特 集

2020/01/25

特集 01

ハンドルのないクルマ 自動運転レベル4とは?

今月、アメリカ・ラスベガスで行われた
世界最大のデジタル見本市・CES。

今年も世界各国から4500を超える企業が参加、
最先端のテクノロジーを一目見ようと、
およそ17万5千人が訪れた。

今回、特に目を引いたのは「自動運転」に関する積極的な展示だ。

中でも今年最大の話題をさらったのはソニーだった。

(ソニー吉田社長)
「ソニーは未来のモビリティづくりへのさらなる貢献を
 すすめていきます。
 そしてこの程、開発したのがこちらのビジョンSです」

これまでのソニーから想像する最新の映像技術や
エンターテインメントではなく、何とクルマそのものだった。

ヨーロッパの車体メーカーや部品メーカーらと共同で作り上げたという
自動運転電気自動車ビジョンS。

犬型ロボット「アイボ」のチームが
2年前から開発を進めてきた。

市販の予定はないがソニーは開発を通じて自動運転車に搭載するカメラの
技術向上に力を入れていくという。

自動車ジャーナリストの清水和夫氏は
業界の垣根を越えた自動運転車の開発は今後益々加速すると話す。

(清水和夫氏)
「カメラの分野では世界シェア50%以上。
 それは家電の世界のエンターテインメントだったが
 実は自動車を自動運転で走らせる時に
 人間の目の代わりをしなければならないので、
 ソニーの持つ技術が使えるのではないかということで」

自動車メーカーだけでなくIT企業も
開発競争に名乗りを上げる自動運転の技術。

日本では去年12月、高速道路上で自動運転レベル3の走行を可能にする
改正道路交通法が施行された。
レベル3の車なら高速道路走行中にハンドルから手を放し
スマートフォンの操作などが可能で
今年夏には対応する車両が市販される予定だ。

今年のCESで各社が展示したのはレベル3の先のレベル4。
一般道で走る、曲がる、止まるなど
クルマがドライバーに代わってすべての運転操作を行う。
 
展示に先立ちアウディは最新のレベル4の車両を実際にラスベガスでデモ走行。

レベル4のクルマの機能や走りは一体どのようなものなのか。
清水和夫氏とともに試乗会の会場へと向かった。

(ディレクター)
「今回日本のカメラに初めて取材が許された
 アウディのレベル4の自動運転車がこちらです」

アウディAI:ME。
コンパクトカーサイズの車体に数々のセンサーと
通信機能を備えた自動運転レベル4の電気自動車だ。

最新の道路状況をAIが正確に解析し、
最良のルートで乗員を安全に目的地まで運ぶ。

早速乗り込んでみた。

閉鎖された専用コース内での走行の為、
今回、シートベルトの着用は免除された。

(清水和夫氏)
「ディズニーランドの乗り物にディレクターといっしょに
 乗ってる感じ」
「ヘイ、アウディ!クローズ・ザ・ドア!」
「世界初ハンドルの無いクルマ」

(アウディ担当者)
「アウディの自動運転車は単なる移動用の道具ではなく、
 運転の楽しさを忘れていません。
 ですので、自動運転ですが運転する機能も残しています」

通常、ハンドルは格納されているが、
必要に応じてこのようにハンドルが…。

(清水氏)
「どうやったら動くんだろう…そうか、自動だった」

車内にはスイッチやレバーは存在しない。
乗員の眼の動きを読み取り、
様々なリクエストにこたえるシステムだ。

シートに収まり安全を確認すると、
アイ・ミーはあらかじめ指定したルートを走りだした。

運転から解放された移動空間。
そこには、映像技術を使った楽しい仕掛けが用意されていた。

担当者からゴーグルを渡され促されるまま装着すると…。

♪清水氏小熊かけあい ON
「ドラゴン!」
「おー!まるで中国の古民家の
 上空をどろーんで飛んでいる
 ような…」
「エンターテインメント、
 楽しいな」

スピードやカーブに合わせ連動するバーチャル映像が映し出されるしくみだ。
首を上下左右に振れば、360度のバーチャル映像が楽しめる。

(清水和夫氏)
「ここまで完全自動運転レベル4になったら、
 クルマの中の空間とか過ごし方、
 それに新しいVRとかの技術が使われる、
 そういう風に今日理解しましたね」

自動運転とエンターテインメントの融合はアウディだけではない。
メルセデス・ベンツは…。

(ケレニウスCEO)
「メルセデス・ベンツはこれまで技術とラグジュアリーのブランドでした。
 しかし、これからはラグジュアリーと持続可能性を追求するブランドになります!
 Are you ready?」

メルセデス・ベンツはハリウッド映画「アバター」をイメージした
自動運転電気自動車・「ビジョンAVTR」を発表。

マウスのような装置に触れたり、
人間の手の動きをクルマが解析・判断することで
乗員の直観的なイメージで車を走らせることができるという。

映画監督のジェームズ・キャメロン氏も車両の開発に参加した。

(J・キャメロン氏)
「会話を重ねれば重ねるほど、スタッフとの考え方がぴったり一致していった」

アウディやメルセデス・ベンツなどドイツの自動車メーカーは、
2024年から25年を目処に、
レベル4の自動運転車を市場に投入する意向だ。

日本も2025年の導入を目指しているが、
過疎化や高齢化が急激に進む中
地域によっては一日も早くレベル4の導入を待ち望む声がある。

自動運転に関わる法律に詳しい明治大学の中山教授は。
 
(明治大 中山教授)
「沖縄には沖縄、北海道には北海道といった
 地域ごとのローカル・ルールを作っていけばいいのではないか。
 この発想の議論が今急速に進んでいる。
 2022年か2023年、
 この2,3年で正式にレベル4として認めるとなっていくのではないか」

こうした中、日本の自動車メーカーは。

(トヨタ・豊田社長)
「私たちは、日本の東富士にある
 175エーカーの土地に、未来の実証都市を作ります。
 人々が実際に住んで、働いて、遊んで
 そんな生活を送りながら実証に参加する街です」

トヨタ自動車はあらゆるモノやサービスをネットでつなげる
実証都市を静岡県裾野市に建設する計画を発表した。
この未来の街では、トヨタが開発する自動運転の電気自動車などを走らせるという。

既に、ソフトバンクと共同で未来の移動サービスを開発・提供する企業
モネ・テクノロジーズを設立しているトヨタだが、
日本でも業界の垣根を超えた動きが加速しそうだ。

(清水和夫氏)
「トヨタが今、モネ(モビリティーサービス)で
 100社以上仲間が増えてきていますよね。
 あれがまさにオールジャパンの
 MaaSになっていけば
 大きな岩も制度設計も動くかなと。
 新しいものが作れるかなと思いますね」 

ハンドルの無い未来のクルマ・レベル4が
日本の道路を走り始めるの日はもうそこまで来ているのかもしれない。

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