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『道浦TIME』

新・ことば事情

6195「規制線 イエローテープ」

テレビ朝日の「報道ステーション」を見ていたら、アメリカ時間の9月17日に起きたニューヨークの爆破事件で、現地・ニューヨークからの中継で

「現在『イエローテープ』は張られていないんですが、バリケードが張られています。」

というように、「規制線」ではなく、

「イエローテープ」

と言っていました。

これは「アメリカだから」かな。アメリカでは「イエローテープ」と言うのでしょうかね。「そのまんま」ですが。

そもそも、事件現場などに張られた「黄色いテープ」を「規制線」と呼ぶことについては、議論があります。「規制線」というのは、ああいった「(物理的な)テープ」を呼ぶのではなく、

「市内の30か所の交差点に、警察官300人を配置して、規制線を張った」

というような場合に使うのだというのが、従来の主張。

しかし、ここ10年ぐらいは

「『立ち入り禁止(KeepOut)』と書かれた黄色いテープ」

を指して「規制線」と呼ぶことが増えています。

「2008年11月」に書いた「平成ことば事情3432 規制線」に、そのあたりの事情は書きました。その際は「2007年7月」の新聞用語懇談会放送分科会の討議内容を載せましたが、その後の「用語懇談会」での討議内容は、以下の通りです。

*【2008年12月 放送分科会】

最近、事件・事故現場に警察が張り巡らす「立入禁止(Keep Out)」の黄色いテープのことを「規制線」と呼ぶケースを散見するが、本来の規制線とは違う使い方なので、載せるべきではないか?という意見に対して、「まだ、それほど広がっていないので、載せなくても良い」ということに。

*【2016年9月 放送分科会】

「規制線」は「張る」「敷く」「引く」どれが正しいか。(フジテレビ)

→(テレビ朝日)警視庁詰めしていた際、現場リポート等で「規制線が張られている」とよく使った。黄色いテープ状のものなので「張る」イメージ。

(フジテレビ)黄色いテープは、そもそも「規制線」なのか?

(ytv)読売テレビではテープを「規制線」とは言わないようにしている。

原則的にはテープについては「ここから先は立ち入りが規制されています」などと表現。

一方「規制線を敷く」とする場合は、重点範囲内の警察の捜査態勢を示すのではないか。

ただ、ニュース等で使った記憶はない。「付近で検問を強化」という感じか。

KTV)捜査関係者は黄色テープを「規制線」と呼んでいるのか?

KTV)先日の和歌山での立てこもり事件の際には使っていたと思う。あの事件では拳銃の射程の内と外を分ける境界としての意味を含んで、実際「規制線が張られている」感が強かった。

ということで、まだまだ完全に「許容」とまでは、いっていないような感じです。

なお、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領への抗議集会に集まった20万人(主催者発表。警察発表4万人)の市民を規制するために警察が張った「黄色いテープ」には、

Police Line(ポリスライン)」

と英語で書かれていました。「ハングル」で書かれたものも、きっとあるのでしょうね。今回は、たまたま「英語のもの」を目にしましたが。

(2016、11、7)

2016年11月 9日 22:28 | コメント (0)