Top

『道浦TIME』

新・読書日記 2010_059

『誰が誰に何を言ってるの』(森達也、大和書房:2010、3、5)

同じ著者の『マジョガリガリ』と同じような、黄色一色の目立つ表紙。タイトルはまるで「井上陽水」の曲のようだ。

内容は主に「監視カメラ」。そしてそれに対して何も感じないどころか、「善意」でそれを推進する人たちと、それに何も感じない人たちへの警鐘。本当にオーウェルの『1984』的な世の中になってしまったなあ、日本も。1984年から26年、四半世紀が経って。

私はタバコを吸わないのであまり意識しなかったが、飛行機へのライターの持込は「1個に限定」っていうのも、確かにヘン。ライターが危険だと言うなら、「1個も持ち込ませない」のが正しいのに、なぜ1個持ち込める?1個が大丈夫なら2個もOKでしょう。一人で100個とかいうのはおかしいにしても。それを指摘すると係官は「ダメなものはダメ」的に「職務に忠実」な働きをした後に、そっと著者に耳を寄せて小声で、しかし憤然と「私もおかしいと思ってるんです!」と囁いたというが・・・これは実話かな?創作かな?

また電車の座席や公園のベンチにが「長いす」ではなく「一人一人がきっちり座れるように区切られた」背景には、そこで寝そべったりする人を物理的に「排除」しようとする意図が。たしかにちょっと、気に食わない。

日本の犯罪は減少しているのに、監視カメラは増え、「厳罰化」の空気が強まっている。「ニワトリが先か、タマゴが先か」の議論と似てはいるが、「日本の犯罪件数は減っている」というのは客観的事実のようだ。

「地獄への道は、善意で舗装されている」

この言葉は確かにそうだと思う。また最後に出てきた、ナチス・ドイツでルター派の牧師だった、マルティン・ニーメラーの詩は印象的だった。

 


star3_half

(2010、3、16読了)

2010年3月17日 11:59 | コメント (0)