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案件10

吉岡 美紀(主婦・家業手伝い)遠山 景織子
姑からの執拗ないじめに耐える主婦。
家族で営む居酒屋では深夜までこき使われ、家事もすべて押し付けれらている。
睡眠は平均4時間、食事もままならない生活で、心身共に疲れ果てている。

夫は不倫相手と再婚するため、姑と結託していた。 加害者不明だった上に、その不倫関係が現在まで継続していたことから3年間の時効は不成立。 夫、愛人、姑の3人に対して、慰謝料請求が可能となった。

第10話「「姑から慰謝料を!」執拗なイジメに嫁が決意!」

――居酒屋「よし」。この店も袴田法律事務所と同様、遠山芳江(美保純)が大家をつとめていて、今日は野々村香苗(矢田亜希子)を連れて酒を飲みに来ていたが…。 ここで2人はすさまじい“嫁いびり”を見てしまう。息子夫婦と母親の3人で切り盛りする居酒屋「よし」。ここで嫁の吉岡美紀(遠山景織子)は姑の智枝(東てる美)から執拗なイジメを受けていた。
「あなた、このままじゃ本当に参っちゃうわよ」
美紀を心配し、声を掛ける芳江。芳江は娘が嫁姑問題でひどく苦労したので、他人事には思えなかった。溜まらず、美紀を袴田法律事務所に連れてくる。美紀から直接、話を聞くと、彼女は店だけでなく、家でも壮絶な仕打ちを受けていた。家でも店でも酷使され、平均睡眠時間も4時間程度、食事もままならない状態。彼女は体調を崩して、夫・俊介(日栄洋祐)に訴えたものの、夫は「うまくやってくれ」の一点張り。これにはアルバイト・篠塚里奈(岩﨑名美)も同情し、芳江も離婚を勧めるが、美紀にはその意思はなかった。俊介は高校からの憧れの先輩で、別に恋人もいたが、別れたと聞いて、押しに押して7年前、ようやく結婚にこぎつけたんだという。同居も承知の上だとするが、それにしても智枝の仕打ちはあまりに酷過ぎる…。慰謝料弁護士・袴田幸男(田中直樹)は香苗ら女性陣から助けてやれと迫られるが、嫁姑問題で慰謝料を取るのは非常に難しく、難色を示す…。

そんな中、吉岡家に俊介の元カノ・久保ゆり子(倉田あみ)が訪れた。姑の智枝が招いたのだ。
「本当は、ゆりちゃんみたいな人に俊介のところに嫁に来てほしかったのよね」
何かのお祝いだろうか。鯛の尾頭付きを手土産に、台所に立っていたゆり子。智枝は、料理の味付けから始まって、何かにつけて美紀とゆり子を比較する。しかも、夫・俊介までも…。俊介とゆり子が破局したのは7年前で、彼女に親が決めた結婚相手がいたから、泣く泣く別れたのだという。美紀はゆり子までにも馬鹿にされて……
美紀は家を出て、袴田法律事務所へ。そこで離婚を決意する。一方、袴田は美紀の話を聞いて、気づいていた。この“嫁いびり”には裏があることを…。

美紀は袴田の指示で一旦、家に戻る。その間、フリー調査員・梅本くるみ(渡辺直美)が智枝の謀略を調べるのだ。商店街の婦人会などに潜りこむ。
そこで新たな事実が次々と発覚する。3年前からひどくなった嫁いびり。この頃、俊介の浮気が発覚し、美紀との間に危機が訪れたのだが、その相手がどうやらゆり子だったらしい。ゆり子自身も、3年前に自身の不貞行為が理由で離婚していた。しかも、智枝は息子とゆり子の再婚を考えてか、美紀に内緒で店をリニューアルしようと目論んでいる。こんなこと智枝一人で考えられる訳もなく、おそらく俊介もグルなんだろう。
浮気相手が元カノだったなんて…美紀は驚愕の真実に打ちひしがれる。

