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『道浦TIME』

新・ことば事情

5545「午後8時40分すぎ」

 

2014年8月29日の読売テレビのお昼のニュースの中で、兵庫県内でひったくりが8件相次いだというニュースがありました。その中に、こんな「時刻表示が出て来て、違和感を覚えました。

「きのう午後8時40分すぎ」

問題はこの「すぎ」です。これは「ごろ」とした方が良くないか?ということです。

「『すぎ』や『前』は『正時』にしか使えない」

と私は考えます。つまり、

「午後8時すぎ」「午後8時前」

というのは使えても、

「午後8時40分すぎ」「午後8時40分前」

というのは放送では使うべきではないと。

その理由ですが、「すぎ」に関して言うと、「午後8時40分すぎ」という場合には、

(1)「午後8時・40分すぎ」=「午後8時40分」

(2)「午後8時40分・すぎ」=「午後8時41分とか42分」

のように2種類の解釈ができることになり、正確性に欠けるからです。今回は明らかに(2)の意味で使っています。

そもそも「分単位の正確性が求められる」のでないのなら、「ごろ」としたほうが良いのではないか?と。

また「前」の場合は、より分かりやすく「午後8時10分」を用いますが、「午後8時10分前」という場合の解釈は、

(3)「午後8時・10分前」=「午後7時50分」

(4)「午後8時10分・前」=「午後8時8分とか9分」

の2通りできます。社会一般では(3)が正しい使われ方です。

最近、若い人の間で(4)の使い方をする人がいますが、放送では避けるべきです。

そもそも、「○時○分」というのは「時刻」です。その「時刻」を表す場合、「○時」というのが「本体」であり「○分」というのは「補助単位」でしょう。

それと共に「時刻」における「○分」は、

「正時からの経過"時間"」

を示しています。「時刻表示」の中に「時間」が紛れ込んでいることが、話をややこしくしているのだと思います。たとえば、

「午後8時10分すぎ」

という場合には、

「午後8時(=時刻)を10分(=時間)すぎた"時刻"」

を指しているのです。これを(2)と同じのように「午後8時10分・すぎ」と理解すると、

「午後8時10分(=時刻)を"何分(=時間)すぎたか"が、わからない」

ことになってしまいます。

「○時○分=時刻」は、「○時=時刻(=正時)」を「○分=時間」過ぎたかを表すことで「○時○分」という「時刻」になるのです。

さらに言うと、「○時」という「正時」とともに「すぎ」を使っても良いのは、

「午後8時半すぎ」

のような「半」という「準正時」です。(アナログ時計盤では、「12」の反対側にある「6」の位置ですね。)

しかし、同じ時刻を指す「午後8時30分」に、

「午後8時30分すぎ」

と「すぎ」を使っていいかというと悩みますが、「使わない」ほうが無難ですね。

うーん、ややこしいが、わかってくれましたか?

(2014、8、29)

2014年8月29日 18:28 | コメント (0)