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『道浦TIME』

新・ことば事情

6532「『姉妹都市』はなぜ『姉妹』か?」

2002年に書いた「平成ことば事情750姉妹都市」の続編です。タイトルは変わりましたが。(2016年3月に、ここまでメモしました。)

十数年来の疑問、この項の「タイトル」にもなった、

「『姉妹都市』は、なぜ姉妹なのか?」

という疑問が、解けたのです!ネットを見ていて出て来た答えは

「『都市』という単語が『女性名詞』だから」

とのことです!(本当かどうかは、わからないけど)

日本語には「男性名詞」「女性名詞」がありません(「名詞」に「性」がない)から、こういう視点はなかったなあ。もしそれが正解だとしたら、「姉妹都市」という名前は、日本古来のものではなく、

「外国由来の"翻訳語"」

ということですね。まあ、江戸時代は鎖国してたんだし、こういう概念は近代以降のものだろうから。あ、書いてあったわ、「平成ことば事情750姉妹都市」に。

「『日本国語大辞典・第二版』の『姉妹都市』の項には、『文化交流や親善を目的として外国の都市と特別に親密な関係を取り結んだ二つの都市。日本では昭和三〇年(1955)の長崎市とアメリカのミネソタ州・セントポールとが最初。』」

ということで、「戦後」ですね。

今、「都市」「男性名詞」「女性名詞」で検索したら、2013年7月3日の「日本経済新聞」の言葉のコラム「ことばオンライン」が出て来ました。タイトルはズバリ!

「『姉妹都市』、なぜ兄弟都市とは呼ばないのか?」

です。その記事によると、

「『姉妹都市』という言葉、なぜ兄弟都市とは言わないのだろう。調べてみると、外国語特有の名詞の『性別』に行きあたった。」

と記されています。そして、

「よく知られているのが、アイゼンハワー米大統領が1956年に提唱した『市民と市民のプログラム』だ。第2次大戦で荒廃した欧州を元気づけるため、国境を越えた市民同士の交流を盛んにして相互理解を進めようと呼びかけた。このとき用いた言葉が『姉妹都市』提携で、英語でシスターシティー(sister cities)とあった。なぜ、『ブラザー』ではなく、『シスター』だったのか。広くいわれている説は、『シティー』という英単語が『女性名詞』の流れをくむので『シスター』を当てたというものだ。中学校の英語の授業で、船(ship)を代名詞にするときは、『彼女(she)』で言い換えるようにと教わった人は多いだろう。国も『彼女』で受けることが多かった。フランス語やドイツ語では町は女性名詞。英語でもシティーは女性名詞だったことが遠い昔にあったのかもしれない。」

というような記事でした。やはり「名詞の性」か。しかし「1956年」のアイゼンハワー大統領の呼びかけからとすると新しいですし、『日本国語大辞典』の記述、「日本で初めての『姉妹都市提携』は『昭和30年(1955年)』」とは合致しませんね。既にあったものが、アイゼンハワー大統領の呼びかけで、さらに活発になったということかな。

ちょうどきのう(2017年10月25日)の朝日新聞・夕刊に、こんな見出しの記事が出ていました。

「60年の姉妹都市 継続ピンチ~大阪市・サンフランコ市」

これは、旧日本軍の慰安婦像が建てられたアメリカ・サンフランシスコ市の民有地が、市に譲渡されることになったので、姉妹都市の大阪市の吉村洋文市長が「慰安婦像をパブリックスペース(公共の場所)に置くなら、姉妹都市関係は解消する」と宣言しているのです。両市は「昭和32年(1957年)」に姉妹都市提携を結んだそうですが、先ほどの『日本国語大辞典』によると、日本で初めての姉妹都市提携は「昭和30年(1955年)」だそうですから、大阪市とサンフランシスコ市の姉妹都市提携は、「その2年後」ということですね。わりと早い時期。その間の年、つまり「昭和31年(1956年)」は、まさにそのサンフランシスコで、日本を含む49か国との間で、

「サンフランシスコ講和条約」

が結ばれ、戦後日本が国際舞台に戻ることができた年ですね。そろそろこの「姉妹都市」というものも、見直す時期に来ているのかもしれませんねえ。

ところで、実はもう一つ疑問があります。

「『男子校』同士でも『姉妹校』というのか?『兄弟校』なのでは?」

ということです。これに関しては実は、2002年に、当時、NHKの用語委員をされていた、元スポーツアナウンサーの原田邦博さんから、こんなメールを頂いていました。よく残っていたな。

『甲子園では、奈良の智弁学園と和歌山智弁学園が対戦することになりました。以前、甲子園の実況をしていたころ、「長崎の海星対三重の海星」という試合のラジオを担当したことがあります。大変だった・・・。

さて、この智弁学園の両校は、「姉妹校」でしょうか?それとも「兄弟校」でしょうか。

NHKでは「兄弟校」でいいことにしています。

「姉妹都市」「姉妹艦」など姉妹のつくことばは、原語の「都市」や「船」が女性名詞ということから「sister~」がつくため、翻訳して「姉妹~」となっています。「学校」も女性名詞ですので、その意味では「姉妹校」ですが、日本語として考えれば、名詞に男女の区別はありません。「キョーダイ弟子」「キョーダイ喧嘩」という例もあり、「兄弟校」が誤りであるとは言えないでしょう。

また「兄弟校」は新しいことばですが、「姉妹校」との使い分けは、学校により微妙に違うようです。おおまかに言うと、経営や母体が同じ場合は「兄弟校」、本来は別の学校で提携を結んでいる場合は「姉妹校」と呼んでいるようです。

同じようなことばに「姉妹都市」があります。これも同じ翻訳語ですが、中国と結ぶ場合は「上下」にこだわるので、すべて「友好都市」となるようです。またロシア語では男性名詞で「兄弟都市」になるとか。国内では「親子都市」「夫婦都市」というのもあるそうです。なおイギリス英語?では「ツイン(双子)タウン」と言うそうです。きょうはこのへんで、お「しまい」にします。』

ほおー!これはほぼ全て、網羅していて、謎は解明されていたんじゃないか!

15年間、それに気付かなかったということか・・・・?

お礼が大変遅くなりましたが、原田さん、ありがとうございました!

(2017、10、26)

2017年10月26日 21:01 | コメント (0)