Top

『道浦TIME』

新・読書日記 2018_035

『世界の未来~ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義』(エマニュエル・トッド、ピエール・ロザンヴァロン、ヴォルフガング・シュトレーク、ジェームズ・ホリフィールド、【聞き手】大野博人、原真人、国松憲人、朝日新書:2018、2、28)

20180313.jpg

「聞き手」の3人(大野博人・原真人・国松憲人)の名前の「末尾」が、3人とも「人」だあ!と、ヘンなところにビックリ。

2004年から読み続け書き続けて来たこの「読書日記」、なんとこの本で、ちょうどキリの良い、

「3000冊目」

となりました。パチパチパチ!「継続は力なり」ですね「三千」と言えば、

「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」

を思い出しますね、ワチキは。2004年、「読書日記」の記念すべき1冊目は、

『老兵は死なず~野中広務全回顧録』(野中広務・文藝春秋、2003,12,20)

でした。この間亡くなった「野中広務さん」の本だったのです。一つの時代が終わった、ということですね。「平成」という時代も、来年4月で終わりますし。

それはさておき、「エマニュエル・トッド」。

「民主主義」

は、いろんな体制を人類が試した末に辿り着いたのではなく、最初からあったのだと書いています。また現在の「教育」の問題点として、

「知性や創造性だとかを発展させるための教育ではなくなってきていて、むしろ、体制順応主義、服従、社会規範の尊重などを促すだけの教育になっていること」

「もっとも良い教育を受けた人たちが、どんどん知性的でなくなっていると思います」

ということを挙げています。フランスのマクロン大統領は、知識人『に』バカにされるのではなく、知識人『を』バカにしている。彼自身は「知識人」ではなく、単なる「優等生」なのだと。困ったことだ・・・。

日本などは、権威を重んじ、不平等を受け入れる『直系家族の価値観』が支える民主主義であると。今回の「財務省」なんて、まさにその「典型」なのでしょうね。また「民主主義はその根本において排外的で人種差別的な面があるのだ」とも述べています。

また、ピエール・ロザンヴェロン(コレージュ・ド・フランス教授=近現代政治史)は、「ポピュリズムと21世紀の民主主義」について話している。それは、各世代、各分野の代表が「選挙」によって選ばれて議会で話し合いをするのが「間接代表制」なのだが、行政権力が政治の中心を占めるようになり、

「選挙によって、ちゃんと代表されなくなる」

ことによって、「選挙制度」が機能しなくなり、有権者は「選挙」の投票に行かなくなる。その中で「多数派こそが人民の権化なのだ」と指導者が言い始めるとなると「ポピュリズム」。選挙で棄権が増えるのは、有権者の意識が低いのではなく、代表制そのものがさまざまな問題を抱えているからだと。さらに、ロザンヴェールはこう言います。

「投票日以外も、主権者であれ」

選挙の時だけ「主権者」ではダメなのだと。そんな「ラク」をしてはいけない。有権者は政権選択という単なる手続きではなく、期待している質が常にもたらされているかどうかのチェックが大事だと。そのために主権者は投票日1日だけでなく、常に主権者であるべきだと言います。

「統治」についてマキャベリは「重要なのは権力を獲得することより、維持できるかどうかだ」と言っている。その「維持」のテクニックは、迎合や腐敗、だまし・・・そうやって統治される者たちが囚人となるような空間を作り上げる、と。事実上"囚人"になって8か月経つ人もいますね。権威主義的体制の大きな特徴は、民主主義は受け入れるけど、社会が常に民主的であることが拒む点にあるのだという。うーむ。

そしてヴォルフガング・シュトレーク(社会学者)は、「グローバリゼーションと国際国家システムの危機」について語る。グローバリゼーションの加速によって増え続ける「資本主義社会の敗者に目を向けよ」と述べる。それが「国家の仕事」なのではないかと思う。ここ20年、「国際化することが、国民に恩恵をもたらす」という「謡い文句」で進めて行ったクローバリゼーションが、ちっとも国民に恩恵をもたらさない。ごく一部の者にだけ恩恵をもたらしている。「世界経済」は「実体経済」と「金融」に結びつきがなくなり、乖離してきていると。そして結論は、

「グローバリゼーションのスピードを落とすことが重要だ」

と、まとめていました。


star4

(2018、3、6読了)

2018年3月15日 10:00