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『道浦TIME』

新・読書日記 2019_076

『現代に生きるファシズム』(佐藤優、片山杜秀、小学館新書:2019、4、8)

目からウロコの一冊。

抜き書きします。

「イスラム原理主義には生産の思想がない。従って、自立できず資本主義体制に寄生することしかできないので、共産主義やファシズムのように抜本的な社会転換をもたらす力がない。」(5ページ)

「労働者にストライキ権を認めず、生産性向上を志向するファシズムは(中略)イタリア型ファシズムとドイツのナチズム(民族社会主義)を区別すること」(6ページ

「イタリア型ファシズムは、国家の介入によって資本家の利潤を社会的弱者に再配分し、戦争によって外国を侵略し、そこから収奪した富で自国民を豊かにするという、民族や文化にとらわれない普遍的な社会理論の性格を帯びている。」(67ページ)

ということで、

「ファシズムは、全てが悪ではない」

という一冊なんですね。ドイツのナチスのようなファシズム(ナチズム)やソ連のスターリン的全体主義はダメだけど、イタリアのムッソリーニ的ファシズムは良かった、という視点なのです。

「えー!?そうなの?」

と思いますよね。排他的な民族主義的なファシズムはすぐに滅びるが、「加わる物はウェルカム」という帝国(主義)的なファシズム・足し算主義(拡大主義)はOKなのだと。本当かなあ。

ファシズムは出自や民族・人種は問わないと。そんな「論理どおり」にいくのかな?いかなかったんじゃないの?

「ファシズム」と「ナチズム」の決定的な違いは「障害者差別」(66ページ)だと。

ナチズムは優生思想で障害者の安楽死や人工中絶手術を行ったが、ファシズム体制下のイタリアでは障害者を保護したと。そうか、日本の「旧・優生保護法」(1948〜1996年)下での強制的な不妊手術の裁判がニュースになっているが、あれもつまりは「ナチズム的」な行動だったのですね。それが戦後もずっと続いていた。日本は「イタリア的ファシズム」ではなかったということか。

少し「本当かなあ」という部分もありながらも、勉強になる一冊でした。


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(2019、5、11読了)

2019年6月11日 17:23 | コメント (0)