛体太弁護士は、

「ミ/ヤカワセ\ンシュ」と「平板アクセント」

・インタビューに答えていたスポーツコメンテーターの青島健太氏も、

「平板アクセント」の「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

【8月30日】

*日本テレビ「スッキリ」

・森圭介アナウンサーと水卜アナウンサーは「平板アクセント」で、

「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

*テレビ朝日「ワイド!スクランブル」

・男性ナレーター「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」。

・佐々木亮太アナウンサー(2004年入社)・キャスターの橋本大二郎氏・スポーツコメンテーターの二宮清純氏は「平板アクセント」で「ミ/ヤカワ」。

*日本テレビ「ストレイトニュース」

・矢島学アナウンサーは「平板アクセント」で、

「ミ/ヤカワサ\エセンシュ」「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

*読売テレビ「情報ライブミヤネ屋」

・識者で中継出演のスポーツコメンテーター・生島淳氏は「中高アクセント」の「ミ/ヤ\カワ」と「平板アクセント」の「ミ/ヤカワ」の両方が混在して使っていた。

・林マオアナウンサーと宮根誠司キャスターは「中高アクセント」の「ミ/ヤ\カワ」

*日本テレビ「news every.」

・臨時理事会を開いた日本体操協会の具志堅幸司・副会長は、生中継で「平板アクセント」で「ミ/ヤカワサン」

・男性ナレーターは「平板アクセント」で「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

*読売テレビ「かんさい情報ネットten.」

・小島キャスター「中高アクセント」の「ミ/ヤ\カワセンシュ」

・ナレーターの有田さんは「平板アクセント」の「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

・VTRで出てきた、きのう午後7時からの会見、日本体操協会の山本宜史(のりふみ)専務理事(大阪出身)は「ミヤガワ」と間違えて10回も濁っていたが、濁らないときも「平板アクセント」で「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

*NHK夜7時のニュース

・女性アナウンサーは「平板アクセント」で、「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

【8月31日】

*テレビ朝日「ワイド!スクランブル」

・大下容子アナウンサー(1993年入社)は「平板アクセント」で「ミ/ヤカワ」

・若い男性アナウンサー(山崎弘喜アナウンサー=2015年入社か?)は「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」

そして、メールで読売テレビや知り合いの各局のアナウンサーなどに、

『体操女子のリオ五輪代表だった「宮川紗江選手」の名字の「川」は「濁らない『カワ』」ですが、その「ミヤカワ」のアクセントが揺れています。

    1. ミ/ヤ\カワ(中高アクセント)
    1. ミ/ヤカワ(平板アクセント)

皆さんはOAでは、どちらで読むでしょうか?』

と聞いたところ(その人が聞いた「他の人のアクセントの観察」を含む。敬称略)、

(1)ミ/ヤ\カワ(中高) 21人 

(ytv)7人

(MBS)2人

(フジテレビ)2人

(テレビ朝日)1人

(WOWOW)1人

(テレビ岩手)1人

(テレビ大分)1人

(北日本放送)1人

(NHK金沢)4人

(フリー)1人

(2)ミ/ヤカワ(平板) 13人 

(ytv)3人

(MBS)2人

(ABC)2人

(テレビ朝日)2人

(中京テレビ)1人

(NHK金沢)1人

(フリー)2人

(3)その他 2人

・本人に確認するのが良い=(テレビ金沢TKT)1人、(ABC)1人

と、多くの方からご意見を頂きました。ご協力ありがとうございます!

(NHK金沢)ちなみに、「ミヤガワ」と「濁る」場合だったらどうか聞いてみたら、

    1. ミ/ヤ\ガワ(中高)=0人
    1. ミ/ヤガワ(平板)=5人

だったそうです。

その中で、日本テレビの矢島学アナウンサーから、

「けさ(8月31日)に『スッキリ』に生出演した宮川紗江選手本人に確認したところ、ご本人は『ミ/ヤ\カワ』という『中高アクセント』を希望していました」

というご報告を受けました。矢島さん、ありがとうございます!

