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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_204

『舟を編む』(三浦しおん、光文社:2011、9、20初版第1刷・2011、10、30第3刷)

 タイトルの「舟を編む」の「舟」というのは、「言葉の海」に漕ぎ出していく道具としての「辞書」を「舟」に例えたもの。

「言葉の海を行く」という本が、見坊豪紀先生にあったっけ。

辞書編集者の話で、その辞書の名前は『ダイトカイ』。「クリスタルキング」は関係ありません、『大渡海』です!「言葉の海」を渡るのです!

 

女性誌『CLASSY』に200911月号から20117月号まで連載されていたとのこと。知らなかった!たまたま寄った、いつもとは違う書店で目につき、帯に書かれた「辞書」という文字が目に入って購入!一気に読んだ。辞書編集部と辞書編集者の話。なかなかこんな所に目をつけないぞ。あかん、また最後に泣いてしまった。これって、知り合いのIさんがモデルではないか?と思いました。巻末にIさんの名前はなかったけど、知り合いの辞書編集者の名前はありました。松本先生のモデルは、松井栄一(ひでかず)先生、あるいは簡治先生、見坊豪紀(ひでとし)先生でしょう、と感じました。

「粛々と」

がここにも出てきました。

「どんなお返事であろうと、覚悟はできています。粛々と受け止めさせていただく所存です。」(184ページ)

また、「下駄箱は死語か?」(188ページ)と驚く場面もおもしろかった。

「バミューダ。バミュるよねー。」(223ページ)という女子高生の言葉を真剣にメモする松本先生・・・俺だってメモるね。わかる、わかる。

「言葉とは、言葉を扱う辞書とは、個人と権力、内的自由と公的支配の狭間という、常に危うい場所に存在するのですね」(226ページ)

これは「深い」ですねえ。そういう面はありますよね。これは田中克彦先生の本を読めばいいな。

「きみと まじめさんのような編集者に出会えて本当によかった。あなたたちのおかげで、わたしの生はこのうえなく充実したものとなりました、感謝という言葉以上の言葉がないか、あの世があるならあの世で用例採集するつもりです。」(256ページ)

主人公は「真締(まじめ)」という名字の男。こんなことを辞書編纂者に(つまり責任者に)言われたら「冥利に尽きる」よね。泣けますよ、これは。泣けた!

「君に会えて、本当に良かった。私の生はこの上なく充実したものになりました」

これを最後に言われたら・・・と思うと・・・ねえ。そして、

「感謝という言葉以上の言葉がないか、あの世があるならあの世で用例採集するつもりです」

というギャグ、今わの際のギャグ。でもホンネでしょうね、本人は。ギャグでもなんでもない。だからこそ笑えて泣ける。

あ、こんなに書いちゃって、よかったんだっけ?

兎に角(あえて漢字で書きたい気分)、読むべし!

 

 


star5

(2011、11、20読了)

2011年11月26日 12:16 | コメント (0)