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『道浦TIME』

新・読書日記 2011_116

『携帯の無い青春』酒井順子、幻冬舎文庫:2011、6、10)

 

うーん、いつの間に酒井さんはこんなにいっぱいエッセイを書いているのだろう?次から次に本が出ている気がする。まあ、それがお仕事だから当たり前と言えば当たり前なのだが・・・。今回、これを読んで「あ!」と思ったのは、

「ガーリ-」

という言葉が雑誌「オリーブ」によって生まれたというあたり。「普通のことば」として「ガーリー」が使われていた。私にとっての「ガーリー」は、元サッカー・イングランド代表で名古屋グランパスにも来たWカップの得点王「ガーリー・リネカー」しかいないのだが。平成ことば事情4035「ガーリーな生活」で書くまで気付かなかった言葉です。

しかしこの本では、

「『オリーブ』という雑誌の、役割。それは「ガーリー」という概念を、世の中に認識させたことでしょう。ひな菊の花束、ガラスの小瓶、刺繍のハンカチ、シルクのリボン...。オリーブの洗礼を受けた私達は、すでに少女ではなくなった今も、どこかでガーリーさに対する愛着を抱きながら、生活を送っているのです。」(66ページ「オリーブ」)

「すでにオリーブが休刊となってしまった現在も、ガーリーなファッションや雑貨は人気がありますが、その主体となっているのは、実は少女ではなく大人です。本物の少女は『ガール風』になどしなくとも、十分に少女。宝塚の男役が必要以上に男らしく振る舞うように、既に少女ではない大人の女性は、少女以上にガーリーにこだわるのでした。」

「私達のガーリー好きは、きっとこの先も治らないだろう。が、せめて"白髪混じりの三つ編み"だけは絶対にやめよう!」

 

これはある種、女性の"ピーターパン症候群"では?幼児性の名残、しっぽではないか。

そして、酒井さんといえば「○○っぷり」。今回も「ミニっぷり」「興隆っぷり」が出てきました。

 

「ピンク・レディーの衣装は超ミニのワンピースであったわけですが、そのミニっぷりよりも、小林カツ代のエプロンのようなワンショルダーのストラップに、わたしはドキドキ感を覚えていました。」(16ページ)

「今や、大学によさこいソーランサークルがあるほどの興隆っぷりを見せているあの踊りが、これほどまでに全国に広まった理由は、やはり日本人の土俗的心理、つまりはヤンキー心を刺激する作りになっているからでしょう。」(74ページ)

 

堂々とした「使いっぷり」です。また、

 

「客席にいるのは、うっすらと中年がかった人達です。」(22ページ)

 

うーん、このあたり、うちの妻に言わせると「底意地の悪さを感じる」そうですが、そこが人間としての酒井さんの文章の魅力だと思います。自分も含め客観的に見ているところが。

 

 


star4

(2011、6、18読了)

2011年6月26日 17:05 | コメント (0)