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案件8

坂上 剛士(主夫)河相 我聞
1年前にリストラされ、現在は職探し中の専業主夫。
妻からの離婚申し出をきっかけに、3人の子供たちの親権争いに…。
公園で子供たちと遊んでいた袴田が弁護士であることを知り、依頼人となる。

話し合いでは折り合いがつかず、離婚調停へ。 親権者を決める上で重要な判断基準となる監護能力や子供に対する愛情が認められ、 離婚後の養育費と親権を勝ち取る。依頼人の配慮により、慰謝料は辞退した。

第8話「ドロドロ親権調停…イクメン専業主夫vsキャリアウーマン妻」

公園で子供たちに水鉄砲を浴びせられる慰謝料弁護士・袴田幸男(田中直樹)。周囲からは「不審者」と間違われながらも、子供たちーー坂上大地、ゆな、空太の3兄弟とはすっかり仲良しに。3兄弟の父・剛士(河相我聞)にも「友達」と紹介されたりして…。
ところが、袴田を不審がる剛士。しかし、彼はキャリアウーマンの妻・いずみ(宮地真緒)から三行半を突きつけられ、今回、袴田法律相談所の門戸を叩くことになる。
今回のクライアント・坂上剛士は42歳。1年前に勤めていた電機メーカーをリストラされ、以後、専業主夫となる。妻・いずみは38歳、インテリアメーカーの課長補佐。夫には、1年で次の仕事が見つけなければ離婚だと宣言していた。当の剛士はそれを冗談だと思っていたが、いずみは本気。しかも、取引先の会社社長と再婚するつもりでいた。
「賢明な選択ですね。お先真っ暗なダンナより、将来有望な社長でしょ!」
剛士の話に容赦なく突っ込む大家の遠山芳江(美保純)やアルバイトの篠塚里奈(岩﨑名美)。2人をたしなめる助手の野々村香苗(矢田亜希子)。一方、袴田は、3人の子供の親権を取りたいと訴える剛士に覚悟を問う。現状、親権者を決める基準は主に3つ。①監護体制の優劣 ②心身の健全性 ③子供に対する愛情。つまり、普段から子供の世話をし、健康で、愛情を注いでいる方が、親権を取るのに有利。どちらの親といるのが子供にとって幸せかが重要となる。
「坂上さん、大地くんたちを幸せにする自信はありますか?」
「もちろんです。その点は妻には負けていません」
「わかりました。慰謝料、親権、養育費、まとめて勝ち取りましょう!」

剛士は早速、袴田のアドバイスの下、材料集めに入る。
① 監護体制の優劣:普段、どちらが子供の世話をしているのかをはっきりさせ、細かく記録していく。子供たちが大好きなピクニックも参観日も、いずみは仕事を理由に断る。また、剛士には、監護を補助してくれる姉が近所に住んでいた。
② 心身の健全性:健康診断を受け、心身ともに健康であること証明する。
③ 子供に対する愛情:高熱を出したゆなの看病をする剛士。一方、いずみは仕事を理由に帰って来ようとしない。
これら材料集めは調停や裁判にもつれこんだ場合を想定したもの。やはり、親権問題は、子供が幼ければ幼いほど女性が有利。それはいくら不貞行為を働いていようとも関係なかった。また、袴田は子供たちのことを一番に考えていた。最も気をつけなければならないのは、剛士が子供たちに離婚を告げるタイミング。その際、決して言ってはならないのは妻の悪口だ。どんな悪妻でも、子供たちにとっては大切な母だから…。
フリー調査員・梅本くるみ(渡辺直美)がいずみについて調べてきた。簡単に出るわ、出るわ、不貞の証拠。その日は剛士がピクニックに誘った日だったり、参観日などの学校行事の日だったり。いずみは仕事と偽り、不倫相手と過ごしていた。しかも、健康状態もあまり良くない。剛士の方が親権者に適しているのは明白だ。俄に喜ぶ香苗たち。しかし、喜ぶのはまだ早いと、袴田は言う。剛士の仕事が決まらなければ…。やはり、親権を勝ち取る上で、子供に不自由をさせない経済状況であることは大事だった。だが、40男が再就職するのは厳しい……。みんなの表情も曇るが、その時、剛士が駆け込んできた。再就職が決まったという。これで闘いの準備は整った…いざ出陣!
ところが、袴田はいずみを怒らせてしまう。その夜、いずみは高ぶる感情に任せ、大地たちを連れて家を出ようとする。しかも、「新しいパパの所へ行くのよ」と離婚を乱暴に告げ、剛士の悪口をまくしたてる。泣き出す大地たち。結局、いずみは一人で出て行ったが、子供たちには最悪の形で離婚が告げられてしまった……。袴田は責任を感じる。

