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『道浦TIME』

新・読書日記 2019_045

『団地と移民~課題最先端『空間』の闘い』(安田浩一、角川書店:2019、3、23)

人口が減少に転じた日本で、人口増加時代に出来た「団地」が、日本人の高齢化と共に居住人口が減り、そこに移民が住み着くというようなことが、タイトルから容易に想像できる。帯には、

「団地はこの国の"未来"である」

「そこは外国人、高齢者をネトウヨが襲う空間と化していた」

「外国人実習生や排外主義者(ネトウヨ)の問題を追い続ける著者の最前線ルポ」

と煽って来る。

著者自身が、子どもの頃は「団地」で暮らし育った。いわば団地は「故郷」でもある。高齢の母親と一緒に、かつて住んでいた団地を42年ぶりに訪ねるところから"物語"は始まる。

本書では第1章「都会の限界集落~孤独死と闘う」で現状を見、

第2章「コンクリートの箱~興亡をたどる」で「団地妻」以来の歴史をさかのぼり、

第3章「排外主義の最前線~ヘイトへ抵抗する」では、たくさん住み始めた中国人たちへの「ゼノフォビア(外国人嫌い)」の現状を報告。

第4章では海外へと飛ぶ。フランス・パリ。移民たちの郊外での現状。ゼノフォビアは日本だけの問題ではなかった。世界的な傾向・流行なのか?

そして第5章、日本に戻って、広島。映画「仁義なき戦い」のロケ地。中国残留孤児の問題。最後に第6章は「『日本人』の境界」。4月から始まった外国人人材拡大のための法律だが、「外国人人材」を、日本人はどのように考えて・感じて、どのように扱おうと・接しようとしているのか、その一例が示されている。

日本と世界と、町内と世界を同時に感じられる一冊だ。


star4

(2019、3、31読了)

2019年4月11日 20:37 | コメント (0)