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『道浦TIME』

新・ことば事情

4052「『すな』『こな』の『な』」

 

呉智英さんの最新刊(だと思う)『言葉の煎じ薬』(双葉社:2010620を読んでいたら、「いつのまにか死語になった言葉」として「こ」を挙げていました。

「身を粉にして働く」

「粉(こ)」です。その中で、「粉(こな)」は、「粉(こ)」に、

「接尾語の『な』」

が付いたもので、これと似たものには、

「砂(すな)」

があると。「砂(すな)」は、元は「す」で、それは「洲」から来ているいうのです。

へえーへえーへえー(古いか!?)。

しかし、私も「接尾語」で似たようなものを思い浮かべました。 鳥の名前の、

「すずめ」「つばめ」

「め」です。また、同じく鳥の名前の、

「からす」「うぐいす」「かけす」「ほととぎす」

「す」。これも「同類を表す接尾語」ですよね。ないことは、ないな。

『精選版日本国語大辞典』「こな」「語誌」の欄を見ると、

 

「(1)この語が使われるようになるのは、挙例のような近世からで、それ以前はコであった。上代には、ア(足)、ハ(羽)など多くの一音節語が存在したが、語の不安定性、上代特殊仮名遣の区別が失われるなどの音韻変化による同音衝突を避ける目的もあり、次第にアシ(足)ハネ(羽)など複数音節語への交替現象が見られるようになった。この変化は、特に近世にさかんで、コもこのような変化の中で、コナと交替しはじめた。

(2)現代では、コナが一般語となり、コは独立用法をなくし、「小麦粉」「メリケン粉」などの複合語の造語成分や「身を粉(コ)にする」などの慣用句に見られるのみとなる。」

 

へえー。「コ」が消え始めたのは「近世」からか。もうずいぶん経ちますね。

ついでに「すずめ」の「語誌」も見てみよう。

 

「(1)「本草和名」には「和名 須々美」とあり、そのほか「観智院本名義抄」「色葉字類抄」にも「スズミ」「ススミ」の両訓があるから、古くはスズミの形も存在したと思われる」

 

へえー。「つばめ」の「語誌」は、

「(1)「色葉字類抄」にツハメ・ツハクロメの語形が見られる。ツバメ・ツバクラメ・ツバクロメのメは、カモメ・スズメなど、鳥類に共通する接尾語か」

おお、これこれ、やっぱりね!

ついでに(またか)「からす」「うぐいす」の「す」。「ほととぎす」の「語誌」にありました。

「(1)「ほととぎす」の「す」は「からす」「うぐいす」などに見られる「す」と同じく鳥を表す語で、「名告り鳴くなる保登等芸須(ホトトギス)」(万葉―四0八四)とあるように、鳴き声からついた名とされる。」

そうなのか!そうすると鳴き声のある鳥は、

「(その)鳴き声+す」

という命名法で、鳴かない鳥で、小さいのは語尾に「め」が付くのかな?

あ、鳥じゃないけど「す」が付くものがあった!

「キリギリス」

「キリギリ」と鳴く虫だから「キリギリス」かな?「キリギリ+す」。

うーん、なかなか奥が深いというか、広いですね。辞書を引くといろんなことが載っているなあ。

 

(2010、7、9)

2010年7月11日 19:55 | コメント (0)