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『道浦TIME』

新・ことば事情

6095「50年に一度の大雨」

7月13日の天気予報の中で、九州地方が、

「50年に一度の大雨」

という表現が出て来ました。その後の蓬莱さんの予報では、

「24時間雨量が200ミリを超える」

と言っていました。「50年に一度」=「半世紀に一度」というのは、

「めったにない」

という「希少性(頻度」と、

「そのぐらいすごい量の大雨」

という「規模の大きさ(量・程度)」を表しています。しかし、「ちょっと待てよ」と。この言葉、

「最近、よく耳にする気がする」

のです。「50年に一度ではない」のではないか?と。

調べてみましょう。「50年に一度」で検索すると「気象庁」のサイトが出て来ました。

「気象等の特別警報の指標」というものです。そこには、

「50年に一度の値とは?」

という説明がありました。それによると気象庁は、

「平成3年(1991年)以降の観測データを用いて、50年に一回程度の頻度で発生すると推定される降水量及び土壌雨量指数の値」=「50年に一度の値」

を求め、これを「大雨特別警報」に用いているとのことです。その値は、

「過去50年の間に実際に観測された値の最大値というわけではありません」

とも記してあります。ん?「過去50年に実測された最大値」ではない?そうすると、どうやってその頻度と規模を「推定」するのでしょうか?「データに基づく」とあるではないですか。これが「第一」の疑問。さらに、この値は、

「日本全国を5km四方に区切った領域(「格子」と呼びます)ごとに算出」

してあり、

「この値は、毎年更新します」

とのことです。そして、

「『50年に一度の値』以上となる格子がいくつ出現するかを、大雨特別警報の指標としています」

ということですから、

「地域によって『50年に一度』の『量』は違う」

のですね。だからその後に、

「『50年に一度の値』の大小が、特別警報の発表判断に大きく影響するものではない」

とあります。なんだか、ややこしい。

さらにその後の「指標を満たす主な事例」の一覧表を見てみると、「50年に一度の大雨」は「1993年から2012年までの間」に、「13回」記録されています。つまり、

「20年間に13回、『50年に一度の大雨』が降っている」

のです。このペースで行けば、「50年経ったら『32、5回』大雨が降る」ことになります。「100年」ならば「65回」です。

これって「論理矛盾」と言うか、素直に聞いて意味が分かりますか?

私は、よく分かりません。単純に考えれば、「50年に一度の雨」は、

「100年に2度」

しか降らないんじゃないでしょうか?確率論的には。それが「65回」って・・・・。

直近の5年でも(2013年から2016年はデータが載っていませんが)、「2011年」に「3回」、「2012年」に「1回」の「計4回」、「50年に一度大雨」が降っています。おかしいですよね?

そもそも「大雨」を「頻度」で示すのに無理があるのでは?「頻度」は「確率」であり、「規模」ではないのです。「大雨の危険性」を示すには「規模」を言うのが分かりやすいと思うのですが・・・。いかがでしょうか?

(2016、7、13)

2016年7月13日 22:20 | コメント (0)