特 集

2020/08/01

特集 01

【特集】菅官房長官を辛坊直撃!7つのギモン

菅義偉官房長官が「ウェークアップ」に生出演。感染“第2波”との指摘もある現状や緊急事態“再宣言”の可能性、GOTOトラベルキャンペーンの是非など、新型コロナの政府対応を巡る7つのテーマについてMC辛坊治郎らの質問に答えた。丁々発止のやりとりから見えてきた、政府の基本姿勢とは。

■はじめに 菅官房長官の現状認識は?

菅氏の現状認識を要約すると…。
(1)コロナ統計で注視しているのは「重症者数」。春先と比べて低水準で推移している。
(2)そのため緊急事態“再宣言”の状況ではない。
(3)コロナを完全に無くすことは不可能。感染防止と経済の両立を図るべく、「GoToキャンペーン」は実施していく。
(4)私権制限や補償問題を抱える新型コロナ特措法改正は慎重に検討する
(5)“東京問題“の根底には都と23区の連携不足がある。
(6)感染症法「2類相当」からの引き下げは、収束後に検討する。
(7)ワクチンは国内外の複数の製薬会社と鋭意交渉中。

■みんなの疑問(1):新型コロナで重要視するのは?…重視すべきは“重症者数”「3月4月の状況とは異なる」

「今年3月、4月ぐらいの状況とは変わってきていると思う」菅氏はまず、感染拡大が続く現状について今春の“第1波”とは状況が異なるとの認識を示した。理由の一つに挙げたのが、感染者に占める年代別割合の変化だ。
春先に4割を占めた60歳以上の感染者が、現在は約1割。反対に以前少なかった39歳以下の若年層が現在7割と逆転現象が起きている。さらに、重症者数が当時と比較して少ない点も強調した。

■みんなの疑問(2):緊急事態“再宣言“の有無は?…「今はそうした段階ではない」

そして、感染拡大で懸念されるのが、緊急事態の“再宣言”。
一部自治体の首長らからは宣言による“引き締め”に期待する声も上がるが、菅氏は全国一律で緊急事態を再発令する可能性は低いとの見方を示した。

「一番注視している重傷者と(医療機関の)病床数の推移からすると、現時点ではそうした段階ではない」
辛坊キャスターからは、現状認識についてこんな指摘も。
「明らかに国と地方との“温度差”があると思う。緊急事態宣言を独自に出すような自治体も現れ始めているが、どう見ているのか」

菅氏は、「各自治体にいろんな考え方あるのは、ある意味自然なこと。政府として自治体が自由に使える計約3兆円の交付金を配布し、財政面で支援してきた」と述べ、一定の範囲で自治体の自主性を尊重してきたと強調した。

■みんなの疑問(3):なぜいま“GOTOトラベル“

そこで疑問が沸くのが、先月22日から始まった観光業界の支援策「GoToトラベルキャンペーン」の実施だ。なぜいま、国主導で全国一律(東京都を除く)の実施にこだわるのか。

ここに、菅官房長官の描く「ウィズコロナ時代」の基本認識が浮かび上がった。

「コロナというのは、ゼロにすることはできない。感染拡大防止にしっかり対応しながら、経済活動と両立をさせていくことが大事だ」(菅氏)

“GoTo”にかける思いも熱く語った

「国内の観光業従事者は約900万人。しかしホテル・旅館の稼働率は1割程度。飛行機の搭乗率と新幹線の乗車率は約3割程度で“瀕死“状態だ。最低限の事(ケア)は行う必要がある。感染防止策をしっかり守っているホテルや旅館は支援をしていく。最小限の経済活動の再開と感染防止を両立していく」(同)

観光と農業の振興は安倍政権が掲げる「地方創生」の柱。コロナ禍で観光業の倒産が相次げば、収束後に地方の経済再生を図る基盤が無くなるとの懸念が菅氏にはあるようだ。

「アフターコロナ」を見据えた“先手”とも言えるが、一方で感染再拡大の局面での観光促進策には、国民の間に戸惑いが広がっているのも事実。 これについて菅氏は、「感染防止策をしっかりと行っているホテル・旅館を支援していくということだ」と理解を求めた。

