Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5410「ツバメの巣」

ツバメの季節・・・は、もう2か月ほど前に終わっちゃったけど、その時期に見かけた出来事を。

毎年、駅の表示看板、と言っても厚さが30センチほどある、中に蛍光灯が入った大きな看板なんですが、その上の部分に、ツバメがいつの間にか巣を作っていました。その巣の下には、

「フンにご注意ください」

と、いつも書かれていました。駅員さんも色々と気配りが大変です。

ところが、今年は駅の改修工事があって、看板が変わってしまった。しかも、ちょうど巣作りする時期には看板がまだ完成していなくて、ツバメが巣を作れそうな部分が見当たりませんでした。

一体どうするのだろうか?と思っていたら、駅の改修が済んだ部分に新たに設置された、

「ATMコーナー」

の看板の「ATM」という文字の内の、

「T」

の上に巣を作っていたのです!確かに「A」や「M」では安定して巣を作れる部分がありませんものね!ちゃんと考えてるんだなあと感心。また、よくそんな所を見つけるなと感心。

しかし、数日すると、そこに作りかけていた巣がありません。どうしたんだろう?と思っていたら、今度は同じ駅の構内の反対側にある、

「生活の木」

という名前の生活雑貨のお店の照明兼看板の、なんと、

「木」

という文字の上に巣を作ろうとしたのです!!「生活の木」の「生」でも「活」でも「の」でもなく、「木」という文字の上に!!ツバメ、漢字が読めるんと違う??と思いました。

しかし、しかし!

翌日、もう巣はできたかな?と思って見ると、なんとこのお店は、照明兼看板と天井との間をダンボールで塞いで防衛しているではありませんか!

これではツバメは巣を作れません。

たしかに、店の入り口の看板の上に巣を作られると、真下の入口がフンだらけになってしまって、お店もお客さんも、えらい迷惑ですから仕方がないですね・・・。

しかし、ツバメはくじけません。というか、どこかに巣を作らなければなりませんからね。

もうしばらく、仕事帰りに観察していたら、完成した新しい駅の看板の上に、ちゃんと巣が出来ていました。よかった。

ツバメを見ると、斎藤茂吉の有名な短歌を思い出します。

 

「のど赤き つばくらめ一つ 梁(はり)にいて 垂乳根の母は 死に給うなり」

 

「ツバメ」は「ツバクラメ」だったんですね。そこから「クラ」が脱落して「ツバメ」になったと。「翼」が「黒い」から、そう呼ばれたんでしょう。「ツバクラメ」の「メ」は、「スズメ」「カモメ」の「メ」。「鳥類に共通の語尾」ですね。もう一つ「カラス」「ウグイス」「カケス」「ホトトギス」の「ス」も「鳥類に共通の語尾」ですが、「メ」の鳥のほうが、「ス」の鳥よりも小さいような気がします。

「平成ことば事情4052『すな』『こな』の『な』」もお読みください。

(2014、7、16)

2014年7月17日 10:21 | コメント (0)