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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_151

『踊り場日本論』(小田嶋隆・岡田憲治、晶文社:2014、9、29)

 

コラムニストの小田嶋隆氏と専修大学教授の岡田憲治氏の10回にわたる対談をまとめたもの。岡田憲治という人については、不勉強で知らなかったが、1962年生まれで早稲田政治学科の大学院卒。専門はデモクラシー論。ほぼ同世代だ。同じ頃キャンパスですれ違っていたか、あるいは同じ教室で授業を受けていたかもしれない。小田嶋さんも早稲田の教育学部卒で1956年生まれなので、少し年上だが、ほぼ同世代。

対談の内容、章別にみると「選挙のことば」「取り戻したい日本はあるのか、あったのか」「どんな社会にしたいのか」「あらかじめ失われた東京民」の4本です。

安倍・自民党の唱える「日本を取り戻す」の「日本」の姿って、一体何なのか?それが「ことば」でははっきり明示されていないが、輪郭からたどると、実は「そんな実態は無かった」もしくは「『取り戻したくない日本』が浮かび上がる」ということになる。「虚像」を取り戻そうとしているのではないか。

「どんな社会にしたいのか」の中の「自己責任と互酬性」岡田さんの発言で(116ページ)、「以前、ラジオで、小田島さんがヨットで遭難したジャーナリストの辛坊治郎さんの話をしていました。小型ヨットで太平洋横断中、遭難事故を起こし一時謹慎していた。小田島さんは原則論的に、事故や遭難はどうしても起こるんであって、起こることに対してみんなで負担し合って助け合うっていうことは当たり前だよ、自己責任論って、百歩譲って自分で言うならいいけど、それを他人から『自己責任だろ』って言われるのは変だろって。なるほどそうだなと思いました。この十何年かで、僕たちの社会は何でも自己責任と、平然というようになりましたね。」

と、急に辛坊さんの話が出て来てびっくりした。

たしかにその通り。「自己責任」は「不寛容(イントレランス)」な社会の表れである。自分の胸に手を当てて、じっと考えてみる。

なんか「内田樹さん」の本と、ちょっと似た雰囲気だなあと思いました。


star4

(2014、10、15読了)

2014年10月23日 10:43 | コメント (0)