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小澤昭博(ytvアナウンサー)『小澤昭博のゴルフナビ』

「レッドの決断」

阪神タイガースの赤星憲広選手が9年間のプロ野球人生に幕を降ろしました。

この異例の時期に突然の引退発表。

昨日、兵庫県西宮市内で引退会見に臨んだ赤星選手の顔を見て、
私は正直、胸を撫で下ろすような感情を覚えました。

長くプロ野球の世界で取材をしていると、多方面から色々な情報が飛び込んできます。

私の耳にも以前から「赤星選手がこのまま野球を続けた場合、一歩間違えれば日常生活に支障をきたす程の危険な状態である。」という内容の話は入ってきていました。

個人的に「大事に至る前に今後の人生も考えて欲しい。」と思っていたので、私の中で残念な気持ちは勿論ありましたが、それよりもほっとしたという安堵感の方が勝ったのです。

あの小柄な体で、厳しいプロ野球の世界に身を置き、第一線で戦い続けることは、我々の想像を絶するケガとの戦いでもありました。

2001年に阪神タイガースに入団してから9年間、出場試合数は1127試合。切り込み隊長として出塁し通算盗塁数は381(プロ野球歴代9位)。赤星選手がこだわり続けた得点(出塁しホームに還ってきた数)は698。生涯通算打率は2割9分5厘。

その俊足を武器に、ルーキーイヤーには新人賞と盗塁王を獲得し、以降セリーグ記録である5年連続盗塁王を打ち立て、その記録は未だに破られていません。加えて2度のベストナイン、センターを守り続けて6度のゴールデングラブ賞を受賞。二度のリーグ優勝にも大きく貢献しました。

阪神が“常勝集団”と呼ばれるようになったのも、この赤星選手の活躍があったからこそ。ざっと数字だけを見ても赤星選手が真の一流選手であったことが証明されます。

グランド外でも2003年から毎年盗塁の数だけ車椅子を寄付するなどの福祉活動を続け、その数合計301台。その人柄も素晴らしいものでした。

会見で彼は「これ以上アスリートとして戦い続けることを多くのドクターに止められた。自分では現役にこだわり続けていきたい気持ちは勿論あったから、こうして引退会見に臨んでも実感が沸かない。この1カ月が今までの人生の中で一番苦しかった。」今の気持ちをそう表現しました。

まだまだ、気持ちは現役。でも体は悲鳴をあげて自分の思うようにならない・・・。この数週間、赤星選手は自分自身の人生の選択に迷い続けたに違いありません。

本人にとって色々な葛藤が今も尚、残っているであろうし、仲間達がキャンプインを迎え、シーズンの戦いが始まれば割り切れない思いもまた込み上げてくるかもしれません。

しかし、一流プレーヤーとしてこれだけの十分な実績と、数々の素晴らしいプレーを残してくれた赤星選手の勇姿は、ファンの心の中でいつまでも消えることなく生き続けるだろうと思います。

赤星選手、9年間お疲れ様でした。

まずはゆっくり体を休めてください。

日時: 2009年12月10日(木) |

アナウンサー