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『道浦TIME』

新・ことば事情

6857「中華料理」

6月の新聞用語懇談会放送分科会で、

「『中華料理』という表現はよろしくないので、『中国料理』とすべきだと、以前、聞いたことがあるのですが、各社『中華料理』を『中国料理』置き換えていますか?」

と質問したところ、幹事社から、

「なぜ『中華料理』は『よろしくない』んですか?」

と逆に質問が出ました。

「たぶん『中華思想』の『中華』を、『料理』の上に付けるのが『よろしくない』のかと・・・。」

と答えたところ、参加社の中から、

「2014年9月の用語懇談会・関東幹事会で、これに関してNHKから質問が出た。その際に『NHKは「中国料理」としている』と言っていた。『中華思想』との関連だったと思う。新聞社で『中国料理とする』と決めている社はなかった。大体『中華料理』。データベースでは、過去10年で『中華料理』=625件、『中国料理』=409件だった。『中国料理』は『首相動静』で出て来る。一般的には『中華料理』」

という詳しい回答が。これに対して名前が挙がったNHKは、

「『NHKことばのハンドブック』の132ページに『原則「中国料理」とする』と載せている。「『中華料理』がダメ」とは書いていない。料理の名前は、原則として『国名+料理』という呼び方にしている。しかし『中華鍋』『中華そば』は使っている」

という回答。そして、話を聞いていたら、どうやらこれは、

「昭和40年代」

に決められて、そのまま変っていなかったようで、なぜ「中国料理」という表現が出て来たかというと、そもそもは、

「支那料理」

という呼び方の「支那」がダメなので、その言い換えで出てきたようなのです。

「支那」というのは、日本が中国を占領していた時代の呼び名なので、中国側から、

「使ってほしくない」

という要請が出て使わなくなった経緯があり、石原慎太郎・元東京都知事などが使って物議を醸したこともありました。

しかし、世の中全般としては「中華料理」のほうが一般的。そこでNHKでも、現在「中国料理」から「中華料理」への変更について、検討中なのだそうです。

そのNHKに対して、

「『国名+料理』が原則とすると、『台湾』は『国名』ではないので『台湾料理』とは言わないのか?」

という質問が。これについては、

「『台湾料理』は『中国料理』には入らない」

という立場だそうです。

しかしもし「料理の名前」には「中華」ではなく「中国」という「国名」を付けるとなると、

「冷やし中華」

が、

「冷やし中国」

となってしまいますが、そんなの、聞いたことがありませんし、「国名+料理」とするのであれば「省」(つまり地方・地域)の名前を使った、

「四川料理」

も使わずに、「中国料理」と括ってしまうのか?と尋ねたところ、

「(調べていないのでわからないが)たぶん『四川料理』は使っていると思う。」

ということで、必ずしも徹底されているわけではないようです。

また、他局の委員から、

「テレビ東京系列で上海支局のデスクを務めた者に聞いてみたところ、あくまで個人的な見解だと言いつつ、「『中国料理』は『本格的なもの』で、『中華料理』は『中国料理をベースに日本で完成された大衆料理』だと思う」ということだった。」

という意見が出て、「なるほど」と思いました。

(2018、7、11)

2018年7月12日 19:34 | コメント (0)