Top

『道浦TIME』

新・読書日記 2010_221

『唱歌と国語~明治近代化の装置』(山東功、講談社選書メチエ:2008、2、10)

 

「唱歌」に興味があったので読んだ。著者は大阪大学出身。工藤真由美先生の教え子とか。1970年生まれということは今年40歳。もしかしたら、私が工藤先生のお隣(お向かいでしたっけ)の真田先生の研究室に通っていた10年前に、すれ違っていたかもしれませんね。

大変勉強になった一冊。いくつかメモを。

*「国語教育から生まれた唱歌。唱歌は徳目主義の実践として活用された。」

*「明治三○年代は国語の成立共に唱歌の変貌が顕在化した時期でもあった。」

*「徳目主義は結果的に、唱歌が装置化する誘因として機能したのである」

つまり、「装置としての唱歌」だったのか。

*「『蝶々』は『胡蝶』という歌詞で愛知師範学校付属幼稚園で歌われていた。」

*大和田建樹は『鉄道唱歌』の作詞者。写真を見ると鈴木ヒロミツに似ている。『新体詩抄』の影響があり、「七五調」ではなく「七六調」。『鉄道唱歌』以外にも、『尋常小学帝国唱歌』『富士唱歌』『戦争唱歌』『上田周遊唱歌』『愛知県唱歌』『十二月唱歌』『行進唱歌』『堺市水道唱歌』など54もの「唱歌」を作詞している!その一方で、「♪夕空晴れて秋風吹き...」で知られる『故郷の空』の作詞も!

*「唱歌」は「暗記」に使われた!

*『幼年唱歌』が刊行された1900(明治33)年は、「国語」が小学校教科として成立した年。日清・日露戦争のはざま(間)。

*南方で歌われていた『アイウエオの歌』。1945年公開の幻のアニメ『桃太郎 海の新兵』の中で歌われている。手塚治虫が『アイウエオの歌』にヒントを得て、『ジャングル大帝』で動物達に歌わせるシーンが取り込まれたそうだ。

*「童謡」は、「唱歌」に対する抵抗運動として生まれた。だから「童謡・唱歌」とひとくくりにするのは、本来おかしい。

などなど、大変勉強になりました。

 


star4

(2010、11、20読了)

2010年11月24日 12:49 | コメント (0)