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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_175

『福島 原発と人びと』(広河隆一、岩波新書:2011、8、19)

 

 

広河さんといえば、フォトジャーナリスト。チェルノブイリも長く取材し続けてきた人だ。昔、日本テレビの「きょうの出来事」などにも、よく出演されていたように思う。

3月15日、福島県南相馬市の「原発20キロ圏」の入り口で、

「原発爆発この先立入禁止」

の看板の前で、防護マスクに線量計を持った著者。毎時4マイクロシーベルトを示していた地点の見開きのモノクロ写真。この本は「新書」だが、その写真は大きく、私の目に、心に迫ってくる。本質的にこれは「(新書判の)写真集」である。

フリージャーナリストの人たちは、事故発生からすぐに、線量計を持ち、現地へ駆けつけている。その様子もよくわかる。そして後半には、長く取材してきたチェルノブイリの様子が。

「100ミリシーベルト以下のところでは危険性が証明されていないから、安全なのだ」という山下教授たちの言葉は、やはりおかしい。

「100ミリシーベルト以下の場所だからと言って、安全が証明されていない限り、そこは危険とみなさなければならない」

同じ事象でも、それをどう見るかによって、全く正反対の(いわゆる「真逆」の)結論が導かれる。命を守るためには「楽観的」過ぎてはいけないのだ。だからといって「悲観的」になりすぎても意味はない。冷静に事象を見つめ、考え、行動することが必要だ。

 


star5

(2011、9、17読了)

2011年10月 8日 11:49 | コメント (0)