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『道浦TIME』

新・読書日記 2012_028

『「上から目線」の構造』 (榎本博明、日経プレミアムシリーズ:2011、10、1第1刷・2011、11、1第2刷)

 

冷泉氏の本と合わせたかのように並んでいた「上から目線」に関する本。こちらは(日経プレミアシリーズという性質上)、どちらかと言うと「ビジネストーク」などの分野で「上から目線」と思われないようにするにはどうすればよいか?というような具体策が書かれている。この中で、ひとつ「へえー」と思ったのは、「対人恐怖」という言葉は日本で生まれたと書かれていたこと。つまり外国はそのような症状はないというのだが、ホントかな?

 

 

 

 

(追記)

アメリカ在住のI先輩からメールが届きました。「「対人恐怖症」についてはよく誤解されている、以前くわしく書いたものを参考までに転送します、とのことでしたのでご紹介させていただきます。「ボストン読本」というコラムの中からの抜粋だそうです。少し長めですが、転載します。

 

「アメリカには、米国精神医学会が刊行する『DSM-IV』(『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版』)という分厚い本がある。精神科の医者がでくわすような病気ならなんでも書いてある、精神疾患の診断基準である。この本の巻末に付録として、「文化依存症候群の概要」という項目がある。

文化依存症候群というのは、ある地域・文化・社会だけにでる特殊な精神疾患で、その文化と深く結びついているものである。そこには、恐ろしい経験をして魂が身体から抜けてしまったために、心身に異常がでるという中南米の「ススト」、錯乱して暴力をふるい殺人や自殺にいたるマレーシアの「アモック」、怒りが積もって不眠・不安・呼吸困難などの症状がでる韓国の「火病(鬱火病)」など、不思議な病気がいろいろと記載されているが、そのなかに、「taijin kyoufusho」というのがでてくる。「対人恐怖症」である。日本に特徴的だと書いてある。

ということは、アメリカに対人恐怖症はないのか?アメリカ人はみな、社交的で、恥かしがり屋がいないのか?と、思うかもしれないが、それは早合点である。アメリカにも、人付き合いが苦手で苦手で、社会生活に支障を及ぼす人もけっこういるのである。そういうのは、DSMIVでは、

「社会恐怖症」とか「回避性人格障害」

というところに分類されている。

それによると、社会恐怖症とは、人前で恥をかくのではないかと極端に恐れたりパニックになったりすることで、アメリカ人の3%~13%もいるという。ある調査によると、20%の人が人前で話すのを過剰に緊張すると答えている。思いのほか、多いではないか。回避性人格障害とは、人から嫌われたり批判されたりするのを極端に恐れるために、人と会うような社会的活動を避ける。さまざまな人格障害の中では、一番多いケースらしい。

じゃあ、「対人恐怖症」は、日本に特徴的ではないじゃないかと思って、よく読んでみると、「社会恐怖症」や「回避性人格障害」は、「自分が恥をかくのではないか、嫌な思いをするのではないか」と恐れるのに対し、「対人恐怖症」は、「自分の行動や肉体上の欠陥が、他人に嫌な思いをさせるのではないか」と恐れることだと、細かく区別している。日本で、素人が普通に「対人恐怖症」というときには、そこまで区別せずに、「社会恐怖症」も「回避性人格障害」もひっくるめているような気がする。

とにかく、「欧米の人は個人主義だから、人前で自分の考えを述べるのを恥かしく思うような人はいません。日本人は回りのことばかり気にして個がないから対人恐怖症が出ます」などというのは俗説で、まるで嘘だということが分る。

 

なるほど、。確かに日本の「対人恐怖症」と「まったく同じ」ではないけれど、「社会恐怖症」や「回避性人格障害」といった「似たような症状」は外国にもある、ということですね。I先輩、ありがとうございます!

(2012、3、4)

 


star3

(2012、1、31読了)

2012年2月27日 09:25 | コメント (0)