案件ファイル

MENU

案件11

倉沢 義人(会社員)永井 大
香苗の元夫。離婚後、元愛人の詩織と再婚。
貯金は尽き、香苗への慰謝料の支払いも滞っていた。
そんな中、倉沢家に慰謝料請求の通知が届き、妻の不倫が発覚する。

緻密な情報操作により、依頼人にとって不利な証拠が揃っている。 相手方の離婚原因が不貞行為によるものでないと証明出来なければ 慰謝料支払いを免れることは厳しい。

第11話「宿敵現る!因縁の敏腕女性弁護士と最終決戦!!」

トキワ出版の漫画誌「月刊漫デー」で慰謝料弁護士・袴田幸男(田中直樹)をモデルにした連載が始まって丸1年。野々村香苗(矢田亜希子)は同社の主力誌「週刊漫デー」の新連載を打診される。これで一流漫画家の仲間入りだ。
袴田法律事務所の大家・遠山芳江(美保純)、フリー調査員・梅本くるみ(渡辺直美)、アルバイト・篠塚里奈(岩﨑名美)は自分のことのように喜んで酒を出してくるが、香苗はどこか浮かない。週刊誌で連載を始めるということは、今の慰謝料漫画は終えなければいけないし、この事務所を辞める必要もある。香苗は袴田の反応が気になるが…
「私は大賛成ですよ。もともと依頼人だった香苗さんが、こうして自ら道を切り開いて、新生活を始める。これほど嬉しい事はありませんから」「……」面白くない香苗。この日の彼女は悪酔いし、袴田に絡みまくる。

そんな中、香苗の元夫・倉沢義人(永井大)が袴田を訪ねてきた。
気まずい香苗、酔いも瞬く間に冷める…。義人は最近、慰謝料の振込が滞っていた。一方、義人も香苗が袴田法律事務所で働いているとは知らず、気まずい。
袴田は義人を招き入れ、話を聞く。またも義人が浮気したのかと芳江たちは呆れるが、今回、浮気したのは再婚した元愛人の詩織(野村麻純)だった。しかも、ダブル不倫で、そのせいで離婚を決意した相手方の妻・本条やよい(大路恵美)から慰謝料300万円を請求されていた。詩織は浮気の事実を認めるものの、浮気したのは香苗への慰謝料があって、贅沢な結婚生活が送れなかったからだと、義人を責め立てる。今、詩織は家を出て、実家にいるという。
「……私でいいんですか。かつてあなたから多額の慰謝料を奪った人間ですよ」「むしろ、あの時の事があったからお願いしています」複雑な香苗…。

――数日後。袴田法律事務所に義人と詩織がやってきた。やよい側と話し合うためだ。詩織は自分たちから幸せを奪った袴田、さらには、香苗がいることに不満を爆発させる。協議の前に詩織から話を聞きたかった袴田だが、詩織は頑なに口を閉ざす。
そこへやよい側の代理人・烏丸恵子弁護士(とよた真帆)が訪れた。やよいは今回の件で体調を崩し、欠席だというが、袴田は恵子の登場に言葉を失ってしまう……。
袴田と恵子は以前、同じ企業法務専門の事務所で働いていた元同僚だった。今では彼女も独立し、企業専門の弁護士として華々しく活躍しているが、依頼人の夫・本条隆司(渡辺裕之)が経営する本条興産の顧問弁護士をしている関係で、今回の依頼を引き受けたという。
何やら様子のおかしい袴田。協議でも慰謝料を増額され、恵子に一方的にしてやられる。彼女はやよいの夫・隆司を味方につけ、詩織の方が積極的に誘ってきたという証拠のメールを集めていた。詩織は、隆司からの連絡手段は基本、電話で、彼の方が積極的だったと反論するが、そんな証拠もなく…。

しばらくして、義人たちのもとに仮差押決定書が届く。裁判前でも、不貞行為の事実を裁判所に申し立てることで、相手の財産を差し押さえることができるのだ。詩織は袴田に「何とかしてくれるんでしょ!」と食って掛かる。だが、袴田は口を濁すばかり。ついには…「今回の件は、別の弁護士の方に依頼された方がいいと思います」
袴田らしからぬ言葉に、驚く香苗。義人と詩織が帰った後、香苗はその真意をただした。袴田はここでも気弱な発言を続ける。形勢は不利だが、やよい側の離婚原因が今回の不貞行為によるものでないことを証明すれば、慰謝料を支払う必要ないだろう。だが、そんな証拠はリサーチのエキスパート、くるみでも見つけるのは無理だと言う。
「どうしてそう言い切れるんですか」納得いかない香苗。
「相手が烏丸弁護士だからです。彼女ほど情報集め、そして、情報操作に関して長けた弁護士はいません」今回は勝ち目がないの一点張りで、頑なな袴田。
香苗は信じられない…。袴田と恵子に何らかの因縁があるんだろうか。香苗は追及するが、話半ばに、彼女の携帯が鳴った。元夫・義人からだ…。

