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『道浦TIME』

新・ことば事情

4111「折檻」

「児童虐待」

が、まるで流行語のように、毎日のように言われる嫌な世の中ですが・・・。

ただ、そういった報道の中で、

「昔はこんなことはなかった。なぜ『児童虐待』がなぜ増えたのか?」

というような論調を耳にすることがありますが、

「それ(=昔はこんなことはなかった)は、ちょっと違うのではないか?」

と思うことがあります。よく言われる「少年犯罪の増加」というのも、データで見るとそんなことはないのと同じように。

「昔も、子供への暴力はあった」

そのことの証言が、鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書)171ページ「トゥーランドット姫」に出てきました。

《生まれたときから、悪い子だと言われて母親に折檻されて育ったことが、このとき役にたった。私は、あきらかにマゾヒストとしての性格を身につけた。麻酔を倹約して手術をする海軍病院では、この性格は役にたち、軍医にほめられた。》

という一文です。この中に出てきた、

「折檻」

という言葉、これが現代では「虐待」「DVという言葉に置き換わっているだけではないでしょうか?もっとも、「折檻」という言葉自体は、現代では「死語」でしょうが。

Google検索では(819日)

「折檻」  = 591000

「児童虐待」= 958000

「虐待」=  46400000

DV」=3億97000000

でした。「折檻」、死語ではないですね。使われています、ネット上で。

鶴見さんは1922年生まれ。少なくとも「彼の子供時代」に「折檻」はあった、ということです。だからどうだ、ということはないのですが。

ただ、辞書で「折檻」を引くと、

「(前漢の朱雲が成帝を強くいさめてその怒りをうけ、朝廷から引きずり出されようとした時に檻(てすり)につかまったため、その檻が折れたという「漢書―朱雲伝」に見える故事から)きびしく意見すること。きびしくしかること。転じて、せめてさいなむこと。こらしめのための体刑を与えたりすること。切諌。」(『精選版日本国語大辞典』)

とあり、本来の意味は「(児童)虐待」ではなかったようですが、今は「体罰」を指すように思えます。しかも教育的な「体罰」ではなく「虐待」のイメージ「折檻」にはあります。

 

(2010、8、19)

2010年8月20日 13:01 | コメント (1)

コメント

私の母(40代)も毎日のように犬小屋にくくりつけられていたと言っていました。今では完璧な「虐待」ですよね・・。

投稿者: みかん 日時:2010年08月22日(日) at 00:13