ということで、8月31日お昼の「ストレイトニュース」では、矢島アナウンサーも森富美アナウンサーも「中高アクセント」の、

「ミ/ヤ\カワ」

と読んでいました。

その後の番組ウオッチでは(8月31日)、

*フジテレビ

・椿原アナウンサーは「ミ/ヤカワ」と「平板アクセント」

・VTRの男性ナレーターは「ミ/ヤ\カワ」と「中高アクセント」

*日本テレビ「スッキリ」

・司会の加藤浩次氏「ミ/ヤ\カワセンシュ」と「中高アクセント」。

*読売テレビ「かんさい情報ネットten.」

・インタビューに応じた速見コーチの代理人・山口政貴弁護士は「平板アクセント」で、「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

・ナレーターの有田さんは「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」

・吹き替えの女性は「平板アクセント」で「ミ/ヤカワセ\ンシュ」

*日本テレビ「news every.」

・男性ナレーターは「中高アクセント」で「ミ/ヤ\カワ」

でした。

なお関連で、「宮川」=「ミヤガワ・ミヤカワ」というように、

「4文字(4拍)で、3拍目が濁る場合と濁らない場合のアクセント」

に関しては、

「谷川」「中島」「横川(横河)」

に関しては、

*「濁る」  =平板アクセント=「タ/ニガワ」「ナ/カジマ」「ヨ/コガワ」

*「濁らない」=中高アクセント=「タ/ニ\カワ」「ナ/カ\シマ」「ヨ/コ\カワ」(2拍目に山)

という傾向があるように思います。

また、「〇〇川」という固有名詞ですが、

「河川の名前」

なら「ほとんど濁る」のに対して、

「人名(名字)・地名」

は、「濁ったり、濁らなかったりする」気がします。

平成ことば事情2330「『ナカシマ』のアクセント」

平成ことば事情2162「タニカワとタニガワ」

もお読みください。

(2018、8、31)

2018年9月 5日 10:54 | コメント (0)

新・ことば事情

6936「"まとわる"と"まつわる"2」

 

「平成ことば事情455"まとわる"と"まつわる"」の続編です。

2001年以来、17年ぶりに書きます。というのは、NHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に

「まとわりつく・まつわりつく」

に関するものがあったのです。NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからご教示頂きました。ありがとうございます。

それによりますと、

「『マトワリツク』を第一推奨形とする」

となったそうです。これまでは、

「〇マツワリツク 〇マトワリツク」

の両形を推奨していました。

変更の要因の一つである「ウェブアンケートの結果」(2014年7月実施【921人回答】)によると、

「子どもが母親に【まつわりつく/まとわりつく】」

(ア)「まつわりつく」と言う

(「まとわりつく」とは言わない)= 3%

(イ)「まとわりつく」と言う

(「まつわりつく」とは言わない)=81%

(ウ)両方とも言うが、どちらかといえば「まつわりつく」と言うことのほうが多い=3%

(エ)両方とも言うが、どちらかといえば「まとわりつく」と言うことのほうが多い=9%

(オ)両方とも言うが、それぞれ表す意味が異なる=2%

(カ)どちらも言わない=1%

という結果だったそうです。

「9割の人が『まとわりつく』と言う」

そうで、それを受けての決定ですね。

そして、国語辞典・和英辞典(56冊)での扱いは、かつては,「マトワリツク」「マツワリツク」という形で立項するものは少なかったそうです。(「マトワル」「マツワル」として立項されていたため)

         戦前 戦後昭和 平成

【マトワリツク】 0   0   10

【マツワリツク】 0   1   10

また、「国語研日本語ウェブコーパス(NWJC)」(http://bonten.ninjal.ac.jp/)によると、

*「まとわりつく」 =1万1106件/「まつわりつく」 =270件

*「まとわりついて」=1万1648件/「まつわりついて」=305件

だったということです。

(2018、9、4)

