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『道浦TIME』

新・ことば事情

7155「花々と花」

ことしの春、「桜の花」が満開の様子を指して書かれた原稿で、

「桜の花々が満開です」

というような表現が出て来て、「ちょっと待てよ」と思いました。

というのも私の語感では、

「花々」=「花の種類がたくさんある」

ことを意味し、

「単に『花』の複数形ではない」

のではないか?と思ったのです。

つまり「1種類の花」は、いくら数が多くても「花々」とは呼ばないのではないか?と。

例えば、「人」の複数形である「人々」や、「村」の複数形である「村々」(注・「ムラムラ」ではない)も、「人」「村」を「々」で繰り返してはいるので「複数」ではあるが、その一つ一つは「決して同じではない」ように思うのですね。すなわち、この繰り返し記号「々」が示す同音の反復は、

「多様な個性」

を示していると思うのです。それに対して「桜の」を断定された「ソメイヨシノ」は、

「多様性に欠ける」

ように思うのですね。

ということで、ここは、「桜の花々が満開」ではなく、

「(総体としての)桜の花が満開」

とすべきではないか?と思い、そのように原稿を直しました。

(2019、6、3)

2019年6月 3日 20:55 | コメント (0)