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『道浦TIME』

新・ことば事情

7163「女医」

山形県で50歳の女性眼科医が殺害された事件から3週間。6月12日、容疑者の山形大学に通う23歳の男が逮捕されました。それを報じた6月12日の夕刊各紙の被害者の肩書の表記を見ると、

(見出し)               (本文)

(読売)医師殺害 山形大生逮捕            眼科医師

(朝日)眼科医殺害容疑 山形大生を逮捕        眼科医

(毎日)山形大生 女医殺害容疑            眼科医

(日経)大学生の23歳男逮捕 山形の女性医師殺害容疑 医師

(産経) 記事なし

でした。

ということで私が気にしたのは、毎日新聞のみ使っていた、

「女医」

という表現です。そこに注目して並べ直すと、こうなります。

(見出し)  (本文)

(読売)医師     眼科医師

(朝日)眼科医    眼科医

(毎日)女医     眼科医

(日経)女性医師   医師

(産経) 記事なし

ということです。問題は3つあります。

(1)「女性」という性別

(2)「眼科医師」か「医師」か

(3)「眼科医師」か「眼科医」という省略形か

この3つをどう扱うか。そもそもこの事件での「被害者に関するニュースの要素」は2つ。

(1)「女性である」ということ

(2)「眼科」の「医師」ということ

ですね。それをどう扱っているかということになります。

6月13日のテレビニュースを観察したところ、テロップ表記は、

(日本テレビ)女医(「スッキリ」「ストレイトニュース」)

(NHK)女性医師(正午のニュース)

(テレビ朝日)女性医師(昼ニュース)

(フジテレビ)眼科医(昼ニュース)

「TBS」見逃したというか確認できませんでした。

また、この日の朝刊の「ラ・テ欄」(関西版)では、

(日本テレビ)独身女医(「スッキリ」)

(MBS)女性眼科医(「朝チャン!」)、女医(「ひるおび!」)

(カンテレ)女性医師(「とくダネ!」)

でした。「スッキリ」は、

「独身」

もニュースバリューに上げて来ましたが、これは「週刊誌的」な視点ですね。

「2016年3月9日」に書いた文章に、「タレント」としてテレビ出演もしていた「女性の医者」が、金をだまし取ったとして逮捕されたニュースを放送した際、当初は、

「タレント女医」

というスーパーが出ていたと。しかし「女医」は要注意の表現。

「職業名」

としては「女医」は使いません。「対」の言葉として「男医」があれば別ですが、ありません。ジェンダー(性差)に関しては、

「非対称な職業名」

は避けたほうが無難です。(男女ともに「男○○」「女○○」という名称が一般的であればOK)

「医師」あるいは「女性医師」

とすべきだ、と書いています。

×「タレント・女医」→○「タレント・医師」

×「女医」→○「女性医師」

ただし「キャラクター」として、

「セクシー女医」「タレント女医」

などは「カギカッコ付き」で「OK」の場合もあります。実際、テレビ朝日の人気ドラマ『DoctorX(ドクター・エックス)』の冒頭の、田口トモロヲさんのナレーションは、

「これは一匹狼の『女医』の物語である。」

というふうに「女医」を印象的に使っていますが、特に苦情が来たという話は、聞いたことがありません

2016年3月9日付の夕刊各紙は、

*「産経」「毎日」=「女医」

*「読売」「朝日」「日経」=「医師」

と載っていました。この時から「毎日新聞」は「女医」か。「女医」が好きですね。♪「女医to the world」か?(「毎日」は、見出しは「女医」、本文は「タレント女医」とカギカッコ付きでした。)

また、日本テレビ「every」は" "付きの

"美人女医""タレント女医"

でした。TBSの夕方ニュースは、サイドスーパーは、カギカッコなしで、

タレント女医

「職業の紹介」のスーパー&ナレーション原稿は、

「タレントで医師の」

だったようです。

「女医」に関しては「平成ことば事情6586女社長・女医」も、お読みください。

(2019、6、12)

2019年6月13日 18:29 | コメント (0)