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『道浦TIME』

新・ことば事情

6383「愛好家か?愛鳥家か?」

7月13日のNHK正午のニュースで、ことし5月に「メジロ」を違法飼育していた疑いで家宅捜索を受けた、

「メジロの愛好家」

たちを、書類送検したというニュースを放送していました。

このニュース、覚えています。家宅捜索やメジロの押収が「5月」だったので、

「あ、これは『愛鳥週間』(バードウイーク)に合わせた、ある意味パフォーマンス的な摘発だな」

と思ったからです。実際、この時期は「愛鳥週間」の期間でした。

5月10日付の『産経新聞』によると、

「野鳥の国産メジロを違法に飼育した疑いがあるとして、大阪府警は10日、鳥獣保護法違反容疑で、府内の50~80代の愛好家男性12人の自宅を家宅捜索し、メジロなど約170羽を押収した。府警は12人から任意で事情を聴いており、違法な飼育と判明すれば今後、書類送検する方針。」

とありました。さらに、

「府警保安課によると、2月下旬、堺市内でメジロの鳴き声の美しさを競う『鳴き合わせ会』が開催されているとの情報が寄せられ、捜査を開始。4月までに複数回開かれていたことを確認した。鳴き合わせ会では成績に応じて賞品などが受けられ、好成績を収めたメジロが高額で取引されるケースもあるという。」

それから2か月もたって「書類送検」というのは、遅すぎる気がするのですが、どうなんでしょうか?

それはさておき、言葉の問題で気になったのは、このニュースでは、

「愛好家」

という言葉を使っていたことです。「鳥の愛好家」のことは、普通は、

「愛鳥家」

と呼ぶのではないでしょうか?それをあえて「愛好家」を使ったのは、

「愛鳥家を逮捕」

と言うと、

「『愛鳥家』全体のイメージが悪くなるので、それを避けたのではないか?」

と推測されます。

実際、法律では禁止されているのに、違法に飼育して「愛でていた」のだから、この人たちは「愛鳥家」であるのは間違いのないところなんですけどね。

「弁護士ドットコム」というサイトで、弁護士の渋谷寛さんが、この件に関して2年前に書かれています。(2015年3月26日)

それによると、メジロの鳴き声を好む愛好家たちは古くから多く、鳴き声を競う「鳴き合わせ会」は江戸時代から開かれていたそうです。そして、愛知県警が2015年3月中旬に、愛知県内に住むメジロ愛好家の男性22人(59〜79歳)を「鳥獣保護法違反」の疑いで「書類送検」したと発表したケースについて考察しています。

疑問はやはり、

「『鳴き合わせ会』という風雅な伝統があるのに、なぜメジロの捕獲や飼育は「違法」とされてしまうのか?」

ですよね。それは、

「『鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)』は原則として、野鳥の捕獲を禁止しており、『メジロ』も野鳥だから、原則として捕獲できない」

ということ。「『原則』禁止」で、「捕獲が認められる場合」は、

「学術研究や、鳥による生活環境にかかわる被害防止などのために、環境大臣または都道府県知事が許可を与えれば、捕獲は認められる」

とのことです。そして、「愛玩目的の捕獲」については、環境省が告示した基本指針(『鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針、2014年12月最終改正』)により、

「密猟を助長するおそれがあるため、禁止するとの方向」

が打ち出されたのだそうです。また、負傷した野鳥を保護するというのも「違反」だそうで、これは「鳥インフルエンザ」などの『感染症』に罹患する危険性から、人間や社会を守るという意味合いもあるそうです。

また、許可を得ずにメジロの捕獲・飼育をした場合は、

「許可なく捕獲すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金。また、許可なく飼育すれば、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」

が科せられるそうです。

つまり、「メジロの愛好家」は、原則「罰せられる」、

「野鳥であるメジロを愛好してはいけない」

ということなのでしょうか?兵庫・加古川の富豪・滝野瓢水(ひょうすい)が、大阪の知人が遊女を身請けしようとした際に、いさめて詠んだという、

「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」(三熊花顛『続近世奇人伝』)

なのかなあ。本当の「愛鳥家」は、

「メジロを家で飼育したりして、愛好はしない」

ということでしょうか。

(2017、7、16)

2017年7月17日 14:49 | コメント (0)