• 『アニ民269人目』脚本家の岸本みゆきさん
  • 『アニ民269人目』脚本家の岸本みゆきさん

  • 2016.01.21

 今週のアニ民は脚本家の岸本みゆきさんです。みゆきさんといっても男性の岸本さんと初めて出会ったのはTVアニメ「結界師」の時ですね、あれは番組がスタートする前の事だったので、2006年の初夏くらいだったでしょうか。確か岸本さんは、大阪で戦隊モノのショウの演出や出演をしていたらしく、改めてシナリオの道を目指そうと上京してきてすぐ。縁あって「結界師」チームに入ってくれました。打ち合わせの最初の頃は、その度ごとに大阪から来ていたように記憶してます。

 ベテラン脚本家の大野木寛さんや隅沢克之さんの指導を受け「結界師」では4話くらい書いてもらいました。この作品、原作がある中でもいくつかアニメオリジナル設定も混ぜてもらったので、なかなか一本の「ホン」にするにはかなり苦労をしていましたね。でも、それがその後の彼の活躍につながることになる(ちょっぴりギモンもあるが(笑))ので、人生は面白いですね。
 
 ボクとの付き合いはその後数年、なぜか誕生日ごとの電話連絡のみだったのです。その間も岸本さんはゲームシナリオやマンガ原作をいくつも手がけ、この業界のシナリオライターとしての地位を少しづつ確立していたのは知っていました。そんな彼とボクが再度しっかりつるむキッカケになったのは、「犬夜叉」でお世話になったサンライズの小形尚弘プロデューサー。まあワインが好きという同好の志であったことというだけですが。

 ボクのアニメプロデュースに欠かせない人の一人に音楽家・和田薫さんがいますが、彼を中心にした仲間にボクも入れてもらっていて、そこに小形さんの紹介でやってきたのが岸本さん。シナリオを書き続けているのは知っていましたが、ボクの担当する作品とは少し傾向が違うとも思っていて、もっぱら「公私」の「私」の方で何度も会っていました。実はワインの件も最初からではなくヒョンなことから、これまたボクの友人の脚本家・井上敏樹さんと巡り会わせたあたりからディープな方向に向かうことになります。
 
 こんな話を書いてたら紙幅がいくらあっても足らないので、ここらで本題の「金田一少年の事件簿R」お話をさせてもらいます。先ほど岸本さんの書くシナリオの方向がボクの目指す方向と違うと書きましたが、本人曰く、ミステリーならまかせろ!と何度も言われ、とにかく一本実際にプロットを書いてみて、と携わってもらった作品が2014年8月に放送された前回の金田一Rシリーズ「飛び込みプールの悪霊」でした。何度か会議を重ねて、少し原作と相違点を持ってもらったけど、1話としてバランスの良い作品にしてくれました。

 そんなこともあっての満を持した2016年の「金田一少年の事件簿R」最初の大きなシリーズを岸本さんに書いてもらいました。1月23日からスタートする「雪鬼伝説殺人事件」シリーズです。長くスケールの大きな原作をそれぞれの話数で起承転結もしっかりさせながら、ストーリーの縦線に対する視聴者の興味をグッと引き寄せていかなければなりません。今回も岸本さんらしい「原作との相違点」を加えながら、4週にわたる素晴らしい金田一Rとなったと思います。原作ファンはそこの所を、そうでない方は3週までに真犯人を必ず暴く、そんなつもりで見ていただけると最高ですね~。
 
 祖父に人形浄瑠璃の人間国宝・竹本住大夫さんを持つという伝統的由緒ある家系から、自分の人生をすべてアニメ界へと向けチャレンジする、岸本さんの覚悟は上京してすぐの頃から見てとれました。岸本さん、今後もプライベートも含めて切磋琢磨しながら、この業界をもっと面白く元気にしていく、そんな最先鋒の存在であり続けて下さいね。