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『道浦TIME』

新・ことば事情

7177「『無農薬』という表現」

ふだん何気なく使う、

「無農薬」

という表現について、5月に新潟で行われた新聞用語懇談会春季合同総会で質問しました。

(読売テレビ)「無農薬」「減農薬」などの表現は、「農水省消費・安全局表示・規格課」が2008年6月に出した「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」によると、「表示禁止事項」になっているようです。新聞や放送各社では「無農薬」という表現を使っていますか?使っていない場合は「言い換え」をどのようにされているでしょうか?

(テレビ朝日)文書は出回ってはいないが、考査の立場から言うと、「無農薬」は「言い換えて!」と注意喚起する。社内の勉強会では「『無農薬』という表現はマズイです」と毎回言っている。「無農薬」と言ってはいけない理由は、農水省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」に書かれているが、簡潔に言うと、

  1. 当事者が「農薬は使っていない。無農薬だ」と言っても、農地に残留農薬があったり、よそから風に乗って農薬が飛来し付着する恐れがある。

  2. 「有機」作物は厳密なルールが決まっているが、多くの国民は「有機」よりも「無農薬」のほうが「安全」というイメージを持っていること。

などから。CMや店の紹介、ポップアップの表示などは映さない・使わないようにしている。ただし、これは商業ベースで流通する「商品」に限っての話。「個人」が市民農園などで「無農薬」で作って「タダで提供する作物」には、当てはまらない。

(MBS)なるべく「無農薬」は使わないようにしている。「禁止」ではなく「控える」という感じ。生産者が「無農薬」と言うと、消費者は「残留農薬がない」「飛んで来ない」と思ってしまう。その都度、慎重に扱うことにしている。

(日本テレビ)「無農薬」という表現は使わず「農薬不使用」あるいは「農薬を使わない〇〇」という表現にすると、社内のイントラネットに上げている。

(毎日新聞)普通に「商品」を紹介するときに「無農薬」は使っている・・・。

ということでした。

(2019、7、5)

2019年7月 5日 17:46