2018年9月 4日 17:07 | コメント (0)

新・ことば事情

6935「おもんぱかる2」

2009年に書いた「平成ことば事情3556おもんぱかる」の久々の続きです。

というのは、NHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に、「おもんぱかる」の読みに関するものがあったのです。NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからご教示頂きました。ありがとうございます。

それによりますと、これまでは「〇オモンパカル(半濁音形)」しか認めていなかった

「慮(おもんぱか)る」

ですが、これを

「『オモンパカル』(半濁音形)を第一推奨形とし、『オモンバカル』(濁音形)を第二推奨形として加える。」

「濁音形」も認める・加えることになったそうです。

根拠として2014年11月に実施した664人回答のウェブアンケートの結果によると、

(A)「相手の気持ちを『おもんばかる』」

   (「は」にテンテン)

(B)「相手の気持ちを『おもんぱかる』」

   (「は」にマル)

のどちらを使いますか?という問いに対し、

(ア)A・B、どちらも正しい  =15%

(イ)Aは正しいが、Bはおかしい=45%

(ウ)Bは正しいが、Aはおかしい=30%

(エ)A・B、どちらもおかしい = 3%

(オ)この言い方を知らない   = 7%

で、約半数(48%)の人が、伝統的な「おもんぱかる」(半濁音形)を「おかしい」と感じているという結果が出たのだそうです。一方で、従来の正しい形の「おもんぱかる」を「正しい」と感じた人も約半数(45%)。これでは「どちらか一方」には決められませんよね。

また、国語辞典・和英辞典(56冊)での扱いは、

              戦前 戦後昭和 平成

【オモンパカル】(半濁音形)29 10  15

【オモンバカル】(濁音形)  1  1  11

ということで、

「全ての時期(戦前・戦後昭和・平成)を通じて『半濁音形』を主見出しとして立項するものが多いが、平成では『濁音形』を何らかの形で示しているものが多い」

また「国語研日本語ウェブコーパス(NWJC)」からは、

「おもんぱかる」(半濁音形) =201件

「おもんばかる」(濁音形)  =293件

「おもんぱかって」(半濁音形)=183件

「おもんばかって」(濁音形) =276件

だったそうです。

(2018、9、4)

2018年9月 4日 17:04 | コメント (0)

新・ことば事情

6934「含み損3」

2003年に書いた「平成ことば事情1029含み損」と2006年に書いた「平成ことば事情2456含み損2」の続編を久々に書きます。

というのは、NHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に、「含み損」の「損」の読み(濁るか、濁らないか)に関するものがあったのです。NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからご教示頂きました。ありがとうございます。

それによりますと、

「『フクミゾン』を第一推奨形とする」

となったそうです。これまでは、

「〇フクミソン 〇フクミゾン」

と「ソン」「ゾン」の両形を同等に認めていたそうです。

変更の根拠としては、2013年11月に実施された682人が回答したウェブアンケートの結果が、

(ア)「ふくみそん」と言う(「ふくみぞん」とは言わない)=11%

(イ)「ふくみぞん」と言う(「ふくみそん」とは言わない)=59%

(ウ)両方とも言うが,どちらかといえば「ふくみそん」と言うことのほうが多い=6%

(エ)両方とも言うが,どちらかといえば「ふくみぞん」と言うことのほうが多い=18%

(オ)このことばを声に出して言ったことがない=6%

と、「ゾン」と「濁る人」が「75%」、「ソン」と「濁らない人」が「17%」だったことを受けての決定のようです。そうです。

そして国語辞典・和英辞典での扱い(56冊)によると「新しい語のため、戦前・戦後昭和には立項はなし」で、「平成になって出た辞書」では、

「フクミゾン」=4冊

「フクミソン」=7冊

だそうです。

また、[参考]として「同じ後部要素の語(=損)の読み」は、

〇「~ソン」=汚損、毀損、欠損、減損、自損、破損[←すべて2字漢語]

