• 『アニ民276人目』トムス・エンタテインメント制作本部文芸部の小宅由貴恵さん
  • 『アニ民276人目』トムス・エンタテインメント制作本部文芸部の小宅由貴恵さん

  • 2016.05.12

 今週のアニ民はトムス・エンタテインメント(=TMS)制作本部文芸部の小宅由貴恵さんです。ここでは小宅さんのことをいつものようにこやけちゃんと呼ばせてもらいます。こやけちゃんがコナンスタッフとしてやってきたのは2008年のこと。当時はまだ吉岡さんと一緒にがんばっていたころ。ちょっと変わったふわふわした感じの女性がコナンチームに溶け込むのにあまり時間はかかりませんでした。

 そもそも文芸、という仕事ですが、具体的には作品のシナリオ作りを全面的に担う部所。作品のためにはメチャメチャ大切な仕事なのですが、実は文芸という仕事が一つの部として存在してるのはけっこう珍しいのです。例えば東映アニメやサンライズ、タツノコプロ、A-1Pictureでは当然のようにプロデューサーがシナリオ作りを兼ねていますし、手塚プロさんではシナリオライターとしてシナリオ作りをサポートするスタッフがいたりしました。

 それがTMSでは番組プロデューサーという立場ではなく、各作品のシナリオ作りだけに専任するための文芸部に常時5.6人のスタッフがいます。コナンにおけるこやけちゃんの先代は飯沢さんという女性。そしてコナンにおいてはストーリーエディターとクレジットされてる東京ムービーOB飯岡さん(アニ民28人目)が第1話からいます。飯沢さんもこやけちゃんも、飯岡さんと一緒にTVシリーズや劇場版のシナリオ作成、それにコナンに関するありとあらゆる文献資料作りをしているのです。

 さらに一口にシナリオ作成と言っても、脚本家によるプロット提出のチェック、それをシナリオ会議にかけてメンバー同意のもと、1話の台本として完成させそれを製本まで持っていくまでの多くの作業が含まれます。どの話数も同じ行程というわけはなく、ケースバイケースでいろんな出来事があり、それらをこやけちゃんが上手くまとめたシナリオが絵コンテ作業などを経て面白い一本の作品としてみなさまにお目見えするのです。

 ちなみにこやけちゃんが仕切るTVシリーズシナリオ会議参加メンバーは、今年5月現在 山本監督・各脚本家・飯岡シリーズ文芸・TMS石山プロデューサー・TMS寺島プロデューサー・YTV米倉プロデューサー・諏訪の基本8人。ここに案件により小学館・近藤プロデューサーやShoPro・小沼さんらが加わることがあります。

 原作をそのままアニメにする場合も、こやけちゃんは監督やプロデューサーと話し合い、例えば前後編をどこで分けるのか、とかアニメオリジナルストーリーと原作ストーリーの放送順を考えたりしています。アニオリの際のアフレコ時には、セリフなどの問題があったり変更あったりするのに備えてアフレコにも参加…こうやって書くとすごい仕事量ですよね。
 
 お酒もけっこう強く、吉岡さんと飲んでるチームの常連だったこやけちゃん、その女性なのに?底抜けな明るい飲み方はコナンチームにとってなくてはならない存在になっちゃってます。そんなわけですが、TVシリーズは放送21年目を迎えてさらにシナリオ開発は難しくなってきています。その上、劇場版シリーズが何年も最高成績を上塗りしてきて、今年はちょっと比類ない成績となろうとしています。こんな時に絶対一番大変で大切なのがシナリオのクオリティアップです。めっぽう面白いシナリオを青山先生の指導のもと、監督・脚本家たちと一緒に作り出し続けること。とにかく最強のコナンスタッフチームワークが、こやけちゃん主導のシナリオ作りをさらに盤石なモノにしていきますので、どうかこれからも厳しくもユニークなシナリオ制作をリードしていって下さいね。