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『道浦TIME』

新・ことば事情

4418「なでしこ関西上陸」

 

平成ことば事情554で「関西上陸」について書いたのは2002年2月6日でした。その時は、

「ドン・キホーテが関西初上陸を果たします。」

という一文を取り上げ、

「"上陸"という言葉は、海から陸に上がる時、つまり、主に海外から進出する時に使うのではないか?」

ということを書いていました。

で、あれから9年、今回またもや「関西上陸」が出てきました。先日女子ワールドカップで優勝して世界一になった「なでしこジャパン」です。

「なでしこ関西上陸」

しかしここで今回は、

「ちょっと待てよ」

と思ったのです。

「東京から上陸はしない、と以前書いたが、『空路』なら『上陸』になるのではないか?『着陸・離陸』。船と飛行機が用語で似ているのは『陸を離れる』という点において、交通機関として共通点があるからではないか。」

「でも『海から陸』に『上がる』から『上陸』なので、『空から陸』には『降りる』ので、『上陸』ではなく『降陸』では?そんな言葉はないか。」

 

なかなか一筋縄では行きそうもありません。ここで、「上陸」で思い出すのは、

「台風」

です。「台風」は「海から」上陸するのでしょうか?それとも「空から」でしょうか?

「台風」は「気象現象」ですから、原則海にはなく、「空」にあります。では、

「『上陸』ではなく『着陸』」

なのではないでしょうか?

「台風が徳島県に着陸しました」

うーん、明らかにおかしい。「着陸」は「そこがゴール=目的地」であることが必要な感じがしてきました。(たとえ「不時着」でも。)そして、「台風」は「陸の上」に来ても「陸=地面」には降りていない、陸には着いてないので「着陸」にはあらず、文字通り、

「陸の上に上陸」

なのでしょうか。うーん、屁理屈。

台風はそのもの自体は「空」にあっても、「地上=陸地部分」に大きく影響を与えるので、「陸の上空」にきたら「上陸」と呼ぶのでしょう。広い意味での「上陸」なのでしょう。

とここまで書いて9年前に書いたものをもう一度読んでみると、

「ちなみに空からやってくる時は『着陸』ですね。」

「空から」について一言触れているが、「台風」に関する考察はありませんでした。

 

(2011、7、25)

2011年7月26日 18:00 | コメント (0)