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小澤昭博(ytvアナウンサー)『小澤昭博のゴルフナビ』

“THE OPEN”観戦記5

今大会私が最も注目した選手は、ローウェストアマチュアとなった地元イギリス出身の“トム・ルイス”。

1991年1月生まれの現在20歳で、現在世界アマチュアランキング9位※。マキロイと同世代の逸材です。

日本で例えるなら、一昨年賞金王の石川遼がマキロイで、マスターズでローウェストアマチュアになった松山英樹(世界アマチュアランキング現在32位※)がトム・ルイスいったところでしょうか。

私はこの大会で彼を見るまで、恥ずかしながら彼に関する予備知識を何も備えていませんでした。誰に付くとも決めずにコースを歩いていると、物凄くキレの良いスイングをする若者がいます。

近くにいた地元のギャラリーに「彼の名前は?何歳ですか?」と尋ねると、したり顔で「トム・ルイス。20歳だよ。」と、聞かれたことがとても嬉しいように答えてくれました。

初日はスーパースターの“トム”ことトム・ワトソンと同組。

トムという名前はプロゴルファーであった父が憧れのトム・ワトソンにちなんで付けた名前だそうで、自分の名前の由来になったスーパースターのトムと一緒にラウンドしたのですから「これ以上ない素晴らしい経験」とニューヒーローの”トム“も“感慨無量の様子。

しかしそのスーパースターのトムとのラウンドにも臆することなく、他の並みいる選手達も押しのけ、初日は65をマークして何と首位タイ!!

結局最後は30位タイに終わりましたが、スーパースターの“トム”に「洗練されたプレー」と言わしめたニューヒーローの”トム“。またもや若い素晴らしい選手に出会えました。

余談ですが物凄いイケメンでもあります。これからが楽しみです。

そして日本ツアー会員のプレーはと言うと。

このブログではお馴染みの現在世界ランキング101位※、ノ・スンヨル。

石川遼と同い年の20歳。現在はヨーロッパツアーを中心に活躍しています。

2009年の韓国オープンで彼のプレーを初めて見てから、豪快なプレースタイルの虜になりました。全英オープンでもそのスタイルを崩すことなく、そのダイナミックな攻めに改めて魅了されました。

強烈な左からのフォローのパー4。ティーショットの落下点にはバンカーが点在し狙い幅は15ヤード程。飛距離が出る分、どれだけ風に流されていくのか私には見当がつきません。どこまででも流されていきそうな強い風です。

強烈なインパクト音から放たれた打球は、コース左のラフに向かい飛び出し、少しずつコースに戻ってきます。「もっと左じゃなくていいの!?」と思いながら彼のボールの行方を追いかけていくと、遥か彼方のフェアウエーでボールが弾むのを確認できました。

セカンド地点に行ってみると、ボールはフェアウエーのセンターに。残り距離から逆算すると400ヤード近いビッグドライブです。立っているのが困難な程の雨風の中、ティーショットで400ヤードをかっ飛ばし難なくピンに寄せてくるスンヨルを見ていると、この難コースも簡単にすら思えてくるような錯覚に陥り、度肝を抜かれました。

途中でスンヨルは私に気付くと気恥ずかしそうにペコリと会釈をしてくれましたが、素顔はシャイな20歳がクラブを握ると豹変します。このギャップがまた彼の魅力の一つです。

スンヨルは日本ツアー会員では最高の30位タイで終えました。いずれ世界のメジャータイトルを獲得する逸材だと私は期待しています。

今大会唯一決勝に進んだ日本人選手、現在世界ランキング60位※の池田勇太は38位タイでフィニッシュ。

最終日はトム・ルイスとのプレーでしたが、難コースを相手に粘りのプレーを見せていました。最終日も風雨が厳しい中、終盤パー4のナイスパーセーブはその象徴です。

ティーショットを右のラフに入れ、セカンドショットはグリーン手前のポットバンカーに打ち込んでしまいました。ピンまではざっと40ヤード。球を高く上げてなおかつ距離を出さなければならない難しいショット。私は「上手く打ってもショートしそうだな・・・」と見ていました。

ところが池田のバンカーからのフルショットはピンソバ2メートルに。微妙な距離のパッティングもしっかり決めてのパー。バーディーを獲ることもさることながら、こういったパーセーブが時にはバーディー以上の価値となり流れを生み出しますが、海外メジャーではより必要となってくるのでしょう。早速先週のサンクロレラで優勝し成果を挙げています。

ミズノオープンの覇者、ハン・ジュンゴン(黄重坤)も決勝ラウンドに進みました。

初日のスコアは68。6位タイと絶好のスタートでしたが、三日目は83と大叩き。最終順位は決勝進出者の中では最下位の71位でした。このことからもこのコースが一筋縄では行かないということが分かると思います。

ホールアウト後のジュンゴンにコースの印象を尋ねると「ベリーディフィカルト」と残念そうに一言。19歳で体験したこの素晴らしい経験をまた次に活かしてくれるでしょう。

次回は総括です。
※世界ランキングは全て7/31付けのランキングです。

日時: 2011年08月04日(木) |

アナウンサー