• 『アニ民353人目』声優の玄田哲章さん
  • 『アニ民353人目』声優の玄田哲章さん

  • 2019.09.12

 今週のアニ民は声優の玄田哲章さんです。1987年4月スタートの「シティーハンター」最初からおつきあいいただいてるんですね。しかし当時からその声は響きも評価も揺るがない、おなかに来るような低音の魅力いっぱいでした。

 玄田さんは岡山県出身、家族で上京してから役者の道を志すようになったそうで、最初は「東宝芸能アカデミー」に入学、そこで芝居の基礎をみっちりこなしそのあと新劇の道を歩もうとしていた。しかし望む大手の劇団のオーディションには失敗、悩んでいたところで目にした「劇団薔薇座」の募集に応募。1970年に入団したそう。

 薔薇座座長・野沢那智さん、その名前から最初は女性かと思っていたら、サングラスかけたアヤしいお兄さんが出てきて驚いたって。そしてその野沢さんのレッスンは厳しく、チョークはいつでも飛んでくるし、フェンシングのフルーレを振りながら怒鳴られたことは今でも忘れられないそうです。野沢さんに対してはボクもこの日記に「勝手に言ってますが、ボクは野沢さんにとって役者ジャンルではない、最後の弟子」と書かせていただいた2010年の逝去の際、玄田さんは「帰って来て下さい、早すぎます」の言葉を残しています。

 その野沢さんに紹介されあるディレクターに連れて行ってもらったのがTVアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」のアフレコ現場。最初は見学だけだったのが、数回見学したあと「次はやってみるか?」と言われ端役でデビュー。でも最初はマイクの位置も声を入れる場所おろか、台本の見方もよくわからず、スタジオ内の先輩に怒られてばかりだったって。記憶に残る役としては「ドカベン」の岩鬼だそうで、この役でいろいろ吹っ切れたそうでした。

 アーノルド・シュワルツェネッガーの吹き替えに関してはもう皆さまご存知のように、正式にご本人からフィックスとして公認されてます。2015年に来日したご本人と30年越しの体面を実現、同世代として、一言で言うなら同志、と発言してます。本当にすごいですね。でも実は「シティーハンター」海坊主役はそれよりも数年早かったりします。なので玄田さんのバトルアクション演技はこちらの方がベーシックだったりして。

 今年の2月に公開された劇場版「シティ―ハンター新宿プライベートアイズ」。20年ぶりの役とあって一抹の不安はあったけどスタジオに入ってみると、神谷明さんや伊倉一恵さんなどまるで20年を感じさせない演技に、自然と自分も海坊主になりきれたそうです。実は玄田さん、シリアスよりコミカルな演技の方が好きだそうで、確かに今回の作品では感情がほとばしって笑いに至るような傑作なシーンも数多く演じられてます。

 そういえば「魔法騎士レイアース」は巨大な魔神(マシン)を田中秀幸さん大塚明夫さんと3人で演じてもらいました。なんというかその超重量級な演技の応酬に、当時ずいぶんなぜいたくな時間を味わえた記憶があります。そしてさらにずいぶん前ですが、その田中さんと玄田さんとマージャンをしたことも覚えています。忘れられないのは玄田さんは麻雀で人の牌で当たる「ロン!」の声が大きいコト。意識して驚かせようとしてるんだそうです。それはそれで楽しいのですが、「あ、大きいの(高い得点の役)やられちゃった」と思える大きな声の「ロン!」でも「タンヤオのみの1300」とか低音で続けられると、ほっとしながらも当てられた衝撃が、そのままおなかあたりに持続してるような気持ちがしたものでした。

 これからも引き続き現場に呼んでもらって、期待される演技を自然にこなしていきたい、とおっしゃる玄田さん。ボクもふたたび実現したい海坊主役はもちろん、多くの持ち役の新作を楽しみにしてますし、またぜひプライベート麻雀も一緒に囲ませてくださいね。