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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_180

『宮沢賢治のことば』(本田有明、サンマーク出版:2011、9、30)

 

9月に、パナソニック合唱団(旧・松下中央混声合唱団)の演奏会に「朗読」で参加した。「朗読」は、曲の前か間もしくは後ろに読むものかと思っていたら、楽譜が送られて来て見てみると、なんと実は「曲の中で読む」、つまり「レティタティーボのソリスト」のような位置づけだったのでビビった。しかし、本番ではまずまず納得のいく「演奏」(=朗読)ができたのでホッとした。

その曲というのが「宮沢賢治最後の手紙」というのもの。東日本大震災を応援するための曲で、岩手県出身の宮沢賢治の「最後の手紙」(亡くなる一週間ほど前に書かれたもの)にメロディーをつけたものだった。それで改めて、「宮沢賢治」に興味を持っていたら、この本を見つけた。

賢治は、生まれる2か月前に「明治三陸大地震」(1896年=明治29年)で津波が三陸地方を襲っている。そして亡くなる半年前に、今度は「昭和三陸大地震」(1933年=昭和8年)が起こっている。つまり、わずか37年の生涯の初めと終わりに、故郷・岩手を含む東北地方に歴史に残るような大きな自然災害が起きていたのだ。また、彼の生涯の37年間は、様々な天変地異が起こり、東北地方は飢饉に襲われていた。その中で自然とともに生きることの意味(農業を通じて)、人のつながりの意味、純粋さを求めた賢治は、生涯独身であった・・・。

今年また三陸を大津波が襲った。「昭和三陸地震」から78年が経っているが、賢治の時代と現代はつながっているのだと思った。その気持ちを持って賢治の作品を読んでいくと、より一層、宮沢賢治が生き生きと、今の世の中で輝きを放つような気がする。過去の人ではなく、まさに今を生きる人として。

 

 


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(2011、10、5読了)

2011年10月23日 13:16 | コメント (0)