• 『アニ民319人目』フランスで通訳をされてる「LAPIN+」の高橋晶子さん
  • 『アニ民319人目』フランスで通訳をされてる「LAPIN+」の高橋晶子さん

  • 2018.02.22

今週のアニ民はフランスで通訳をされてる「LAPIN+」の高橋晶子さんです。 みなさんもご存知のように日本のマンガ・アニメーションが海外への数少ない文化輸出で、クールジャパンの代表選手みたいに言われて久しいものがあります。ボクは今回フランス・アングレームで1月25日〜28日に開催された「第45回 アングレーム国際漫画祭」に行ってきました。マンガ家の真島ヒロさんや手塚治虫「MANGA NO KAMISAMA」展など、発展してる日本のマンガ文化を大勢の現地の人たちが、言葉通り心ゆくまで愛でてくれてるシーンをじっくり目にしてきました。今回同行させてもらったM2代表取締役・丸山正雄さん(=丸さん)との目的は浦沢直樹さんの数々のイベント。その浦沢さんの通訳を担当してたのが高橋さんなのです。

お会いする前から丸さんの高橋さんを語る会話がアツイというか信頼に満ちていて、今回初めてお目にかかるにもかかわらず、初対面の時にそんな気がしなかったのは事実です。現地到着2日目の朝、ホテルの朝食会場で会った高橋さんは、丸山さんとの会話を継続しつつ、この場に訪れるほとんどの人が知り合いという状況で、フレンドリーに丸さんやボクに紹介してくれます。実はこの日は浦沢さんのメインイベント・トーク&コンサートもあり、その準備でてんてこ舞い、そんな中でこのイベントのいろいろを聞かせてもらったのです。

今回はイベント視察のみで出演出番はないのですが、海外アニメイベント常連の丸さんは通常は違います。フランスで人前でお話をする時はその通訳はほぼ高橋さんであり、その理由は浦沢さんステージを見て明白にわかりました。ひとことで言えば高橋さんは我々業界のことに精通してるのです。専門用語的な業界の言葉などの説明がスムーズで、ボクらが聞いてても気持ちよく感じます。浦沢さんのトークライブではトークの内容をその笑いのニュアンスも素早く丁寧に伝えてるし、ステージ上の浦沢さんという日本人と大勢のフランス人観客との敷居がずいぶん低く見えます。

驚いたのは前日に準備されたという、浦沢さんが歌唱する歌詞翻訳です。浦沢さんはギターを抱えて中央ステージでトークと歌を歌うのですが、下手に白い紙を写したテーブルも用意され、そこで即興でお話ししながら絵も描きます。見事に仕上がっていく絵とその関連話を同時に見れる観客ほど幸せなことはありません、しかもここはアングレーム。そして同じカメラで浦沢さんの歌に合わせてフランス語で訳された歌詞が出る、タイミングはすべて高橋さんの采配。そりゃ地元のファンもつい歌いたい気持ちになっちゃいますよね。

高橋さんはこれまでも実写映画の監督とかのアテンドをしてたそうですが、丸さんが今は亡き今敏監督を連れて来てからアニメスタッフの面倒も見るようになったそうです。そういえば何年か前に一日だけだったそうですが青山剛昌先生のアテンドもされたとか。普通なら高橋さんを期間中独占するのは丸さんのはずですが、今回はそうではないので、忙しい中の時間を見つけて丸さんが懸命に高橋さんとお話ししようとしてるのが微笑ましかったし、いかに信用してるのかがよくわかりました。うーん、こーゆーのは頼もしいなあ。

日本という個性が溢れるコンテンツ文化の送り手が、しっかり面白いものを作らなければいけないのは当然ですが、高橋さんのような「伝え手」が担ってる面も大きいのは間違いありません。コンテンツ内容の伝達もさることながら個人の語学の裁量により、「国の文化」全体も言葉にくるんで日本から見た「外国」に丁寧に伝えてくれ、そして売り込んでくれてるのですから。

通訳したその人が、通訳した相手と直接会話した、という距離感でその人の思い出になることが一番最高、という高橋さん。通訳の自分と会話したという記憶にならないという通訳ってやっぱり一枚上です。これからも日本とフランス両国のマンガアニメ文化の架け橋を、どうかよろしくお願いいたします!