■みんなの疑問(4):新型コロナの特別措置法の改正は?…「人権的な問題があり時間がかかる」“学び“生かして当面は現行法で対応する

自民党内や地方からは、新型コロナの特別措置法を改正して行政権限の強化を求める声も根強い。しかし菅氏は「まずは現行法の中でできることを徹底して行わなければならない」と語った。

「1月末から今日までの間、政府も学んできたことが数多くあると思う。“夜の店”(夜の街)といっても(感染の危険性は)一律ではない。クラスターの発生が多いといわれるホストクラブやキャバクラに、風営法に基づき警察官が立ち入りするなどしながら、感染防止に取り組む」(菅氏)

政府が“学んだ“コロナの特徴。それは、感染が拡大する環境はある程度限られている事だという。

現行法に基づき“3密”など感染の危険性が高い店舗をピンポイントで指導することで拡大阻止を図りたい考えだ。一方、橋本五郎・読売新聞特別編集委員が「なぜ法改正を躊躇するのか」と問うと、菅氏は「人権的な問題があり、簡単に改正できない。時間がかかると思う」。私権制限の是非や補償の在り方など課題が多い点を踏まえ、慎重に検討を進める考えを示した。

■みんなの疑問(5):「東京問題」根底にあるのは?

国と自治体との問題で注目を集めたのが、先月11日に札幌市で行われた菅氏の講演で飛び出した「東京問題」だ。一般的には、当時新規感染者の約半数が東京だったことを踏まえた発言とされているが、菅氏は「実は…」と語り始めた。

「実は、3月ごろに都と23区の連携が目詰まりを起こしていた」と根本問題があったことを明かした。

菅氏がまず疑問視した「東京問題」は、当時PCR検査の実施件数の報告が無かった点だ。官邸が調べると都と区の連携が十分でなく、厚生労働省があっせんですることで国と都、23区の保健所長を集めた会合が開かれ、さらに都から各区の保健所に職員を派遣することで検査件数の数字がようやく上がってくるようになったという。

また、軽症患者を収容するホテルの確保についても苦言を呈した。

「もう一つは、やはりホテル。国への報告では6月30日までは確かに2800ぐらいあったが、解約したのだろう。その後、陽性者が増え始めたときに、200ぐらいの部屋しか確保できてない状況も実はあった。そうしたことを含めて、東京問題と申し上げてきている」(菅氏)。

ただ、“ホテル問題”はその後、愛知県や沖縄県でも同種の事例が相次いでおり、必ずしも東京だけの問題とは言えなくなってきた。

■みんなの疑問(6)「無症状でも原則入院って、どうなの?」

こうした事態は、新型コロナが感染法上、症状の程度に関わらず入院が義務付けられる「2類相当」に指定されていることと密接に関係している。

菅氏は、医療機関のベッドは重症と中等症向けに充て、軽症者はホテルで隔離するのが現在の基本方針だとしたうえで、ホテル確保に伴う費用は国が負担しており、引き続き自治体のホテル確保を後押ししていく考えを示した。

辛坊キャスターが将来的に新型コロナを「指定感染症2類相当」から引き下げる可能性を問うと、菅氏は「収束後にさまざまな検証をしていく必要がある」と含みを持たせた。

■みんなの疑問(7):ワクチンの開発と確保は?

来年の東京オリパラ開催の重要な条件となるワクチンの開発と確保。

厚生労働省は7月31日、米製薬大手ファイザー社と来年6月末までに6000万人分のワクチン供給を受ける契約で基本合意したと発表した。ただ、日本国内で当該ワクチンの治験を大規模に行えば東京五輪までに安全性の結論を出すことは難しく、国内でどの程度の規模の治験を行うかが今後の焦点となる。

菅氏は「(安全性に)不安感があればそれを取り除くのは当然だ。そうしたことも含めて今メーカーと交渉している」と述べるにとどめた。そのうえで、ファイザー社以外の複数のワクチン開発会社と交渉中であることを明らかにした。
まとめ「結局、新型コロナは怖いの?大丈夫なの?」
最後に、辛坊キャスターから、こんな素朴な疑問が…。

「重症者や死者の推移(が低水準である点)から現状は大丈夫だと発信した方が良いのではないか」(辛坊キャスター)

「専門家の委員も(大丈夫だとは)明言できないと思う。ただ、そういう傾向にあるということは承知している」(菅官房長官)

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