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『道浦TIME』

新・ことば事情

6212「売り切れ中」

先日、富山での用語懇談会の出張で乗った特急「サンダーバード」車内アナウンスで、

「サンダーバード車内の自動販売機は『売り切れ中』につき、使用中止でございます。あしからずご了承ください。」

と。この、

「売り切れ中」

という表現、初めて耳にしました・・・・と思ったら、なんと、

「2002年2月」

にもう、これについて書いていました。(平成ことば事情569故障中)似たような表現の、

「故障中」

について書いたものの中でした。引用しましょう。

『休みの日に近くの書店をブラついていたら、

「この本は、売切中です。大変申し訳ありません。」

と書かれた札を見つけました。

「売切中」

きっと、取り次ぎに今注文を出しているところなんでしょう。そういった努力が感じられて、私は、言葉として正しいか間違っているかよりも"人間味"を感じたのですがね。』

ということでした。

「故障中」については、「2005年4月」にも「平成ことば事情2148故障中2」で書いていました。その「追記」を書きかけで「ほったらかし」でしたが、川崎市の西尾さんからメールを頂いていました。それをご紹介しましょう。

それによると、私が書いた、

『「故障(に付き、現在修理の準備)中」あるいは、「故障(に付き、現在メーカー修理の問い合わせ中で返事待ち)中」の(  )を省略した形と考えられないか?』

に対して、

『中には「故障(に付き、放置)中」と思えるようなケースもありますが、「ただいま故障しています。修理手配中(あるいは手配済み)ですので修理が完了するまでしばらくお待ちください」と良心的に解釈する人が 多いのではないでしょうか。少なくとも私はそのように解釈しています。たまに「修理中」という張り紙を見ることもあり、保守員が修理作業中の場合を除き、これは明らかにおかしいと思いますけど。

ちょうど、国立国語研究所が発行している『新「ことば」シリーズ』の 最新号に「故障中」という言い方は文法的に間違っているか?という 問答が載っています。

https://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/shin_kotoba_series/11_19/17/

 新「ことば」シリーズ17『言葉の「正しさ」とは何か』

該当コンテンツが更新されるかもしれないので、全文を添付ファイルに 引いておきます。ついでに、引き合いに出されている参考文献が手もとにありましたので、OCRでテキスト化しておきました。ご参考まで。 これによると、「故障中」は「~中」の典型的な用法からは外れているものの、文法的に間違っているとは言えない微妙な問題なのだと述べています。『「ことば」シリーズ』の問答集は、旧シリーズ(総集編もあり)でもそうでしたが、「正しい」とか「間違っている」とかを単純に断定しないのが特徴です。巷で話題の『問題な日本語』も同じスタンスですね。それだけ言葉の問題は奥深いということでしょう。』

というものでした。

西尾さん、10年以上も「ほったらかし」にしていて、すみませんでした。ずっと、

「準備中」

だったんです・・・なんて・・・。

(2016、11、23)

2016年12月10日 19:09 | コメント (0)