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『道浦TIME』

新・読書日記 2015_003

『会社が消えた日~三洋電機10万人のそれから』(大西康之、日経BP社:2014、5、20第1刷・2014、6、24第4刷)

 

三洋電機が消えた。なぜ?どのようにして?

松下電器から分かれて、独自のスタンスで創業家・井植家のもと2兆円企業となったが・・・。

三洋を巡ってメインバンク住友銀行と、松下電器(現・パナソニック)はどう考え、どう動いたか?井植に招かれて会長となったジャーナリストの野中ともよは、どう闘ったか?

一連の動きをまとめた後、三洋電機を辞めたり、辞めさせたりした人々のその後の様子を追っている。

私の友人にも三洋電機の社員だった人がいる。会社を辞めて、東京に出て頑張っている。そういった出来事の背景や、それらは、日本をとりまく世界の動きの中の一つであるということも、この本を読んでよく分かった。

「三洋」の中で一番価値を認められていたのは「電池」であった。それも「ハイブリッド車」に載せる「リチウム電池」。これは非常に扱いや配合などが難しいらしく、三洋はトヨタをはじめとした自動車会社に電池を納めていた。それをパナが狙う。というか三洋がつぶれてその電池を狙った韓国の会社に乗っ取られたりしたら、話は三洋のみではとどまらずに、トヨタにまで及んでくる。絶対に外国の企業に三洋の電池技術を持って行かれてはならない・・・いろんな絡みがあるのですね。

しかし三洋を呑み込んだパナソニックは、最初「三洋ブランドは残す」と言っていたのに、次第にその約束を反故にしていく。そもそも、創業家の「松下」という名前でさえ消して「パナソニック」にしたのだから、「三洋」を残すわけがないということである。「創氏改名」的な"無念"の思いが、「元・三洋」の人たちにはあったのではないか。合併とか吸収とか併合とかという動きは、想像以上に難しいのだなということも感じられた。


star4

(2015、1、7読了)

2015年1月20日 20:28 | コメント (0)