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案件6

諏訪 菜月酒井 美紀
年下の妻から、多額の慰謝料を請求されている父を弁護してほしいと袴田を訪ねてくる。
後妻が父親の財産目的で結婚したと思っている。
しかし、その父親とは袴田と生き別れた父・幸造のことだった・・

浮気現場の写真は慰謝料搾取のために仕組まれた罠だった。さらに、糖尿病患者である父はEDであることが発覚。不貞行為の事実はなかったと考えられ、妻からの慰謝料請求は取り下げられた。

第6話「依頼人は袴田の生き別れた父…親子の確執に決着を!」

袴田法律事務所に、諏訪菜月(酒井美紀)が飛び込みで相談に訪れた。
「父が…騙されているんです」
母を亡くした父・幸造(ミッキー・カーチス)が、娘よりも3歳若い27歳の知花(長澤奈央)と再婚。しかし、この超若妻はかなりの浪費家で、毎日、ブランド品を買い漁り、週末には父を置いて友達と旅行、これまで費やしたカネは外車2台や別荘など総額3000万円に及び、カネ目当ての結婚は明白だった。そして、今回の依頼は父に離婚してほしいのかと思いきや、反対に、父は知花から離婚を切り出され、慰謝料500万円を請求されていた。父・幸造は、新妻よりまだ若い女性とラブホテルから出るところを、知花のカメラに撮られたのだった。72歳にして、なんという絶倫じいさん……。しかし、菜月は納得がいかない。散々、父の財産を食い潰してきた彼女に、慰謝料など払う謂われがない。浮気だって、しているのは知花の方じゃないかというのが、菜月の主張だった。そうは言っても、浮気現場を撮られたのは致命的。どこの法律事務所でも相手にされず、菜月は藁をもすがる想いで、ここ袴田法律相談所に訪れたのだった。大家の遠山芳江(美保純)がいつものように、「大丈夫よ、この先生、こう見えて慰謝料に関してはスペシャリスト」と励まそうとするが――。
その時、袴田幸男(田中直樹)がそれを遮った。

「お断りします。その人は、この世で私が最も尊敬できない人です」
何を隠そう、諏訪幸造は袴田の実父だった。驚く助手の野々村香苗(矢田亜希子)たち。菜月はそれを知っての依頼だった。しかし、袴田は頑なに拒み続ける。自分を捨てた父にはもう二度と会いたくはなかった…。

ところが、翌日、父・幸造が訪ねてきた。しかも、高級ワインを持って……。
「再会を祝して、乾杯しようや」
「私はお酒を飲めませんから」
「へぇ、お前もそうか。まぁまぁ、今日くらいはいいだろ」

勝手に事務所のソファに座り、ワインを開ける幸造。小指を立てて「お前のコレ(女)はどれだ?」と事務所の女性を見回し、ゲスな話を繰り返す。また、今回の浮気については「言い訳はしたくねぇ。そもそも男ってのは、去っていく女の背中は追わないもんだ。女の幸せを願ってやんねぇとな」と、知花の要求をすべてのむつもりでいた。だが、袴田は父の言葉を信用することはできない。父は30年前、女を作って家を出て行ったきり、慰謝料や養育費も払わず、母は随分、お金のことで苦労した。女手ひとつで育ててくれた母のことを考えると、袴田はやるせない。物凄い剣幕で父を追い出した……。

そんな袴田を心配する香苗。あんな父を拒んでも、袴田の心は揺れているのではないか。香苗はなんとか父子に仲直りしてほしいと考えて…。
数日後、袴田法律事務所に、幸造と菜月、そして知花とその代理人・辻村がやってきた。香苗が離婚協議の場に、ここ袴田法律事務所を提供したのだ。協議の内容が耳に入れば、袴田も力を貸すだろうと考えたからだ。そんなことはお見通しの袴田。決してその手には乗らないと頑なだったが、ついつい気になってしまい…。

結局、協議は平行線のまま、1週間後、改めて行われることになった。幸造らが帰った後、袴田は香苗に助言を求められる。すると、父・幸造は騙されていると、袴田は言った。父の言葉を信じるならば、浮気相手の女とは写真を撮られたその日に偶然、街で出会い、それ以降は会ってない。そんな突発的な状況を写真に収められるのは不自然、知花が仕組んだ可能性が高い。とはいえ、ラブホテルで不貞行為がなかったことを証明するのは難しい…。しかし、香苗は袴田を説得する。「慰謝料弁護士」と異名を持つ先生ならば、きっと証明できるはずだ、と。ところが…。

