• 『アニ民282人目』ビーイング創始者の長戸大幸さん
  • 『アニ民282人目』ビーイング創始者の長戸大幸さん

  • 2016.08.04

今回のアニ民はビーイング創始者・長戸大幸(だいこう)さんです。「名探偵コナン」で思い切りお世話になったZARDがデビュー25周年ということで、様々なイベントや露出が展開されたのですが、このほどプロデューサーの長戸大幸さんのロングインタビューがアップされていました(エンタメステーション http://entertainmentstation.jp/36195/)。そこにも記してあったのですが長戸さんはなかなか外に向かってメッセージを発しない人だったので、読んでみると新たな発見がいっぱいあり、この機会にこのアニ民でボクなりの長戸さんのことを書いてみようと思いました。ここでは長戸さんのことをいつものように大幸さんと呼ばせてもらいます。

ボクが大幸さんと初めて出会ったのは1993年1月。「4月スタートのドラマ『彼女の嫌いな彼女』の主題歌をぜひZARDに!」と六本木の事務所を先輩プロデューサー・山本和夫さんと訪れた時です。のちに「名探偵コナン」主題歌でがっぷり組み合う渡部良さん(=アニ民138)ともこの時が初めての出会いでした。この時の渡部さんは素直に大幸さんの用心棒?に見えたのを覚えています(笑)。

さてその大幸さん、初対面なのにまったくそんな距離感が無い対応をしてくれました。というのもご自分のお部屋に通してくれたとたん、こちらの要求する内容はわかってますよ、とばかりに音楽を聞かせてくれるのです。ゲーム喫茶でのインベーダーゲームのようなテーブルにうず高くカセットテープが積み上げられていたのですが、その中の一つを取り出すとそのインベーダーゲームのようなテーブルがカセットデッキになっていて、そこで次々とかけてくれるのです。

しかも「こんなアメリカンポップな感じはどうですか?」と言いながら本人はもうリズムをとり、まさに踊っているのです。ドラマの内容とこちらの意向を伝えて、いくつかの候補曲を共有し、それがZARD「君がいない」につながるのです。当時のベストセラーを原作にしたドラマ化で、女性主人公を反語的に表現したタイトルから「君にいて欲しい」という方向を期待していたら、まったく正反対の「君がいない」となって出来上がった楽曲には本当に驚きと感謝しかありませんでした。売り上げ80万枚の大ヒット、坂井泉水さんの作詞センスと主題歌へ持って行ってくれた大幸さんに深く感謝したものです。

そしてもう一曲、1996年アニメスペシャル「YAWARA!いつも君のことが…」の主題歌、ZARD「Today is another day」も長く続いたアニメ「YAWARA!」の最後を飾ってくれた名曲でした。そして大幸さん率いるビーイングが1997年1月から「名探偵コナン」のスポンサーになってくれて、その4月にオープニングテーマとなった小松未歩さん歌う「謎」を皮切りに、怒涛の「コナンテーマ曲ラッシュ」となっていきます。ボクは原則的に先にお伝えした渡部さんと会話をしていましたが、そのバックにはいつでも大幸さんの存在がありました。

アニバーサリー的タイミングで特にお願いしたいことがある時は、携帯メールで直接お願いをしたり楽曲の御礼をする事もしばしばで、ボクとしてはお話をする相手の顔がわかった上で提案ができたことはとてもラッキーだったと思います。あれだけの実績を上げているにもかかわらず、大幸さんが「名探偵コナン」にとって最善の道を丁寧に模索してくれてる感触が、聞かせてもらうデモテープから感じられた時なんて、マジ鳥肌ものだったりした事もありました。

「名探偵コナン」という作品のリズムと、一企業であるビーイングの音楽活動リズムは同じという事はありえませんが、キャラクターとアーチストの接点は意外に多くあります。アーチスト側からしたら単純にキャラや作品を好きか嫌いか、番組側からしたらその音楽が合うか合わないか…それがもちろん第一段階です。その次の展開を見据えていくためにも、これからもお互いチームとして、送り手側同志の会話を今まで以上にしっかりやっていきたいですね。アニメーションは映像と音響の二輪からなっています。音楽面も20周年を超えた作品の新たな歩みとして、さらに面白く発展させていく一つの車輪となっていけるように、どうか引き続きどうかよろしくお願いいたします。