• 『アニ民246人目』声優の故 大塚周夫さん
  • 『アニ民246人目』声優の故 大塚周夫さん

  • 2015.01.29

 今週のアニ民は声優の故 大塚周夫さんです。ここではいつものように、ではないのですがあえて周夫さんと呼ばせていただきます。「ゲゲゲの鬼太郎」でのねずみ男はもちろんですが、他の持ちキャラの数も枚挙に暇がないのはみなさん良くご存知の話。さらに言えば、周夫さんの歴史の中で声優という部分は一部にすぎず、文字通り大きな意味で俳優であったのも有名ですね。

 僕が初めて周夫さんとお会いしたのはまだ20世紀の頃の「金田一少年の事件簿」そして映画「名探偵コナン 世紀末の魔術師」。でもご多分にもれず、年長の周夫さんのような役者にはホイホイ近づきにくく、その容疑者の重さを際立たす見事な演技にただただ感心するのみでした。

 別に良くお話するようになったわけではなく、僕が周夫さんのことを少し距離近く感じるようになったのは、その息子の大塚明夫さん(アニ民69 )と友人になったことに始まります。「魔法騎士レイアース」から知ってる明夫さんといつ友人になったのか、その境界ははっきりしませんが、少なくとも明夫さんと僕が同学年であると自覚し会話した時からなことは間違いありません。周夫さんは僕と同歳の明夫さんの父親である、その感覚が自分の父親にも重なって、かなり気になる存在になった気がします。

 明夫さん主演の「ブラック・ジャック21 医師免許が返る日」で親子競演とばかりに、周夫さんに演じてもらった医師会長の役に強く記憶があります。その息子が撃たれたシーンはシナリオ上では会長が「息子よ!」と叫んでいたそのセリフを、実際に自分の息子に対して「息子よ」と言う父親はいない、と言う周夫さんが主張。スタジオに本人がBJとして居るにもかかわらず「明夫!」としてもらいました。その役名クレジットも明夫になり、周夫さんは2度その名前を叫びましたね。何度も名前を呼ばれたBJ明夫さんの胸中はちょっと複雑だったのかも。

 コナンのTVシリーズなどにも出演してもらいましたが、一番最近なのが映画「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」のマーク・スペンサー役です。スケジュールの都合で周夫さん一人でのアフレコ収録にすべてお付き合いしました。犯人を絞るために警察に協力する際、その犯罪そのものに対しての怒りが印象的な演技でした。ただ収録はほぼOKが出ているご自分の演技に対して、プレイバックしたものを良しとせず、さらに3度ほどやり直されたのにはスタッフみんな驚きました。

 実はお亡くなりになった時、周夫さんがなぜか僕の名刺を所持していたと明夫さんから聞きました。マーク・スペンサー役でご一緒してからもう10ヶ月以上が経ちます。そのアフレコ終了後、明夫さんと同学年であることなどの話題でたくさん会話させていただいたのですが、その時「仲良くしてやってな」と言われたコトがなんだか子供の時のように嬉しくて。その際にお渡しした名刺がまだお手元にあったということにも、ここで言うべき言い方ではないですが、ジーンと嬉しかったです。

 予定より遅れて到着した夜の青山葬儀場は雨上がりの凛とした冷気が漂っていました。花に囲まれた祭壇に手を合わせ頭を下げ気持ちを込めて御礼します。そしてお清め場にいくと、さすがに疲れた顔の明夫さんがいました。大きなモニターからはねずみ男から「忍たま乱太郎」の山田先生までいくつもの周夫さんが聞こえていました。いろんな気持ちを込めた握手をして別れましたが「順番だから」と言ってた明夫さんのセリフが胸に刺さります。享年85歳、ありがとうございました。心からご冥福をお祈りいたします。