一方、袴田は“嫁いびり”に対する慰謝料請求という名目で、智枝と俊介に会いに行く。袴田の話を聞いて、美紀を非難する智枝と俊介。俊介は離婚を口にした。「母親は一人しかいないから」と。その物言いから、袴田は智枝と俊介が結託していることを確信する。
また、俊介から離婚を切り出させたことによって、彼から慰謝料を取れる可能性も出てきた。しかし、不貞行為の時効は3年。問題は、俊介とゆり子の関係が今も続いていると証明できるかどうか…。
その矢先、くるみがリニューアルする店の設計図を手に入れてきた。図面を広げて見る袴田や美紀たち。その時、図面にあった店の名前が目に飛び込んできて、ハッとする一同。美紀は溜まらず、設計図を手に事務所を飛び出していく…。

――居酒屋「よし」。美紀が訪れると、そこでは智枝やゆり子、俊介が将来のことを語り、楽しそうに談笑していた。美紀は責め立てるが、智枝の態度はふてぶてしく、シラを切るばかり。しかし、美紀は負けてはいない。設計図にあった店の名前を指さして、
「なんで新しい店に息子の不倫相手の名前なんてつけるんです? ダイニングバー『リリー』。『リリー』はゆり子さんの『ゆり』でしょ?」
美紀はこの時、思い出していた。先日、ゆり子が自宅マンションに来た日は、3年前、美紀が夫の浮気に気づいた日。ゆり子は鯛の尾頭付きを持ってきて豪勢な料理を作ったが、あれは時効が成立した祝いの膳だったのだ…。
「信じてたのに……。俊ちゃんの心に、いつも元カノがいるってわかってた。でも、いつか私だけを見てくれる日が来るって信じてた。だから、お義母さんにどんなにいじめられても、いい嫁になろうって頑張ったのに…」
思いの丈を訴える美紀。しかし、それは俊介の心に響くことはなかった。「不貞行為の時効は3年」の一点張り。その時、美紀を追いかけて訪れていた袴田が口を開いた。
「さしでがましいようですが、一つ、不貞行為の時効について補足説明させて下さい」
確かに俊介の言う通り、不貞行為の慰謝料請求の時効は3年だが、それは加害者が判明した場合。判明していない場合は加害者が誰であるか知ってからの3年後が時効となり、今回の場合、ゆり子には慰謝料請求ができるのだ。
「ちょっと俊介、話が違うじゃない! なんで私だけ慰謝料払わなきゃならないのよ!」
逆ギレするゆり子。智枝の制止も振り切って、真実をぶちまける。「お母さんだって、あんな嫁、必ず追い出すからって、この3年間、我慢して、俊介のこと待った結果がこれ?!」
ゆり子は店を飛び出していく。しかし、袴田の追及の手は緩むことはなかった。
「ゆり子さんが、美紀さんが追い出されるのを待っていたということは、ご主人とゆり子さんとの不貞行為は継続していたということですね。だとすると、ご主人に対する慰謝料請求権の時効も、まだ来てないということになります」
また、智枝に対しても――「姑が息子と結託して、嫁を追い出し、不倫相手と息子を結びつけようと画策することは共同不行為に当たります。従って、美紀さんは姑であるあなたにも慰謝料を請求することが可能です」
「そんな……」言葉を失う智枝。俊介も絶句し、ゆり子との未来を描いた店の設計図を破り捨てる。結局、この店は美紀の手に…。

袴田は新装開店の日、目玉メニューとして酒に合うパンを試作していた。梅干しパンや塩辛パン、ウコンパンなど。あまりに無理のあるパンに、香苗と芳江は呆れるばかり……。

※この話の中で、「3年前の不貞行為について時効により妻は夫に慰謝料を請求できない」とされていますが、「夫婦間では離婚から6か月経過して時効が成立する」ため、実際は時効に至っていません。