そんな中、大地たち3兄弟が袴田法律事務所を訪ねる。
「お願いします。パパとママの離婚をやめさせて下さい」
大地はブタの貯金箱などありったけのお金を出し、袴田に頭を下げる。子供たちの健気な想いに、袴田たちは心を打たれる。自身も両親が離婚した袴田は特に。しかし…。
「大地くん。パパとママは離れて暮らすけど、ママはいつまでたっても君たちのママだ。家族であることは変わりない。パパもママも、私も、みんなの幸せのことを一番に考えてるんだよ」
「嘘だ!」声を上げる大地。「おじさんの仕事は、困った人を助ける正義の味方じゃなかったの?」溜まらず、大地は妹や弟を連れて事務所を出て行くが…。
その日の夕方、大地たちが帰って来ないと、剛士から袴田のもとに電話がかかってくる。母の所だろうか。だが、いずみのもとには来てはなかった。袴田たちは手分けをして、大地たちを探す。
「袴田先生、子供たちを無事保護しました」と電話をするくるみ。
大地たちがいたのは、家族でピクニックに行った公園だった。大人たちは安堵するが、大地たちの心は深く傷ついていた。袴田はそんな子供たちに声を掛けるが、 「お前なんか、もう友達じゃない! パパもママもおじさんも、みんな大っ嫌いだ!」
傷つく袴田。「こんなとき、弁護士は無力です」と、香苗に愚痴をこぼす。

数日後の家庭裁判所。調停室では坂上家の親権問題が話し合われていた。いずみは東海林という弁護士をつけている。東海林は先日、大地たちが家出したことを持ち出し、親権者として剛士は不適格だと主張する。また、2人の収入を比較する東海林。剛士の年収の予定額は350万円。一方のいずみは600万円、それに加え再婚予定の相手には1200万円の年収がある。経済的にもいずみの方が適していると、主張を重ねる。窮地に陥る剛士…。しかし、袴田は冷静だった。家出についてはいずみの感情的な言動が原因であること、経済状況についても再婚相手の会社には多額の負債があり、倒産は時間の問題であることを明らかに。また、再婚相手は過去に妻子へのDVが原因で、離婚していた。
「そんな人と暮らして、大地くんたちは幸せになるのでしょうか?」
「……」返す言葉がないいずみ。再婚相手がそんな男だとは知らなかった…。
調停委員も、子供たちの親権は父親の剛士が持つのが適当という結論に至る。これで調停は終了かと思われたが…。
「ちょっと待って下さい」声を上げたのは、袴田だった。「失礼ながら、坂上さんもいずみさんも親権を持つのにふさわしいとは思えません」
「!」驚く一同。袴田はなおも続ける。「本当に大地くんたちのためを思うなら、そもそもあなたたちはなぜ、幸せを壊したんですか。あなたたちは親権をどちらが持つか、そのことしか考えていませんでした。子供はあなたたちの所有物ではありません。大地くんたちに何の罪もありません。子供はいつだって被害者です。本当に大地くんのことを思うなら、まずは幸せを壊してしまったことを謝って下さい。大地くんたちの傷が癒えるまで頭を下げて下さい。そして、心の底から大地くんの幸せを願って下さい。あの子たちに幸せにできるのは、それからじゃありませんか」

その日、剛士は大地たちに心から離婚を詫び、泣きじゃくる大地たちを抱き締めた。
そして、外から父子の姿を見守っていた袴田も、後日、公園で大地たちを待っていて、頭を下げた。「ごめん! 大地くんが言う通り、おじさんは嘘つきだ。全然かっこよくない、ダメな弁護士だ。大切な友達との約束も守れなかった……本当にごめん!」
すると……袴田の顔に水鉄砲の水が浴びせられる。驚く袴田だが、
「しょうがないから遊んでやる! 来いよ」と大地
。 ゆなも空太も袴田に水鉄砲の水をかけ、びしょびしょになる袴田の顔。だけど、その顔は笑っている。追いかけっこする袴田と大地たち。その楽しそうな声は公園に響き渡り、そんな彼らを香苗が温かく見守る…。