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『道浦TIME』

新・読書日記 2015_028

『大津波を生きる~巨大防潮堤と田老百年のいとなみ』(髙山文彦、新潮社:2012、11、30)

 

本が出てすぐに購入して「積んどく」になっていたもの。ノンフィクションライターとして高名な著者が、津波と闘い続けて来た岩手県宮古市の田老(たろう)地区を取材した。

「田老地区」と言えば、明治三陸大津波、昭和三陸大地津波で、二度とも町が消滅の危機にさらされ、「万里の長城」にも例えられる全長2,5kmもの「防潮堤」が築かれていたのだが、今回の大津波は、それさえも越えて来た。実は、津波が来た場合、三方は防潮堤なのだが、1か所だけ"波を逃がすため"に、わざと開けていた土地があった。しかし、昭和の大津波以降津波がなかったことからその記憶が薄れ、その「津波を逃がす土地」にまで家が建ってしまったため、今回、被害が広がったという。

先月(2月)中旬、その「田老地区」に行って来た。盛岡からバスで2時間かけて宮古、さらに三陸鉄道・北リアス線で17分、田老駅に降り立った。無人駅。海が、防潮堤が見える。その手前には家はない。更地。そしてその手前の道路は、土をいっぱい積んだ10トントラックが、ひっきりなしに走っている。ここもまた、「かさ上げ」が行われていた。「防潮堤」が、完璧に津波を防げるわけではないのだ。自然と人間の闘いの記録として(ちょうど現地にも行ったので)立体的に読むことが出来た。

(☆4つ)


star4

(2015、2、22読了)

2015年3月11日 21:18 | コメント (0)