〇「~ゾン」=大損、聞き損、手間損、骨折り損、丸損[←すべて前部要素が和語]

〇「~ソン、〇~ゾン」=評価損

だったそうです。

(2018、9、4)

2018年9月 4日 17:03 | コメント (0)

新・ことば事情

6933「代理母3」

「平成ことば事情322代理母」「平成ことば事情6668代理母2」の続きです。

2018年2月開催の「新聞用語懇談会放送分科会」で、私から、

「『代理母』の読み方」

について、

『「代理母」の「母」の読み方は、放送では「ハハ」でしょうか。「ボ」でしょうか。「代理母出産」と言う場合と、単独で「代理母」という場合では、読み方が変わることはあるでしょうか。手元にある辞書では、下記の通りでした。

★「辞書名」   「ハハ」  「ボ」

『広辞苑』     ○    ×

『明鏡』      ×    ×

『新明解』     ×    ×

『精選版日国』   ○    ×  ※「ハハ」の語釈の中に「ダイリボ」も。

『デジタル大辞泉』 ○    ×

『三国』      ○    ×  ※「ハハ」の語釈の中に「ダイリボ」も。

『現代国語例解』  ×    ×

『NHKアク新辞典』○    ○   』

と、各社の意見を聴きました。それに対する各社の意見は、

(NHK)両方OAがあるが、「ハハ」のほうが多い。

(日本テレビ)両方OAがある。ルールは決めていない。

(テレビ朝日)わかりやすさから「ハハ」。ルールは決めていない。

(TBS)「ハハ」。ラジオでは「ボ」は聞いて分かりにくく、伝わらない恐れがある。「必ずそうする」というルールは無い。

(フジテレビ)「ハハ」と読んでいる、ルール化はされていない。

(テレビ東京)周囲のアナウンサーに聞いたところ、「ハハ」と読むと。

(ABC)「ハハ」。ラジオがあるので。しかし「代理母出産」は「ボ」もある。「代理母」単独では「ハハ」が分かりやすい。ルールを決めているわけではなく、各アナウンサーが対応している。「ミヤネ屋」で宮根さんは「ハハ」と言っていたのではないか?

(ytv)担当ディレクターによると、VTRのナレーションは、「ボ」に統一したが、スタジオでのトークでは、特に「代理母」単独の場合は「ハハ」でも「ボ」でも良いということにしたとのこと。「代理母出産」と「出産」まで付くと「ボ」ということ。

(MBS)丸岡さんの話題の際は、全部スタジオフリートークだったので、「代理母」は全部「ハハ」だった。これがニュース原稿だと「ボ」になると思う。「継母」を「ママハハ」「ケイボ」と読み分けるような感じで。

(TVO)「ハハ」が分かりやすい。

(KTV)「ハハ」。

(時事通信)「読み」は決めていない。取材先の読み方に従う。

(共同通信)「決めていない」ルビも振っていない。耳で分かりやすい表現を優先する。

その後、最近になってNHK放送文化研究所発行の『放送研究と調査2018年9月号』に載った「6月22日のNHK放送用語委員会」での「用語の決定」の中に、「『代理母』の読み方」に関するものがあるのに気付きました。そこには、

「『ダイリハハ』を第一推奨形とする」

と記されていました。ちなみに、これまでは、

「〇ダイリハハ 〇ダイリボ」

と、両方を同等に認めていたようです。「放送分科会」でのNHKの委員の回答と同じでしたね。この改訂に当たっての、ウェブアンケート(2014年11月実施【664人回答】)によると、「代理母」の読み方は「A:だいりはは B:だいりぼ」のどちらか?という問いに対して、

(ア)A・B、どちらも正しい  =20%

(イ)Aは正しいが、Bはおかしい=59%

(ウ)Bは正しいが、Aはおかしい=18%

(エ)A・B、どちらもおかしい = 0%

(オ)この言い方を知らない   = 2%

だったそうです。

また、国語辞典・和英辞典での扱い(56冊しらべ)では、

       (戦前)(戦後昭和)(平成)