香苗はいつものカフェで義人と会った。彼からは滞っていた慰謝料を差し出される。香苗は「こんな時に無理しないで」と遠慮するが、義人は誠意を見せた。そして――
「香苗。あの時はすまなかったな」頭を下げる義人。それは初めての謝罪だった。
義人は今回、詩織に浮気されて初めて、香苗がどれだけ苦しんでいたかわかったという。だが、彼は詩織とは離婚するつもりはなかった。今は苦しいけど、それを乗り越えて、今度はちゃんと夫婦になりたい、と。香苗はこの時、義人の力になりたいと強く思う…。

香苗が事務所に戻ると、袴田はいなかった。香苗は芳江に相談してみる。すると、芳江の口から驚きの事実を告げられる。烏丸恵子は袴田の元恋人だというのだ…。
今から10年前、企業法務を専門に扱う大手法律事務所で働いていた袴田。若手弁護士の中でも有望株で、多くの案件を抱えていた。一方、恵子は袴田と同じチームの後輩弁護士で、2人が組めば全戦連勝。公私ともに良きパートナーで、袴田は結婚も考えるが…。
そんなある日、袴田は、恵子が他の男とキスしている場面に出くわしてしまう。しかも、浮気相手はその男だけでなく、複数いた。ショックを受ける袴田。だが、彼の不幸はそれだけではなかった。勤務先のボスに、ストーカーだと訴えられたのだ。袴田は「自分たちは交際していた」と釈明するが、恵子にはそんな証拠はないと全否定されてしまう。確かに彼女の言う通り、2人の交際を示す写真もメールも残っていなかった。おかげで、袴田はクビに…。彼が抱えていた案件は彼女が引き継いだ。すべては恵子の策略だった。
そして、この一件がきっかけで、袴田は離婚専門の弁護士になったという。

その頃、袴田は恵子に呼び出され、バーに来ていた。恵子からは自身の事務所に来ないかと、高いギャラを餌に、ヘッドハンティングの話を持ちかけられる。
「…私は、お金儲けのために弁護士をやっている訳ではありませんから」
「じゃあ何のため? そういえば昔よく言ってたわね。依頼人の立場になって、その人が一番救われる道を考えてあげるのが、弁護士の仕事だって。それって、依頼人に悪意があっても同じことが言える? 弁護士は依頼人を選べない。私達は守りたくない人間だって守らなきゃいけない。そもそも正義なんて人それぞれだし。だとしたら、私達がこだわるべきは勝つか負けるか…それ以外に正義はないと思わない?」
答えない袴田。今回の一件も、恵子の依頼人・本条やよいに何らかの“悪意”があるのだろう。袴田が黙っていると、恵子は10年前のことを持ち出してきた。 「その話はやめましょう」恵子の言葉を制止する袴田…。

袴田が事務所に戻って来ると、香苗が漫画を描いていた。彼を待っていたのだ。
改めて、義人の依頼を受けてほしいと訴える香苗。ところが、袴田はそんな首を突っ込む暇があるならば、新連載の準備をして下さいと、冷たく突き放す。すると、
「わかりました!ただ、やめる前に、この件だけは私が責任持って何とかします!」
事務所を出ていく香苗。そこへ芳江と里奈がやってきて、袴田に意見する。実は香苗、今まで通り月刊誌で慰謝料漫画を続けたいとして、週刊誌の連載話を断っていた。
「漫画家として成功するには週刊連載の方が近道よ。今は袴田法律事務所で学んだ事を多くの人に伝えたいんだって」
驚く袴田。彼は一人になって、改めて香苗の漫画を読んでみた。主人公が発した言葉は、すべて自身の口から出たもの。走馬灯のように、これまでの案件が蘇ってきて…。

翌日、袴田は恵子の事務所を訪ね、宣戦布告をする。
「冗談でしょう? あなた達に勝ち目はないわよ」
「勝ち目がないから依頼を断る…そんな弁護士を、私は弁護士とは認めません。大変差し出がましいですが…首を洗って待っていて下さい」
そう言って去っていく袴田。さぁ、これからが本番だ……!