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『道浦TIME』

新・ことば事情

6413「何十億か何千億か」

7月28日の深夜に、北朝鮮が大陸間弾道ロケット(ICBM)の打ち上げを行ったことを受けて、アメリカのトランプ大統領が、それを抑止できなかった中国に対してツイッターで文句を言っていました。

「中国にはこれまで何十億ドルも稼がせてやってるのに、何の役にも立たない」

というようなことを、英語でつぶやいたわけですね。この、

「何十億ドル」

の部分ですが、英語では、

「hundred of billions of dollars」

とありました。

「billion」=10億

「hundred」=「100」

ですから、単純に掛け算をすれば、

「hundred of billions」=「1000億」

となります。ただこれは、

「実際の数」

を表したのではなく、

「たくさん」

ということを表した表現なのではないか?日本語で言うと、たとえば、

「八百万(やおよろず)の神」

「八百万」が、「800万」という具体的な数ではなく「たくさん」という意味を表しているように。また、

「七色の変化球」「五色の短冊」「八尋(やひろ)」

等の「七」「五」「八」も、具体的に「7」「5」「8」を表す場合もありますが、やはり同じように「たくさん」を意味するような例もありますよね。

そういうふうに考えれば、「hundred of billions」を日本語に訳す場合は、

「『何十億』でも『何千億』でもOK」

とも考えられます。

しかしその場合、「数が大きいほうが良い」んじゃないかなと考えて、

×「何十億ドル」→○「何千億ドル」

として、7月31日の「ミヤネ屋」では放送しました。(その部分の吹き換えは、私。)

そういえば先日、東京の昭和女子大学・人見記念講堂で開かれた、

「第21回東西四大学OB合唱演奏会」

で、早稲田大学グリークラブのOB団体「稲門(とうもん)グリークラブ」の一員として私もステージに立って歌った、草野心平作詞・多田武彦作曲の男声合唱組曲『北斗の海』の中の歌詞に、

「億 兆億の雪が沈む」

というのがありました。この、

「億兆億」

というのも、

「数えきれないほど、たくさん」

という意味ですよね。

(2017、8、2)

2017年8月 3日 12:18 | コメント (0)