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『道浦TIME』

新・読書日記 2015_136

『日本は戦争をするのか~集団的自衛権と自衛隊』(半田滋、岩波新書:2014、5、20)

 

 

去年(2014年)の7月1日、「集団的自衛権」が閣議決定される「前」に出された本。

読んでいてボールペンで赤線(傍線)を引いた部分を、抜き書きする。

・「太平洋戦争で亡くなった二百三十万人のうち、六割が餓死だったとの説がある。(藤原彰『餓死(うえじに)した英霊たち』青木書店)物資供給できないほどの無謀な作戦は『十死霊生』の特攻と共通するもので、戦争を指導した軍部の『人災』による『野垂れ死に』を隠すため『英霊』として靖国神社に祭り上げ、責任追及の矛先をかわした。」(5~6ページ)

・「ケリー、ヘーゲル両氏による千鳥ヶ淵戦没者墓苑への献花は、アーリントン墓地に近いのは千鳥ヶ淵戦没者墓苑であるとの米政府の考えを示し、安倍首相の『靖国参拝は極めて当然』との主張を否定するメッセージであった。」(6ページ)

・「(オスプレイ)製造元のボーイング社は『マイナス十七度からセ氏五十度まで極端な温度の中でのテストをし、合格している』(10ページ)

・「安倍首相は二0一三年四月二十三日の参院予算委員会で『村山談話』について聞かれ、『侵略という定義は学会的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う』と答弁した。明らかに間違っている。一九七四年の国連総会決議3314は『侵略とは、国家による国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対するまたは国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であって、この定義に述べられているものをいう』と侵略の定義を明快に示し、条文で具体的な侵略行為を挙げている。日本は、もちろん賛成し、全会一致で決議された。」(14ページ)

・「『日米同盟の強化』を繰り返す安倍首相。その実現のために首相自身が最大の障害になっている。負い目があるからこそ、米国が望むものを差し出す必要に迫られる。それこそが、米国が長年にわたり、日本に求めてきた集団的自衛権と考えているのではないのか。」(18ページ)

・「海上保安庁の巡視船は重油で動くディーゼル・エンジンであるのに対して、海上自衛隊の護衛艦は軽油のガス・タービンエンジンというようにエンジン構造が異なるため、海保が護衛艦を受け取っても使いこなせない」(21ページ)

・「もっとトンチンカンなのは、海保に即応予備自衛官を編入させるとの主張だ。即応予備自衛官は約五千八百人いるが、すべて陸上自衛官である。」(22ページ)

・「二0一二年四月に発表した『自民党憲法改正草案』は、驚くべき内容である。現行憲法の特徴である『国民の権利や自由を守るため国家や為政者を縛るための憲法』は、『国民を縛るための国家や為政者のための憲法』に主客転倒している。近代憲法の本質が権力者が暴走しないように縛る『立憲主義』をとっているのに対し、自民党草案は権力者の側から国民を縛る逆転の論理に貫かれている。(25~26ページ)

・「国会論議を経ないで閣議決定だけで憲法の読み方を変えてよいとする首相の考えは、行政府である内閣の権限を万能であるかのように解釈する一方、立法府である国会の存在を無視するのに等しい。憲法が定めた三権分立の原則に反している。」(30ページ)

・「首相の政策実現のためには、これまでの憲法解釈を否定し、独自のトンデモ解釈を閣議決定する行為は立憲主義の否定であり、法治国家の放棄宣言に等しい。『首相によるクーデター』と呼ぶほかない。」(32ページ)

第1章の中だけで、たかだか300ページぐらいの中に、これだけある。全部書いていると、一冊全部、抜き書きになってしまうので省略する。第2章は「法治国家から人治国家へ」、第3章「安保法制のトリック」、第4章「『積極的平和主義』の罠」、第5章「集団的自衛権の危険性」、第6章「逆シビリアンコントロール」。読んでください。

 


star4

(2015、8、14読了)

2015年10月23日 16:10 | コメント (0)