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『道浦TIME』

新・ことば事情

4028「ブブゼラと鳴り物」

南アフリカワールドカップが開幕しました。

今大会の観戦風景で特徴的なのが、あのうるさい笛(?)、

「ブブゼラ」

ですね。すっかり名前を覚えてしまいました。

日本でも、1993年のJリーグ開幕当初は、「ホーン」と呼ばれる笛を吹き鳴らして応援する姿が見られました。私も「3連ホーン」、まだ持っています。でも「うるさい」とスタジアム周辺の住民から苦情が出たこともあって、ホーンの使用は禁止になりました。

日本の野球では、トランペットや太鼓など、いわゆる「鳴り物」の応援が普通ですが、アメリカのメジャーリーグでは、そういった「鳴り物」を使った応援はありません。文化的に見ると、日本のかつてのサッカーの応援やプロ野球の応援と、南アフリカのブブゼラを使った応援には共通点があると思います。

「鳴り物」の応援は、「参加意識」が高いですね。

「プレーはしていないが、『応援』という形式で『参加』している」

もちろん「スポーツ」としての「サッカー」や「野球」には参加していませんが、「イベント」「祭り」としてなら、「応援」という形で参加できます。「参加している感」を強めるために「鳴り物」を使うのではないでしょうか?

一方、メジャーリーグでは、

「『スポーツを観る』という行為が『ジャンルとして確立』している」

ので、観客は「鳴り物」を使った応援をしないのではないでしょうか。

「パブリック・ビューイング」でも、日本の場合はスポーツ・バーやスタジアムで「現場の疑似体験」「会場との一体感」を味わうために「応援」しますが、アメリカをはじめとした欧米では「パブリック・ビューイング」も、わりと静かに「観戦」しているような気がします。1998年のフランス・ワールドカップでのパリや、2006年のドイツ・ワールドカップでのフランクフルトの「パブリック・ビューイング」の観客の様子は、そんな感じでした。

日本、南アフリカ、それにブラジルなど南米の国々は、「イベントとしての参加型」応援をしている気がします。当然「応援すべき対象のチームがあるかないか」で、態度は変わってくるのですが。観戦の仕方は、ナショナリズムや民族性も反映されるのですかね?

そもそも「鳴り物」とは、たしか、「太鼓」のことであったと記憶しています。「鳴り物入り」は、それこそ「赤穂浪士の討ち入り」の際の「陣太鼓」のようなものではないか?また、歌舞伎などでの三味線や笛、落語での太鼓や笛といった「伴奏」も「鳴り物」でしょうね。

辞書(『日本国語大辞典』)を引いてみると、

「なりもの(鳴物)」=(1)楽器の総称。また音曲。器楽。(2)歌舞伎の下座音楽で、三味線を除いた鉦・太鼓・笛などの囃子または擬音の総称。寄席や見世物小屋などでは三味線をも含めていう。

とありました。歌舞伎では「鳴物」に「三味線を含まない」んだ!なんでかな?

6大会ぶりに、現地に行かずに日本でテレビ観戦していますが、結構、深夜まで観てしまって、寝不足気味です・・・。

(2010、6、16)

2010年6月22日 20:38 | コメント (0)