「あの人は今まで散々、女遊びを繰り返してきたんです。私の母も、私もその被害者です。あの人はその報いを受けるべきだと、私は思います」
頑なな姿勢を崩さない袴田。だったら、香苗は「自分がやる」と言い出した。驚く袴田。そこへ事務員の篠塚里奈(岩﨑名美)が幸造の忘れ物を持ってきた。袴田は里奈に今すぐ追いかけて届けるよう言うが、里奈からは反対に「先生のお父さんでしょ、先生が届けて下さい」と押し付けられる。仕方なく、袴田は幸造を追いかけるが……

幸造はその先の公園で胸を押さえ、倒れる…! 慌てて病院に運ぶ袴田。大事には至らなかったが、幸造には持病があった。病気のことは菜月や知花には言うなと口止めする幸造。この期に及んで見栄を張って…と、呆れる袴田。病室を出ると、菜月と出くわした。袴田は病気のことは言わず、とりあえず、酒をやめさせた方がいいと助言するが、 「父はお酒を飲みませんよ。もともと飲めないんです」

驚く袴田。菜月によると、父・幸造がお酒を飲むのは、本当に嬉しかった時だけ。先日、幸造が袴田の事務所でワインを開けていたのは、心から再会が嬉しかったから。また、父は袴田が司法試験に合格した時も酒を飲んでいた。実は幸造、袴田の大学の入学金を払ってくれていた。また、父は女癖が悪いと、袴田は思い込んでいたが、菜月の母と結婚してからは一度も浮気をしていないという。にわかには信じられない袴田…。

数日後、香苗はフリー調査員・梅本くるみ(渡辺直美)と、幸造の浮気相手・村上環奈に会っていた。くるみは環奈のことを調べ上げていて、それによると、環奈は以前、知花と同じイベントコンパニオンの派遣会社に登録。また、環奈には何度か妻帯者の男性とホテルに行き、その度に写真に撮られた過去があった。しかも、その男性全員が数ヶ月以内に慰謝料を請求されている。今回も知花に頼まれ、浮気現場をでっち上げたのではないか。否定する環奈だが、海外ドラマ『鋼鉄の女スパイ・マリリン』のごとく、くるみに強く迫られては、何も言えない。環奈は次の離婚協議ですべてを話すことを約束する…。

ところが、次の離婚協議。協議は知花側の弁護人・辻村の事務所で行われたが、環奈は一向に現れない。環奈が来ないよう、知花側がすでに手を回していた。そして反対に辻本から、くるみの先日の行為は脅迫罪に当たると糾弾されて、ついに万事休すかーー!?
一縷の望みを託して、環奈を待つ香苗。ところが、やってきたのは…袴田だった。

しかし、素直じゃない袴田。父・幸造の代理人ではなく、ただの通りすがりと言って、辻村に名刺を渡した。呆れる辻村だったが、袴田はお構いなしに知花を攻めていく。実は糖尿病だった幸造。知花はそれに気づかず、離婚協議の場では、自分は豪勢な料理をブログにもアップする「料理上手の良妻」と主張していたが、それら料理は糖尿病患者にとっては毒のようなもの。しかも、2年前からこの病気のせいでED=勃起不全になっていた。そんな男が街で出会った女をホテルに誘うだろうか。弱みは決して人に見せない意地っ張りな性格なのに…。また、2人が出会った店の店員に話を聞いたところ、環奈が幸造のソフトドリンクにアルコールを入れていたのを目撃していた。幸造はそれを飲まされて酩酊状態となり、ラブホテルへ連れて行かれて、知花に写真を撮られたのだった。

「大変差し出がましいことを申しますが、あなたのどこが『良妻』なんでしょうか」 「……」ぐうの音も出ない知花。こうして一件落着となる。 数日後。父・幸造は袴田法律事務所にやってきた。EDであることは絶対に内緒にしたかった幸造は憎まれ口を叩くが、息子に助けられたのが心底、嬉しかったのだろう。今日も高級ワインを買ってきていた。
「何度も言わせないで下さい。私は飲めないんです」
「今日ぐらいはいいだろ?」
「あなただって、医者に止められてるんでしょう。だから」
袴田はそう言って、ワイングラスを差し出して、
「一杯だけにしましょう」
「おう……」

ワインを飲む袴田と幸造。幸造は照れくさそうに感謝の言葉、そして、これまでのことを詫びた。しかし、似たもの親子か…。今度は袴田が「何の話ですか?」と憎まれ口を叩く。そして数分後、酒に弱い2人はソファで同じポーズで爆睡していた…。 そんな2人を微笑ましく見守る香苗たち。香苗は、袴田を長く知る芳江に聞いてみた。
「先生が離婚専門の弁護士になったのは、ご両親の離婚がきっかけだったんですよね?」
「それは……違うわよ」
「え?」虚を突かれた香苗。しかし、芳江はそれ以上、教えてくれない。香苗は複雑な表情で、袴田の寝顔を見つめるのであった…。