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『道浦TIME』

新・ことば事情

7383「タクシーは公共交通機関か?」

「新型コロナウイルス」の感染の恐れがある人は、

「公共交通機関を使わずに医療機関に行きなさい」

と、政府は言います。また「3月9日午前0時以降」に中国・韓国から日本に入国する人は、何国人かを問わず、

「自宅か滞在先(ホテル)で2週間、缶詰め状態」

を要請され、そこにたどり着くのにも、

「公共交通機関は使わないように」

と言われています。この際に、

「タクシーもダメ」

と書かれているのを見て、

「そりゃあ、タクシーは閉鎖空間だから、運転手さんにうつる恐れがあるもんなあ」

と一旦、納得したものの、

「じゃあ、自家用車でしか行けないということ?自家用車のない人は、どうすればいいの?」

という疑問と、

「タクシーは『公共交通機関』なのか?」

という疑問が出てきました。

実際に、3月9日に関西国際空港に到着した韓国からの留学生は、

「そうは言っても、全面禁止だとは、思わなかった」

ために、宿泊先へ向かう「足」がなく、そういう事態を予想して関西空港に待機していた、「韓国領事館の職員の車」で送ってもらうという事態になっています。

この「タクシーは『公共交通機関』なのか?」について調べてみました。すると、

2014年4月に書かれた加藤博和・名古屋大学准教授(当時)の論文、

「公共交通として位置づけられたタクシーが果たすべき社会的役割」

というものが出て来ました、その冒頭に、

「タクシーは日本において、バスや鉄道と違い公共交通機関という認識はなされてこなかった。しかし、2002年の規制緩和後に生じた供給過剰や運賃低下を適正化する必要に迫られ、そのための立法において、はじめて公共交通と位置づけられた。そのため『タクシーが公共交通として何を提供するべきか』についての事業者や自治体の意識は高くない状況にある」

と記されていました。そうなんですよね、「タクシー」は「鉄道」「バス」と違うイメージがあります。しかし今回の「新型コロナウイルス」を巡る騒動では、

「タクシーも公共交通機関である」

ということが再認識されたのではないでしょうか。そして同時に、

「公共交通機関を使わないで、どうやって移動すればいいのか?」

という疑問が、おそらく高齢者を中心に生まれたのではないでしょうかね?

だって、一方で、

「高齢者の運転は危ない」「免許は返上すべきだ」

と言われて、その一方で今回のようなケースでは、

「公共交通機関は使うな」

だと、

「動くな!」

と言われているようなもの。そういった人たちに対して、国や自治体がどう対応するのか?が問われているとも言えるのですね。

(2020、3、12)

2020年3月12日 20:56