【ダイリハハ】  0   0    7

【ダイリボ】   0   0    3

と、「代理母」は「平成」になってから国語辞典・和英辞典に掲載されるようになった「新しい言葉」であることを、改めて確認できました。

また、専門用語辞典での記述は、

「surrogate mother ... 代理母(だいりはは)」

(日本医学会医学用語管理委員会編(2007)『日本医学会医学用語辞典 英和』南山堂)

だそうです。

NHK放送文化研究所の塩田雄大さんから、ご教示頂きました。ありがとうございます。

(20918、9、4)

2018年9月 4日 17:01 | コメント (0)

新・ことば事情

6932「ムーンサルトのつづり」

日本体操協会を巡る問題を取り上げた、きょう(8月30日)の「ミヤネ屋」で、日本体操協会副会長で、オリンピック3大会連続(メキシコシティー・ミュンヘン・モントリオール)金メダルの、

「塚原光男氏(70)」

を取り上げました。その中で、塚原氏が開発した、

「月面宙返り」

という技、英語では、

「ムーンサルト」

これを紹介しました。日本語で書くだけだとアレなので、ちょっとカッコつけて、ディレクターは「アルファベット」もスーパーに出していました。つづりは、こうです。

「Moonsalto」

ところが、念のためチェックしようと辞書を引くと、

「Moonsault」

と書いてあるではないですか!

しかしさらに調べると、そもそもこの言葉は「造語」で、「ムーン」は英語ですが、

「『サルト』は『ドイツ語』」

だというのです。そこから「英語」になったと。そして、

「宙返り」

に当たる部分が「ドイツ語」だと、

「salto」

で、「英語」だと、

「sault」

じゃあ、まあ、「ドイツ語」のほうでもいいかなということで、「つづり」はそのままにして放送しました。

(2018、8、30)

2018年9月 4日 17:00 | コメント (0)

新・ことば事情

6931「デカイ」

先日、珍しくNHKのスポーツニュースで高校野球のニュースを見ていたら、若い女性アナウンサーが、バックスクリーンのことを指して、

「看板がデカイですからね」

と言いました。アナウンサー、しかも女性が、

「デカイ」

という言葉を使うことに違和感があり、

「『デカイ』はないだろう。下品だ」

と思いました。調べてみるとこの女性アナウンサー(入局4年目ぐらいの若手)は、

「青森・弘前市出身」

でした。そこで、「そういえば・・・」と思ったのは、同じく青森・弘前市出身の読売テレビの、

「虎谷温子アナウンサー」

のことです。彼女も「デカイ」と言っていたような気がしたのです。

「もしかしたら青森・弘前市では、女性でも普通に『デカイ』と言うのではないか?」

と思い、虎谷アナウンサーにメールで尋ねてみたところ、

「『デカイ』・・・言いますね。ただ一方で何となく『下品と言われるのも、異論はない』といいますか・・・『下品な言葉なんだろうなぁ』という感覚もあります。『美味しい』の意味の『うまい!』みたいな感じでしょうか?若い女の子が『んまっ!!』いうのは、かわいいけど、私くらいの年齢の女性が言うのは、頭悪そうに見えというか・・・(笑)。余談ですが、(大学時代にやっていた)軟式テニスでは、ポイントを取ったときに『ヨッシャー!!!』と、いちいち大きくガッツポーズをしたり、時には相手を挑発したりするのですが、その時に、試合の中で『今のポイントは大きい』という意味で『デカイー!!!』と、ガッツポーズをしていたのですが・・・東北以外の方からは『下品』と思われていたのかもしれません・・・』

という返事をもらいました。

私が感じた「デカイ」の語感と、青森(東北)の人の感じる「デカイ」の語感には、ニュアンスの違いがあるのかもしれませんね。

勉強になりました!

(2018、8、29)

2018年9月 4日 16:58 | コメント (0)